月別アーカイブ: 2010年11月

上村松園の美人画

今週は長谷川利行・近代美術オークションを開催いたします。
近代美術オークションでは、上村松園の作品がたくさん出品されますのでご紹介いたします。

現在、京都国立近代美術館で上村松園展が開催されていますが、みなさまはご覧になりましたか?この展覧会は過去最大級の回顧展だそうで、東京展は来場者10万人を突破する人気だったそうです。私も先月東京展に行き、《序の舞》(昭和11年作・東京藝術大学蔵)など代表作の数々を見ることができました。

さて、今回のオークションでは、時代や題材の異なる様々な作品を通して松園の画業を辿ることができます。

219_convert_20101119125028.jpg
Lot.219《古代女房図》
32.0×36.3cm
絹本・彩色 額装
左下に落款・印 
共箱
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書つき
エスティメイト \1,400,000~1,800,000


松園は修行時代から膨大な数の古画の模写を制作し、構図や人物のポーズ、線を研究したといいます。また、古典文学を学び、その一場面を題材に用いることもありました。本作品は、松園が晩年まで描いた花を愛でる女性像ですが、女性の面立ちから平安・鎌倉期の大和絵を引用していることがわかります。

259_convert_20101119140232.jpg
261縺ョ繧ウ繝斐・_convert_20101119141152
(左)Lot.261《うららか》
112.2×41.4cm
絹本・彩色 軸装
右下に落款・印
共箱
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書つき
エスティメイト ★\2,300,000~3,500,000


(右)Lot.259《良夜吹笛図》                
112.2×39.6㎝
絹本・彩色 軸装
右下に落款・印 
共箱
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書つき
エスティメイト ★\2,500,000~3,500,000


ともに落款・印から明治~大正のはじめ頃に制作されたと思われる作品です。
これらのように、柔らかで妖艶な雰囲気も漂う初期の顔立ちがお好きという方も多いのではないでしょうか。


196縺ョ繧ウ繝斐・_convert_20101119130325
   
256縺ョ繧ウ繝斐・_convert_20101119130652
(左)Lot.256《寿》
111.0×38.0cm
絹本・彩色 額装
右下に落款・印
共箱
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書つき
「女性画家が描く日本の女性たち展」出品 1998年(京都島屋グランドホール/朝日新聞社)
エスティメイト\1,200,000~1,800,000


(右)Lot.196《白拍子》
110.4×31.6cm
紙本・彩色 軸装
左下に落款・印
上村松篁箱
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書つき 
エスティメイト ★\700,000~1,000,000


若い頃から古典芸能にも関心を抱いていた松園は、大正のはじめ頃から謡曲を習い始め、後には三味線や長唄、鼓なども試みたそうです。それらはすぐに制作に反映され、代表作の一つ《花がたみ》(大正4年作・松伯美術館蔵)など、謡曲や能に取材した作品を描くようになりました。舞い姿の女性を描いたこうした作品も、松園の芸事への理解の深まりを感じさせます。

217_convert_20101119165400.jpg
Lot.217《春乃小鳥》
32.3×41.0cm
絹本・彩色 軸装
右上に落款・印
共箱
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書つき
エスティメイト 
★\1,200,000~1,800,000



260_convert_20101119165440.jpg
Lot.260《神ひな》
画面:94.4×28.0cm(全長:H118.6cm)
絹本・彩色 額装
右下に落款・印 
共箱
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書つき
エスティメイト\2,000,000~3,000,000


松園の作品では、市井の人々の暮らしのひとこまを描いたものがよく見られます。明治期には、写生に基づき身近な人々の姿を捉え、昭和期になると、江戸時代の雰囲気が残る京都の風俗を懐かしむように題材にしました。《神ひな》はそうした生活や風習への親しみから生まれたものでしょうか。男雛が向かって右側なのは松園が育った京都の様式です。



img_197.jpg
258_convert_20101119175118.jpg
 (左)Lot.258《志具連》
123.0×26.5cm
絹本・彩色 額装
左下に落款・印
共箱
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書つき
エスティメイト ★\2,500,000~3,500,000


(右)Lot.197《花下美人》
47.1×28.0cm
絹本・彩色 軸装    
右下に落款・印 
共箱
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書つき
エスティメイト\300,000~500,000      




img_278のコピー
Lot.278
《秋のよそおひ》
54.0×66.3cm
絹本・彩色 額装
右下に落款・印
共箱
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書つき
エスティメイト 
★\15,000,000~25,000,000


