マイセンのフィギュリン

こんにちは。
先日のワインオークションにご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。台風が接近する中、たくさんの方々がご来場くださいました。

さて、今週の24日(土)は西洋美術オークションを開催いたします。
ご入札はご来場のほか書面や電話、オンラインでも承っておりますので、ご都合に合わせてご活用ください。
今回はマイセン特集の中からおすすめの作品をご紹介いたします。

マイセンは、ヨーロッパで最初の白地の硬質磁器を生み出したドイツの名窯です。16世紀から17世紀、東洋からもたらされた薄くて硬い純白の磁器は「白い金」と称讃され、富と権力の象徴としてヨーロッパの王侯貴族たちに蒐集されました。各国の君主が自国での製造を目指す中、ザクセン公国(現在のドイツ北部)の選帝侯アウグスト1世(1670-1733)に製法の解明を命じられた錬金術師ベッドガーが1709年にその製造に成功。翌年、マイセンに王立磁器製作所が設立されると、シノワズリーやロココなど、時代の流行を反映した多彩な装飾様式が次々に展開していきました。


マイセンといえば、エレガントな食器や壷も魅力的ですが、その代名詞として世界中で親しまれているのは、「マイセン人形」(フィギュリン)と呼ばれる小型彫刻でしょう。
この彫像は、中世より宮廷の祝賀正餐会にて主催者の富を象徴する装飾品とされてきた砂糖菓子に代わる豪華なテーブル装飾として、また、室内の棚やコンソールに飾る観賞用の美術品として、1736年に造形家ケンドラー(1706-1775)によって創造され、以後様々な人物像や動物像などが作られてきました。そして、今回のマイセン特集の見どころはこのかわいらしいキューピッドたちです。







Lot.44《ハートを閉じ込めるキューピッド》
H.11.5cm
底部に窯印
落札予想価格 ¥100,000~¥200,000

新古典主義の造形家アシエ(1736-1799)が原型を制作したという16点からなるキューピッド像のシリーズの一つ。本作の台座には「あなたは捕らわれの身です」と書かれており、キューピッドは籠の中にハートを閉じ込めようとしています。このシリーズでは、このように各々の台座にフランス語で愛に関する格言が記され、キューピッドはその内容を示す動作や姿で表わされています。


また、小型彫刻では神話や寓意も欠かすことのできない重要なテーマです。

 

 

 

 

 

 

 

Lot.77《馬車に乗るフローラとゼファー》
H23.4cm                                                                        底部に窯印                                                Lot.78《芸術》                                    落札予想価格 ¥400,000~¥600,000          H46.8cm                                      
                                                                                                  底部に窯印  
                                                                                                  落札予想価格 
                            ¥800,000~¥1,200,000

Lot.77《馬車に乗るフローラとゼファー》は、ギリシャ神話の西風の神ゼファー(ゼフュロス)とその妻で春と花の女神フローラが表わされており、寄り添う二人は男女の愛を示唆するモティーフでもあるでしょう。そして、Lot.78《芸術》はタイトル通り芸術の寓意として表わされた神秘的な女性像ですが、女性が携えたペンと巻物は「詩」を、パレットと絵筆は「絵画」を、リラは「音楽」を象徴する持物と考えられます。

マイセンは全部で40点、そのうちキューピッドは20点ほど出品されますので、お好きな作品を見つけていただけましたら幸いです。また、本オークションにはペルシャ絨毯やステンドグラス、ガレ、ドームなども出品されます。
ぜひ下見会で実物をお楽しみください。
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新型コロナウイルスの感染予防対策にしっかりと取り組み、皆様のご参加をお待ちしております。

(佐藤)

9/19-9/20開催オークションより          おすすめ作品のご紹介(2)

こんにちは。

いよいよ今週の土曜日に「近代陶芸/近代陶芸PartⅡ/近代美術/戦後美術&コンテンポラリーアートオークション」が、日曜日には「BAGS/JEWELLERY&WATCHES/近代美術PartⅡオークション」が開催されます。2日間に分けて行いますので、開催スケジュールにご留意いただきぜひご参加ください。また会場にお越しになられなくても書面、電話、オンラインでも入札を承ります。カタログをお持ちでないお客様は、オンラインカタログでも作品の画像をご覧いただけますので、まずはそちらからお気軽に覗いてみてくださいね。

