12月古美術オークションより 仁清と明治の工芸

こんにちは。
先日の近代美術/近代美術PartⅡ/MANGAオークションにご来場いただいた皆様、誠にありがとうございました。
早いもので、2018年も残すところ1ヶ月と少しとなりました。
12/1(土)の近代陶芸/古美術/近代陶芸PartⅡオークション、12/8(土)のSHINWA MARKETのBAGS/JEWELLERY&WATCHESオークションで本年のオークションは終了です。本年も大変お世話になり、ありがとうございました。来年もどうぞ宜しくお願いいたします。

さて、本日は、1日(土)古美術オークションの出品作品の中からおすすめの作品をご紹介させていただきます。



122 仁清


《信楽写し瓢下耳付水指》
  H17.9×D18.2cm
  底部に印銘「仁清」
『陶磁大系23 仁清』№84
(平凡社)掲載【本付】

 落札予想価格
 ¥2,000,000~¥3,000,000


仁清(にんせい)(生没年不詳)は、江戸前期の京都で、彩り豊かな色絵陶器を完成させた京焼の祖と言われる名工です。

瀬戸や美濃などで修業を積み、正保四年(1647)頃に仁和寺門前に御室窯を開窯。仁和寺の「仁」と本名の清右衛門の「清」を一字ずつ取って仁清と号し、後水尾天皇を中心とした宮廷サロンや茶人・金森宗和との関わりの中で、優美で雅やかな陶器を生み出しました。

本作は、華麗な色絵ではなく、仁清作品のもう一つの魅力である轆轤成型による造形美が徹底して追求された水指です。仁清の色絵が大名好みだったのに対し、本作のように絵付けされていない作品は、京都の公家に好まれたと言われています。
本作では、下方に付けられた耳と温かみのある曲線を描く器形が典雅な趣を感じさせます。この特徴的な造形は、《白釉耳付水指》(出光美術館蔵)などにも見られる、仁清が得意としたものです。また、蓋つまみの縁が輪花形に刻まれていて、仁清の装飾性の高さと洗練された感性をうかがわせます。


123 梨子地菊蒔繪提箪笥

H30.4×W26.2×D39.6cm
『井上侯爵家御所藏品入札目録』二〇九  掲載
東京美術倶楽部/大正十四年(1925)【目録付】
「~超絶技巧~明治期の工芸展」№16 出品
日本橋三越本店/平成二十八年(2016)【目録付】

落札予想価格
¥3,000,000~¥5,000,000


絢爛豪華な装飾性とリアルな表現を徹底的に追求した明治の工芸は、その驚くべき「超絶技巧」で近年注目を集めています。
本作も、明治期の作と伝わる蒔絵の提箪笥(さげだんす)です。提箪笥は、主に身の回りの小物や書類などを携行する日常の道具ですが、本作はその華麗さゆえ、思わずうっとりと見入ってしまいます。表面の菊花の高蒔絵だけでも十分に美しいのですが、四隅や扉の金具、提鐶(さげかん:上面に付いた持ち手)に施された彫刻、引出し内側の梨子地(漆の上に金や銀粉を蒔き、さらに透明漆をかけ、粉が見えるよう研ぐ技法)なども本当にお見事。細部に至るまで技術の粋が尽くされています。


←扉の内側です。

     扉を開け、引出しを引くと、いっそう華やかな世界
     が広がります。皆様なら引出しの中に何をしまいま
     すか?



これらのほか、このたびの古美術は、代々の天皇の宸翰(しんかん)、一休宗純の一行など、書がとても充実しています。また、近代陶芸では、加藤唐九郎の《志野茶盌 銘 薄ずみ》、北大路魯山人《金銀水玉花入》などもおすすめです。
ぜひ下見会で実物をご覧ください。

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皆様のお越しを心よりお待ちしています。

(佐藤)

パリを描いた画家 増田誠

こんにちは。
11月に入り、東京でもあちらこちらで紅葉が楽しめるようになってまいりました。
いよいよ秋が深まって、冬はもうすぐそこという感じがいたします。

さて、今週17日(土)は、近代美術/近代美術PartⅡ/MANGAオークションを開催いたします。今回は近代美術と近代美術PartⅡ、どちらにも出品されます増田誠の作品をご紹介いたします。




