月別アーカイブ: 2009年4月

ヒスイ96点、成り行きで出品!

いよいよゴールデンウィークに突入しますね!当社は4月29日から5月10日までお休みをいただきますが、5月12日(火)からは早速、名古屋、大阪でジュエリー&ウォッチと近代美術オークションの下見会、東京では近代美術Part2の下見会、香港ではAsian Auction Weekの開催等、イベントが目白押しです。

本日は5月23日開催のジュエリー&ウォッチオークションから、ヒスイをご紹介いたします。今回はなんと、96点のヒスイのリングがすべて「成り行き」価格で登場します!

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lot401 ヒスイ ダイアモンドリング
エスティメイト 10万円~20万円

日本や中国で古くから親しまれてきたヒスイ(英語名:ジェード、Jade)。日本では、5月の誕生石でもあります。
一般にヒスイと称されているものには硬玉と軟玉の二種類がありますが、硬玉は「ジェイダイト」に対し、軟玉は「ネフライト」と呼ばれ、鉱物学上はまったく別の石を表します。硬玉、軟玉という名の通り、ジェイダイトに比べネフライトは少し柔らかく、主に彫刻の置物や装飾品などに使用されています。中国では有史以来、様々な玉器が作られてきましたが、それらに用いられていたのは主にネフライトであり、ジェイダイトは18世紀頃、ミャンマーから輸入されるようになってから使われるようになりました。宝石としての価値は大きく異なり、主にミャンマーで産出されるジェイダイトは希少価値が高く、ダイアモンドやルビーと同じ「貴石」に分類されているのに対し、ネフライトは「半貴石」と分類されており、その産地は中国、台湾をはじめ、ニュージランド、カナダ、アメリカなど世界に広く分布しています。

ヒスイを漢字で表記すると「翡翠」。これは、中国にミャンマーから初めてジェイダイトがもたらされた時に、ネフライトにはないその美しさから、カワセミ(漢字で翡翠)に例えて「翡翠」と名付けられたといいます。ヒスイ(ジェイダイト)というと緑色の石というイメージがありますが、「翡」は赤、「翠」は緑を意味するように、ヒスイは緑以外にも、赤、黄、薄紫(ラベンダー)など、色調のバリエーションがあります。中でも、透明感があり、かつ深く澄んだ緑色のジェイダイトは高く評価されています。さらに、とろりとしたテリのあるものが最高品質とされており、「琅玕(ろうかん)」と呼ばれています。

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lot432 ヒスイ ダイアモンドリング
エスティメイト 7万円~15万円

今回、オークションに出品されるヒスイは96点。うち93点はヒスイダイアモンドリング、3点はヒスイリングとなっています。これをヒスイの品質により3種類に分け、5万円~、7万円~、10万円~、というエスティメイトで出品されています。これは、出品者の事情により通常のエスティメイトの半額未満になっています。さらに、すべて成り行き、つまり最低売却価格(リザーヴプライス)を設定しておりません。お手頃な価格でヒスイを手に入れるチャンスです!また当社のオークションでは、色石はすべて全国宝石学協会の鑑別を取っておりますが、今回のヒスイももちろん、鑑別は済んでいます。

リーズナブルとはいえ、リングとしてのデザインがちょっと…という方には、リフォームのご案内もしております。今回出品されるほとんどの商品の地金はプラチナ。最近、プラチナの価格が再び上昇傾向にありますので、オークションで落札後にリフォームを希望される場合、商品によっては地金を換金すると数万円から10万円近くになるものもあります。リフォーム後の地金、脇石のダイアモンドの量によって金額が異なりますが、元の地金を売却することで費用を抑えることが可能です。ご興味のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

それでは皆様、良いゴールデンウィークをお過ごしください。(執筆:M)


【Jewellery & Watches】
下見会  名古屋 DAITEC SAKAE 6F クリエイトホール
5/12(火)・13(水) 10:00-18:00

大阪 御堂会館 南館 B1Fホール
5/15(金)・16(土) 10:00-17:00

東京 シンワアートミュージアム
5/20(水)~22(金) 10:00-18:00
5/23(土) 9:30-11:30 

オークション 丸ビルホール
       5/23(土) 13:30-

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ゴールデン・ウィークの韓国アート情報

 窓から暖かい風が吹きこみ、シンワの隣にある花屋さんからは薔薇の香りも薫ってきます。言葉通りののどかで美しい日が続いていますが、何となく気持もドキドキしてくるのは私一人だけではありませんよね?皆様も春に向けた準備は順調でしょうか?


