作成者別アーカイブ: SHINWA ART AUCTION

杉山寧の抽象絵画―《林》

こんにちは。
16日(土)の近代美術PartⅡオークションにご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
この日、観測史上最も早いペースで東京の桜の開花が発表されました。
今週末には都心はもう見頃を迎えるそうなので、お花見の後はぜひオークションにお立ち寄りくださいね。

では、23日(土)の出品作品の中から1点ご紹介します。


【オークション終了につき、作品の画像は削除させていただきました】


181 杉山 寧《林》
188.0×147.0cm
麻布・彩色 額装
1961(昭和36)年作
共シール
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書付
展覧会歴:第4回新日展(1961年・東京都美術館)ほか多数
文献:『現代日本の美術 第8巻 杉山寧』(1977年・集英社)ほか多数
エスティメイト ★\20,000,000~40,000,000


 今年は杉山寧の没後20年にあたり、現在各地で展覧会が開催されています。
皆様はもうご覧になりましたか?
杉山の大規模な展覧会が開催されるのは、なんと17年ぶりとのこと。会場の一つ、日本橋高島屋は連日たくさんの人で賑わっているそうです。

 杉山寧(1909-1993)は、東京生まれ。東京美術学校在学中に帝展で入選、その後首席で美校を卒業し、注目の若手作家として華々しく画壇デビューを飾りました。松岡映丘に師事する一方、同門の画家たちと「瑠爽画社」(るそうがしゃ)を結成し、新しい日本画の可能性を積極的に追求していきます。初期の写実的な作風から、戦後は抽象表現を経て、エジプトやカッパドキアの風物、裸婦や花鳥など、様々なテーマに卓抜した造形感覚と描写力を発揮しました。1974(昭和49)年文化勲章受章。

 杉山の画業において、ひときわ異彩を放つテーマといえば、1959(昭和34)年から1962(昭和37)年にかけて制作された抽象表現でしょう。
 この時期に欧米から伝わったアンフォルメルや抽象表現主義の流行に敏感に反応したものとも考えられますが、抽象に至る数年間の作品に造形や象徴的な空間づくりへの意識が次第に高まっていく様子が見られるため、むしろ必然的に辿りついたものなのかもしれません。それは伝統的な日本画の情緒的・文学的な要素を徹底的に排除した、純粋な造形表現による絵画であり、日本画家の枠を超えた画家であろうとする杉山の強い意志表明とも言えるものでした。

 1961(昭和36)年(当時52歳)に制作された本作品は、同年の第4回新日展出品作。その完成度の高さから一連の抽象表現の到達点とも評されています。画像では伝わりにくいのが残念ですが、縦188cmという大画面を覆い尽くす重厚な絵肌の迫力は圧巻です。
 こうした抽象絵画は、自然から受けたイメージを象徴的なフォルムにまで高めるという手法で描かれていますが、伝統的な日本画が題材としてきた日本特有の風景を描いたものは一点もありません。本作品では木々が絡み合うようにして立ち並ぶ林のイメージを太い描線で表しており、まるでその隙間から光が差し込んでいるかのように背景の中央付近をやや明るく描くことで、描線は樹木が天へと伸びていくような生命感を感じさせます。
 また、岩絵具に細かい砂などを混ぜた堅牢で重厚なマチエールは、自然を抽象化する過程で見出されたもので、画面に造形の力強さと喚起力、神秘性をもたらしています。こうしたマチエールはこの後の杉山芸術の大きな特徴となり、これを支えるために、本作以降の作品では支持体に麻布が使用されるようになりました。実際の風景と画家の心象とが溶け合う象徴的な画世界が完璧なまでに表現された作品であるとともに、杉山芸術の確立を示すターニングポイントとしても貴重な一点と言えるでしょう。

その圧倒的な存在感をぜひ会場で体感してください。
下見会・オークションスケジュールはこちら

《林》をご覧になった後はこちらもどうぞ。
「杉山寧展」 日本橋高島屋 (~3/25 その後全国巡回)
「杉山寧とポーラ美術館の絵画」 ポーラ美術館 (~7/7)

みなさまのお越しを心よりお待ちしています。

(佐藤)

続きを読む →

オークションの舞台裏 -オークショニア3-

オークションの舞台裏 ‐オークショニア3‐


 こんにちは。先週のワインオークションにご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。
前回の「オークショニア2」よりしばらく間があいてしまいましたが、今回はいよいよオークション本番でのオークショニアの仕事振りをご紹介したいと思います。

 オークショニアが壇上に登場するのは通常オークションが始まる1~2分前。マイクの位置を確認し、ハンマーやペンなど手元周りを整えます。そして会場内を眺め、常連のお客様がどちらに座っていらっしゃるか?新規のお客様は?など会場の様子を大まかに頭に入れておきます。
baba.jpg
近代美術も務める馬場オークショニア
 
