月別アーカイブ: 2009年1月

ご自慢の腕時計!

 今日は、この間あるお客様にうかがった腕時計に関する軽いエピソードから話を始めさせて頂きます。

 そのお客様がヨーロッパへのんびりした旅行に出かけた時の話です。ジーンズ姿で気軽にギャラリー回りをしていた時、ある立派なギャラリーに入ったところ、あまり丁寧ではなく、それに人を無視するような店員さんたちの態度に、少しお腹立ちになったそうです。

 言葉もうまく通じない状態だったので、怒ったりするのもなかなか難しかったようです。そこで、自分が無視されたりする存在ではない、という根拠を見せるものが何かないかと思った時、自分の腕につけていた有名な高級腕時計を思い出し、クルクルと上着の袖を巻くふりをしながらうまく見せることに成功したそうです。


 もちろんその後、ギャラリーの店員さんたちの態度は180°変わり、積極的に絵を見せてくれたり、丁寧な見送りを受けたりしたそうです。
 その話を伺った私は、そのようなご自慢の腕時計をお持ちのそのお客様も、そして、短い時間でその時計の価値に気付くことができたその店員さんも、両方ともスゴイ、と思ってしまいました。


 今回のJEWELLERY&WATCHESオークションには、この話のように誇れる立派な高級時計が多数出品されます。その中、今日ご紹介するLot 403, Lot399の腕時計の2点は、複雑機構という特別な機能をそなえたスペシャルな時計です。

 複雑機構には、さまざまな種類がありますが、そのほとんどがブレゲの創始者であるアブラアン・ルイ・ブレゲによって発明されたそうです。
 閏年でも狂うことなく日時を示す永久カレンダーや、時刻を鐘でならすミニッツリピーター、複雑機構の代名詞のようなトゥールビヨンなどが、すべてこのブレゲの発明です。彼はその功績により時計の歴史を200年も進化させたと言われています。

 今回出品されるロット403の「ブレゲ クラシック グランド コンプリケーション メンズ」は、そんな複雑機構がなんと三つも入っている最も特別な腕時計です.。ブランドによって異なりますが、複雑機構を二つ以上備えている時計のことをグランド・コンプリケーションと呼びます。
 その中、このブレゲには、トゥールビヨンに永久カレンダー、そして12時位置の日にちを指し示す針など、複雑機構の計三つが備えられています。複雑機構一つでもその生産は難しいとされているのに、それが三つも搭載されているなんて、とても贅沢な時計ですね。

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Lot403「ブレゲ クラシック グランド コンプリケーション メンズ」
落札予想価格 5,000,000~8,000,000円


 また、ロット399の「ブレゲ マリーン オーラ・ムンディ メンズ」についているワールドタイム機構もとても面白いと思います。
 ボタン一つで世界中の時刻に自動的に変わり、また同時に各都市の時刻も見ることができるという魅力的なセンスを持つ時計でございます。カシャっと音を立てて一瞬で時刻が変わるのを見ていると、まるで世界旅行をされているような気持ちになられるかもしれません。
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Lot399「ブレゲ マリーン オーラ・ムンディ メンズ」
落札予想価格 1,000,000~1,500,000円

 世界でも滅多に出ないような高級時計が多数出品される今回のJEWELLERY&WATCHESオークション、皆様、いかがでしょうか? 
 ぜひご自分の手で触っていただき、そのすごさを体感してください。

(執筆者:W)

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近代美術PartⅡ 下見会始まりました

 一昨日大寒を過ぎ、毎日天気も悪いのでますます寒く感じますね。でも天気予報によると、今年は最低気温が高いので例年の平均気温に比べるとそんなに寒い年ではないそうですよ。
先日のブログで「風邪などひいていらっしゃいませんか?」と書いたのに、私は早速風邪をひいてしまいました。みなさまはお気をつけくださいね。
 
 さて、ホームページのトップでもお知らせしておりますが、東京での近代美術PartⅡ下見会を、予定より早くオープンいたしました!いつものように下見会の模様をご案内いたします。

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↑ 1Fは日本画と版画を展示しています。
  今回は宝石・時計の下見会が別の日程になったので、いつもよりスペースがゆ
  ったりです。お目当ての作品も探しやすいかもしれませんよ。


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↑ B1Fは洋画、外国絵画、工芸のフロアです。
  以前こちらのブログで長谷川利行の作品をご紹介しましたが、今回は山口長男
  の水彩もたくさん出品されます。お好きな方は、近代美術に出品されるLot.22
  《組形》(油彩)と合わせてチェックしてみてください!