 この気持ちに加え、いよいよ来週からはゴールデン・ウィーク!今年もどこに出かければいいかなと心を悩ませる時期がやっと参りました。
 皆様のその悩みにお答えするため、本日は、冬休みの韓国アート情報に続きまして、その第2弾を用意いたしました。今、韓国で話題になっている展覧会やソウルのギャラリー街をご紹介したいと思います。


 初めに、今ソウルで話題になっている展覧会からご紹介します。
 まず目を引くのが、「黄金色の秘密」、グスタフ・クリムトの韓国における展覧会です。2月2日から5月15日まで<ソウル・芸術の殿堂>にて開催される今回の展覧会には、油絵が約30点、ドローイング及びポスターの原画が約70点、「ベートーベン・フリーズ(The Beethoven Frieze)」及び作家特別のインスタレーションなど、クリムトを代表する作品が、計100点あまり展示されています。
 アジア最初で、最大規模であるという意義を持つこの展覧会には、絵画だけではなく、彼のあらゆるジャンルの作品が一望でき、クリムトファンの方なら、必見の見事な展覧会に違いありません。

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 今回の展覧会に展示された「ベートーベン・フリーズ(The Beethoven Frieze)」

<クリムト、黄金色の秘密(Gustav Klimt in Korea 2009)>
2/2-5/15(金) TEL (02) 334. 4254 / FAX (02) 323.4255 /
http://www.klimtkorea.co.kr/index.php


 次に、もう一つ少し懐かしい展覧会をご紹介します。
 去る2月にシンワジャーナルでもご紹介したことがある「チャロー!インディア:インド美術の新時代展」です。皆様、まだ覚えていらっしゃいますよね?東京では森美術館に多くの人を集めた強烈なインパクトの現代美術の作品群が、今、韓国の国立現代美術館にて<インドの現代美術-三回目の目を開け>という表題で、韓国のお客様の心を熱くしているようです。


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<インドの現代美術-三回目の目を開け>展
国立現代美術館 / 427-701 京畿道 果川市 莫渓洞 山 58-4(光明路 209号)
Tel. 82ー2ー2188ー6000 Fax. 82ー2ー2188ー6123 /
http://art.moca.go.kr/Modern/jpn/main.html


 4月17日から6月7日まで開催される<インドの現代美術-三回目の目を開け>は、美しい自然の環境に恵まれているソウルの国立現代美術館で、再びお客様をお待ちしております。東京で見逃した方も、今度は是非お見逃しなく!


 続いて、美術を愛するシンワのお客様であればご興味を持つはずのソウルのギャラリー街をご紹介いたします。
 ソウルの真ん中に位置する<インサドン(仁寺洞)>を、皆様ご存知でしょうか?ソウル観光に出かけたことがある方なら一度は訪ねたことがあると思われるインサドンとは、韓国の伝統・文化の町として有名なところです。
 美味しい韓国伝統の食べ物や韓国らしいお土産、そして街頭パフォーマンスなどで楽しめるこの街は、昔からギャラリー街としてもよく知られています。

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外国人観光客や恋人たちでいつも賑やかなインサドンの週末風景

 およそ90店の古美術画廊やコンテンポラリーアートギャラリーが集まり、伝統と現代という二つのアイコンを仲良く両立させてきたこの文化ストリートは、毎週水曜日になると新しい展示会を開くギャラリーが多く、新人作家さんたちのデビューの個展を見ることもできます。