いざ開始時刻になると、会場にいるスタッフが開始OKの合図を送ってくれます。合図を受けてオークショニアがまず始めにやるのがマイクの確認。ハンマーを軽く2、3回コンコンと叩き、開始前のざわついている会場の注意をひきます。そして後方のスタッフに向け、「オークショニアの声は聞こえますか?」と確認をします。このときにしばしば後ろに座っている親切なお客様が応答してくださる時もあります。
 マイクの確認に続いて、オークションに関する説明を行います。これは、オークション中の注意事項、競り上げの幅、お支払金額や方法、お引き取り方法、そして出品取り消しロットなど、オークションによって多少異なりますが、合わせて十数項目にもなります。常連のお客様にとっては毎度おなじみの話かと思いますが、どれも重要なインフォメーションですので、参加される方には是非聞いていただきたいものです。私の場合、この説明が滑らかに喋れるかどうかでその日の調子を自分で占ったりするときもあります。
 説明が終わるとすぐさまオークション開始。競りに入るとオークショニアは、会場はもちろんのこと、書面ビッド、電話ビッド、手元の台帳などを見ながら1ロット約30秒~1分程度で競っていきます。しかもその間はひたすら金額を言い続け、かつ、どのビッドがいくらで競っているかを会場全体に示さねばなりません。以前のブログでも紹介した研修の成果がここで発揮されるのです。
cho.jpg
シンワ唯一の女性オークショニア、長オークショニアです。

 1ロットに30秒と言うと、はじめての方にとっては競りのスピードはかなり早く感じられるかもしれません。そんなに早くて競り間違えたりしないのか?と思われる方もいらっしゃるかと思います。しかし、来場されて参加された方ならおわかりかもしれませんが、実は競りの最中にはオークショニアとビッダーの間に見えないコミュニケーションが行われています。オークショニアはビッドを取る際に必ず「この方は競っているかな?」とビッダーの表情を絶えず確認しており、またビッダーもほとんどの方が壇上のオークショニアを見つめていて「私競っていますよ~」という表情をこちらに返してくれます。そして、それに対してオークショニアは「あなたですよ」という意思を目で訴えながらビッドを取っているのです。中にはパドルではなく手や指でビッドする方や、時にはうなずくだけというような微妙な動作でビッドの意思表示をする方もいらっしゃいます。そのような場合は、ますますこの無言のやりとりが重要な意味を持ってくるのです。
 また、大勢の方が同時に競っている場合には、オークショニアが取っていないビッダーに対してもできるだけ目線を送り「あなたが競っているのをわかっていますよ」というメッセージを伝えるようにしています。テンポよく競り上げていく間にも、オークショニアと会場、そして書面・電話ビッド席との間には無言の意思疎通が行われているのです。

 数あるロットの中には、事前の人気が高い注目のロットや、その日のメインとなる高額のロットがあります。さりげないようでいても、そんな時はやはりオークショニアも力が入ります。注目度の高いロットが来ると、どれくらい競り上がるか?誰が競るのか?興味津々、ドキドキわくわくといった雰囲気になり、会場内もざわついて落ち着かないムードが漂います。そんな時オークショニアは、声を発する前に一口水を飲んだりして自身の興奮を鎮めるとともに、会場を少しだけ落ち着かせたりしてから始めます。そして、通常よりもややゆっくり競り始め、競りが激しくなるとともに競りの調子も上げていきます。その結果、最終的に1対1の激しい応酬ののち予想以上に競り上がった時などは、壇上でハンマーを叩いた瞬間得難い充実感を感じます。もちろんそれは、営業努力やカタログ製作チームの頑張りなど社員全員の力で成し得た結果ですが、その最終目的のための最後の要素としての役割を果たしたことに、私はオークショニアとしてのやりがいや喜びを感じております。
tatsu.jpg
これが私。

 以上、3回にわたりオークショニアについてご紹介してまいりましたが、実際のオークションでは実にさまざまな状況が生まれます。そんな時オークショニアはどの様に対応しているのか、このオークショニアのテンポは?声は?表情は?などにも注目して各オークショニアを見比べてみても面白いかもしれません。そして、弊社オークショニアにも気軽に話しかけていただき、良いことでも悪いことでもその感想を伝えていただけると幸いです。今後も、お客様により気持ちよく楽しんで競りに参加していただけるよう、よいオークショニアとはいかなるものか、どこまでも突き詰めていきたいと考えております。

(平野)

続きを読む →

「陶器」と「磁器」

陶器と磁器
こんにちは。
突然ですが皆さん、陶芸作品はお好きですか?私は陶芸を勉強していく中で一番最初の大きな「?」がこの問題でした。美術品の良さがどうしたらわかるのだろう?と。
そこで今回は、陶芸作品を鑑賞する上での最も大枠、「陶器」と「磁器」について説明してみようかと思います。一度見方が分かると、あれよあれよという間に陶芸に興味を持てるかもしれません!
 