今日も近代美術PartⅡの出品作品から1点ご紹介します。

GALLE

Lot.721 ガレ《蘭文彫花器》
H30.4×W14.6cm
胴部に陰刻銘
エスティメイト \2,000,000.~3,000,000


 
エミール・ガレ(1846-1904)と彼が築き上げた工房がつくり出した逸品です。

 エミール・ガレはフランス東部、ナンシー生まれ。父親もガラス器の製造・卸売業を営んでいました。若い頃から、文学、哲学、植物学などを学び、1866年、マイゼンタールのブルグン・シュヴェーラー商会の工場でガラス技術を研修。(1885-1896年の間、この工場はガレのガラス器の大部分を製造することになりました。)
 1877年、父の会社の経営を引き継ぎ、ガラス器、陶器、家具の製造販売を手掛けます。1889年のパリ万国博覧会で、ガラス部門グランプリ、陶器部門金賞、家具部門銀賞を受賞し、世界中の注目と名声を博しました。1894年には、ナンシーに本格的なガラス窯を設置して「芸術と産業の融合」を理想に掲げ、自社内での一貫生産を始めます。当時流行したジャポニスムの影響が色濃く表現された作風で知られ、アール・ヌーヴォー、ナンシー派の指導者としても活躍しました。1904年に没した後も、会社は彼の精神とともに引き継がれ、1931年までガレブランドを冠した優美なガラス器を生産しました。

 植物に造詣が深かったガレは、たびたび草花をモティーフとしましたが、今回出品される《蘭文彫花器》は、大振りの蘭の花をまるでガラスに閉じ込めたかのような、見事な総手彫りの作品です。ガレの鋭い観察力と巧みなグラヴュールにより、蘭を立体的に描出し、折り重なる花びらや葉の陰影、遠近などを繊細に表現しています。それゆえに、蘭がそこに咲いているかのような存在感や凛とした気品がもたらされているのでしょう。また、全体に、青、緑、茶のサリシュールを大胆に施した緑の透明地にべっ甲色のガラスを被せることにより、微妙に変化する色彩の美を楽しむことができる作品です。


※ 用語解説
グラヴュール… 西洋式の彫刻技法。モティーフをレリーフ上に彫り出すこと。
サリシュール… ガラス素地に、緑青色に発色する酸化銅のような金属酸化物の
          粉末をまぶしつけ、部分的に斑紋を生じさせる技法。
    
                                   (執筆:S)

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棟方志功と谷崎潤一朗

 2月1日に開催されるオークションは、近代美術・近代美術PartⅡ、ジュエリー&ウォッチが同日開催されます。
 ここに出品される作品から、今日は棟方志功をご紹介します。


 棟方志功は1903年に青森で生まれ、小学校を卒業した後、働きながらも画家の志を捨てられず上京。独学で洋画を学びました。最初は油絵を制作していましたが、1925年、川上澄生の版画に感銘し版画制作を始めました。
 民藝派とも言われる河井寛次郎、富本憲吉らと知り合い、版画の裏から彩色を施す裏彩色を始めました。
 油絵、板画、肉筆など多種多様な制作方法と仏教、神話、文学作品など多種多様なモティーフで何千とも何万ともいわれる作品を創りあげました。


 今回出品されるLOT32《颯子(さつこ)の柵》は、谷崎潤一郎作「瘋癲(ふうてん)老人日記」の挿画として制作された作品です。1962年に初版が発行され、これによって谷崎は毎日芸術大賞を受賞しています。
 本作品で表現されている女性は、「颯子」という、主人公の老人・卯木督助(うき とくすけ)が惚れ込んだ息子の嫁の姿です。富と時間を豊かに併せ持つ77歳の老人は、颯子の脚に性的な魅力を感じ、妻の目を盗んでは、踊り子上がりで驕慢(きょうまん)な嫁から間接的に快楽を得ようとします。颯子もそれを利用して督助から宝石などを得、二人の共犯関係は生と死の対決へと向かいます。

 谷崎文学を象徴し、三島由紀夫からも称賛されたこの作品は、志功の装丁・挿画によって豊麗な官能美・古典美がいっそう高められたのです。
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 この他、LOT29《仰向妃の柵》、LOT31《振向妃の柵》は、岡本かの子が戦前、雑誌『女人芸術』の創刊号に発表した詩「女人ぼさつ」をもとに、棟方志功が制作した作品で、《女人観世音板画巻》の一つです。「足裏の土踏む力 女人われこそ観世音ぼさつ」という詩が書かれています。
 この詩に惹かれていた志功は、昭和24年に初めてこの作品を制作し、これによって昭和27年スイス・ルガノ国際版画展で優秀賞を受賞しました。「世界のムナカタ」となるきっかけとなった作品と言えるでしょう。