 インサドンで、韓国の伝統文化を味わうことができましたら、次は、現代的な姿で溢れるお洒落の町<チョンダムドン(潭洞)>に行ってみましょう!
 いつも新しいイメージのお洒落な街として知られているチョンダムドンは、数々のブランドショップやおしゃれなカフェ、そして現代アートのメッカとして最近話題になっている町です。

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チョンダムドンのカフェ街

 去る十年間、50店を超える新しいギャラリーが建てられ、韓国のアートだけではなく世界先端のアートを紹介してきたチョンダムドン・ギャラリー街には、ちょっと贅沢なショッピング、おしゃれな休憩のひと時、そして現代のアートという3拍子がよく組み合わせられている所です。韓国のアート界で、今話題の中心になっている作品群をリサーチしたいなら、ここがお勧めです。

 ちなみに、芸能事務所も多く集まっているチョンダムドンですので、この町に訪ねた時、憧れの韓流のスターにも会うことができる可能性も高いですよ!

では、皆様!ゴールデン・ウィークのゆったりした旅、お気をつけて行ってらっしゃいませ!

(執筆:W)

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Asian Auction Week in Hong kong

花粉症もやっと落ち着き、これからくる夏をまだかまだかと心待ちにしているコンテンポラリーアート担当のKです。
土曜日の西洋美術オークションにご来場いただいたみなさま、どうもありがとうございました。 

 さて、いよいよ5月15日に、アジアの4つのオークション会社が、香港にて共同開催するAsian Auction Week in Hong Kongが迫ってまいりました。コンテンポラリーアートオークションのカタログを年間購読されているお客様には今週中にもカタログが届くことと思います。4月初旬に開催いたしましたコンテンポラリーアートオークション下見会にて、Asian Auction Week出品作品をご覧になったお客様もいらっしゃるのではないでしょうか?

 今回のオークションでは、以前ブログでもご紹介した名和晃平(図版1)、深堀隆介(図版2)の作品や、アートフェア東京でも好評だった塩田千春の、DVDによる作品(図版3)など、アートコレクター垂涎の作品も出品されます。

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(図版1)                      (図版3)
Lot.27 名和晃平 / Kohei Nawa         Lot.14 塩田千春 / Chiharu Shiota
《PixCell-Zebra》2007               《Bathroom》1999
ミクストメディア                    DVD(video performance)
h.111×w.43×d.80cm               5min. Ed. 2/3

Estimate: HKD 240,000-480,000         Estimate: HKD 40,000-60,000
JPY 3,000,000-6,000,000             JPY 500,000-750,000
USD 31,000-62,000                 USD 5,200-7,800



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(図版2)
Lot.23 深堀隆介 / Riusuke Fukahori
《七四季 / nanashiki》2008
パネルにマウントされた和紙にアクリル
88×180cm
Estimate: HKD 24,000-60,000 / JPY 300,000-600,000 / USD 3,100-6,200
         

その中で今回私が是非紹介したい作品はこちらです!

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(図版4)
Lot.16  北川宏人 / Hiroto Kitagawa 
《早川 みる子 / Miruko Hayakawa》2007
テラコッタにアクリル彩色
h.48cm
Estimate: HKD 40,000-60,000 / JPY 500,000-800,000 / USD 5,200-7,800


北川宏人は1967年に滋賀県に生まれ、1989年に金沢美術工芸大学彫刻科を卒業、その後イタリア彫刻に感銘をうけ、渡伊。14年間にわたるイタリア滞在時代に出会ったテラコッタの技法を自らの表現手法とし、一貫してテラコッタにアクリル彩色というスタイルで制作しています。近年では金沢21世紀美術館や東京国立近代美術館工芸館をはじめとする国内の美術館に展示されており、また、先日のアートフェア東京などのアートフェア、そして弊社を含めたアジアのオークション会社がこぞって作品を出品しています。

代表的な作品はマンガやアニメに登場するヒーローをイメージした【ニュータイプシリーズ】や、07年の夏から続く「今どきの若い人」をテーマに《花房みどり》など、具体的な名前を冠した【ポストニュータイプシリーズ】があり、今回の作品《早川みる子》はこのシリーズにあたります。

