63スカイアート(63 Sky Art)は、ソウル市内が一望できる63ビル(1985年に完成した地上60階地下3階からなる超高層ビル)の60階に位置する美術館です。「国際文化交流や国内の美術文化の発展のため」というスローガンを揚げ、63ビルの所有企業であるハンファ・グループによって2008年に開館されました。
地上246mから、ソウルの中心を貫いて流れる漢江(ハンガン)や都市風景、そして現代美術が一緒に楽しめる63スカイアートは、六本木ヒルズの森美術館をベンチマーキングしたものだそうです。
〈まるで、外の景色を望めるように展示された造形作品〉
63ビルは完成以来20年以上も展望台としてよく知られてきたので、特に美術を求めて訪ねる人よりは家族や恋人と眺めを楽しむ一般の観客が多いことから、難解な美術よりは身近で親しみやすい作家や作品が多く展示されています。
今回の『FACES展』も、韓国内外の作家7名によって「停止された顔」、「単純な顔」、「優しい顔」、「偽装された顔」、「明快な顔」、「楽しい顔」の、六つのコーナーに分けられ、人の顔というやさしいテーマとアニメ風の作風で、夏休み中の子供たちも楽しめそうな企画でした。
中でも、「停止された顔」のタイトルで紹介されているアレックス・カッツ(Alex Katz)は、20世紀のアメリカ絵画を語る際に最も重要な一人として評価される作家です。自分の家族や友達、芸術家や有名人などの顔をアニメ風に描くカッツは、人の顔をクローズアップしたり画面をうまく分割することで、広告のイメージのように停止された場面を作り出します。細密な部分は果敢に省略し、著しい特徴だけをうまくデフォルメするカッツの代表作品を、今回の展示からも見ることができます。
〈カッツの「停止された顔」の展示風景〉
〈オピーの「単純な顔」の展示風景〉
また、近年コンテンポラリーアート界のブルーチップとして高い人気を集めるジュリアン・オピー(Julian Opie)の作品は、「単純な顔」というタイトルを持って展示されています。
オピーの肖像作品は、写真で撮った人物を、コンピューター作業を通した省略や単純化の過程を経って表現されます。目はただ2つの「点」に変化し、誰もが似たような顔をしているオピーの人物画ですが、個性は顔付きや表情ではなく、洋服やポーズ、ヘアスタイル、歩き方などの、その人物が選んだその他の要素によって表すものだというオピーのアート観がよくみえる展示だと思います。
他にも、「恋」をテーマに人の温かい感情をやさしいパステル色で画面に満たす韓国の人気作家イ・スドンの作品や、韓国の若手作家の作品も多く展示されていますので、ソウルに行かれる予定がある方は、ぜひご覧になってはいかがでしょうか。
〈韓国の若手作家、ユン・ギウォンの「明快な顔」の展示風景〉
【展示概要】
期間:2011年7月9日~11月13日
時間:10:00~22:00 年中無休
料金:12,000ウォン(約900円)
H P : http://www.63skyart.co.kr/
(執筆:W)
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月別アーカイブ: 2011年8月
8月の誕生石 ペリドット
涼しい日が続き夏が終わるのかと思いきや、ここ数日でまた暑さが舞い戻って参りました。残暑も厳しくなるようですが、皆さま気温の変動で体調を崩されないよう十分お気をつけ下さいませ。
さて、今回は8月の誕生石、ペリドットについてご紹介します。
ダイアモンドやルビー、サファイア等に比べたら、あまり馴染みのない石かもしれません。当社のオークションでも頻繁に出てくるものではありませんが、そのオリーブの実のようなグリーンの輝きは、独特の美しさを持って私たちの目を惹きつけます。
歴史的産地はエジプトの紅海に浮かぶザバルガッド。現在はアメリカのアリゾナやミャンマー、ノルウェーが主な産地となっています。遥か昔ローマ人は、ペリドットが夜でも明るい緑の光を発したことから「イブニングエメラルド」と呼びました。また、ドイツのドレスデンにある“緑の丸天井”の宝飾展示室には、大粒のペリドットがはめ込まれた剣や杖が、ダイアモンドやルビー、サファイア、エメラルドと肩を並べています。昔は色が似ているために違う宝石どうしが混同されることがあったようですが、ペリドットもエメラルドと間違われたことがあったようですね。今でこそ宝石にはその魅力を最大限に引き出すカットが施されており、この2つの石の色の違いを見極めることは簡単です。しかし当時はまだカット技術も発展途上、それ故に見間違えることもあったのでしょう。その他、ドイツのケルン大聖堂では、200カラットのペリドットが東方三博士の3つの聖堂を飾っています。