 御紹介した作品は、下見会場で実際にご覧頂くことができます。ぜひご来場をお待ちしております。

〈名古屋下見会〉
会期:1/20(火)・1/21(水) 10:00~18:00
会場:DAITEC SAKAE 6F クリエイトホール
展示作品:近代美術・JEWELLERY & WATCHES

< 大阪下見会〉
会期:1/23(金)・1/24(土) 10:00~18:00
会場:シンワアートオークション大阪営業所
展示作品:近代美術・JEWELLERY & WATCHES

〈東京下見会〉
近代美術PartⅡ: 1/20(火)~1/24(土) 10:00~18:00
※ カタログ記載の日程より、急きょ早めてオープンすることにいたしました!また、ご要望がありましたら、近代美術下見会中(~2/1)も作品をご覧いただけますので、会場にてスタッフまでお気軽にお声掛けください。

近代美術・JEWELLERY & WATCHES : 1/28(水)~1/31(土) 10:00~18:00
                         2/1(日) 10:00~12:00
会場:シンワアートミュージアム(当社1階)

オークション
日時:2/1(日) 14:00~(JEWELLERY & WATCHES・近代美術PartⅡ)
          17:00~(近代美術)
会場:丸ビル7階 丸ビルホール


(執筆者:I)

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名古屋&大阪下見会 開催いたします

 いよいよ寒さも厳しくなってまいりました。みなさま風邪などひいていらっしゃいませんか?
冬の乾燥は、私たちだけでなく絵画にとっても大敵です。お客様の大事な作品をお預かりしている当社では、加湿器が24時間社内のあちらこちらで活躍中です。絵画や陶芸をお持ちのみなさまも、この季節は特に保存にお気をつけくださいね。

 年末から2/1のオークションの出品作品をご紹介してきましたが、もうカタログはお手元に届きましたでしょうか?先日のブログでもお話ししました通り、今回はシンワ初めての試み、近代美術/近代美術PartⅡ/JEWELLERY & WATCHESの3ジャンル合同オークションとなります。いよいよ来週からは、下見会週間に突入いたします。名古屋、大阪、東京と出品作品が巡回いたしますので、ぜひぜひお近くの会場までお越しください!


〈名古屋下見会〉

会期:1/20(火)・1/21(水) 10:00~18:00
会場:DAITEC SAKAE 6F クリエイトホール
展示作品:近代美術・JEWELLERY & WATCHES


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↑ 前回の下見会風景です。
  今回は2回目となります。名古屋のみなさま、よろしくお願いいたします。


〈大阪下見会〉

会期:1/23(金)・1/24(土) 10:00~18:00
会場:シンワアートオークション大阪営業所
展示作品:近代美術・JEWELLERY & WATCHES


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↑ 大阪営業所での下見会風景です。
  大阪のみなさま、いつもご来場ありがとうございます。  

 名古屋と大阪では、近代美術とJEWELLERY & WATCHESの作品をご覧いただけます。
近代美術の出品作品は、当ブログやホームページ内でご紹介しました下村観山、山口長男、松本竣介、長谷川利行のほかに、杉山寧、サルバドール・ダリなど、個性豊かなラインナップとなっております。
 JEWELLERY & WATCHESも、カルティエやハリー・ウィンストンのダイアモンドネックレス、オーデマ・ピゲやブレゲの時計など、上質なアイテムが揃いました。宝石と時計はすべて実際にお手に取ってお試しいただけますので、お気軽にどうぞ。


〈東京下見会〉

近代美術PartⅡ: 1/19(月) 14:00~18:00
1/20(火)~1/24(土) 10:00~18:00
 ※ カタログ記載の日程より、急きょ早めてオープンすることにいたしました!また、ご要望がありましたら、近代美術下見会中(~2/1)も作品をご覧いただけますので、会場にてスタッフまでお気軽にお声掛けください。

近代美術・JEWELLERY & WATCHES
: 1/28(水)~1/31(土) 10:00~18:00
  2/1(日) 10:00~12:00
会場:シンワアートミュージアム(当社1階)



〈近代美術/近代美術PartⅡ/JEWELLERY & WATCHES オークション〉

日時:2/1(日) 14:00~(JEWELLERY & WATCHES・近代美術PartⅡ)
          17:00~(近代美術)
会場:丸ビル7階 丸ビルホール