さて、今週は近代陶芸オークションから作品をご紹介いたします。

 

 

鍋島藩窯の御用赤絵師であった有田の今右衛門窯は、「色鍋島」の技術を継承する窯元です。その代表者である今泉今右衛門は、現在十四代目が当代を務められています。先代の十三代今泉今右衛門(1926-2001)が窯の代表となった1976(昭和51)年に、「色鍋島今右衛門技術保存会」を新たに組織し、国の重要無形文化財【色鍋島】の総合指定を受けました。

今回ご紹介する作品は、どれも十三代の作品です。十三代は、【色絵磁器】で1989(平成元)年に重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されています。伝統的な技法に加え、「緑地(りょくち)」「吹墨(ふきずみ)」「薄墨(うすずみ)」「吹重(ふきがさ)ね」を用いて新たな色鍋島を発表し続けました。

元々色鍋島にはなかった、伊万里で染付をする際に使用されていた青色を色調とした釉薬を霧状に吹き付ける「吹墨」という技法で作品を創り出し、更に黒の色調をした「薄墨」に展開させました。そしてその二つを重ね合わせた「吹重ね」により、藍と墨色の諧調を美しく見せることに成功しました。また、意匠も「更紗文」「有職文(ゆうそくもん)」「唐花文」といった伝統的な文様を現代的にアレンジして描き、高い評価を得ました。LOT.109とLOT.110には薄墨を背景に赤の線描きで蛸唐草模様のような細やかな文様が入れられ、ダイナミックな中央の唐草文、露草文を引き立たせています。そしてなかでも代表的な文様として知られているのは、LOT.112で描かれている「珠樹文(しゅじゅもん)」というインド更紗から着想を得て創作した赤い実を付ける空想上の樹の文様です。こちらの作品の大きさが通常の1.5倍ほどあり、鶴首の美しい形を損なうことなく成形・焼成されています。いずれも隙のない今右衛門の技術やセンスが窺える大作と言えるでしょう。

伝統的な色絵磁器に新風を吹き込んだ、十三代今泉今右衛門の作品をご覧になりにぜひご来場ください。

 

9/16(水)~9/18(金)の下見会では、5ジャンルすべての出品作品をご覧いただけます。
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新型コロナウイルスの感染予防対策にしっかりと取り組み、皆様のご参加をお待ちしております。

 

執筆者:E

9/19-20開催オークションより おすすめ作品のご紹介

こんにちは。
朝晩の暑さが和らぎ、少しずつ秋めいてまいりました。
今月は9/19(土)、9/20(日)の2日間にわたり、5ジャンルのオークションを一挙に開催いたします。
カタログ購読をお申込みの方は、そろそろお手元に分厚いカタログが届いている頃かと思います。
ぜひ隅々までご覧いただき、お気に召す作品を見つけていただけましたら幸いです。作品の画像は、オンラインカタログからもご覧いただけます。
また、ご入札は、ご来場のほか書面や電話、オンラインでも承っております。

では、9/19(土)開催の近代美術オークションの出品作品の中からおすすめの作品をご紹介いたします。

【オークション終了につき、作品画像は削除いたしました】

250  熊谷 守一(1880-1977)

《肥後椿》
22.5×15.7cm
板・油彩 額装
右横にサイン
裏に署名・タイトル

共箱
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書付
落札予想価格 ¥15,000,000~¥25,000,000


熊谷守一は、97歳で天寿をまっとうするまで、自身の身近にあるものをいとおしむように描き続けました。特に、自宅の庭に茂る草花やそこにいる虫、猫や鳥などの小さな動物たちを、「モリカズ様式」と呼ばれる平明なかたちとモダンな色彩で描いた作品で広く親しまれています。

本作では、実寸を超えるほどにクローズアップされた肥後椿が描かれています。一昨年に上映された映画「モリのいる場所」でも、山崎努さん演じる熊谷守一が蟻や雑草に顔を近づけてじっと観察するシーンがありましたが、本作の花の大きさからも、間近で対象を凝視する守一の姿が想像できます。
また、余分なものが潔く削ぎ落され、丸や三角、四角にまで純化されたかたち、そして塗り残された赤い輪郭線は「モリカズ様式」の重要な要素であり、椿の花が醸し出す華やぎやみずみずしさ、いのちの輝きを鮮やかに際立たせています。


