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近代陶芸まめ知識

 日本全国、日々暑さが続いて夏真っ盛り!ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
さて、9月第一弾のオークションは、近代陶芸/古美術オークションを開催致します。陶芸作品をよく理解して頂くためにも、今回はカタログによく使われている陶器の名称や部位について解説してみようかと思います。
弊社のカタログはだいたい下記のような形式で掲載しています。

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 作品名は基本的に作品の入っている箱に書かれたタイトルをなるべく忠実に表記しています。この“作品の入っている箱“というのがかなり重要です。ほとんどの作品に「共箱(ともばこ)」と書かれていますが、これは作家本人が自分の名前や号を書き、タイトルを書いている箱のことを指しています。陶芸作品の場合、共箱があるとないとでは価格に大きな差が付いてしまうのです。共箱以外には、「○○箱」と人名や屋号の後に「箱」が付いている事があります。これは亡くなった作家の鑑定家が、作家本人の代わりに作家名と作品名を書いた箱のことです。さらに、共箱あるなしに関わらず、茶人や僧侶が作品の名前を書き、極(きわ)めている場合があります。これを”書付(かきつけ)“といい、特に茶道の世界では、作品の貴重性を高めています。
 また部位の名称も、あまり他で目にすることはないかと思います。これは作家が入れている銘(サイン)の場所を分かりやすくするために掲載しています。
陶器は種類によって名称も変わることもありますが、基本的に同じ呼び名です。
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 作家は陶器の正面ではなく、裏面、そして下部や底部に銘を入れることがほとんどです。
作家によって決まった箇所に入れることが多く、入れてある場所の違いにより、作った時期の判断や、真贋を推し量ることもあります。多くの作品を見ていると、そのブレが許容範囲であるかどうかおおよそ分かってきます。
次に銘の種類ですが、陶器に関してはほぼ三種類の銘の入れ方で分けています。
一つ目は焼成前に生地を引っ掻いて銘を入れる「掻き銘(ひっかきめい)」。
二つ目は絵付けをする要領で筆で描く「描き銘(えがきめい)」。
そして三つ目は判子を押して入れる「印(いん)銘(めい)」です。
「掻き銘」と「描き銘」は、本来両方とも「かきめい」と読みますが、区別のため「ひっかきめい」と「えがきめい」と読まれています。つまり「高台脇に掻き銘」と表記している場合は、高台まわりに作家本人の名前や、マークが引掻いて入れられているのです。この銘というのも、作家によっては年代別で変えており、何年に制作されたかはっきり分かることもあります。最たるものは富本憲吉です。富本は、毎年銘を変え、その符号表も公表されています。ほかには、富本ほどでは無いにしろ、研究により加藤唐九郎、金重陶陽はある程度制作年代が分かります。たとえば陶陽ですと、「陶陽造」だと初期のころの作品ですし、「ト」だと昭和27(1952)年以降ということになります。(あとはトの長さで判断されたりもします。)
 
 それぞれ作家にはこだわりが多いにある作家や、そうでない作家がいます。そこからは作家の人となりを伺うことができ、様々な角度から作品を見ることで、さらに興味や作品への理解が深まるような気がします。
 9月近代陶芸のオークションカタログも現在制作中です。多くの作品と出会える機会ですので、楽しみにお待ちください!
     
(執筆者:E)

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