雪が降ったり春のように暖かかったりと、最近不安定な空模様が続きますね。
今日もまた雨ですが、明日はよいお天気だそうです。
今東京はちょうど梅が見ごろなので見に行こうと思いながら、なかなかお天気と予定が合いません。雪が降る中で梅を見るのもよいかもしれませんが…。梅は桜ほどはなやかではありませんが、春の到来をいち早く感じられてすてきですよね。銀座周辺では皇居や浜離宮がきれいに咲いているようです。みなさまも晴れの日にはお近くの公園に行ってみてはいかがでしょうか。
さて、先週から今週にかけて、大阪と名古屋で下見会を開催させていただきました。会場まで足を運んでくださったみなさま、どうもありがとうございました。来週はいよいよ東京でのパートⅡの下見会が始まりますので、ぜひぜひお越しくださいね。
では、3/21の近代美術オークションの出品作品からおすすめの作品を1点ご紹介いたします。
(おもて)
(うら)
Lot.38 松本竣介《建物と人》
紙面:27.0×36.7cm 画面:26.2×35.9cm
紙・インク、木炭 額装
1939年作
右下にサイン・年代
松本竣介展出品 1986年(東京国立近代美術館)
エスティメイト ¥2,300,000 ― 3,000,000
年末にも松本竣介の作品をご紹介しましたが、今回は街をモティーフとした竣介らしい作品が出品されます。この作品をもとに制作した油彩画は代表作の一つなので、展覧会でご覧になったことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。
松本竣介は、1912年東京生まれ。少年時代に転居した岩手で、病のため聴力を失ってしまいます。しかし、それがきっかけで「見ること」に没頭し始め、17歳で画家を目指して上京。太平洋画会研究所では、靉光や麻生三郎らとともに制作に励み、ルオーやモディリアーニなどパリの画家たちに影響を受けながら、生涯のテーマとなった都市の景観に魅せられていきました。また、自宅を「綜合工房」と称して随筆・デッサン誌『雑記帳』を刊行し、美術雑誌『みづゑ』に論文を発表するなど、社会への発言を積極的に続けました。日中戦争から第二次世界大戦へと続く暗い時局の中で、政治的イデオロギーからの芸術の自立を、ヒューマニズムの立場で訴え続けた画家です。
1939年作(当時27歳)の本作品は、ビルが建ち並ぶ都会の風景とそこに生きる人々の姿を、モンタージュの手法を用いて構成したものです。第25回二科展出品作《街》(1938年作・大川美術館蔵)から始まり、1940年にかけて制作された「街」シリーズの一点です。本作品を制作した翌月には、これをもとに同じタイトルの油彩作品を制作し、それは現在、岩手県立美術館に所蔵されています。
「図版」
《建物と人》 1939年作 岩手県立美術館蔵
(※図版は掲載許可の期間が終了したため削除させて頂きました。)
油彩の作品では、深く沈んだブルーが豊かな詩情を漂わせています。
ご覧の通り、本作品を描いた段階で、構図はかなりの部分が決定していたことが窺えます。
インクと木炭で描いた本作品では、行き交う恋人たちや働く人々など、都会に生きる人間の孤独や哀歓を掬い取り、彼らの心情に寄り添うようにモノクロームの線を滲ませています。また、線の繊細さや木炭による混沌としたニュアンスを残すことにより、作品は素描の魅力に富み、竣介の切ないほどの抒情に溢れています。
裏面には鉛筆によるデッサンの女性像が描かれています。表面のような風景を描く一方で、竣介は次第に人物画や自画像に強い関心を抱くようになりました。こうした人物画は、竣介がヨーロッパの画家たちから受けた影響がしばしば色濃く表現されています。本作品の正面を向いた女性の佇まいや、キュビスム的な構成が、竣介が私淑したモディリアーニやピカソの影響を窺わせます。
≪東京下見会日程≫
近代美術PartⅡ 3/11(水)~3/14(土) 10:00~18:00
近代美術・ジュエリー&ウォッチ 3/18(水)~3/20(金) 10:00~18:00
3/21(土) 10:00~12:00
本日ご紹介した松本竣介は、3/18より展示いたします。
みなさまのご来場を心よりお待ちしております。
(執筆:S)
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