今回は9/20(日)開催の近代美術PartⅡオークションからもう1点、美術館でもなかなかお目にかかることができない、とても希少な浮世絵作品をご紹介いたします。


506 歌川 国政(1773-1810)
《五世松本幸四郎の団三郎》
   37.5×25.4cm
   落札予想価格 ¥1,000,000~¥2,000,000


東洲斎写楽としばしば比較され、若くして師の初代歌川豊国をも凌ぐ実力派と評された初代・歌川国政。芝居好きが高じて浮世絵師になったという人物で、作画期間は10年足らずと短く、作品数も多くありませんが、大首の役者絵に傑出した作品を残しました。

本作は、享和3(1803)年の正月、江戸の中村座で上演された「松春寿曾我(ふたばのはることぶきそが)」にて、五世松本幸四郎が演じた団三郎(どうざぶろう)を題材とした大首絵です。

団三郎は、主役の曾我兄弟に仕える忠実な従者で、主の悲願だった仇討ちに同行するも、彼らの形見を母に届ける役割を命じられ、泣く泣く里に引き返すという役どころ。本作に表わされたのは、「仇討ちにお供できないのなら今すぐ腹を切りましょう」と団三郎が強く抵抗する、曾我兄弟との別れの場面でしょうか。「鼻高幸四郎」と呼ばれた名優・五世幸四郎が、口をへの字に結び、涙を堪えるように上方を睨む様子をクローズアップして捉えています。この五世幸四郎(三世市川高麗蔵)は、写楽をはじめ同時期の浮世絵師がこぞって描いた人気役者ですが、国政は鋭い線と骨太な線を使い分け、顔の特徴だけでなくその凄みや迫力までをも見事に表現しています。


9/16(水)~9/18(金)の下見会では、5ジャンルすべての出品作品をご覧いただけます。
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(佐藤)

夏を誘う琉球からの陶器と青手古九谷

こんにちは。

先週末の「近代美術/戦後美術&コンテンポラリーアート/近代美術PartⅡ/MANGA」オークションにご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

皆様徐々に新しい生活様式に移行されていることとは思いますが、まだまだ都内への外出が不安という方もいらっしゃると思います。ですが、ご来場いただかなくとも「書面入札」「オンライン入札」「電話ビッド」等、オークションへのご参加方法は様々ありますので、この機会にぜひご利用下さい。

 

さて、今週末は「近代陶芸/古美術/近代陶芸PartⅡ」オークションが開催されます。

まずはこちらの作品のご紹介です。

 

 

 

 

 

LOT.168    
金城 次郎「線彫魚紋大壷」     
H39.9×D21.6㎝            
高台内に掻き銘「次」      
共箱
落札予想価格:10万円~15万円
LOT.167  
金城次郎「線彫魚海老紋嘉瓶」
H40.0×D21.6㎝
高台内に掻き銘「次」
共箱
落札予想価格:10万円~15万円
LOT.169
金城次郎「線彫人物紋壷」
高台内に掻き銘「次」
共箱
落札予想価格:10万円~15万円
★3点とも成り行き

 

 沖縄県与儀に生まれた金城次郎(1912-2004)は、実家の道を一本隔てたところにあった壺屋で、家計を支えるために12歳の頃から陶器見習工として働き始めました。当時、すでにロンドンで展覧会を成功させていた濱田庄司(1894-1978)が、沖縄の壺屋を幾度となく訪ねて制作しており、その熱心な濱田の姿を見て、次郎は自身も陶芸の世界に身を捧げることを決意し、濱田を生涯の師として仰ぎました。

 終戦後、沖縄で不足していた食器類を焼くために一早く壺屋が開放され、次郎も独立し、碗(マカイ)、抱瓶(だちびん)、花瓶、大皿、急須、嘉瓶(ゆしびん)(祝事のある家に祝儀用に泡盛をつめて贈る瓶)等、意欲的に作陶しました。その後、日本復帰前後から壺屋地区の開発に伴い登り窯が使用できなくなったために、読谷村座喜味に移転し、登り窯を築窯しました。次郎は「沖縄の土を使い、地元の材料・釉薬を生かし、登り窯で作品を作る」という強い信念のもと、沖縄独自の陶器を目指し、次郎の代名詞とも言える「魚紋」「海老紋」といった図柄を生み出しました。その伸びやかで素朴な世界観は、多くの人々を魅了し、濱田庄司も手離しで誉めたと言われています。

