月別アーカイブ: 2009年12月

年末年始おすすめ展覧会

いよいよお正月ですね。
今年一年、シンワブログをご愛読いただきました皆様、本当にありがとうございました。

 せっかくの長いお休み、楽しくエネルギーを充電して新年を迎えたいですね。
 今日は、お仕事がお休みのあいだに美術館でも行こう、とお考えの方のために、お勧めの展覧会情報をご紹介します。
 名画を見たり、若手の作品に触れたりして、気持ちの充電もできたらいいですね。

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<展覧会情報>

1.お正月からアート鑑賞!
 東京国立近代美術館、ブリヂストン美術館は1月2日(土)AM10:00から開館しています!
  東京国立近代美術館「ウィリアム・ケントリッジ 歩きながら歴史を考える そしてドローイングは動き始めた……」
  1月2日(土)~2月14日(日)
 
  ブリヂストン美術館「安井曾太郎の肖像画」
  開催中~1月17日(日)
 安井ファンの方は必見です。《金蓉》は、モデル小田切峯子さんの写真と並べられています。


2.美しいコンテンポラリーアートで癒されたい
  資生堂ギャラリー 「第4回shiseido art egg 曽谷朝絵展」
  1月8日(金)~1月31日(日)
 淡く透き通るような色彩に癒されます。


3.やはり名画こそ見たい
  国立新美術館「ルノワール—伝統と革新」
  1月20日(土)~4月5日(月)
 《レースの帽子の少女》《ブージヴァルのダンス》ほか80点が揃います。(※開催は1月20日(土)からです。)

  京都国立博物館「THE ハプスブルク」
  1月6日(水)~3月14日(日)
 東京で見逃した方、京都でならまだ間に合います。


4.ミュージアムついでに新春のお買いもの!
  三菱一号館美術館「竣工記念展 一丁倫敦と丸の内スタイル展」
  開催中~1月11日(月)
 今話題の丸の内ブリックスクエアに隣接している三菱一号館美術館。どちらも2日から開いています。
 美術館の正式なオープンは4月ですが、今から竣工記念展が見られます。

  渋谷区立松濤美術館「没後90年 村山槐多 ガランスの悦楽」
  開催中~1月24日(日)
 東急百貨店本店の先にあります。槐多作品を150点集め回顧する展覧会。※新春は4日(月)からです。


5.時間があるときに足を延ばして美術館
  川崎市岡本太郎美術館「対照 佐内正史の写真」
  開催中~1月11日(月)
 700点の写真を展示。手にとって見ることができます。こちらは「TAROブレンド」が飲めるカフェや、ショップも 面白いですよ。

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 待ちに待った冬休み、ご家族との楽しいひと時をどうぞ健やかにお過ごしください。
 来年もまたシンワアートオークションをよろしくお願い申し上げます。

(井上素子)

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via art 2009

メリークリスマス!
イヴの今日はいかがお過ごしでしょうか。

先日当ブログで告知しました「via art展」がいよいよスタートしました!
展示と22日のオープニングに行われた授賞式やパーティの模様をご紹介します。


まずはエントランスを入って1F。
例年はペインティングが多い印象ですが、今年は大型作品や映像作品、インスタレーションが目立っています。

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増永七生さんの巨大木版《マスナガスポーツ~妊娠~》(写真左奥)はすごいインパクトです。つい細部まで熟読してしまいました。


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とっても気になったのがこちら。
太田祐司さんの《半馬博物館分館》です。展示スペースにオリジナルの「半馬博物館」を設置。収蔵品?をいろいろ展示しています。
写真は、絶滅してしまったという「UMA」のミイラ。かなり精巧なつくりです。


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今回一番大きな作品はこちら。
蔭山忠臣さんの《GO!GO!マイルーム 漢は自家発電》です。
ワンルームの部屋です!!