67 増田 誠《街角》
        73.0×60.0cm
        キャンバス・油彩 額装
        右下にサイン

        落札予想価格
       ¥200,000~¥400,000


増田誠(1920-1989)は、パリを拠点にヨーロッパ各地を訪れ、街角や港、市井の人々の暮らしの中に漂う哀歓を親しみを込めて描き続けた画家です。対象のフォルムを平面的に捉え、その詳細を細やかな線描で描き加えるという手法によって生み出された作品は、「パリの庶民へのオマージュ」とも言われています。

山梨県に生まれた増田は、中学校卒業後、教員として働き始めましたが、1941年に従軍。戦後は、北海道釧路に移住し、得意の絵を生かして看板業を営みました。その傍らで画家を志し、一線美術の上野山清貢に師事します。1952年より上野山の勧めで一線美術展に出品し、受賞を重ねるも、次第にヨーロッパへの憧れを強め、1957年に念願のパリに渡りました。
パリでは、1960年にシェルブール国際展でグランプリを受賞し、1963年にサロン・ドートンヌ会員となり、画壇で活躍していきました。1970年からは、日本でも毎年個展を開催しています。

本作はパリの《街角》を描いたものでしょうか。
観光スポットや賑やかな大通りではなく、近くに住む人しか通らない裏道のようで、旅行者ではない、パリに暮らす者としての画家の眼差しを感じさせます。
また、建物をマッスとして捉え、走るような細い線でその詳細を描き込んでいくという増田らしい描法により、長い年月を経た建物が味わい深く表現されています。
道路の先に鑑賞者の視線を誘うような画面構成もドラマティックで、どこにでもある裏通りが特別な風景に見えてくるようです。
  


668 《Bar Basque,Paris》

            46.3×38.1cm
            キャンバス・油彩 額装
            左下にサイン

            落札予想価格
            ¥100,000~¥200,000
         
            下見会は終了しています

こちらも観光客の来るような店ではなく、パリの片隅にあるバーといった雰囲気です。
バーに集う人々の喜びや哀しみに寄り添うように本作を描いたのでしょうか。




671 《アムステルダム》
            38.3×55.1cm
            キャンバス・油彩 額装
            左下にサイン
            裏に署名・タイトル

            落札予想価格
           ¥150,000~¥250,000

          ※下見会は終了しています


増田は、ヨーロッパを中心に世界各地を訪れ、その街や人を描きました。
本作では、オランダ、アムステルダムの街を流れる運河と運河沿いの建物が表わされています。
歴史ある建物群と置時計型の特徴的な屋根に興味を抱いたのでしょう。水に映るもう一つの風景の美しさもまた見どころです。

増田誠はこのほかにも近代美術PartⅡに3点出品されます。
また、下見会では、岡鹿之助や荻須高徳など、増田と同じようにパリで暮らし、その風景を描いた作家たちの作品もご覧いただけます。同時開催いたしますMANGAオークションの作品も、引き続き展示していますので、ぜひ会場にお越しください。


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皆様のご来場を心よりお待ちしています。

(佐藤)

アール・ヌーヴォーの精華―アンドレ・トゥイエ、ドーム&マジョレル

こんにちは。
9月15日のリニューアル記念特別オークションから今月13日のワインオークションまで、当社ではほぼ1ヶ月間毎週オークションを開催しておりました。季節はずれの夏日も台風の日も、毎週のようにお越しいただいた皆様、誠にありがとうございました。

さて、今週27日(土)は、西洋美術オークションを開催いたします。
今回も出品作品の中から、おすすめの作品をご紹介いたします。
ともに19世紀末~20世紀初頭、アール・ヌーヴォー期に制作されたフランスの美の精華です。


 

 

 

 

         お顔のアップ。
      どの角度から見ても美少女
      です。

 

 

         ヘッドマーク


77 アンドレ・トゥイエ
ビスクドール
H59.5cm
ヘッドマーク有
落札予想価格 ¥2,000,000~¥3,000,000


愛好家の垂涎の的と言われる、アンドレ・トゥイエのベベ・ドールです。
ビスクドールがお好きな方はもちろんご存じかと思いますが、アンドレ・トゥイエ(A.T)は1875年頃から1893年までの短期間にベベドールを製作したと言われる工房です。しかし、その詳細は明らかでなく、ジュモーやブリュに対して現存する作品数も圧倒的に少ないため、しばしば「幻のアンドレ・トゥイエ」と呼ばれています。
本作の優雅にカールしたロングヘア、大きなリボンと繊細なレースが施された衣装は、大変希少なオリジナルの装飾品です。ドレスの内側にも、リボンやレースの付いた可愛らしい下着を着ており、本作がとても丁寧に作られ、120年以上もの間大事にされてきたことがわかります。