そして1985年、73歳の時に琉球陶器にて重要無形文化財保持者の認定を受けました。

今回は、金城次郎の力強い線彫の魚海老紋や祝祭の宴を行っているような人物紋の作品など、14ロット(計22点)が、出品されます。また、濱田庄司が沖縄で作陶した茶碗も3点出品されます。

夏を前に琉球の風土を感じる器をぜひご覧ください。

続いて古美術のご紹介です。

 

古九谷は、わが国最初の磁器と言われており、柿右衛門、仁清と共に彩画陶磁器の三源流のひとつに数えられています。産地に関しては、加賀(現石川県)説、肥前(現佐賀県)説がありますが断定はされていません。

「青手(あおで)」とは、緑を目立たせるように緑・黄・紫の三色、または緑・黄の二色を配色し、隙間なく彩色されている様式のことです。桃山時代に誕生した織部焼から続く伝統的な意匠が取り入れられ、特に大皿は絢爛華麗なものが多く、晴れの舞台に飾られたと推察されます。

本作は小花地紋、太湖石(たいこせき)、牡丹花文が黒で大胆に描かれており、裏側面は緑釉のなかに黒線で馬の目文(渦巻き模様)を描き巡らせ、対照的に高台内は白地で、吉祥を意味する銘款の一つである二重角中に「福」の字が中央部に記されています。ニウやナオシがあるものの、色鮮やかで力強い本作は、一見の価値があると言えます。

 

感染予防にも取り組みながら下見会・オークションを開催致しますので、お客様にはご不便、ご面倒をお掛け致しますが、お楽しみいただければ幸いです。

                                                                         執筆者:E

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虹のアーティスト・靉嘔の初期作品《Move by rainbow an animale! #6》

こんにちは。
先週の西洋美術オークションにご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
今週4日(土)は5月30日から延期となりました、近代美術/戦後美術&コンテンポラリーアート/近代美術PartⅡ/MANGAオークションを開催いたします。
今回も出品作品の中からおすすめの1点をご紹介いたします。

【 オークション終了につき、画像は削除させていただきました 】

616 靉嘔
《Move by rainbow an animale! #6》
30.0×30.0cm
キャンバス・油彩、スポンジ 額装
1964年作
裏に署名・年代
久保貞次郎旧蔵
「真岡現代絵画鑑賞頒布会」第12回頒布作品№2(1965年)
落札予想価格 ¥400,000~¥600,000


「虹のアーティスト」として国際的に活躍する靉嘔(あいおう:1931- )は、東京教育大学(現・筑波大学)在学中に前衛芸術運動に目覚め、瑛九が主宰するデモクラート美術協会に参加。1958年にニューヨークに渡り、「エンヴァイラメント」と呼ばれる、周囲の環境を取り込んだ体験型のインスタレーションを制作し、先駆的な表現として注目を集めました。1960年代前半には「フルクサス」の活動に参加し、ナム・ジュン・パイクやオノ・ヨーコらと交流。1966年、美術評論家・久保貞次郎がコミッショナーを務める第33回ヴェネチア・ビエンナーレにて虹のエンヴァイラメントを発表し、その後も絵画、版画、立体、パフォーマンスなどの様々な形式で、モティーフを虹のスペクトル(分光分布)で覆う作品を発表しています。


1964年作の本作は、裏面に貼付された「真岡現代絵画鑑賞頒布会」シールより、作家支援と現代美術の振興のために久保貞次郎が購入し、自身の主催する頒布会に出品した作品の一つと考えられます。ヴェネチア・ビエンナーレの後、靉嘔はアクリル絵具を主として    使用するようになりますが、                裏面の「真岡現代絵画鑑賞頒布会」シール
本作ではまだ油絵具で虹が描かれており、
色相は現在の作品に見られる6色(靉嘔の虹は7色ではありません)ではなく赤から緑までにとどめられています。色帯の幅やマチエールの厚みも均一ではありませんが、その分物質感に富み、有機的です。

