月別アーカイブ: 2013年7月

放浪の画家・山下清の貼り絵-《桜島》

こんにちは。
梅雨明け以来、毎日猛暑日が続きますね。
今週の暑さはやや控えめという予報ですが、日中外出される方はくれぐれも熱中症にご注意ください。

さて、そんな暑さの中、先週の近代美術PartⅡ下見会にお越しいただいた皆様、ありがとうございました。
今週の20日(土)は近代美術/近代美術PartⅡオークションを開催いたします。
今回も出品作品の中から一点ご紹介いたします。


【オークション終了につき、作品の画像は削除させていただきました】


Lot.80 山下 清 《桜島》
45.5×53.0cm
貼り絵 額装
左横にサイン
山下清鑑定会鑑定書付
「生誕80周年記念 山下清展」(2001年・大丸ミュージアム)出品
エスティメイト ¥4,000,000~7,000,000



「裸の大将」でおなじみの山下清の作品です。
ドラマは見たことあるけど…という方のために、プロフィールを簡単にご紹介します。

 山下清(1922-1971)は東京都浅草区(現在の台東区)生まれ。3歳のときに患った大病がもとで軽い言語障害と知的障害になりました。12歳で千葉県の養護施設・八幡学園に入園し、授業の一環として始めた貼り絵に才能を開花させていきます。1937年早稲田大学で開かれた学園の子供たちによる展覧会で注目を集め、1939年には個展を開催。これが大きな反響を呼び、多くの画家や文学者たちから賞賛を受けます。1940年に初めての放浪の旅へ出て、その後も繰り返し日本中を旅しました。1949年には点描風の油彩画の制作を開始。1961年初のヨーロッパ旅行へ出かけます。才能が認められるにしたがって注目を集め、生前に山下を主人公とした映画も制作されました。49歳で亡くなった後も、その作品と「裸の大将」と呼ばれる親しみやすいキャラクターは多くの人に愛されています。

 1951~54(昭和26~29)年にかけて、山下は放浪の旅の途中で鹿児島を訪れました。桜島を題材とした本作品は、その際のスケッチをもとに制作されたものでしょう。山下は記憶力が大変優れており、一度見たものをはっきりと覚えていることができたため、たとえ数年前に見た風景であっても今目の前にある風景のように鮮やかに表現することができたそうです。そのため、こうした貼り絵作品は、旅先ではなく放浪生活を終えて学園に戻った後に制作されました。

 本作品では、鹿児島の市街から錦江湾(鹿児島湾)を隔て、噴煙を上げる桜島を望む風景を描いています。ご注目いただきたいのは貼り絵の緻密さ、それに相反するようなスケール感です。まるで油彩画の点描技法のように小さな紙片を規則正しく並置し、この雄大な風景を表現した点は本当にお見事!としか言いようがありません。

よく見ると前景の家々が立体的に表わされており、これが画面にいっそう奥行きをもたらしていることがわかります。
【オークション終了につき、作品の画像は削除させていただきました】
(拡大図版。屋根瓦や窓の枠が立体的になっています。)
 よく晴れた日に眺めた桜島の美しさと満ち溢れるようなエネルギー、それらに抱いた感動を生き生きと表わす一方で、画面構成においては実はとてもクールに計算していたのかもしれません。山下の「貼り絵」の魅力が存分に発揮されたとても優れた作品です。

こちらの作品は本日からの下見会でご覧いただけます。
下見会・オークションスケジュールはこちら

皆様のお越しを心からお待ちしています。

(佐藤)