失礼してドアを開けると・・・、
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暗がりに自転車が!!
部屋の中が暗いのは、この自転車をこぐことによって、部屋の電気がつく仕組みになっているからなんです。
このときはお留守でしたが、展示期間中は自転車をこぐ蔭山さんにきっと会えますよ。


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B1Fは平面作品を中心に展示しています。

こちらでは各賞の授賞式とパーティーが行われました。
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(左)審査員賞、KURATA賞の受賞式     (右)オープニングパーティー

今回も各賞のほかに観客賞が設けられています。ご来場の際は、お気に入りの作家さんにぜひご投票ください。どの作家さんがお客様の一番人気だったか、楽しみですね。
連日アーティストトークなどのイベントも開催しておりますので、まだご覧になっていない方はぜひお越しください!
みなさまのご来場、心よりお待ちしています。


via art 2009
会期:開催中~12月26日(土) 10:00~18:00
会場:シンワアートミュージアム 
    東京都中央区銀座7-4-12 ぎょうせいビル1F
お問い合わせ:info@viaart.jp
公式ホームページ:http://www.viaart.jp


(執筆:S)

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CCAA中国現代芸術賞

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日本では現代アートや若手アーティストを対象にした美術賞が多数開催されており、アーティストの登竜門として知られていますが、中国においても現代アートを対象とした中国現代芸術賞(CCAA Chinese Contemporary Art Awards)という芸術賞が開催されています。今年は評論部門が行われ、先日その受賞者が発表されました。

中国現代芸術賞とは 1997年、元在中国スイス大使、実業家のウリ・シグ(Uli Sigg)氏により独立した非営利団体として設立され、翌年第一回中国現代美術賞が開催されたのを機に、傑出した活躍を見せる芸術家に隔年で賞が贈られてきました。2007年に美術評論家賞が設立されてからは、アーティスト部門と評論部門の二つの部門が隔年で開催されています。

創立者のウリ・シグ氏は1995年から4年にわたる在中国スイス大使を機に中国美術の収集を始め、世界有数の中国現代美術を所蔵しています。ウリ・シグ氏は「中国の芸術文化に貢献した人物」として知られており、中国の現代アートが比較的まだアンダーグラウンドな存在であった頃から中国の現代アートに目を向け、それらをコレクションしてきたそうです。そして、中国の現代アートを世界へと広め、中国人アーティストを国際的な舞台へと導く架け橋となるべく賞が設立され、アーティスト部門に関しては現在、終身成就賞、最優秀芸術家賞、最優秀若手芸術家賞の3つの部門が設けられています。後者2つの賞は、中国現代芸術賞開催年次に至る過去2年の業績に基づいて審査されており、受賞者には賞金および制作費用を支援し、また展覧会への出品やカタログ掲載の機会が与えられています。

昨年は終身成就賞に艾未未(アイ・ウェイウェイ Ai Weiwei)、最優秀芸術家賞にリュウ・ウェイ(Liu Wei)、最優秀若手芸術家賞に曾御鉄(ツォン・ユーチン Tseng Yu-Chin)が選ばれ、それに付随する展覧会が北京のUCCA(ユーレンス現代美術センター)と上海のBound18クリエイティブセンターで開催されました。そのほか、これまでの受賞者には、周鉄海(チョウ・テイハイ Zhou Tiehai)や、現在原美術館でも個展が開催されている楊福東(ヤン フードン Yang Fudong)、中国の若手女性アーティストとして活躍する曹斐(ツァオ・フェイ Cao Fei)等が受賞しており、受賞者は現在、アートシーンにおいて国際的な評価を高めています。

一方、先日の香港クリスティーズでも中国の現代アートの高額落札が話題になっていたように、ここ数年、中国の現代アートに関心を抱く人やコレクターが増加している中、評論に関しては発展途上であり、作品の評価はマーケットに依存しているのが現状です。そのような中、独自の分析と評論が不可欠であると中国現代美術賞評論家賞が設立されました。この賞は、中国現代アートの現状を中心とした独創性のある分析と評論であることを基準に設け、論文のアウトラインのみを公募しています。

第2回目となる今年の評論賞は、27人の応募者から中央美術学院美術館学術部所属の王春辰(Wang Chunchen)が選ばれました。王春辰は研究論文「社会に介入する芸術―新しい芸術関係」を完成させる研究費として10,000ユーロを獲得、その著作は2010年にCCAAにて出版されることが決まっています。論文では、多数の芸術家が作品に日常の社会生活を投影させ、現代の政治及び芸術的規範を問題提起している点について考察しており、中国現代アートの現状に関連性があり、構成や言語の面においても適切であるとすべての評議委員の称賛を得たとのことです。