まず、「何焼か」という判断はというと、・・・ほぼ見た目です。
陶芸は生産地によって釉薬や土が違うので、見た目でどこの土地で作られたかおおよそ判断できます。でも、いくつも見ないと系統が分からず、ややこしいですね。しかも土や釉薬は簡単に運ぶことができるので、最近では「○○の土」としてホームセンターなどで売られていたりします。なので「○○焼」というより、「○○焼き風」と言ったものも多いようです。実際に多くの種類の陶芸作品が生まれ、どこの焼き物か分類できないものまで増えてきています。
そこでまず、もっともシンプルに、且つ大胆に「陶器」と「磁器」に分類してみましょう。
 たとえば、「楽焼」「備前焼」などは「陶器」に、「有田焼」「九谷焼」は「磁器」に分類されます。
陶器3点小


「陶器」は「土もの」とも呼ばれ、釉薬を掛けず素地を焼成して完成だったり、土の中に含まれる石がそのまま表面に出ていたりします。比較的低温(800℃~1000℃)で焼かれ、吸水性も高いことが特徴です。


磁器3点小

反対に「石もの」とも呼ばれる「磁器」は、白い素地でなめらかな陶土で成形され、高温(1200℃~1500℃)で焼いた硬質で吸水性の低い焼き物のことをいいます。叩くと「キーン」という金属音が出るのも特徴的です。
 前者は朴訥とした温かみを感じ、後者は洗練された美しさを感じます。これはその土地で「採れる土」で決まります。中国では古くから磁器の代表とも言える青磁が作られてきました。世界的に最も価値があるのは、南宋時代に作られた砧青磁かもしれません。日本では豊臣秀吉の時代に朝鮮から李三平(り さんぺい)という陶工が連れてこられ、現在の佐賀県有田市で磁器の作れる陶土を発見し有田焼が作られ始めました。その後有田では、色絵磁器が江戸の絢爛豪華な元禄文化を反映し花開き、さらには輸出され、ヨーロッパで柿右衛門様式として模倣されるようにまでなったのです。
 磁器は硬質で型を使い作れることからも、湯飲みや茶碗など量産品としても多く生産されます。そしてこれまで述べたように静謐で気品あふれる作品を生み出すことができるのも磁器です。
 一方陶器は、江戸初期の茶人・古田織部が作らせた歪んだ美を持つ「織部焼」、千利休の千家が認めた茶碗師・樂家の焼く「楽焼」という形で日本の茶の湯とともに、発展していきました。もともと中国から伝わってきた茶の湯は「唐物」と呼ばれる中国製の高価な茶道具が好まれてきましたが、利休が考案した「わび茶」と呼ばれる簡素な茶の湯が広まっていくにつれ、唐物ではなく欠けた水指や茶碗などが「美」として認識されていったのです。それを表現しやすかったのが、磁器ではなく陶器だったのでしょう。
 このように陶器と磁器は、相反するような特徴を持っているのです。

 そうは言っても、作品の見方が難しく、良さを理解することもなかなか簡単ではないのかもしれません。それでも、例えば「きりっとした派」か?「ほのぼの派」か?どちらが好きか、まずは選んでみてください。そしてさらにその中でどのような種類が好きかなぁなどと考えながら触れていくにつれ、生産地がだんだん分かりだし、陶芸の楽しみ方が少しづつ分かってくると思います。

瀬戸物屋さんで売られている大量生産の磁器だけでなく、美術品としての「陶磁器」の世界に一歩足を踏み入れてみてはいかがでしょう?   

(執筆者:E)

続きを読む →

1月の誕生石<ガーネット>

こんにちは。
時が経つのは早いもので、年が明けてから既に一月が経とうとしています。ぼやぼやしていたら2013年もあっという間に終わってしまうのだろうなあと、昨日仕事を終えて帰ろうとした時にふと思ってしまいました。皆さんはこの一月をどう過ごされましたか?充実した年になるよう、日々前向きに、様々なことにチャレンジしていきたいですね。

さて、そんな1月の誕生石はガーネットです。ガーネットは、血液などの循環を促し、生命力を高め、私たちにエネルギーを与えてくれるため、寒い1月を乗り切る力になると言われています。また、精神力を高め、努力を実らせ成功に導く石とも言われます。
「ガーネット」という名は、ラテン語の“ざくろ”を意味するグラナトゥムに由来し、日本名も柘榴石(ざくろ石)。その名の通り、一般的にガーネットとして知られているのは深い赤色を持つ石です。
ガーネット赤

