28日の陶芸オークションにご来場いただいたみなさま、ありがとうございました。
さて、今週からいよいよ4月ですね。花冷えの影響で東京の桜は遅れぎみですが、お花見を予定されている方は今週がチャンスかもしれませんよ。
桜だけでなく、今週の東京はコンテンポラリーアートも見頃です。SHINWA ART JOURNALでもご紹介しました秋葉原の101Tokyo、東京国際フォーラムで開催されるアートフェア東京に加えて、当社も銀座でコンテンポラリーアートオークションを開催します。今週はアートと桜を楽しむという美しいものづくしの休日をお過ごしになってみてはいかがでしょうか。4/1からは下見会も開催しておりますので、ぜひぜひお立ち寄りください。夜は20時まで営業しています!
では本日も今週のオークションの出品作品の中から、1点ご紹介します。
Lot.92 須田一政
《煙突のある風景 東京・1980~82年》
39枚のシート、ゼラチンシルバープリント、各裏に鉛筆でサイン
シートサイズ 各30.4×25.3cm イメージサイズ 各21.9×21.5cm
エスティメイト \2,000,000-3,000,000
須田一政は、1962年東京綜合写真専門学校卒業。寺山修司主宰の劇団、天井桟敷の専属カメラマンを経て1971年にフリーになりました。この時期から日本各地を旅し、6×6判で撮影した作品を発表していきます。1976年《風姿花伝》により日本写真協会新人賞受賞。以後、1983年に日本写真協会年度賞、1985年東川賞、1997年土門拳賞を相次いで受賞します。現在は大阪芸術大学芸術学部写真学科教授。自身の制作活動のほかに、自主ギャラリーやワークショップを主宰するなど、次世代の育成にも積極的に取り組んでいる写真家です。
須田一政の代表作の一つ《煙突のある風景 東京・1980~82年》は、雑誌『アサヒカメラ』で発表された39枚組の作品です。モチーフとなった東京は、須田が生まれ育った場所であるとともに、継続して撮り続けている街でもあります。須田にとってごく身近な風景を、そして煙突というどこにでもあるものを撮影しながら、作品には旅の空の下のような漂泊の雰囲気が漂っています。
例えば、駅のホーム、誰もいない公園、布団を干したベランダなど、「日常」という捉えどころのない対象に向けて、須田は直感でシャッターを切っていきました。それによって、作品には「日常」の中に潜む「非日常」がはっきりと浮かび上がっています。須田愛用の6×6判の二眼レフカメラを使ったスナップショットというスタイルは、プリントの天地が曖昧で、さらにモノクロームであるために観る者の想像を様々に掻き立てます。およそ30年前、須田が捉えた東京の姿は、ノスタルジーと独特のエロティシズムが溶け合った不思議な魅力を放っています。
≪CONTEMPORARY ART≫
オークション : 2009年4月4日(土) 17:00
下見会: 2009年4月1日(水)-4月3日(金) 10:00-20:00
2009年4月4日(土) 10:00-12:00
※会場はすべてシンワアートミュージアム
みなさまのお越しを心よりお待ちしております。
(執筆者:S)
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月別アーカイブ: 2009年3月
いよいよ昨日から、近代陶芸と、近代美術PartII、そして中川一政コレクションのオークション下見会が始まりました。
近代陶芸オークションに出品されている中から、美しい磁器作品2点をご紹介いたします。
まず1点目は、楠部彌弌の「彩埏告春香爐」(Lot.74)です。彩埏(さいえん)とは、彌弌が生み出した独自の釉下彩磁技法で、本作品も何ともいえない彩りとやわらかい輪郭線が彌弌らしい特徴を宿した作品といえます。
2点目は、板谷波山の「桃香合」(Lot.75)です。薄いヴェールを被せたように、華やかな輝きが包み込まれたおくゆかしい発色が美しい彩磁の名品です。アール・ヌーヴォーの研究に熱心に取り組んだという波山ですが、この作品にも、アール・ヌーヴォーを取り入れながら自己の表現に昇華させた波山独自の造形性を窺うことができます。
また、中川一政コレクションでは、近代洋画の巨匠・中川一政が収集した、掛軸を中心とした陶器、硯などが五十数点出品されています。中川一政の趣向に想いを巡らすことのできる展示となっています。
そして、来週4月1日(水)からは、コンテンポラリーアートの下見会も始まります。4月4日(土)にシンワアートミュージアムで開催するコンテンポラリーアートオークションと、5月15日に香港で開催するアジアン・オークション・ウィークの出品作品160余点が展示されます。