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今回の評議委員は中央美術学院副院長であり芸術家の徐冰(Xu Bing)氏、中国美術学院教授邱志傑(Qiu Zhijie)氏、雑誌『アート・イン・アメリカ』シニアエディターであるリチャード・バイン(Richard Vine)氏、CCAA創設者、ウリ・シグ氏の4人で構成され、ディレクターは元森美術館のシニアキュレーター、金善姫(キム・スンヒ)さんが務めています。金善姫さんは韓国人でありながら、欧米や日本のアート業界での豊富な経験を持ち、ここ数年は上海を拠点に活動されており、「中国においてこのような賞を立ち上げ、運営していくことは決して簡単なことではありませんが、発展途上だからこそやらなければならない」といいます。

今後も継続的に開催される予定だという中国現代芸術賞。この展覧会や出版物を通して、現在の中国においてどのようなアーティストが評価され、また評論家がどのように中国の現代アートを見ているのかを知ることができるでしょう。
(執筆:M)

中国現代芸術賞
http://ccaa-awards.org/ (中国語・英語のみ)

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「ヤン フードン―将軍的微笑」展@原美術館


Yang Fudong, The General’s Smile, multiple-channel video installation, 2009

12月19日(土)より東京の原美術館にて、近年国際的な活躍が目覚しい中国の映像作家、楊福東(ヤン フードンYang Fudong)の日本における初個展が開催されます。

楊福東は1971年北京に生まれ、杭州の中国美術学院絵画科を卒業後、現在は上海を拠点に制作をしています。写真や映像作品で注目され、2001年の横浜トリエンナーレの際、中国国外で作品を発表したのを機に、2002年の上海ビエンナーレ、ドクメンタ11、2003年、2007年のヴェネィツア・ビエンナーレに出品するなど、国際的な活躍の場を広げています。2004年にはヒューゴ・ボス現代美術賞を受賞、また同年、中国現代美術賞(CCAA)においても賞を受賞し、中国を代表する映像作家としての地位を確立しています。

楊福東は主に、現代の中国とそこに生きる人々を題材とし、35ミリフィルムを愛用した独特な質感と、完成度の高い構図による格調高い映像美を特徴としています。現実をそのまま写し撮ったかのようなドキュメンタリー調の作品もあれば、劇的な要素の強い作品もありますが、いずれもある種神秘的で象徴性が高く、観る者を引き込む独特な世界が広がっています。淡々と、静的に映し出された映像は、急速に発展している中国現代社会において失われたものを暗示しているようであり、また現代に生きる者たちの不安や困惑、無力感をも浮き彫りにしているようにみえます。
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Yang Fudong, The General’s Smile, multiple-channel video installation, 2009

30代にして中国を代表する映像作家の一人となり、いまや国際的な舞台で活躍する寵児として知られている楊福東ですが、生まれ育った環境に芸術に関心を持つ人はおらず、楊福東自身もサッカー選手を目指していたといいます。しかし、10代の頃に怪我をしたのを機に、絵を描くことに興味を抱くようになります。そして美大に進んでまもなく、独学で映像作品を制作し始めます。大学卒業後はゲームソフトを開発する会社に勤めながらも絵を描き続ける中で、次第に写真や映像作品の制作に向かうようになっていきます。大学を卒業したばかりで給料が少ない中、作品のためにしばしば友人にお金を借りてまで制作したといいます。「モノクロ映像から得られる距離感がすばらしい」とモノクロの作品を多数制作しています。自然を舞台にした作品では、一見、超現実的な世界を描いているようにも見えますが、特別な装置や特殊効果は用いておらず、欲しい映像のためには何日も待って実景を撮影しているといいます。
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Yang Fudong, The General’s Smile, multiple-channel video installation, 2009

原美術館で開催される個展では、老将軍を囲む祝宴の情景を通して、人間の普遍的な在りようを描いた大型の映像インスタレーション「The General’s Smile」(「将軍の微笑」2009年)、世俗を避け竹林で清談する賢人たちの故事を模して、現代の知識階級の若者像の内面に迫るシリーズ作品「Seven Intellectuals in a Bamboo Forest Part 3」(「竹林の七賢人 part3」2005年)などが紹介されます。前者の「将軍の微笑」は、今年の5月~8月にかけて上海証大現代芸術館で開催された楊福東の個展にも展示された大作です。一方「竹林の七賢人」は2007年のヴェネツィア・ビエンナーレの際にも上映され、話題を集めました。