106 ドーム&マジョレル
鉄台タンポポ型3灯式テーブルランプ

H59.5×W25.0cm
各傘に陰刻銘
鉄台下部に銘
ヴィトリフィカシオン

落札予想価格 
¥800,000~¥1,200,000


アール・ヌーヴォーの家具デザイナーとして知られるマジョレルと、ドームの共同制作によるテーブルランプです。ドームはマジョレルのほか、ブヴァルやブラントなど、優れた金工作家や家具デザイナーとともに様々なタイプのランプを制作しました。
ドームによる、タンポポのつぼみを模したランプは、点灯時、黄色とオレンジのグラデーションがとてもきれいです。また、マジョレルによる、直線と曲線を巧みに組み合わせた鉄台は、地面に折り重なるような立体的な葉のフォルムが美しく、19世紀末に流行した象徴主義的な雰囲気も感じさせます。

このほかにも、ガレやワルターのガラス、クムやイスファハンの絨毯34点など、制作された地域や時代の異なる様々な品々が出品されます。作品によっては実際にお手にとっていただくこともできますので、ぜひ下見会で実物をご覧ください。


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皆様のご来場を心よりお待ちしています。

(佐藤)

秋に楽しむ陶芸オークション

先週行われました「リニューアル記念特別オークションY氏コレクション―ART JUNGLE」にご参加いただいた皆様ありがとうございました。

今回は、今週末に行われる「近代陶芸/近代陶芸PartⅡオークション」の作品をご紹介いたします。

■LOT.209 加藤唐九郎「絵志野茶碗 銘 残月」
 H9.3×D15.0cm
 高台脇に掻き銘「玄」
 共箱 1984年作
 「生誕百年記念 加藤唐九郎展」出品 日本橋髙島屋他/1997年
 『加藤唐九郎作品集』掲載 №38(日本経済新聞社)
 落札予想価格
 ¥6,000,000~¥8,000,000

加藤唐九郎は、1897(明治30)年に愛知県東春日井郡水野村(現在の瀬戸市)で生まれました。唐九郎は誰よりも陶磁器を研究し、陶芸界に多大なる貢献を果たしました。その豪快でおおらかな人柄も相まって、未だ人気が衰えることなく愛され続けている陶芸家の一人です。

元々唐九郎は作品に作者銘をほぼ入れておらず、戦後の短期間だけ「TK」(唐九郎の意味)と記していましたが、作品に作者銘を入れることの必要性を感じ、1961年から作者銘を入れ始めました。この銘が年代とともに変遷することが、コレクター心をくすぐる一つの要因かもしれません。本作のほかにLOT.208「志野茶碗」の搔き銘は「一ム」と入っています。そのころ唐九郎は、漢学者の服部担風の元を訪れ、「からっぽになって一からやりなおせ」という意味で、「一無斎」という号を贈られました。そこから「一ム才」という銘を入れ始め、翌年にはそれを略した「一ム」という銘に変え、1979年頃まで使用しました。その後、「ヤト」「六三」「陶玄」と続き、晩年に本作で使用された「玄」へと移行しました。この「玄」は、「陶(とう)玄(くろう)」の略で、丸みを帯びたものだと「団子の玄」とも呼ばれます。

亡くなる前年に作陶された本作は、紫とまでは行かないまでも、ちょうど明るくなり始めた明け方の空を思わせます。そこに絵付けで入れられた半分消えかかった月。唐九郎自身が付けた作品の銘「残月」により、作品の情感がより際立っています。

 

また今回は蒔絵の作品が多数出品されます。

 

平安時代に発達した蒔絵は、日本の漆工芸を代表する装飾技法であり、仏教美術、茶道具、文房具、日常雑器と多岐に渡ります。本オークションでも印籠、香箱、太刀掛、刀掛、箪笥、笙、文箱、硯箱等をご覧頂くことが出来、いつもとは違ったきらびやかな下見会場をお楽しみいただけます。蒔絵や螺鈿といった技法のみならず、箪笥や箱物の仕立ての妙にもぜひご注目ください。

