今週1/29(土)は近代美術・近代美術PartⅡオークションを開催いたします。
今日から近代美術の下見会もオープンしましたので、
ぜひ銀座までお越しください。
近代美術オークションでは、川合玉堂の作品がたくさん出品されます。
今日はその一部をご紹介いたします。
川合玉堂(1873-1957)は、愛知県葉栗郡外割田(現在の一宮市木曽川町)生まれ。長良川など、岐阜の豊かな自然に囲まれて少年時代を過ごし、後に風景画家となる素地を育みました。14歳で画家を志し、京都の幸野楳嶺(こうのばいれい)に円山四条派を学びます。23歳で上京した後には橋本雅邦に入門し、狩野派の伝統的な山水描法を身につけました。やがて、墨による線描を主軸としながら彩色を効果的に用いて、平明でのどかな風景画を追求していきます。大正4年から13年間に渡って東京美術学校で教鞭を取り、昭和15年には文化勲章を受章。理想郷を描くものとされていた山水画の伝統を一変させ、人の暮らしと自然が調和した日本の山村風景画を確立した画家です。
玉堂といえば、優れた水の描写でよく知られています。
長良川の夏の風物詩を描いた《鵜飼》(昭和31年作・玉堂美術館蔵)や雨に包まれる水車小屋の情景を描いた《彩雨》(昭和15年作・永青文庫)など、数々の名品を残しました。
今回の水のある風景はこちら。
【 No Image 】
Lot.92 《渡頭春信》
41.8×58.3cm
紙本・彩色 軸装
左横に落款・印
共箱
玉堂美術館登録あり
★ \2,000,000~3,000,000
舟が川を渡る情景は玉堂が好んで繰り返し描いた題材です。
ようやく春がやってきた里山の爽やかな空気が伝わってきます。
45.2×57.0cm
絹本・彩色 軸装
右上に落款・印
共箱
玉堂美術館登録あり
★ \6,000,000~10,000,000
玉堂の水車がお好きな方は多いのではないでしょうか。
力強い墨の線と鮮やかな緑色が調和して、奥多摩の自然が生き生きと表現されています。
耳を澄ますと水車の水音が聞こえてきそうな作品です。
玉堂作品の主軸はなんといっても山村の風景です。
今回は様々な趣の山村風景が出品されます。
Lot.109 《長閑》
54.8×72.7cm
絹本・彩色 額装
右上に落款・印
共箱
玉堂美術館登録あり
川合玉堂展 1982年(日本橋島屋/読売新聞社)※昭和13年作と記載
『川合玉堂 下巻』P.87 №13(美術年鑑社)※昭和5年作と記載
★ \5,000,000~9,000,000
タイトル通り、とても玉堂らしいのどかな風景です。
玉堂作品が支持され続けているのは、こうした郷愁を誘うようなあたたかな雰囲気が多くの人の胸を打つからかもしれませんね。この作品は東京時代、玉堂が牛込若宮町(現在の新宿区)に住んでいたときに制作されました。
写生をもとに、玉堂の理想の情景として仕上げられたものと言えるでしょう。
Lot.108 《水聲松籟》
48.7×60.3cm
紙本・彩色 額装
左下に落款・印
共箱
玉堂美術館登録あり
★ \5,000,000~9,000,000
Lot.109とは逆に、こちらのモティーフは険しい断崖からの眺望です。
際立つ墨の線は、橋本雅邦に学んだ狩野派の描法を思わせます。
落款・印が昭和30年代に使用されたものであることから、晩年の枯淡の境地が窺える作品です。
左:Lot.93 《富岳》
56.5×72.7cm
紙本・彩色 額装
右下に落款・印
共箱
玉堂美術館登録あり
★ \2,000,000~3,000,000
右:Lot.94 《溪山春酣》
132.6×41.8cm
絹本・彩色 軸装
右下に落款・印
共箱
玉堂美術館登録あり
★ \2,000,000~3,000,000
Lot.93は富士を描いた作品です。
軽やかな筆致が味わい深いですね。
Lot.94は、縦構図を大きく使った画面構成と緻密な筆致で風光明媚な渓谷を表現しています。
春らしい色使いに雅趣が漂う作品です。
晩年にいたるまで、玉堂の制作の基本は水墨であったといいます。
そういった点で、雪景は玉堂芸術の根幹を垣間見せてくれる題材です。
Lot.95 《湖畔雪霽》
43.3×53.9cm
紙本・彩色 軸装
右下に落款・印
共箱
玉堂美術館登録あり
★ 2,500,000~3,500,000
タイトル中の「雪霽」(せつせい)は、雪が止んだ後に晴れることを表わします。
雪が降った後のしんとした静けさの中、集落に住む人々は釣りに出ようとしているのでしょうか。
雪深い土地の日常の暮らしぶりがしみじみと伝わってきます。
Lot.110 《吹雪》
44.6×57.4cm
絹本・水墨 軸装
昭和23年作
右上に落款・印
共箱
玉堂美術館登録あり
『川合玉堂 下巻』P.161 №2(美術年鑑社)
★ \6,000,000~10,000,000
日本の四季を描いた玉堂にとって、風すなわち空気こそが絵画を構成する重要な要素でした。
特に、激しい風とともに雪が乱れ降る情景を描いた《吹雪》には傑作が多く、昭和5年にローマで開催された日本美術展に出品された同画題の作品の見事な墨の表現は、日本美術に造詣の深いヨーロッパの人々をも驚かせたといいます。この作品でも、淡墨の刷毛目で縦横無尽に吹き荒れる吹雪の激しさを動的かつドラマティックに表現しています。
今回のオークションではこのほかに《鵜飼》など、近代美術・PartⅡあわせて12点の玉堂作品が出品されます。
玉堂がお好きな方はぜひ下見会をご覧ください。
オークション・下見会スケジュールはこちら
みなさまのお越しを心よりお待ちしております。
(執筆:S)
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