4月のコンテンポラリーアートオークションの出品作品は、以下のサイトよりオンラインカタログでご覧いただけます。
<オンラインカタログ>
来週は、有楽町の国際フォーラムで開催されるアートフェア東京を中心に、アートのイベントも盛りだくさんな一週間になります。
すっかり春めいて、数寄屋橋交差点の桜も七分咲き、銀座の並木も花開いてきました。
やわらかい春の日差しの中、銀ぶらついでに下見会場にも足をお運びいただけたら幸いです。
社員一同、お待ち申し上げております。
(執筆者:K)
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ガレ《湖水風景文花器》
土曜日のオークションにお越しいただいたお客様、ありがとうございました。
シンワは早速、次のオークションに向かって始動しています。今週は陶芸、四月には西洋美術のオークションが控えています。
今日は、西洋美術に出品される作品をご紹介しましょう。
《湖水風景文花器》
・H35.9×D10.8cm
・2,000,000~3,000,000円
本作品は、アール・ヌーヴォーを代表するガラス工芸、エミール・ガレの花器です。
アール・ヌーヴォー(Art Nouveau, 「新しい芸術」の意)とは、工芸・建築・絵画・ファッションなどの分野に波及した豊かな装飾を特徴とする様式です。
ガレの芸術性に対する評価と共に、特に20世紀末の機能主義的で禁欲的なデザインに息苦しさが感じられるようになった頃、改めて注目が集まるようになりました。日本での人気が高まったのは戦後のことです。
ガレは、植物の細密な観察に基づく写実性の強い造形を得意としていました。古典美の特徴である均衡、安定、普遍性に反発して、非対称、揺らめくような不安定な形、一瞬の美に注目する視点など、反古典主義と呼ばれる特徴が、「新しい芸術」を牽引したのです。
本作品は、透明ガラスの層の間に色ガラスで作った文様を挟み込み、表層に彫刻を施して文様が重なり合って見えるようにする“アンテルカレール”という技法が用いられています。
これにより風景には重層的な奥行きと深みがもたらされ、湖のほとりで繰り広げられる木々と水、光、風のドラマを再現することに成功しています。
風景を主題とする花器はガレの晩年に多く見られ、自然の摂理を造形に取り入れた有機的なデザインは、ガレの没後もアール・ヌーヴォーを象徴するものとして知られるようになっていきました。
西洋美術オークションの日程はこちら
(執筆者:I)
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川合玉堂《春渓帰牧》の意味
麗らかな春の日差しが、卒業式帰りのはかま姿を照らしています。
銀座で謝恩会でしょうか、昨日は華やかなスーツ姿のお母様方をよくお見かけしました。
さて、一昨日は多数のお客様にシンワアートオークション創業20周年記念講演会にお越し下さいました。
ありがとうございました。
美術評論家の浅野徹先生に、今週末のオークションに出品される岸田劉生、佐伯祐三、中村彝などを、大正時代の日本の美術に触れながらお話頂き、会場は熱心に耳を傾けられるお客様の熱気で溢れました。
天気は快晴、日柄は大安と、記念行事には絶好の日和となり、盛況な講演会となりました。
さて、今日は、春にちなんで川合玉堂《春渓帰牧》をご紹介します。
この作品は、昭和15年(1940)、玉堂が67歳の時に描かれました。
この年、玉堂は紀元二千六百年奉祝美術展の委員を務め、後に彼の芸術を代表すると言われるようになった《彩雨》を出品しています。
式典の当日、玉堂は文化勲章を受章し、作品は朝日賞を受賞したのですから、まさに玉堂が日本の国民的な作家として上りつめた時期に描かれた作品と言えるでしょう。
本作品を制作した年、日中戦争の戦況はいよいよ激しさを増していました。玉堂は国民に向けて、このような一見平和な「春の風景」を描くことで何を伝えようとしたのでしょうか。
67歳には大きな画面を活かして、のどかな春の田舎道がなだらかに描かれています。
ここから感じられるのは日本の国土の美しさと、春の実りを待ちわびる気持ち、そして、「無事に家に帰る」ことの尊さです。
「帰牧」とは、字の通り、作業を終えて帰る姿を指します。戦争に駆り出されていった一家の大黒柱たち、若武者たちが、ただ無事に家に帰ることを、この頃の日本人は何よりも強く願っていたことでしょう。それが玉堂一流の優れた構図の中に絶妙に表現され、感動的な世界が広がっているのです。
作品は明日まで、シンワアートミュージアムにて実物をご覧頂くことができます。
(執筆者:I)
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イタリアンジュエリー