 

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執筆者E

岸田劉生の人物画―《村娘座像》と《麗子像》

こんにちは。
いつのまにか暑すぎる夏が終わり、朝晩はすっかり涼しくなってまいりました。6月から行っておりました当社1階の改装工事も終了し、今回のオークションから新しい下見会場で皆様をお迎えすることになります。

というわけで、改装後初めてのオークションとなる9月15日(土)は、「リニューアル記念特別オークション Y氏コレクション―ART JUNGLE」を開催いたします。
このオークションは、下見会場のリニューアルオープンとShinwa Prive株式会社のギャラリー開廊のご挨拶として開催させていただくものです。創業以来、独創的な経営術で増収増益を更新し、一代で巨大企業を築き上げられた財界の革新者Y氏が、ご自宅の様々な空間に飾り、賞玩されたやきものや絵画、愛用されてきた家具など、そのプライベートコレクションが出品されます。

今回はその出品作品の中から、おすすめの作品をご紹介いたします。
没後90年を来年に控え、早くも各地で展覧会が開催されているあの偉才の名作です。




293 岸田劉生(1891-1929)
《村娘座像》
50.5×34.0cm
紙・水彩 額装
大正9(1920)年3月14日作
右上にタイトル、中央上にサイン、左上に年代
劉生の会登録証書付

落札予想価格 
¥60,000,000~¥120,000,000








【掲載文献】

・『岸田劉生画集』(1980年/岩波書店)No.70
・『郡山市立美術館 研究紀要 第3号 岸信夫作成「岸田劉生の作品に関する私ノート」1915-1929』
(2003年/郡山市立美術館)P.71、図29   ほか多数

【出品歴】
・「岸田劉生 三十三周忌記念 代表作展」1961年(銀座松坂屋/朝日新聞社)
・「没後50年記念 岸田劉生展」1979年(東京国立近代美術館)  ほか多数


岸田劉生は、夭折の画家にして、日本の近代美術を代表する巨匠の一人です。
重要文化財となった《道路と土手と塀(切通之写生)》(東京国立近代美術館蔵)や《麗子微笑(青果持テル)》(東京国立博物館蔵)など、幅広い主題に名作を残しました。
特に、人物画においては、「岸田の首狩り」と呼ばれるほど、家族や友人、知人の肖像を次々に手掛け、愛娘の麗子、そして村娘・お松をモデルとした優れた連作を生み出しました。

劉生の日記より、本作は大正9(1920)年3月13日に着手し、翌日完成させたお松9歳頃の座像。
14日の日記には、その出来栄えについて、「よく行きたる様なり」と記されています。
このお松という少女は、劉生が神奈川県鵠沼に住居を構えた時期(1917~1923)に近所に住んでいた漁師の娘で、麗子の遊び友だちとなり、劉生の絵のモデルも務めました。
一連のお松像では、田舎娘らしい素朴な美しさを表わすため、主に水彩や素描の技法が用いられていますが、劉生は水彩の「新鮮な自由な大胆な強い味」を好み、油彩ほど時間をかけずに対象の「美をいきなりつかむ」ことができる技法として重視しました。本作においても、お松から感じ取った「顔や眼や眉の変(ママ)に宿る不思議な澄んだ永遠な美、生きた力」を水彩で直ちに捉え、実にみずみずしく描き出しています。
少女の真直ぐさ、純粋さを感じさせる、きらきらと輝く瞳が印象的な作品です。


294  岸田劉生
《麗子像》
20.0×14.0cm
紙・インク  額装
大正9(1920)年11月3日作
中央上にサイン・年代・タイトル
劉生の会登録証書付

落札予想価格
¥2,000,000~¥4,000,000

【掲載文献】
『岸田劉生と草土社』(1985年/下関市立美術館)P.113
『郡山市立美術館 研究紀要 第3号 岸信夫作成「岸田劉生の作品に関する私ノート」1915-1929』
(2003年/郡山市立美術館)P.78、図70



【出品歴】

「江戸堀画廊開廊20周年 洋画物故作家展」1990年(江戸堀画廊)