ペリドットは鉱物的にはオリビンというありふれたものですが、その中でも黄色と褐色を混ぜたような輝きを持つものは多くはありません。貴重ではありますが、比較的手頃な値段で美しいグリーンのファセットカットを楽しめる宝石として、今後脚光を浴びる可能性が高い石とも言えるようです。硬度はダイアモンドの10に対して6.5~7。硬度とは、引っかきや摩耗に対する強度を示す数値ですが、6.5はナイフを突き立ててやっと傷がつく程度ですので、身につけるには十分な硬さを持っていると言えます。
ペリドットの明るい緑は、昔イブニングエメラルドと呼ばれていた通りに、夜のわずかな光でも軽やかな輝きを放つことでしょう。身に纏う黒いドレスも、ポイントの鮮やかな緑に引き立てられる様子が目に浮かびます。ぜひカジュアルなパーティー等で身に付けてみてはいかがでしょうか。
当社で近年出品されたペリドットの商品はこちら。
(左)アメジスト ペリドットイヤリング(by ANTONINI)
エスティメイト¥150,000~250,000
落札価格¥180,000
(右)アメジスト ペリドットイヤリング(by VanCleef&Arpels)
エスティメイト¥200.000~300.000
落札価格¥200,000
ちなみにペリドットの石ことばは「夫婦の幸福」。新緑を思わせる明るい緑の輝きを見ていると、優しく穏やかな気持ちになれる気がします。
(執筆 N.I)
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アートフェア東京2011
7月29日(金)~31日(日)、東京国際フォーラムにて、今年も恒例の「アートフェア東京」が開催されました。
みなさまはご覧になりましたか?


展示ホール。賑わってます。 こちらはロビーギャラリー。開廊5年以内
の新しいギャラリーが集まっています。
アートフェア東京2011 会場風景
撮影:岩下宗利
提供:アートフェア東京
今年は国内12都市、海外10都市から113軒のギャラリーが出展しました。
例年と異なるのは、震災後の社会とアートの関わりをテーマとしたトークイベントやチャリティ・プログラムなど、復興支援の関連企画がたくさん開催されたことでしょうか。入場料とカタログの売上の一部が義援金となるだけでなく、アーティストが制作したオリジナルうちわを購入すると代金が寄付されるという夏らしい企画もありました。
ちなみにこちらは入り口で配布されていた会場マップ兼うちわ。
混雑と熱気と節電モードのため必需品となりました。
アートフェアの楽しみといえば、一度にいろいろなアーティストの作品を見られることですね。昨年との作風の変化に驚いたりして、特に若手作家さんの新作を見るのは楽しいです。
こちらは若手作家さんではありませんが、今回驚いたものの一点。
千住博さんの新作です。
このシリーズの屏風なども展示されていました。
千住博《断崖図》
2011年
新生堂
一方で、美術館の収蔵品クラスの名品に出会えてしまうのも、アートフェア東京のすごいところです。
アンディ・ウォーホル、河井寛次郎、横尾忠則などなど…。
葛飾北斎は肉筆画も出品されていました。


葛飾北斎 深見陶治
《諸国名橋奇覧飛越の堺 つりはし》 《遥カノ景〈望〉》
天保4-5年 2010年(型制作1993年)
三田アート画廊 撮影:畠山崇
中長小西
数年前はコンテンポラリー系のギャラリーが大半を占めていましたが、
年々古美術や近代の作品を扱うお店の出展が増えているようです。
アートフェア東京は、以前からコンテンポラリーのコレクターさんが陶芸作品を購入したり、逆に、古美術通の方がコンテンポラリーアートに興味を持ったりする、ジャンル間の交流が見られましたが、回を重ねることにそれがとても自然に行われているような感じがしました。
来年はどんなアートフェアになるのでしょうか。今から楽しみですね。
(執筆:S)
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