季節の風物を愛でる女性像は松園が生涯描き続けたものです。この主題では、《花下美人》のように花を見つめていた女性は、次第に《秋のよそおひ》のように視線を遠くに向けるようになっていきました。前者では、梅の花や蛍などとの組み合わせを通して、女性の美とともに四季折々の風情を表現しています。また、後者は女性の心の内を観賞者に想像させるようでもあり、「女性の内面性を表現すること」に松園の関心が注がれていることがわかります。

松園のほかにも、前田青邨、小林古径、横山大観、村上華岳など、今回は日本画がとても充実しています。
まだご覧になっていない方は、ぜひお越しください。
銀座の下見会と丸ビルのオークションで、みなさまのお越しをお待ちしております。

オークションスケジュールはこちら

(執筆:S)

続きを読む

歌川広重《保永堂版東海道五拾三次 五十五点揃》

今週は浮世絵・近代美術PartⅡオークションを開催いたします。
今回は浮世絵オークションの出品作品の中から、歌川広重《保永堂版東海道五拾三次 五十五点揃》をご紹介いたします。


譌・譛ャ讖祇convert_20101111174318
「日本橋 朝之景」

Lot.363 歌川広重《保永堂版東海道五拾三次 五十五点揃》
題字付
楢崎宗重箱
エスティメイト \20,000,000~35,000,000


言わずと知れた広重の代表作です。
「浮世絵」というとこの作品を思い浮かべる方も多いかもしれませんね。
《保永堂版東海道五拾三次》は制作された当時、版木が磨滅するほどの売れ行きだったそうで、制作後に最初に摺られた「初刷り」と版木を彫り直した後の「後刷り」があります。
後刷りでは絵が加筆・修正されて、人物が増えたり、山の形が変わったりすることがあります。そういった変化もこの作品の楽しみの一つではありますが、色彩が美しい状態で残されている初刷りの作品ほど、希少性が高いと言えます。

今回の出品作品は、題字を含む56枚で構成された全揃いで、「蒲原」、「四日市」といった人気の図柄に初刷りが多いことが特徴です。また、浮世絵研究の権威として知られる美術史学者・楢崎宗重による箱書きがついています。

鬘悟ュ誉convert_20101111174658
まずとても珍しいのがこちら。
画帖装の扉ページとして摺られた題字です。
山種美術館にも収蔵されています。

 
                        

楢崎宗重箱です。
邂ア1_convert_20101111175427  邂ア2_convert_20101111175534

 
闥イ蜴歙convert_20101111180302
「蒲原 夜之雪」

「蒲原 夜之雪」も初刷りです。
比較的温暖であまり雪の降らない蒲原(現在の静岡市)を雪景色として描いたこの作品は、シリーズ中でも人気の高い1点です。このように雨、雪、霧など、季節感と気象の変化を抒情的に表現したことが《保永堂版東海道五拾三次》の大きな魅力ですね。

雜ウ繧「繝・・_convert_20101111180834    雜ウ繧「繝・・・亥セ悟姐繧奇シ雲convert_20101111180900
初刷り                後刷り

初刷りの特徴はなんとこちら。画面一番右の人物の足の筋です。
後刷りではこの筋がなくなります。


繝√Μ繝・繧ヲ_convert_20101111182618
「池鯉鮒 首夏馬市」

今回最も希少なものが「池鯉鮒 首夏馬市」です。
こちらは、池鯉鮒(ちりゅう。現在の愛知県知立市)宿の東の野原で開催される馬市を描いた作品。
野原には競りにかかる馬がたくさんつながれています。画面中央の大きな松の下では、馬飼や馬喰が集まって馬の値段を決めており、このことからこの松を談合松と呼んだそうです。
本作品では、松の向こう側に実在しない鯨形の丘が描かれています。これが初刷りの特徴で、大変希少と言われています。
このほかには「大津 走井茶店」なども初刷りの特徴が見て取れます。

初刷りならではの図柄やぼかしの色彩の美しさをぜひ下見会場でご覧ください。
みなさまのご来場を心よりお待ちしております。

(執筆:S)

続きを読む