近代美術を象徴するイメージ、と言っても過言ではない「麗子像」の一点です。
劉生は、生まれたばかりから16歳まで、座像を中心におよそ100点にも及ぶ様々な麗子像を描きました。
インクで描かれた本作の麗子は6歳頃。《麗子微笑(青果持テル)》と同様に、毛糸の肩掛けを羽織っています。この肩掛けは、元々お松が持っていたのを、劉生がその「毛糸のほつれた美しさ、色のひなびたとり合せの美しさ」に惹かれ、譲ってもらったものだそうです。彩色は施されていませんが、肩掛けのざっくりとした編み目やもこもことした暖かそうな質感が簡潔な線描で表わされています。
ちなみに、《村嬢於松立像》(東京国立近代美術館蔵)などでは、お松がこの肩掛けを身に付けています。


ぜひ劉生の名作を新しい会場でご覧ください。
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皆様のお越しを心よりお待ちしております。



(佐藤)

能道のゆたかな色彩/樂随一の陶工・ノンコウ

 爽やかな初夏の季節となりました。梅雨がやってくる前に、もうしばらくこの季節を楽しみたいものですね。

 さて今週末に行われます近代陶芸/古美術/近代陶芸PartⅡオークションからこちらの作品をご紹介致します。


能道のゆたかな色彩

LOT.198 藤本 能道
「草白釉釉描色絵金彩小鷺飛ぶ沼六角大筥」
H13.0×W32.4cm
高台内に描き銘「能」 、「小鷺飛ぶ沼」記
共箱
落札予想価格:¥2,000,000~¥3,000,000

 藤本能道(よしみち)【1919-1992】は富本憲吉、加藤土師萌に続き、東京美術学校(現東京藝術大学)を卒業し「色絵磁器」で重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された陶芸家です。色絵磁器は普通、輪郭線を描いて絵付けする箇所を小分けにし、色が混ざらないように塗っていきますが、能道は没骨描法で描き、焼成して最終的に色が美しく溶けて混ざるところを予想し絵付けを行いました。また、釉薬も青み掛かった「草白釉」、雪のような白さの「雪白釉」、赤み掛かった「梅白釉」など独自の釉薬を生み出しました。

今回は草白釉と雪白釉の筥と陶板がそれぞれ出品されます。釉薬の色味の違いや、美しく溶け合う絵付けの様子をぜひご覧ください。


樂随一の陶工・ノンコウ

LOT.125 樂道入
「赤茶碗 銘 福の神」
H8.2×D12.5cm
高台内に印銘「樂」
覚々斎、玄々斎、即中斎書付
『上京神田氏所蔵品入札もくろく』掲載 一二五番
 京都美術倶楽部/大正十六年(1917)【目録付】
落札予想価格:¥4,500,000~¥6,500,000

 樂家初代長次郎の茶碗に千利休が影響を与えたように、三代道入(どうにゅう)【慶長四年‐明暦二年(1599‐1656)】も千宗旦から指導を受けたと言われ、別名の「ノンコウ」は、宗旦が道入に贈った竹花生の銘によるとも伝えられています。長次郎以来の伝統を踏まえながら、それまでには見られなかった装飾的で個性豊かな作行きを確立しました。

 本作では、道入の赤茶碗の特徴の一つである砂釉が施されており、釉表の光沢を抑えるためにざらめきのある砂釉を用いることで、素地土のような荒い趣が表現されています。

 なお、本作は、表千家六代覚々斎により「福の神」の銘が付けられ、裏千家十一代玄々斎、表千家十三代即中斎の書付が添えられています。

「樂の妙手」と本阿弥光悦が讃えたように、樂家歴代随一の陶工とされている道入の赤茶碗をぜひ手に取りご堪能ください。

 

 

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                              執筆者:E

彫刻家 佐藤忠良の子ども像

こんにちは。
先週の近代美術PartⅡ/戦後美術&コンテンポラリーアート下見会にご来場いただいた皆様、誠にありがとうございました。

さて、今週19日(土)は、近代美術/近代美術PartⅡ/戦後美術&コンテンポラリーアートオークションを開催いたします。今回のオークションでは、戦後の具象彫刻を代表する作家、佐藤忠良の作品がたくさん出品されますので、ご紹介いたします。