また、さらに生動感を感じさせるのが、画面に縫い付けられたスポンジ(フォームラバー)の塊でしょう。1962年の虹の登場と同時期に使用されたこの素材は、同年の初個展を訪れた来客から大量にプレゼントされたというもの。ふわふわと柔らかく温かな手触りと「なんともいえぬエロティックな独特なフォルム」※が特徴的で、皮膚感覚を強く意識させるような触覚性を作品にもたらしています。
靉嘔の虹の希少な初期作品の一つであり、鑑賞者の身体感覚を刺激するというその芸術の魅力を味わうことができる作品です。


※靉嘔「虹のかなたに」『虹のかなたに 靉嘔AY-O回顧 1950-2006』福井県立美術館、宮崎県立美術館 2006年

下見会場でぜひ実物をご覧ください。
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ご入札につきましては、「書面入札」、「オンライン入札」、「電話入札」など、ご来場以外の方法もご利用いただけます。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。

(佐藤)

古代ローマ時代のモザイク画

こんにちは。
新型コロナウイルス感染予防のため、3月下旬からオークションの開催を延期しておりましたが、緊急事態宣言が解除となりましたので、今月より予防対策をとって再開しております。
ブログも久しぶりの更新となりますが、今回は27日(土)に開催いたします、西洋美術オークション(4/11より延期分)の出品作品の中からおすすめの作品をご紹介いたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


114  《古代ローマ期神話画大理石モザイク》

H305.0×W296.0cm

落札予想価格 ¥6,000,000~¥9,000,000

モザイクとは、石、貝殻、ガラスなどの小片を寄せ合わせ、図や模様を表わす装飾方法です。約50×42cmほどの石板42枚からなる本作は、現在のイタリア南部で出土したというモザイク画で、古代ローマ期※に制作されたものと伝えられています。古代ローマではこうしたモザイクが、権力者や富豪の邸宅、公共施設の床を美しく飾るものとして盛んに制作されました。特に、本作のように1~2cm程度に切り揃えた大理石の小片(テッセラ)を使用する技法を「オプス・テッセラトゥム」と言い、この技法によって幾何学模様や動植物、神話や戦闘の場面など様々なモティーフが描かれました。

本作の主題となっているのは、ギリシャ神話の物語「ヒュラスとニンフ」でしょうか。古代ローマ人にとって洗練された文化の象徴であったギリシャの神話画は、所有者の教養の高さを誇示するものとして好まれ、フレスコ画やモザイク画において多くの作例が確認されています。ヒュラスは英雄ヘラクレスに愛された美少年で、物語はヒュラスがヘラクレスとともに参加したアルゴナウスの遠征の途中、ある島に立ち寄り、泉の水を汲もうとすると、その美しさに魅了された泉に住む水のニンフたちに水中に引き込まれてしまうというもの。最もよく知られているのは、ラファエル前派の画家ウォーターハウスの作品でしょう。


 

 

 





参考)ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス《ヒュラスとニンフ》(マンチェスター市立美術館蔵)

本作においても、木々の生い茂る泉のほとりの場面が表わされており、槍と剣を携えてマントを羽織り、水を汲むための甕を持った中央の人物がヒュラスと思われます。その周囲には3人のニンフが描かれ、左のニンフはヒュラスの腕と甕を取って引き寄せ、画面下のニンフは、水中から足を掴もうとしているように見えます。白と黒の大理石を細やかに組み合わせ、人物の表情や姿態、衣の物質感などを繊細に表現しており、古代ローマの成熟した文化と高度な装飾技術をうかがわせる、きわめて貴重な美の遺産と言えます。

※一般的には、紀元前753年にイタリア半島の小さな都市国家として建国されたローマが、地中海世界の全域を支配する強大な帝国へと成長し、その後の東西分裂を経て、西ローマ帝国が滅亡する476年までを指します。

42枚のモザイクが床に広がる様子は、人々が行き交う古代ローマの街を想像させます。
ぜひ下見会場で古の時代に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
下見会・オークションスケジュール、オンラインカタログはこちら