この展覧会では、日曜、祝日には学芸員によるギャラリーガイドが実施されるほか、出品作品である「Backyard-Hey, Sun is Rising!」(「バックヤード ほら、陽が昇るよ!」2001年 13分)が35ミリフィルムで上映されるとのことです。また、関連イベントとして、20日(日)午後2時から3時30分まで、上海より楊福東を招いてアーティストトークを開催するとのことです。詳細は以下、原美術館へお問い合わせください。
(執筆:M)


【開催要項】
展覧会名 「ヤン フードン―将軍的微笑」
会期 2009年12月19日[土]-2010年3月28日[日]
主催/会場   原美術館 東京都品川区北品川4-7-25 Tel: 03-3445-0651
ウェブサイト http://www.haramuseum.or.jp
開館時間 11:00 -17:00
(12月23日を除く水曜日は20:00まで開館/入館は閉館時刻の30分前まで)
休館日 月曜日(1月11日、3月22日は開館)
    12月28日-1月4日、1月12日、3月23日
日曜・祝日には原美術館学芸員によるギャラリーガイドを実施(2:30pmより約30分)

関連イベント 「アーティストトーク: ヤン フードン」(中日逐次通訳付)
日時: 12月20日[日] 2:00 – 3:30pm 場所: 原美術館ザ・ホール 
料金: 2,000円(一般/入館料込み)、1,000円(原美術館メンバー及び同伴者2名まで)
要予約 Tel: 03-3445-0669 E-mail: info@haramuseum.or.jp

写真提供:原美術館

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via art2009 Coming Soon!!

 こんにちは。クリスマスが近づくにつれ、銀座のイルミネーションがなつかしくなってしまう今日この頃です。
さて、シンワアートオークションのクリスマスといえば・・・、今年3回目を迎える「via art展」です。22日から始まる展覧会に向けて、今日は少しだけご紹介します。

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 via art展は、「社会とアートをつなぐ」をコンセプトに掲げ、学生アーティストを社会に発信するアートイベントです。過去2回の出展作家の中には、現在も活躍されている方がたくさんいらっしゃいます。今回は、全国の美術を志す学生さんたちの中から27名が選ばれました。その出品作品の中から、美術家・天明屋尚氏をはじめ、そうそうたる顔ぶれの審査員の方々により審査員賞の作品が選ばれます。そのほかに、シンワからはKURATA賞としまして、シンワアートミュージアムで展覧会を開催できる権利を贈呈します。例年通り、トークショーなどのイベントも開催予定です。連休を含む5日間開催しておりますので、クリスマスの予定がもうお決まりの方も、そうでない方もぜひぜひお越しください!

展覧会の模様は当ブログでまたお知らせいたします。

via art 2009
会期:2009年12月22日(火)~12月26日(土) 10:00~18:00
会場:シンワアートミュージアム 
    東京都中央区銀座7-4-12 ぎょうせいビル1F
お問い合わせ:info@viaart.jp
公式ホームページ:http://www.viaart.jp


(執筆:S)

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カンノサカン個展「hunch」

 窓の外から見られる華麗なクリスマス・イルミネーションやツリーは今年も相変わらずキラキラと輝いていますね。ちょっとドキドキしてしまう今の季節、皆様いかがお過ごしでしょうか?

 さて、今日は、近年世界から注目を集めている日本の現代アーティストの中でも、躍動感溢れる独特の線による抽象画でよく知られるカンノサカンさんの個展をご紹介したいと思います。

●カンノサカンさんの略歴

1970 東京生まれ。東京都在住。
個展
2008 「spread」ラディウム-レントゲンヴェルケ、東京
「pile」Michael Ku Gallery、台北
2007 「trans.」ヴァイスフェルト-レントゲンヴェルケ、東京
2006 「synchro」ヴァイスフェルト-レントゲンヴェルケ、東京
「fusion」コーネリアス・プレーザーギャラリー、ミュンヘン
2004-5 「trace」レントゲンヴェルケ、東京

グループ展
2006「縄文と現代 ~二つの時代をつなぐ『かたち』と『こころ』」青森県立美術館、青森
2005 「マックス・ヘッドルーム-頭上注意の絵画」 ヴァイスフェルト-レントゲンヴェルケ、 東京

パブリックコレクション
2009 ザ・ペニンシュラ上海、上海
2007 ヒルトン東京、東京


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展示風景

 カンノサカンさんの個展「hunch」が開催されるラディウム – レントゲンヴェルケ・ギャラリー。一階から展示スペースの二階へ上がっていくと、まるで夜空の星のかけらが、外からギャラリーの壁の三面に入り込んだかのような風景が開けます。
 それは、今まで四角のキャンバスの上にウレタン塗装による艶やかな画面作りでよく知られているカンノサカンさんの作品が、なんと円形、つまり凸レンズの形に変わったからでした。