佐藤忠良(1912-2011)は、宮城県舞野村(現・大和町)生まれ。幼くして父を亡くした後は、北海道の夕張町(現・夕張市)で育ちました。小学校時代に絵の才能を開花させ、中学卒業後は上京し、川端画学校で絵画を学びます。
しかし、ロダンなどのフランス近代彫刻に感化されて彫刻の道を志し、1934年には東京美術学校(現・東京藝術大学)彫刻科に入学しました。卒業後は良きライバルであった盟友、舟越保武とともに新制作派協会(現・新制作協会)の創立に参加し、以後は同会を主な活動の場としていきました。

佐藤忠良の彫刻といえば人物像、特に現代的な女性像に定評がありますが、忠良の独自性が最もよく表われた主題は、子ども像でしょう。戦後、小学生となった自身の息子や娘の頭像を手掛けたことから始まったこの主題は、1960年代に入り、友人の画家・朝倉摂の娘をモデルとして本格的に展開されました。




















101 《きかん子’78》                                                                102 《ミナ一年生》
H19.5cm                                                                                    H26.5cm

ブロンズ                                                                                    ブロンズ
昭和53(1978)年作                                                                昭和54(1979)年作 
側面に刻銘・年代                                                                     背面に刻銘・年代                              Ed.8                        Ed.8
佐藤忠良の会証明書付                      佐藤忠良の会証明書付     
落札予想価格                                                                          『佐藤忠良 彫刻七十年の仕事』         ¥300,000~500,000                                                              (2008年/講談社)№79-03
                                     ほか掲載  
                                                                                                   落札予想価格
                                                                                                      ¥500,000~800,000

101と102は、ともにふっくらとしたほっぺがかわいらしい子どもの頭像で、確かな技術とリアリズムに基づき、表現されています。
《きかん子》という作品名がぴったりな101の表情からは、モデルのいかにもわんぱくな感じが想像でき、思わずくすりとしてしまいます。102は自身の孫をモデルとした作品ですが、恥ずかしがりやで純粋な7歳の女の子の内面性がよく表現されています。



104 《指》
H47.0cm
ブロンズ
昭和45(1970)年作
側面に刻銘
Ed.10
自筆証明書付
『佐藤忠良 彫刻七十年の仕事』 
 (2008年/講談社)№70-06 ほか掲載
 落札予想価格 ¥700,000~1,000,000

こちらは、自分の指をじっと見つめる少女の像。上の2点の子どもたちより少しお姉さんです。
その姿は、どこかもの思いにふけるようでもあり、傷つきやすく繊細な思春期の心模様が丁寧に掬い取られているようです。腰掛けて足を伸ばした身体もバランスよく捉えられています。



105 《冬の子供》
H107.5cm
ブロンズ
昭和40(1965)年作
側面に刻銘
Ed.8
佐藤忠良の会証明書付
『佐藤忠良 彫刻七十年の仕事』
 (2008年/講談社)№65-02    ほか掲載
落札予想価格 ¥2,000,000~3,000,000

1960年代の作であることから、モデルは朝倉摂の娘でしょうか。小さな女の子が本当にそこに立っているかのような、確かな存在感を感じさせます。
さらに、寒い冬も外で元気に遊ぶ子どもの無邪気さが表わされており、膝小僧を出しながら、暖かそうなコートを着た佇まいがなんともかわいらしく、頭をなでてしまいたくなります。


立体作品には、画像では表現しきれない佇まいの良さがあります。
ここでご紹介した4点のほか、若い女性の頭像《Y子の像》も出品されますので、ぜひ下見会場で現物をご覧ください。

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皆様のご来場を心よりお待ちしております。


(佐藤)


宮本三郎の裸婦像

こんにちは。
10日の近代陶芸/近代陶芸PartⅡオークション、17日までの近代美術PartⅡオークション下見会にお越しくださいました皆様、誠にありがとうございました。

さて、今週は、近代美術/近代美術PartⅡオークションを開催いたします。
今回のおすすめは、裸婦や女優などの女性像で知られ、東京や石川に美術館のある国民的な洋画家…当社のオークションでもおなじみの宮本三郎です。
24日(土)の近代美術オークションには、宮本の女性像の名作が3点出品されます。