しかし実はガーネットには青を除いたほとんどの色があり(無色・黄・橙・赤・緑・黒など)、色によって様々な呼ばれ方をします。
今回は、赤色のガーネットと同等か、それ以上に人気のある緑色のガーネットの中から、ツァボライト(グリーングロッシュラー・ガーネット)とデマントイドガーネットをご紹介します。
ツァボライトの歴史は、1968年にケニアのツァボ国立公園から発見された緑色のガーネットに、ティファニー社が「ツァボライト」と命名したことにより始まりました。ツァボライトは、光の屈折率がサファイアに近く、硬度もクォーツと同じ程度あるので、宝石としての資質に優れています。色味としては、エメラルドより冴えた、透明度のある緑色をしています。また、インクルージョンの少ないものが比較的多いため、エメラルドのような、オイルを含浸させる処理が行われません。デビューしてまだ30年の新しい宝石で、産出量も少ないため知名度は低いのですが、この石の美しさと宝石としての資質を考えると、今後の需要の増加も予想されます。
同じグリーンのガーネットで、さらに高い屈折率と強い分散を誇る石を「デマントイドガーネット」と呼びます。馬の尾のような、多数の繊維状結晶「ホーステールインクリュージョン」が見られることが特徴です。色は、ツァボライトより黄味がかった若葉色です。デマントイドガーネットは主にロシアのウラル山脈で採掘されています。「デマントイド」には、“ダイアモンドのような”という意味が含まれており、その強い輝きを持つ美しさから、ロシア王室はもとより、イギリス王室やアメリカの上流階級の人々に愛されてきました。ロシア革命によって一時期採掘が中止に追い込まれましたが、1980年代終わりのソ連のペレストロイカで採掘を復活させています。デマントイドガーネットは還流品としてオークションに出され、1カラット当たり1万ドルを超える値がつけられたこともあり、その人気の高さが伺えます。
デマントイドガーネットは次回オークションにも出品される予定です。大きいものが出品されることは稀ですが、小さいものでも鮮やかな若葉色は目に映えます。是非下見会に足をお運び下さいね。

(執筆:N)

続きを読む →

孤高の画家・長谷川潾二郎の静物画―《フライパンと卵》

 こんにちは。毎日寒い日が続きますね。
歩道を歩いていると、まだ月曜に降った雪があちらこちらに残っているのを見かけます。
明日が「大寒」なので、今が一年で最も寒さが厳しい時期ということになります。
ノロウイルスやインフルエンザが今年も流行っているようなので、みなさまも気をつけてくださいね。

 さて、来週26日(土)は、2013年1回目のオークションを開催いたします。
今日は近代美術オークションの出品作品から注目の一点をご紹介します。


【オークション終了につき、作品の画像は削除させていただきました】


lot.33 長谷川潾二郎 《フライパンと卵》
33.5×45.5cm
キャンバス・油彩 額装
1979年作
右下にサイン、裏に署名・タイトル・年代
長谷川潾二郎鑑定登録委員会鑑定登録証書付
エスティメイト ¥1,000,000~1,500,000



 みなさまは、長谷川潾二郎(はせがわ・りんじろう)をご存じでしょうか?
赤い敷物の上で丸くなる愛猫タローを描いた《猫》で一躍脚光を浴びた画家です。

 この《猫》はかつて、『気まぐれ美術館』で知られる美術評論家、画商の洲之内徹氏のコレクションで、氏の没後にそのコレクションの一点として宮城県美術館に寄贈されました。それが2008年に書籍『洲之内徹が盗んでも自分のものにしたかった絵』の表紙になったことを機に画家自身にも注目が集まり、様々なメディアにとり上げられ、各地で展覧会も開催されました。

 長谷川潾二郎(1904-1988)は、北海道生まれ。ジャーナリストの父、後に作家になる兄弟たちに囲まれ、文化的に恵まれた環境で育ちました。1918年北海道庁立函館中学校に入学すると、油彩画を描き始めます。1924年画家を志して上京し、川端画学校に通いますが、数ヶ月で退学して独学で制作を続けました。その一方で、詩や小説を好み、探偵小説家・地味井平造として小説を発表するなど、作家としても才能を発揮しました。やがて絵画に専念し、1931年フランスに渡ります。翌年帰国し、4年連続で二科展に出品しましたが、その後は個展を中心に活動し、画壇から距離を置いた孤高の制作姿勢を貫きました。
 