いよいよ明日から、近代美術オークション、ジュエリー&ウォッチオークションの下見会がはじまります。今回、ジュエリー&ウォッチオークションでは、先月ご紹介したルビーやサファイアだけでなく、欧米のブランドの商品も数多く出品しています。大阪、名古屋の下見会やカタログをご覧になった方からのご質問も多数頂戴しておりますので、本日はそれらの中から、イタリアのブランドをご紹介いたします。
CHIMENTO(キメント)
lot309 ダイアモンドペンダント
エスティメイト 5万円~10万円
イタリア北部のヴィチェンツァ(Vicenza)に本社を構えるCHIMENTO。1964年、ジュエリー職人アドリアーノ・キメント(現会長)が工房を設立したことがその始まりです。若い頃から才能を開花させた彼は、ゴールドの素材を引き出すことに長け、「ゴールドジュエリーマスター」としてその名を轟かせました。現在でも、ジュエリー製作のほぼすべての部分は熟練した職人の手によって行われており、アドリアーノ・キメント自身がクオリティを厳しくチェックしているといいます。
scavia(スカヴィア)
lot412 ダイアモンドリング
エスティメイト 20万円~30万円
scavia は1923年ミラノで創業。ミラノのスピーガ通りに本店を構えています。3代目のオーナーでデザイナーでもあるフルヴィオ・マリア・スカヴィアは、1969年、19歳の時にダイアモンド・トゥデイアワード(Diamond Today Award)を受賞。その後もダイアモンド・インターナショナルアワード(DIA, Diamond International Award)をはじめ、ジュエリー界の名誉ある賞を数多く受賞しています。
PASQUALE BRUNI(パスクワーレ ブルーニ)
lot448 ダイアモンドペンダント
エスティメイト 20万円~30万円
イタリア、ヴァレンツァ(Valenza)に本社を構えるPASQUALE BRUNI。代表を務めるパスクワーレ・ブルーニ・ボッシオはジュエリー職人として出発し、1976年に前身となる会社を設立。現在は娘のユージニアもクリエイティブディレクターとして活躍しています。ハートや花、月、星などをモティーフとした精巧な細工が特徴です。
その他、STEFAN HAFNER (ステファン・ハフナー、lot457/458)、CANTAMESSA(カンタメッサ、lot446)、Garavelli(ガラヴェリ、lot450)等の商品も出品しております。人気の高いBVLGARI(ブルガリ)は、時計も含め5点出品しております。(lot468/469/471/476/494)
今回のオークションはバラエティーに富んでおり、イタリアだけでなく、以下のブランドも出品しております。
イギリス・・・ASPRAY(アスプレイ、lot479)
GARRARD(ガラード、lot475)
スペイン・・・CARRERA Y CARRERA(カレライカレラ、lot438)
YANES(ヤーネス、lot344/447/467)
masriera(マリエラ、lot439)
フランス・・・BOUCHERON(ブシュロン、lot316)
Van Cleef & Arpels(ヴァン クリーフ&アーペル、lot470)
Cartier(カルティエ、lot472/473/488/496)
アメリカ・・・TIFFANY&Co. (ティファニー、lot315/360/474/480)
スタイリッシュでデザイン性の高いジュエリーがずらりと並び、下見会はいつも以上にとても華やかです。この機会に、オークションを利用して賢く買い物してみてはいかがでしょうか?
【JEWELLERY&WATCHES】
下見会 シンワアートミュージアム
3/18(水)~20(金) 10:00~18:00
3/21(土) 10:00~12:00
オークション 丸ビルホール 3/21(土) 14:00~
皆様のご来場をお待ちしております!(執筆:M)
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3月オークション、東京下見会はじまってます
3月も半ばにさしかかり、銀座の街のショーウィンドーもすっかり春気分の今日この頃。仕事で外に出ると、色とりどりでフワフワ軽やかな春の洋服達に心が奪われてしまいます。日差しが柔らかになると、それにあわせて綺麗な色の服が着たくなるから不思議です。
昨日より当社一階のシンワアートミュージアムでは3月21日に開催する近代美術Partllオークションの下見会を開催しています。
銀座でのお買い物と合わせて、是非お立ち寄りください!