また、今回のカタログでは、「音楽―ベル・エポックのオペラ」の特集を組んでおりますが、ここでご紹介しておりますLot.82《オペラ楽譜「PAGLIACCI」他12冊》、Lot.83《オペラ楽譜「Cendrillon」他16冊》は、ベル・エポック期に出版されたオペラやオペラ・コミックの楽譜のセットです。中には扉が美しくデザインされたものやカラー印刷の挿絵が入ったものがあり、視覚的にも楽しむことのできる作品となっています。

 

 

 

 

 

 



Lot.83 
《オペラ楽譜「Cendrillon」他16冊》
30.0×21.0cm他
Massenet6冊、Messager2冊、Offenbach1冊、Masse1冊、Lalo1冊、Mermet1冊、Meyerbeer1冊、Gounod1冊、Saint-saens1冊、Debussy1冊、Chausson1冊
落札予想価格 ★¥50,000~¥100,000

 

 

 

 

 

 

 

Lot.83より 美しくデザインされた表紙やプログラム


ご入札につきましては、「書面入札」、「オンライン入札」、「電話入札」など、ご来場以外の方法もご利用いただけます。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。

(佐藤)

加山又造の富士

こんにちは。
東京は桜の見頃を迎えていますが、皆様のお住いの地域はいかがでしょうか。
今年は新型コロナウイルスの影響で、お花見の宴会も各地で自粛となっているようです。
毎年の恒例行事にされている方は残念ですが、今年は公園を散策して桜を楽しみましょう。

さて、3月28日(土)は近代美術/戦後美術&コンテンポラリーアート/近代美術PartⅡ/BAGS/JEWELLERY&WATCHESオークションを開催いたします。

当社では、新型コロナウイルスの感染予防に関しまして、下記リンクのような対応を行っております。ご参加をご検討されている方はご確認ください。
皆様のご理解とご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

【ご参加されるお客様へ】お知らせ


今回の近代美術オークションには、現代の日本画を代表する画家、加山又造(1927-2004)の名作2点が出品されますのでご紹介いたします。
2点の題材は、ともに日本の最高峰「富士」です。

富士は日本美術において伝統的に描き続けられ、とりわけ近代以降の絵画では日本の象徴として様式化されて表現されてきました。加山は主要なシリーズを制作する一方で、30歳頃から40歳代を中心に各地の山々に取材に出かけ、そのスケッチをもとに雪に覆われた峰や渓谷の風景を晩年まで繰り返し描きました。特に、激しさと静けさを併せ持ち、美しい稜線を見せる火山に惹かれ、火山を訪ねて回る過程で、先人たちが描いてきた富士に自身も挑戦しようと思い立ったと考えられます。

【 オークション終了につき、画像は削除させていただきました 】
 
 257
 《不二》
  89.8×115.8cm
  紙本・彩色 軸装
  昭和59(1984)年作
  右下に落款・印 共箱
  加山哲也鑑定書付

「加山又造展」2009年(国立新美
術館/日本経済新聞社)出品

 
落札予想価格 

 ★¥10,000,000~¥20,000,000


《不二》は、雲海の中に聳え立つ富士をクローズアップして描き出した作品です。
色味の異なる数種類の金泥や金砂子を駆使し、画題通り「二つとない」美しさを誇る山容、霊峰と呼ばれるその姿から醸し出される荘厳な気配や迫力を輝かしく表現しています。この眩い金は、加山が憧れた琳派を象徴する色彩であり、豪奢で装飾的であるだけでなく、永遠性を孕んだ象徴的な空間を創り出しているようです。さらに、見方を変えると、単色による豊かな色彩表現はあたかも墨を金に置き換えたかのようでもあり、この時期に加山が取り組んでいた水墨画の「墨に五彩あり」の境地を思わせます。

【 オークション終了につき、画像は削除させていただきました 】

 258  《青富士》
   70.7×109.2cm
   紙本・彩色 軸装
   昭和53(1978)年作
   左下に落款・印 共箱
   加山哲也鑑定書付
・『加山又造全集[第一巻]動物たち/風景』(1990年/学習研究社)№121
・「加山又造展」2009年(国立新美術館/日本経済新聞社)出品