今回の作品は、1979年(当時75歳)に制作された静物画です。潾二郎は「卓上の静物」という主題を好み、画業の後半を中心に繰り返し描きました。本作では、光を反射してつやつやと輝くポットやざらついた質感の卵、ふんわりとした目玉焼きを親密な眼差しで捉え、平明かつ温厚なリアリズムで描き出しています。身近なものに内在する目に見えない趣きや美を丁寧に掬い取り、自身の詩的世界を静かに表現した作品です。
 潾二郎は、とにかく遅筆で寡作だった、と言われています。6年間《猫》の右ひげを描けず、とうとうタローが死んでしまった話や、風景の土を描くのに10年以上を要したことなど、たくさんの逸話が残されています。この作品は、一体どれほどの時間をかけて描いたのでしょうか。作品が完成する頃には、目玉焼きはもう食べ飽きていたのかも…など、いろいろ想像してみるのも楽しいですね。

この作品は23日(水)からの下見会でご覧いただけます。
下見会・オークションスケジュールはこちら
みなさまのお越しを心よりお待ちしています。

(佐藤)

続きを読む →

新年明けましておめでとうございます

 新年明けましておめでとうございます。
本年もより良いオークションを目指し、社員一同頑張って参りますのでシンワアートオークションをよろしくお願いいたします。そしてまた、作品の情報、日々のあれこれなどをこのシンワブログで綴っていきますので、こちらもチェックしてみて下さいね。

 さて、お正月。一年のうちで一番華やかで、伝統文化を身近に感じる季節です。正月飾り、正月料理、そして羽子板、福笑いなどの正月遊び。旧年が無事に終わったことを喜び、新年が明けたことを祝う。隅から隅まで祝福気分を表現するために昔の人々は、語呂合わせを用いて縁起を担ぎました。
 たとえばおせち料理なら、昆布巻きは「喜ぶ」の「こぶ」から。また「子生婦」の当て字も使い子宝に恵まれるという意味も持たせています。他にも同じ子宝という縁起の意味では、ニシン(二親)の子、数の子などもあります。そのほか、「めでたい」から大黒様の持っている鯛の塩焼き。「まめに働く」ようにと黒豆。そして鏡餅の上に飾るだいだいには、「代々」子孫が繋がるという意味が含まれています。この鏡餅は、一月十一日または二十日の鏡開きまで飾られ、お汁粉やお雑煮などにして食されます。今年一年の無病息災を願い、お正月は終わるのです。鏡開きが二種類あるのは、松飾やしめ飾りが飾られている「松の内」という期間が地方によって変わるためです。松の内は大きく分けて七日か十五日に分かれています。関西方面では十五日が多いようです。ではこの七日に何をするかというと、正月飾りを外し、七草粥をいただきます。鏡開きと同じように、無病息災を願って食べられます。最近では、スーパーなどでも「七草セット」が売られていますね。お正月に関するグッズも年々増えて、年々現在の暮らしにあったものになっているように思います。鏡餅もプラスティックで作られていたり、しめ飾りも100円ショップで売られていたりと値段の幅も相当なものです。
しめ縄3

松飾りといえば、私の地元では変わった言い伝えがあり、門松を立てない風習があります。小学校に上がると習うのですが、「郷土かるた」というものをまず覚え、市の歴史、風習を学びます。そこで「松を立てない正月飾り」という「ま」の句が出てきます。そしてその句の意味は「まつはきらい」という絵本でさらに補足されています。
まつはきらい 文入2

 内容を簡単に説明しますと、市の中心地にある大国魂神社にまつわる言い伝えです。
 むかし、大国魂神社の明神様が八幡さまに誘われ、武蔵野の地を散歩しました。そのうち日が暮れて暗くなり、疲れた明神さまは座りこんでしまいました。八幡さまは泊めてくれる家を探してくると言って、東の方へ出かけていきました。そして良い宿を見つけたのですが、あまりにも居心地がよかったので明神さまを呼びには行かずそこに居座ってしまいました。そしてずっと待たされた明神さまは「待つのは、辛いなあ」と呟き、「待つは嫌い、まつはきらい」と独り言を言い続けました。ここでまた掛詞です。「待つ」と「松」を掛け、それ以来市内では松を植えてはいけない、といわれるようになったそうです。そして門松代わりに門竹が飾られました。今では門松を立てる家や企業も増えてきてはいますが、やはり神社周辺では少ないように思います。
門松2

茶席でも掛け言葉ではないにしろ見立ての美で松竹梅を取りそろえる事もあります。
梅の絵の軸に竹の茶杓、松をあしらった釜。更に釜の煮立つ音は松林をすり抜ける風のようだとして「松風」と呼ばれています。
 伝統を身近に感じる絶好の季節です。残る鏡開きまで行ってみると、一年を気持ちよく迎えられる準備が整うかもしれません!
ぜひ「お正月」を最後まで十分に堪能してみてください。