本日は会場の様子と出品作品を少し、ご紹介したいと思います。
→「プレイボーイ」「ポパイ」などの表紙イラストでおなじみの、鈴木英人の版画が多数出品されます。
→今回は、広重・歌麿・春信らの浮世絵も揃いました。写真の作品は、鈴木晴信「寄日恋」
→仏像や、色絵食器(なんと、60点組)なども揃うのは、Partllオークションならではです。
→地下には、池田満寿夫・絹谷幸二らの洋画が飾られています。
Partllオークションの下見会は今週末、土曜日までの開催です。
また、来週はいよいよ近代美術オークションの下見会も始まります。
皆さまのご来場を心よりお待ちしております。
≪東京下見会日程≫
近代美術PartⅡ 3/11(水)~3/14(土) 10:00~18:00
近代美術・ジュエリー&ウォッチ 3/18(水)~3/20(金) 10:00~18:00
3/21(土) 10:00~12:00
会場:シンワアートミュージアム 地図
※3/18以降も、会場でスタッフに声をおかけいただければ、
近代美術Partll出品作品もご覧いただくことができます。お気軽にお申し付けください。
≪オークション日程≫
ジュエリー&ウォッチ / 近代美術PartⅡ 3/21(土)14:00
近代美術 3/21(土) 18:30
会場:丸ビルホール 地図
(執筆:N)
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松本竣介《建物と人》
雪が降ったり春のように暖かかったりと、最近不安定な空模様が続きますね。
今日もまた雨ですが、明日はよいお天気だそうです。
今東京はちょうど梅が見ごろなので見に行こうと思いながら、なかなかお天気と予定が合いません。雪が降る中で梅を見るのもよいかもしれませんが…。梅は桜ほどはなやかではありませんが、春の到来をいち早く感じられてすてきですよね。銀座周辺では皇居や浜離宮がきれいに咲いているようです。みなさまも晴れの日にはお近くの公園に行ってみてはいかがでしょうか。
さて、先週から今週にかけて、大阪と名古屋で下見会を開催させていただきました。会場まで足を運んでくださったみなさま、どうもありがとうございました。来週はいよいよ東京でのパートⅡの下見会が始まりますので、ぜひぜひお越しくださいね。
では、3/21の近代美術オークションの出品作品からおすすめの作品を1点ご紹介いたします。
(おもて)
(うら)
Lot.38 松本竣介《建物と人》
紙面:27.0×36.7cm 画面:26.2×35.9cm
紙・インク、木炭 額装
1939年作
右下にサイン・年代
松本竣介展出品 1986年(東京国立近代美術館)
エスティメイト ¥2,300,000 ― 3,000,000
年末にも松本竣介の作品をご紹介しましたが、今回は街をモティーフとした竣介らしい作品が出品されます。この作品をもとに制作した油彩画は代表作の一つなので、展覧会でご覧になったことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。
松本竣介は、1912年東京生まれ。少年時代に転居した岩手で、病のため聴力を失ってしまいます。しかし、それがきっかけで「見ること」に没頭し始め、17歳で画家を目指して上京。太平洋画会研究所では、靉光や麻生三郎らとともに制作に励み、ルオーやモディリアーニなどパリの画家たちに影響を受けながら、生涯のテーマとなった都市の景観に魅せられていきました。また、自宅を「綜合工房」と称して随筆・デッサン誌『雑記帳』を刊行し、美術雑誌『みづゑ』に論文を発表するなど、社会への発言を積極的に続けました。日中戦争から第二次世界大戦へと続く暗い時局の中で、政治的イデオロギーからの芸術の自立を、ヒューマニズムの立場で訴え続けた画家です。
1939年作(当時27歳)の本作品は、ビルが建ち並ぶ都会の風景とそこに生きる人々の姿を、モンタージュの手法を用いて構成したものです。第25回二科展出品作《街》(1938年作・大川美術館蔵)から始まり、1940年にかけて制作された「街」シリーズの一点です。本作品を制作した翌月には、これをもとに同じタイトルの油彩作品を制作し、それは現在、岩手県立美術館に所蔵されています。
「図版」
《建物と人》 1939年作 岩手県立美術館蔵
(※図版は掲載許可の期間が終了したため削除させて頂きました。)
油彩の作品では、深く沈んだブルーが豊かな詩情を漂わせています。
ご覧の通り、本作品を描いた段階で、構図はかなりの部分が決定していたことが窺えます。
インクと木炭で描いた本作品では、行き交う恋人たちや働く人々など、都会に生きる人間の孤独や哀歓を掬い取り、彼らの心情に寄り添うようにモノクロームの線を滲ませています。また、線の繊細さや木炭による混沌としたニュアンスを残すことにより、作品は素描の魅力に富み、竣介の切ないほどの抒情に溢れています。
裏面には鉛筆によるデッサンの女性像が描かれています。表面のような風景を描く一方で、竣介は次第に人物画や自画像に強い関心を抱くようになりました。こうした人物画は、竣介がヨーロッパの画家たちから受けた影響がしばしば色濃く表現されています。本作品の正面を向いた女性の佇まいや、キュビスム的な構成が、竣介が私淑したモディリアーニやピカソの影響を窺わせます。
≪東京下見会日程≫
近代美術PartⅡ 3/11(水)~3/14(土) 10:00~18:00
近代美術・ジュエリー&ウォッチ 3/18(水)~3/20(金) 10:00~18:00
3/21(土) 10:00~12:00
本日ご紹介した松本竣介は、3/18より展示いたします。
みなさまのご来場を心よりお待ちしております。
(執筆:S)
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