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先週の陶芸オークションにお越しいただいた皆様、誠にありがとうございました。
さて、7月に入りました。梅雨が明ければ夏本番を迎えますが、汗ばむこの季節、気をつけていただきたいのが金属アレルギーです。
人間にはもともと、自分の体を構成しているものとは異なったものを排除して、自分の体を健康に保とうとする仕組みが備わっています。異物が侵入した場合、普通は吸収され腸などを経て排泄されますが、何らかの理由で有害物質が入り、リンパ球がその物質を「排除すべき異物」と判断すると、リンパ球はその有害物質を攻撃し、死滅させ液体にします。これが皮膚表面に小さな水庖として現れ、かゆくなるのが「かぶれ」です。更に、リンパ球がその有害物質を覚えていて、再度同じ物質が侵入した時、直ちに過剰な拒絶反応を起こすようになることをアレルギーといいます。一度アレルギーになってしまうと、ほとんど治ることがありません。そして、アレルギーを起こす物質をアレルゲンといいますが、アレルゲンの量がほんのわずかでも拒絶反応を起こしてしまいます。

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金属は普通、水には溶けませんが、汗や体液(ピアッシングなどの傷口から出ます)には極微量に溶ける場合があります。これを金属のイオン化といいます。金属イオンは体内に取り込まれ、体の蛋白質と結合します。人によっては、この結合物質が身体の方で異常な物と認識されます。そのため「かぶれ」や「炎症」が起こり、一度炎症が治っても、同じ金属が触れる度に症状を繰り返します。これが、金属アレルギーです。

身の回りの金属で、金属アレルギーを起こす可能性のあるものは20種ほど知られています。そのうち、水銀、ニッケル、コバルト、クロム、パラジウムが、パッチテスト反応が高いとの報告があります。水銀は装飾品に使われることはまずありませんので問題外として、ニッケルとパラジウムは、知らず知らずのうちに身につけている可能性が高い金属です。
現在ニッケルに関しては、(社)日本ジュエリー協会が、ピアスアッセンブリー(針、キャッチ及び、耳たぶに直接接する部分)にはニッケル含有金属を用いないよう、会員メーカーに働きかけています。ただし、ピアス以外のジュエリーで用いるホワイトゴールドには、割り金として微量のニッケルが使用されている場合があります。同協会では、ピアスアッセンブリー以外のニッケルの使用制限は設けていません。ニッケルが全面的に使用禁止であるとの間違った噂により、使用が避けられるようになったのも事実ですが、ホワイトゴールドでは特に、硬さ、ばね性、色調を求めるために、ニッケルの特性を活かすことがあります。また、ピアスでも、海外のものにはニッケルが用いられているものが稀にありますのでご注意下さい(ヨーロッパにもニッケル溶出率での使用制限はあります)。
そして、ニッケル以上に私たちが接することが多いものが、パラジウムです。一般にはあまり馴染みのない金属のように思いますが、実は大変白くて美しいということで20年ほど前に流行った金属です。価格が暴騰したことや、パラジウムによる公害が報告されたことで、ジュエリーに一定量以上を使うことははばかられるようになったとのことですが、今現在でもプラチナの割り金としてパラジウムは使われています。また、前出のホワイトゴールドに、ニッケルの代わりとして使われることも多い金属です。割り金として少量使う事で、見た目により白く、美しい輝きが出せるということから、用いられているようです。
また、非常に少ない割合ですが、プラチナや金そのものに対してアレルギーを示す方もいらっしゃいます。

人によってアレルギー反応を起こす金属が違いますし、実際何の金属が原因でアレルギーが起きているのかは調べてみるまで分かりません。肌が弱く心配な方や、何らかのアレルギー症状が見られた方は、早めに病院へ行き、パッチテストを受けることをお勧めします。アレルギー反応が見られた金属を避けてジュエリーを選ぶことで、より安全に身につけていただけることと思います。商品によっては、「ニッケルフリー」「ノンニッケル」「パラジウムフリー」などの表示があったり、使用している金属が明記されているものがありますので、そういう物を選ばれると良いですね。そして何より、ジュエリー自体を清潔に保っておくことが、金属のイオン化を防ぎます。夏場は特にお手入れには気をつけて、ジュエリーを楽しんで下さい。
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