 この【ポストニュータイプシリーズ】では、一見お洒落な服装を身にまとい、「普通」に見える若者たちが主題となっています。しかし、そこにはそんな彼らが直面し、その心に内包するいじめや引きこもりなど現代特有の問題が、ポケットに手を突っ込んだ猫背の体、焦点の定まらない瞳といった現代の若者に共通するような特徴によって表現されています。彼らが抱える不安が、北川宏人という作家の視点によって鋭角的に切り取られた作品であるといえるでしょう。


それでは、最後にAsian Auction Week in Hong Kongについて改めてご案内をさせていただきます。

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CONTEMPORARY ART AUCTION概要 =Asian Auction Week in Hong Kong= はこちら


(執筆:K)

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西洋美術、暮らしを彩るアンティークス

 今週は西洋美術オークションの下見会を開催中です。
 今日は会場の様子をご紹介します。
 
 下見会場の入り口には、昔のジノリ、ドッチァ窯で作られた大壷が堂々とした風格で皆様をお出迎え。
無題3
Lot73 《ジノリ・ドッチア / 金彩色絵「古代ローマ庭園の図」飾壷》
¥3,000,000 – 5,000,000


 ドッチァ窯は、1735年、イタリアのフィレンツェから数キロ離れたドッチァ地域で誕生した窯です。同地に別荘を所有し、メディチ家と共にフィレンツェを治めていた名門貴族のカルロ・ジノリ侯爵が、マジョリカ陶器全盛のイタリアに、ドイツのマイセンやウィーン窯に対抗できる陶磁器の焼成のために作らせたもの。
その後150年以上、五代に渡りジノリ家が所有していましたが、1896年にミラノのリチャード陶磁器会社と合併し、リチャード・ジノリ陶磁器会社になって今に至ります。
 本作品に見られる古代ローマ庭園の遠近感が強調された図柄は、ルネサンス絵画や古代装飾の再興への志向が窺われ、高さ100cmを超える大きさにはジノリ窯が自国で確立した陶磁器製品の権威と誇りが感じられます。


 年に二回の西洋美術オークションには、日常を美しく彩る数々の品が出品されています。
 たとえばこんな照明が、廊下の突き当たりにあったら素敵ですね。
無題1
LOT253
《ガレ / 花文彫ブラケット》
¥550,000 – 800,000



 読書好きの方には、こんなテーブルランプはいかがでしょうか。
 照明の雰囲気の良さでは、ヨーロッパはさすがに先進国ですね。日本製には無い魅力があります。
無題2

LOT171 ★
《シュナイダー / 色硝子テーブルランプ》
¥50,000 – 100,000



 食器では、マイセンのコーヒーセットが可愛らしいです。
 全体に丸みを帯びたデザインが、貴族の女性好みのセットですね。
釉薬のツヤが、照明をきらきらと反射して、食卓に置いた時いっそうの華やかさを演出します。
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LOT112
《マイセン / 金彩色絵花文コーヒーセット》
¥180,000 – 300,000



 西洋美術オークションは今週末、土曜日の15時からです。(詳しい日程はこちら
 ご来場をお待ち申し上げております。

(執筆者:I)

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岸田劉生「静物(砂糖壺・リーチの茶碗と湯呑 林檎)」、メディアで紹介されました

まさに春爛漫といったお天気が続くここ数日、いかがお過ごしですか。
東京では、桜もあっという間に満開。私も今週はじめに千鳥ヶ淵へ夜桜見物に行って参りました。
月明かりに浮かぶ桜の幻想的な姿にしばし見惚れました。

さて、本日は当社のメディア掲載情報をお伝えします。
先日の20周年記念オークションに出品された、岸田劉生「静物(砂糖壺・リーチの茶碗と湯呑 林檎)」(落札予想価格:1億円~1億5,000万円 / 落札価額:1億3,500万円)。
43年ぶりに公の場に出たこと、また、画家の最も充実した作画期に制作された作品であることなどから、オークション開催前からいくつかの媒体で取り上げていただきました。
オークション当日は大きな注目があつまり、翌日にも全国紙・およびNHKにニュースとして報道されました。