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HUNCH-1002190. mephisto
urethane and acrylic paint on FRP
135×13.5cm

 精巧な技術から得られた円形の支持体、見る角度によって変化を見せるベースの色彩、それに作家の無意識から生じた独特の線たちが発する光は、展示スペースとの美しいコラボレーションで、静かなオーラを発散していました。これが今回の個展で初めて発表するカンノサカンさんの新しいスタイルです。


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HUNCH-2002190. mephisto
urethane and acrylic paint on FRP
135×13.5cm
 
もうちょっと近くから見てみると、例のエッジの効いた緻密な描写は、生成なのか消滅なのか、ある生き物の足跡のような流線で、より不思議な造型を完成させています。また、始点も終点もが存在しないこれらの感性線は、作家のオリジナリティーへの熱望をよく伝えてくれます。

 日本だけではなく、香港アートフェア・台湾での個展・上海と東京のパブリックコレクションなど、世界からの熱い視線を受けているカンノサカンさんは、「円って、一番自然な形ではないかと思い付きました。」と、今後の作品スタイルを耳打ちしてくれました。
 今回の個展以外にも、カンノサカンさんの作品はシンワのコンテンポラリーアート・オークションによく出品されていますので、皆様、次の機会には是非お見逃しのないように。


●展覧会概要
カンノサカン個展
「hunch」
会期:2009年12月4日(金) – 26(土) 11:00 – 19:00 (日・月・祝日休廊)
会場:ラディウム – レントゲンヴェルケ
住所:東京都中央区日本橋馬喰町2-5-17 TEL 03-3662-2666
http://www.roentgenwerke.com

(執筆:W)

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書評「オークション」-『現代アートの舞台裏』より

 オークションの世界について知りたい、と思って本を探してみたとき、情報がほとんど無いことに気づく・・といった経験はありませんか?

 そこで今日は、今年発売されたアート関連書籍の中から、オークションについて書かれた本をご紹介します。

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『現代アートの舞台裏―5カ国6都市をめぐる7日間』
サラ・ソーントン 著/鈴木泰雄 訳
ランダムハウス講談社/2009年 刊



 書籍のタイトルに“オークション”の文字が入っていなくても、中にはオークションについての情報が書かれている本は、実はけっこうあるのですよね。

 この本の第1章は「オークション」と題され、ニューヨークのロックフェラー・プラザで2004年11月の夜に開催されたイブニングセールを舞台に、“アートを投資や贅沢品と位置付ける”人々を描き出しています。
 
 そこでは、
イギリス人の名オークショニアが、競売の最中にビッドする顧客の動きを把握する方法や、
オークションほど素晴らしいものはないと語る買い手達の意見、
コンテンポラリーアートを3年で買い替える人間の心理、
そしてオークションが始まる前の会場で交わされるアイコンタクトの意味・・・
といった基本的な謎が、楽しく明かされていきます。


 これまでに刊行されたオークションに関する書籍との違いは、この本が一番、臨場感があること、外部からの視点で描かれているので、「アート界が面白いほどに逆説的な世界、つまり、実利主義にして理想主義的、エリート主義的にして不思議に開放的な世界」であるという魅力を感じさせるように構成されている点です。
これは本当にその通りですよね。


 では、この本で描かれているオークションの世界は、本当なのでしょうか?
それは、日本では少し違う、と私は感じました。

 というのも、この本を書くために取材が行われた時期は(前回のブログにも触れました)、私が以前ニューヨークにイブニングセールを見に行った時と偶然同じ頃だったのですが、この本に描き出されている世界は、当時知り得たニューヨークのアート界そのものです。

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ロックフェラーセンター 

しかし、日本のオークション会場に足を運ばれた方は、少し違う印象を持たれるでしょう。
 特に、この章の最後にある「金銭的価値が、作品のほかの意味をほとんど根こそぎにしてしまうショー」という表現には、違和感を覚えます。
日本で開催されているオークションの舞台裏は、もっとアートへの敬意がありますし、文化的価値が大切にされています。

その実際のところをお知りになりたい方はぜひシンワアートオークションへお越しくださいませ!

(井上素子)

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