宮本三郎(1905-1974)は、石川県能美郡未佐美村(現・小松市)に生まれました。
17歳で上京し、川端画学校で藤島武二に学んだ後、人物画の名手である安井曽太郎や前田寛治にも指導を受けます。第4回二科展に初入選して画壇に頭角を現し、1938年にヨーロッパに留学した際は、古典絵画に大きな影響を受けました。戦後は二紀会の創立に参加し、その中心的な存在として活躍。金沢美術工芸専門学校(現・金沢美術工芸大学)や多摩美術大学で教鞭を執り、日本美術家連盟の理事長を務めるなど、日本の洋画界のために力を尽くしました。
正統的なレアリスムを基礎とする、豊麗かつ幻想的な「花と裸婦」シリーズで人気を博した、昭和の洋画壇を代表する画家の一人です。

 

  24 《薄絹の女》
               68.1×33.6cm
        キャンバス・油彩 額装
              昭和48(1973)年作
              東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書付
            『画集 宮本三郎 花と風景と女』
                    (1973年/毎日新聞社)№.30
            『宮本三郎』(1974年/三彩社)P.15
            『宮本三郎の世界 花と裸婦と…』
                    (1978年/毎日新聞社)P.21
              落札予想価格 ¥2,000,000~¥3,000,000

【オークション終了につき、画像は削除いたしました】

 
宮本が、裸婦を主題とする華麗な連作に着手したのは、円熟期にあたる1967年のことです。
女性が鏡の前に立ち、帽子を被る様子が描かれたこの作品も、なんとも官能的な一点。顔の部分に陰影が施され、女性の表情をうかがい知ることはできませんが、それがかえって、シースルーのワンピースから透ける肌に、観る者の視線を誘導するようでもあります。



 25 《立像裸婦》
        67.8×33.8cm
       キャンバス・油彩 額装
        東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書付
        落札予想価格 ¥2,000,000~¥3,000,000

【オークション終了につき、画像は削除いたしました】
 
こちらの作品にも、鏡の前の裸婦が描かれています。この「鏡」は、宮本作品にしばしば登場する重要なモティーフです。そこに映るもう一つの世界を効果的に取り入れることで、作品の幻想性がいっそう高められています。
また、燃えるように鮮やかな色彩と奔放な線が交錯する背景は、宮本作品の見どころの一つで、昂る画家の情熱を表わすようです。



26 《三美神》

78.2×46.7cm
キャンバス・油彩 額装
右上にサイン
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書付
落札予想価格 ¥3,000,000~¥5,000,000

【オークション終了につき、画像は削除いたしました】

宮本の代表作《レ・トロワ・グラース》(1970年作・小松市立宮本三郎美術館蔵)と同様、ギリシャ神話の三美神を主題とした作品です。
三美神は、「輝き」、「喜び」、「花の盛り」を表わす美と優雅の女神たち。ですが、描かれているのは、日本人女性をモデルにした現実の裸婦でしょうか。様々な色彩が丹念に塗り重ねられた、上気したように赤みを帯びた裸婦の透き通る肌、肉体のヴォリュームの表現が圧巻です。まるでそこには、宮本三郎の理想の女性美が凝縮されているようです。


これらの作品は21日(水)からの下見会でご覧いただけます。
下見会・オークションスケジュールはこちら

このほか、加山又造や上村松園、福田平八郎といった近代美術の巨匠たちの名品、同時開催となる手塚治虫オークションのペン画やセル画も展示いたします。

内容盛りだくさんの下見会にぜひお越しください。
皆様のご来場を心よりお待ちしています。

(佐藤)

【イベント情報】アートフェア東京 2018 ×3331 ART FAIR レポート

 東京・有楽町では国内最大のアートフェア、アートフェア東京2018が11日(日)まで開催されています。今年は164軒のギャラリーがブースを展開。ルノワール、マティス、キース・ヘリングに李禹煥、東京国立近代美術館で開催中の個展が話題の熊谷守一といった人気作家から新進気鋭の若手まで、ギャラリーオーナーが今の「押し」を並べます。

 ギャラリーオリムブース(North Wing -N18)では、当社にて3月24日(土)に開催される「手塚治虫特別オークション」の出品作品を展示。オークションカタログも配布していますので是非足をお運びください。また、会場受付などで手に入れることができるフリーペーパー類も要チェック。
アートマーケットレポートやアートの買い方についての記事が掲載されており、読んで損のない内容となっています。今週末は東京のアートシーンが一望できるアートフェア東京2018 をお出かけ先候補にご検討ください!