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●3/22 読売新聞朝刊
「不況吹き飛ぶ高額落札、岸田劉生の静物画が1億3500万」

●3/22 朝日新聞朝刊
「岸田劉生の油彩画、1億円超で落札 東京でオークション」

●3/22 毎日新聞朝刊
「岸田劉生:油彩画1億3500万円で落札」
http://mainichi.jp/photo/news/20090322k0000m040095000c.html

●3/22 NHK「おはよう日本」

●3/4  産経新聞
「1億円突破? 岸田劉生の「静物画」競売へ」
http://sankei.jp.msn.com/culture/arts/090304/art0903042146008-n1.htm

今後もこういった素晴らしい作品をご紹介していけるよう、社員一同日々精進して参りますので、
これからもシンワアートオークションをよろしくお願いいたします。


(執筆:N)

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アートフェア東京2009に行ってきました

 土曜日のコンテンポラリーアートオークションにご来場いただいたみなさま、どうもありがとうございました。様々な国からお越しのお客様にご参加いただき、活気あるオークションとなりました。

 先日のブログでもお話しましたが、先週の東京はアートイベントが盛りだくさんでした。夜や土日は混雑している会場も多かったようです。もしかしたらみなさんとどこかですれ違っていたかもしれませんね。本日は、4/3(金)~4/5(日)まで東京国際フォーラムで開催されたアートフェア東京のレポートです。

 4回目となる今年は、過去最大規模の140以上のギャラリーが出展。古美術からコンテンポラリーアートまでが一堂に会した東京国際フォーラムの会場に加えて、今年から、国際フォーラム隣のTOKIAが第2会場として設定されました。TOKIAの方では、設立5年以内の若手ギャラリーが展示を行いました。一度にこんなにたくさんのギャラリーを見られるなんて、なかなかない機会ですよね。

 広いホールに100以上のブースがひしめく国際フォーラムの会場は、コンテンポラリー系のギャラリーが目立ちます。
当社のオークションでおなじみの作家の作品もそこかしこに。


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加藤 泉
無題、2008
木、油彩、アクリル、石
114 x 98 x 33cm

撮影:渡邉郁弘
courtesy of ARATANIURANO

加藤泉は、2007年のヴェネチア・ビエンナーレで展示したアーティストで、ギャラリーの個展ではすぐ作品が売切れてしまうとか。シンワの4月4日のオークションには水彩作品が出品されました。


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塩田千春
“ZUSTAND DES SEINS(存在の状態)- 子供服” 2008
鉄枠、糸、衣服、アクリル絵具
h.60 x 30 x 30cm

photo : Tetsuo Ito
courtesy of KENJI TAKI GALLERY

塩田千春は、ドイツで勉強し活動を続けてきたアーティストです。初期の代表的な映像作品が5月15日に香港で開催するコンテンポラリーアートオークション、Asian Auction Week in Hong Kongに出品される予定です。

 コンテンポラリー系は、新作はもちろん、自分が知らなかった作家の作品に出会えたりしていつも刺激になります。運が良ければ、作家さんご本人とお話しできたりしてしまうのも楽しいですね。私が訪れたときは、ちょうどブースにいらっしゃった秋山祐徳太子さんが作品のお話をしてくださり、ロッカクアヤコさんのライブペインティングも見られました。

 また、近代美術、陶芸、古美術系は、展示のすばらしさが目をひきました。
川瀬忍の青磁と高松次郎の油彩、鈴木治の陶芸と山口長男の油彩など、ジャンルや時代の異なる作品を組み合わせて、様々な年代層のお客様にアプローチされていたようです。畳を敷いたり、引き戸の入口を設けたりと、作品やお店の雰囲気に合ったブースづくりをされていたのも印象的でした。

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川瀬 忍
“青磁花入” 2007
陶磁器
22.8 x 18.4 x 17.3cm

(c)2008 Shinobu Kawase/Ginza-Kuroda touen Co., Ltd. All Rights Reserved.