執筆者:E

続きを読む →

Christmas in Ginza 2012

先週の土曜日、BAGS/JEWELLERY&WATCHESオークションが終了し、これで2012年開催した25回のオークションが全て終了いたしました。ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。

さて、今年も残すところあとわずかとなりました。本年最後のブログは、昨年に引き続きこの時期街を彩る銀座界隈のイルミネーションをご紹介したいと思います。

mikimoto.jpg

まず初めに、昨年も取り上げたミキモトのジャンボクリスマスツリー。高さ10m、3000個のイルミネーションが輝くこのツリー、本店前に飾られるようになって今年で何と35年目!もはや銀座の冬の風物詩でもあります。中央にはミキモトらしく真珠ネックレスの装飾がツリーを彩っています。多くの人が集まるこのツリーを眺めながら、私もミキモトにあやかり、来年もよいジュエリーの出品がたくさん集まるよう願いをかけてまいりました。


hikarimichi.jpg

そのミキモト本店もある銀座中央通りと晴海通り沿いには、「GINZA ILLUMINATION(ギンザ・イルミネーション)2012 ヒカリミチ」と銘打たれ、約16万個ものイルミネーションが歩道を埋め尽くし銀座の夜を美しく彩っています。仕事中の移動で歩いているだけなのに、街の喧騒とこの光に包まれているとなんだか自然にクリスマス気分が盛り上がってきてしまいます。


Bvlgari.jpg

ミキモトのある4丁目から中央通りを京橋方面へ歩くと、反対側には今年で5周年を迎えたイタリアのハイジュエリーブランド(2011年よりフランスのLVMHグループの傘下となりましたが)ブルガリの旗艦店に、巨大な蛇が巻き付いています。この62mの輝く蛇、「セルペンティ(イタリア語で蛇の意)」と呼ばれ、ブルガリのアイコンモチーフでもあり、ブランドを代表するジュエリーのデザインとしてダイアモンドネックレスやブレスレットとしても高い人気を誇っています。


tanaka.jpg

さらに先へ進むと、2丁目にある田中貴金属には、今年もありました、純金のツリー!今年はウォルト・ディズニー生誕110周年を記念して製作された、その名も「ディズニーゴールドクリスマスツリー」。50のディズニーキャラクターを純金のプレートで形取り、ゴールドチェーンで飾られた3段回転式のこのツリー、総重量は40㎏で販売価格はなんと3億5千万円!!きらびやかに回転する様子を眺めながらその金額を思うと、別の意味で目が回りそうになりました。


marunouchi.jpg

最後にご紹介するイルミネーションは、銀座から少し歩いて丸の内へ。丸ビル建て替え以降、今や銀座に並ぶショッピング街となった丸の内仲通り。東京駅の復元工事も完了し、ますます賑わいを増しています。今年もいち早く10月からイルミネーションを点灯。こちらのイルミネーションは、実行委員会がオリジナルで開発した使用電力を従来の1/3に抑えたエコイルミネーションだそうです。
有楽町方面から東京駅方面を眺めると、丸ビルがシャンパンゴールドの光の向こうにそびえ立つのが見え、我々のオークションもこの光の道のようにもっともっと輝かねば、と少し気持ちが引き締まった気がしました。

このブログも、本年はこれが最後の更新となります。今年も週1回ペースで、つたない文章ではありますが主に美術に関する様々な内容の情報を発信してまいりました。今後も皆様に楽しんでいただけるよう執筆担当一同精進してまいりますので、2013年もシンワブログをご愛読の程、何卒よろしく願いいたします。

(平野)

続きを読む →

今週はBAGS/JEWELLERY & WATCHESオークションです

こんにちは。
先週の近代陶芸/近代美術パートⅡ(陶芸)オークションにご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。
12月に入り、まさに冬!といった寒い日が続くようになりました。寒さにめっきり弱い私には辛い季節の到来ですが、クリスマスからの冬休み、お正月とイベントが続く、賑やかな季節でもあります。
さて私は、冬休みを先取りして、先週フランスに行って参りました。日本と同じような気温のパリは、木々が黄色に色づき、とても美しい景観を作りだしていました。

IMG_1542_convert_20121204123916.jpg IMG_1557_convert_20121204123943.jpg

また一方、クリスマスに向けたイルミネーションも施され、シャンゼリゼは一層華やかさを増しています。
IMG_1731_convert_20121204124010.jpg IMG_1738_convert_20121204124053.jpg