そしてもう一箇所、チェックしたいイベントが…


 末広町・アーツ千代田3331にてアートフェア東京と同時開催されている3331 ARTFAIRにもお邪魔してきました。こちらは趣が異なり、より観る者を選ぶエッジ&ジョークの効いた作品、広いスペースを使用したインスタレーション・作家の世界観を重視した展示、美大在学生の作品を見ることができます。評論家やキュレーター、ギャラリーなどを推薦者として若手作家が多く出展されているのも見どころ。道半ばなものの、言おうとしていることが少しずつ伝わってくる彼らの作品に時間をかけて耳を傾ける楽しみがあります。

 また、比較的手頃な価格で作品を手に入れられるのも魅力。誰もがアートコレクターの目線になることができます。会場では揃いの法被を着た国際色豊かなスタッフとPepperが来場者をエスコート。全体に独特のユートピア感が演出されていました。鑑賞後は会場入口付近で買える創作コッペパンを片手に、自分のお気に入りの作品について他の来場者とおしゃべりしてみるのも良いかもしれません。

アートフェア東京2018公式サイト
https://artfairtokyo.com

3331 ART FAIR公式サイト
http://artfair.3331.jp

 

魯山人と芹沢作品に見る遊び心

桃の節句も過ぎ、いよいよ春が間近に感じられるようになってきましたね。

さて、今週末に行われます「近代陶芸/近代陶芸PartⅡオークション」から、こちらの作品をご紹介致します。

LOT.213・北大路魯山人「そめつけ唐子花入」
      H36.2×D22.1cm
      高台内に描き銘「魯山人」
      共箱
     ¥4,000,000~¥6,000,000

 

北大路魯山人の染付の大きな花入と言えば、詩文などを袋文字で絵付けしたものか、染付一色で描かれる魚図等が代表的ですが、こちらは唐子図で赤玉が入った珍しい作品です。

 明末あたりによく描かれた呉須赤絵の模様のひとつである、赤や緑の網目と花模様の中に赤い玉が描かれた「赤玉手」と呼ばれるこの模様を、魯山人は甚く気に入っていたようで、初期のころから約30年間作り続けました。ここではその赤玉のみを抽出し、ぐるりと配置することで、唐子たちがリズミカルに歩く様子を演出しています。唐子図は通常七人、五人、三人の図柄があり、松の木の下で様々な遊びをしている様子が描かれます。こちらの図柄は、孟母三遷、司馬温公の瓶割、木馬遊び、風車遊び、そして采配を振って遊んでいる五人の唐子が描かれています。人物を描くこと自体稀有な作家ですが、それぞれの動きがなんとも愛嬌のある作品に仕上がっています。

LOT.214・芹沢銈介「型絵染 いろは文六曲屏風」
     134.7×29.5cm
     六曲一隻(171.5×279.0cm)
     芹沢長介シール
    ¥700,000~¥1,200,000

芹沢銈介は、「型絵染(かたえぞめ)」で1956年に重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された作家です。元々芹沢は、静岡で図案家(デザイナー)として仕事をしていましたが、1928年に日本民藝館にて展示された沖縄の「紅型(びんがた)」に魅了され、染織家としての道を歩き始めました。「紅型」は、一枚の型絵を使い、多彩な色を木綿地やまたは上布に染める沖縄の民藝品です。図案家としての技も型絵染に反映させ、染布表紙の装幀の仕事や、屏風、のれん等を数多く手掛けました。また、ガラス絵や板絵、絵本も制作するなど多岐にわたる活動を続けました。

「いろは文」は、芹沢の代名詞ともいうべき作風です。1959年に第一作が作られたとされています。画面に踊るようなデザイン的な文字回りに描かれている様々な民藝品・四季を感じさせる動植物などは、見ているものを飽きさせない遊び心に溢れた作品と言えるでしょう。

 

今回はその他に、印籠や根付が多く出品されます。江戸後期に隆盛を誇った印籠や根付は、身近な装飾品として男女問わず身につけることができ、かつ江戸の人々の繊細な美意識やユーモアを凝縮したような工芸品です。当時の人々の粋な装飾文化もぜひ併せてお楽しみください。

 

下見会場・スケジュールはこちら。                   (執筆者E)