個人的には、「こんな名品をアートフェアで見られるなんて!」という出会いを毎回期待してしまいますが、今年はデ・キリコや伊藤若冲の作品が見られました。

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伊藤若冲
“兜に鷹図”
江戸時代(19c)
紙本 水墨
96×28cm(本紙寸法)
181×40cm(全体寸法)

加島美術


 

 
 アートフェア東京の魅力的なところは、様々なジャンルのギャラリーが出展しているので、コンテンポラリーアートを好きな人が、陶芸作品を購入したり、逆に、古美術通のお客様がコンテンポラリーアートに興味を持ったりするところかもしれませんね。
最近は、アートフェア東京のほかにも日本で開催されるアートフェアが少しずつ増えて、だんだん一般的になってきたような気がします。アートを生活の中に取り入れることが、いろいろなジャンルを超えて広い世代にもっと浸透していったらいいですね。


(執筆:K&S)

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樋口佳絵のテンペラ

 本日は、前回ご紹介致しました写真家、須田一政の作品に続き、今週末のコンテンポラリーアートオークションに出品される、樋口佳絵の作品をご紹介したいと思います。


 1975年生まれの樋口佳絵は、油彩にテンペラという手法を加えながら、独自のアート世界を築いてきた若手の作家です。

 テンペラとは、混ぜ合わせるという意味のラテン語「Temperare」を語源としている絵画技法のひとつです。材料としては、鶏卵の黄身や膠(にかわ)、蜂蜜などを乳化剤に使い、粉状態の色付きの顔料と混ぜて作った絵具を使います。
 15世紀のヨーロッパの画家たちは、自ら色付きの鉱物を探し、それを粉にして作った顔料に乳化剤を混ぜて絵を描いたそうで、乳化剤には、現在と同様に手に入れやすかった鶏卵が主に使われたそうです。

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Lot 59
樋口佳絵 《正午》
パネル、油彩・テンペラ 裏にサイン・年代
31.8×40.9cm
エスティメイト:¥150,000 – 300,000


 テンペラの支持体になるのは、普通、板の上に純白の石膏を綺麗に塗りつけ、それを乾かしたものです。その乾いた地の上に絵を描くのですが、それは、最初の支持体から一つ一つ手作業で作り上げるという、作家にとってキャンバスでの制作とはまた異なる愛着が生まれる作業に違いありません。
 ヨーロッパでは昔から使われてきたこのテンペラという技法は、耐久性にすぐれ、時間が経っても色が変わりにくいので、何世紀も持つと言われます。現代になってからのテンペラは、テンペラに油彩の長所を加えて、一緒に使うのが普通になりました。

 このような古典的なテンペラ技法をコンテンポラリーアートに用いるアーティスト・樋口佳絵は、1997年東北生活文化大学生活美術学科を卒業し、2005年には宮城県芸術選奨新人賞受賞、2007年の「VOCA展2007」大原美術館賞受賞など、仙台を拠点に精力的な活動を見せながら、その実力を認められてきた作家です。

 当社のコンテンポラリーアートオークションにも、彼女の作品はよく出品され、日本はもちろん海外からもその問い合わせが増えつつあります。

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Lot58
樋口佳絵 《発声練習》
パネル、油彩・テンペラ 裏にサイン・年代
88×75cm
エスティメイト:¥400,000 – 600,000

 ご覧の通り、樋口の作品には子供たちの純真無垢で可愛い姿が主なモチーフとして現れます。彼女は子供たちがふとした時に見せる心の隙間を掬い取り、静かに優しく描き出します。そして、テンペラ下地の石膏の奥に染み込んだ絵具は、深くあたたかな色に熟成され、永遠に続き、広がっていきそうな不思議な空間を生み出しています。彼女の作品を前にしていると、子供たちの素直な顔、時に悲しげなその表情から、心の奥までシンと届くような言葉にはしがたい穏やかな気持ちに包まれます。


 本作品は、今週の土曜日の12:00まで、シンワアートミュージアムでお客様をお待ちしております。
 是非お見逃しなく!

(執筆者:W)

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