外を歩けばその美しさに寒さもしばし忘れ、散歩を楽しんだり、長いこと立ち止まったりすることもしょっちゅうですが、体は確実に冷えてまいりますので、やっぱり寒い!!と感じたら美術館へ足を運びましょう。
フランスの美術館というと、ルーブル美術館、オルセー美術館、国立近代美術館が三大美術館として知られていますが、大きな美術館を巡るのは一日がかり。気分的にも準備が要りますよね。でもパリには、多様な趣を持った小さな美術館も数多くあります。中でも、サンドウィッチを持ちこんで、美しい庭で気ままなランチが楽しめるロダン美術館、独特な雰囲気をもつマレ地区の邸宅を改修したピカソ美術館、東洋の彫刻やレリーフが充実し、さながらテーマパークの中にいるような気分にさせられるギメ美術館などは私のお気に入りで、以前パリで暮らしていた頃は、その日の気分に合わせて気軽に訪れていましたが、とりわけ16区のマルモッタン美術館は一番のお勧めです。
marmottan1.jpg< マルモッタン美術館 外観>

マルモッタン美術館は、ブーローニュの森にほど近い閑静な住宅街に佇んでおり、モネの息子が多数、モネの作品を寄贈したことで有名です。モネの作品というと、オランジュリー美術館を思い浮かべる方が多いかもしれません。2000年から2006年の長きに渡る大改装によって、「陽光が降り注ぐ一室を『睡蓮』の壁画で飾る」というモネの晩年の夢を叶え、大きな話題になりました。でも実は、世界最大級のモネのコレクションを誇るのはマルモッタン美術館なのです。かの有名な『印象-日の出』もこの美術館のコレクションであり、館外不出のためここでしか見ることが出来ません。通常は地下が一室モネ専用の展示室となっていますが、先日は地下で別の展覧会が行われていたためか、モネの作品は一階の展示スペースに移されていました。そこでは、作品は透明のアクリル板にかけられており、漂っているように見える作品からは、それが有する風の流れや水の透明感、光の層が一層引き立つようでした。その中でも特に私の心に残っているのが『ルーアンの大聖堂』です。通路の突き当たり、緑の庭に面した大きなガラスの前のこの作品は、私が訪れたのがちょうど夕暮れ時で薄暗かったからでしょうか、スポットライトに淡く照らされ、優しく、しかし厳かに浮かび上がっていました。今回の訪問では、作品群の素晴らしさを改めて感じると共に、展示方法も美術の重要な要素だと改めて考えさせられました。マルモッタン美術館では館内撮影が禁止されているため、お見せできないのが残念です。美術館巡りで、こういった展示方法を含めて自分好みの場所を見つけていくのも楽しいですね。

ところで、ご案内が遅くなりましたが、忘れてならないのが今週末のBAGS/JEWERELLY & WATCHESオークションです!
今回は、際立った美しさを持つだけでなく、とっても貴重なTypeⅡBのダイアモンドが出品されます。
690.jpg
LOT690 ダイアモンド(TypeⅡB)
8.003ct D VVS2 蛍光性なし
エスティメイト¥30,000,000~¥40,000,000


このダイアモンドについて、ジュエリーコンシェルジュの原田信之さんもご紹介下さっています。

http://harada.ho-seki.com/archives/2012-11.html

こちらのダイアモンドは下見会でどなたでもご覧いただけます。滅多にないダイアモンドですので、この機会を逃さぬよう、是非足をお運び下さいね。
社員一同、皆さまのお越しを心よりお待ちしております。

下見会・オークションスケジュールはこちら

(執筆:N)

続きを読む →

12月近代陶芸/近代美術PartⅡ(陶芸)オークション開催!

こんにちは。
今週は近代陶芸/近代美術PartⅡ(陶芸)オークションが開催されます。
お客様からのご要望もあり、今回からカタログに重要無形文化財保持者(人間国宝)の表記を取り入れてみました。改めて見ると取扱い作家の多くが認定されていることがわかります。
 中でも一番多いのは「色絵磁器」保持者です。富本憲吉、加藤土師萌、藤本能道、十三代今泉今右衛門、そして十四代酒井田柿右衛門の五人です。今回もこれらの作家の作品が出品されます。中でも注目して頂きたいのが藤本能道の「草白釉釉描色絵金銀彩白鷺之図扁壷」です。
143閭ス驕点convert_20121126191215
とにかく大きい!扁壷でこれだけの大きさは、滅多にお目に掛かれるものではありません。能道はやはり筥や大皿が多いのですが、草白釉で両面に白鷺が配され、風景もしっかり描かれたものというのは珍しいです。初期のころは、面取の作風が多かったのですが、晩年になるにつれ、角が取れ丸みを帯びた形を作り出しています。この扁壷の丸みも美しい曲線を生み出しています。カタログではなかなかお見せしにくい部分ですので、ぜひ実物をご覧ください。