みなさまのお越しを心よりお待ちしております。

                                     (執筆:S)

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ART@AGNES 2009

 今年で五回目となるアートイベント、「ART@AGNES アグネスホテル アートフェア 2009」に参加してきました。毎年大好評のこのアートフェア、今回で惜しまれながらも最終回となりました。

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 約30件の現代美術ギャラリーが、神楽坂のホテルの一室を利用して作品を展示するこのイベントのスタイルは、多くの話題を集めました。
 活気あるギャラリーの活動に短時間で触れることができ、アートを購入するという刺激的な楽しみを身近に感じることができて、参加者にとってもとても楽しいものでした。


 昨年はオープン前日のVIPプレヴューに、行列ができるほどの人気で、シンワから参加させて頂いた社員も進むのが大変だったと驚いていましたが、今年も小雨が降りしきる中のプレヴューだったにも関わらず、この時点で大勢のお客様で会場は賑わっていました。
 今回は入場の人数が限定されていたため、関係者はエントリーチケットを入手するのに苦労したようです。
 
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 展覧会のオープニングプレヴューに行くと、まだ乾いていない油絵の、オイルの匂いが漂っていることがありますね。今回のイベントでもあちこちの部屋からオイルの香りが・・・。ギャラリーの方に「良いオイルの香りがしますね」と声を掛けると、「苦手な方もいらっしゃるんですよ」と笑っていらっしゃいました。


 美術館やギャラリーに展示されていると、作品の力で空間が満たされている感じがして、生活空間に設置された時が想像できなかったりしますよね。でも、ホテルのベッドサイドに彫刻や絵画が置かれた状態だと、イメージが沸いてきます。

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 あるギャラリーでは、新年に福をお裾わけ、というコンセプトで、福袋を販売していました。行列ができる人気ぶりで、私もワクワクしながら1点購入させて頂きました。
 中には、販売価格の数倍の価値があるグッズが!「福」と元気を頂きました!
 思えば、アートを買う喜びは、「お得」という価値観とは切っても切り離せないものかもしれませんね。

 今年も元気に様々なアートイベント情報をお届けしていきますので、ご期待下さい!

(執筆者:I)

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謹賀新年

新年あけましておめでとうございます。
本年も、引き続き弊社をご愛顧いただけますようお願い申し上げます。

世相を反映してか初詣の参拝客が常にも増して多い、
というニュースも流れていたこのお正月、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
私もしっかり参詣し、一年の無事を祈って参りました。

さて、昨年に引き続き、2月1日に開催するオークションについてご紹介いたします。
皆さまお気づきかとは思いますが、実は今回のオークション、ジュエリー&ウォッチ / 近代美術Part2 / 近代美術という3つのセールを一日でお楽しみいただくことができるのです。
杉山寧の優品、西洋骨董、ジュエリー・時計まで幅広い作品が一堂に会しますから、今まで参加されたことのないジャンルの逸品と出会えるチャンスかもしれません。

カタログは今週9日に完成予定です。それまでは、このブログで出品作品をお楽しみくださいね。
本日は、長谷川利行の作品をご紹介いたします。

りこう1
長谷川利行「裸婦半身図」
23.5×18.5cm / ボードキャンバス・油彩 額装
落札予想価格:50万円~80万円<近代美術オークション出品>


東京の下町を放浪しながら絵を描いた長谷川利行は、裸婦像も数多く制作しています。フォーヴィスム風の作風で知られる利行ですが、1930年代後半に、街で行き倒れてからは特にタッチを主体とし、狂わしいほどに衝動的な画風を展開しました。様々な色彩がキャンバスに散る本作品においても、利行が猛烈な勢いで筆を走らせたことが窺えます。タッチに関心が置かれ、フォルムはその中に溶け込むようですが、裸婦の上半身には鮮やかな色彩を用いて骨格をしっかりと捉えています。
利行がこの裸婦に魅力を感じ、「描きたい」と強く惹きつけられたことを想像させる作品です。

長谷川利行の作品は当社のオークションにもたびたび出品され、そのたびに多くのお客様を惹きつけてきました。なかでも今回は、Part2・近代美術オークションに併せて8点が出品されます。先ほどご紹介した作品は近代美術オークションに出品されますが、Part2オークションに出品される7点も、小品ながら画家の魅力を堪能できること間違いなしです。

りこう2
長谷川利行「上野駅前車坂附近」
16.0×23.5cm / 紙・水彩 額装
落札予想価格:40万円~60万円<近代美術Part2オークション出品>


この機会に是非、激しさの中に静かな詩情を湛えた利行の作品をご覧ください。

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