続いて十四代酒井田柿右衛門ですが、今回は4種類の草花文が出品されます。
さらに十二代からも含めますと十二代の花柘榴、十三代の山茶花文、秋海堂文、小手毬文と実にさまざまです。皆さんはどの花がお好きでしょうか?三代に渡る柿右衛門の草花の描き方の違いを見比べてみるのもおもしろいと思います。
3譟ソ蜿ウ陦幃摩闕芽干譁㍉convert_20121126191242

最後に富本憲吉の作品をご紹介します。
富本は、第一回重要無形文化財保持者に認定された陶芸家です。弊社近代陶芸の最高額落札作品は、富本憲吉の花瓶なのですが、そのような大作とは違い、今回は小品ながらも身近に使えることのできる作品がいくつか出品されています。煎茶器セット、中皿五枚組み、そして陶板です。そもそも「陶板」という言葉は富本が作った造語です。「白雲悠々」「風花雪月」、そして風景文という富本おなじみの図柄が揃いました。風に舞っているような軽やかな文字と、朴訥な温かい絵柄。日常的にお手元に置くならと考えながらご覧になってはいかがでしょうか。
蟇梧・逧ソ3譫喟convert_20121126191356

陶芸作品は、手で触れて感じることのできる美術品です。
 今回は326ロットとたくさんの作品が出品されています。ご自分のお気に入りを見つけるためにも、直に触れて作品を味わいながらお探しください。

執筆者:E

続きを読む →

比べてみる日・韓のお箸

こんにちは。
韓流という言葉が流行りはじめたのももうだいぶ前のことですね。今は韓流ドラマやK-Popにはまっている人に会うのもそんなに珍しくありません。シンワの中にも何人かいます。
それとともに韓国料理が好きになり、辛いものにも慣れてきたという人もかなり増えてきたようです。韓国出身である私ですが、近年韓国の文化や生活習慣などについての質問を受けることが多くなりました。その中で最近あった質問が「なぜ韓国のお箸は鉄なのか?」というわけで、今日は韓国のお箸についてお話してみようと思います。

皆さんのご想像のとおり、答えはズバリ「食文化の差」です。アジアの中でお箸を使用する国として日本・韓国・中国がよく知られていますね。そもそもお箸の文化は中国から韓国へ、そして日本へと伝わってきたのが定説のようですが、各国の食文化に合わせて形は変化してきました。

20121119-1.jpg
< 上から日本・韓国・中国のお箸>

日本の場合、明治以前は魚や野菜が主食であったことから、魚の身がきれいにとれるような短くて先のとがった形になったそうです。また他の国に比べて少食で、めいめいお膳で食事をとるスタイルであったことから、軽くて短いお箸がちょうどよかったのかもしれません。

中国は、昔から大家族が一緒に暮らす文化であり、家族みんなが大きなテーブルに円座して食事をします。その時、遠いところにあるものを取るためにはちょっと長いお箸が必要だったようです。また、油を使った料理が多い中国では、熱い揚げ物や炒め物の熱気が手に伝わらないような素材と長さのお箸が必要であったのだとも考えられますね。

韓国の食べ物は、唐辛子やにんにくなど、色や臭いが濃い食材を使うこともあり、色や臭いが付きにくくて、洗いやすいものでないときれいに長く保管するのが難しかった事もあり、鉄のお箸が広まったようです。割り箸でキムチを食べた後のことを思い浮かべていただくとわかりやすいかもしれませんね。
また、鉱業が昔から発達していたのも理由のひとつだそうです。

その他日本や中国との大きな違いは、お箸と一緒にさじを使うことです。食卓には同じ素材で作られたお箸とさじがセットで用意され、ご飯とスープはさじで食べるのが韓国の正しいマナーです。

20121119-2.jpg
< このような置き方です。>

素材には、真鍮・銀・ステンレスなどが使われます。真鍮は重くて管理や保管が難しいため、一般の家庭ではあまり使われていませんが、古くからの素材として高級店などでは今もよく用意されています。高級な料理をこのお箸でいただいたら昔の韓国の風情を感じられるかもしれませんね。
銀は一般の家庭でも比較的よく使われています。昔は王族の食器として使われていた銀ですが、現代では、新しい家庭の福を祈るという意味で、嫁入り道具のひとつとして用意するのが慣習にもなっています。
でも、やはり普段使いや普通のお店で使われているのは、断然ステンレス素材です。安価で、軽くて、管理しやすいという利便性は圧倒的ですね。

20121119-3.jpg
< 左からステンレス・銀・真鍮の順>

ちなみに、韓国では「金のさじ・箸を噛んで生まれた人」ということわざがあります。これはお金持ちの子供に生まれて何の努力もせずに豊かな人生を過ごす人に対するちょっと皮肉な言い方として使われたりもします。

(執筆:W)

続きを読む →