落札予想価格 
 ★¥5,000,000~¥10,000,000

《青富士》は、代表作の一つとして知られる三部作《雪》《月》《花》(東京国立近代美術館蔵)が完成した昭和53年に制作された作品です。
青い山肌の富士は夏を表わす題材であり、本作では形態を単純化し、緑鮮やかな周辺の山々とともに雲の合間から姿を現す様子を描いています。写実に基づいて表わされた沸き立つような雲は、空全体に刷かれた銀泥と思われるメタリックな絵具の効果により、装飾性のみならず立体感や動感がいっそう際立たされているようです。また、群青と緑青の組み合わせは、琳派の尾形光琳や酒井抱一が描いた夏の花、燕子花を想起させる色でもあるでしょう。

東洋の古典絵画に倣い、それを現代的で洗練された表現に解釈し直すことにより、革新的で装飾性豊かな作風を展開した加山又造。二つの富士の大作は、現代に相応しい新たな美を紡ぎだそうというその挑戦をうかがわせる優れた作例と言えます。

2点とも本紙が横1メートルを超える大幅です。ぜひ下見会場で実物をご覧ください。
下見会スケジュール・オンライン入札はこちら

皆様のご来場を心よりお待ちしております。

(佐藤)

中東に魅せられた二人の陶芸家―三浦小平二と加藤卓男

こんにちは。

 

この季節は乾燥や花粉、さらに今年は新型ウイルスまで加わり体調管理が何かと大変と思いますが、いかがお過ごしでしょうか?オークションビッドは書面や電話、オンラインでもお受けできますので、 ぜひお気軽にご参加ください。

 

さて、3月7日(土)に行われます「近代陶芸/近代陶芸PartⅡオークション」よりこちらの作品をご紹介します。

 

「青磁」で重要無形文化財保持者【人間国宝】に認定されている三浦小平二(1933-2006)は、新潟県佐渡の無名異焼(むみょういやき)の窯元で生まれました。無名異焼は鮮やかな緋色を特長とする高温焼成で焼締められた陶器です。小平二はその土を使い、上から青磁釉を掛け、土と釉薬の伸縮の違いで美しい貫入を生じさせました。また、釉調も深みのある明るいもので、国内外から高い評価を受けています。更に青磁作品には珍しく白磁で余白部分を作り、そこに豆彩(とうさい)技法で絵付けを行う独自のスタイルを確立しました。

30代半ば頃から旅してきた中近東やアフリカ、中国、インド等で、その際写生した景色をモチーフに絵付けをしています。摘みもオリエンタルな建造物や動物、人物などを丸みの帯びた形で成形し、豆彩技法で淡色を施すことによって、幻想的な作品を生み出しました。

今回出品される4点は、ろば、鳴き兎、らくだ、そして孔雀といった動物の摘みがそれぞれに付いています。異国情緒溢れ、愛らしさは随一。三浦小平二の世界感をどうぞお楽しみください。

 

続きまして加藤卓男(1917-2005)の作品をご紹介します。

加藤卓男も小平二と同じく、江戸時代より続く窯元・岐阜県多治見市の幸兵衛窯の跡取りとして生まれ、伝統的な志野・織部等を作陶する一方、中東の焼き物青釉やミナイ手(色絵)、三彩技法を中心に作品を生み出しました。なかでも、18世紀に途絶えていた幻の名陶《ラスター彩》を復活させた功績は大きく、現地トルコ・イスタンブールでも称賛され、国立トプカプ宮殿博物館で個展が開催されるまでに至りました。また日本においては、宮内庁より正倉院三彩の鼓胴と二彩鉢の復元を依頼され、9年の歳月を掛けて復元に成功しました。その後、「三彩」で重要無形文化財保持者【人間国宝】に認定されています。

 

今回出品される6点の内2点は、上部に鶏と鳳の頭を装飾した花瓶です。特に鳳首瓶は唐三彩でよく見かける柔和な意匠とは異なり、鋭利な眼光と嘴は、日本でおそらく最もなじみのある鳳凰像、宇治平等院鳳凰堂の鳳凰像の厳しさに近しいものがあります。また、三彩の花瓶2点とも胴部の貼花(型取られた模様)は技巧が凝らしてあり、ラスター彩の花瓶の透かしも古陶磁の再現性の高さが伺え見応えがあります。

 

三浦小平二と加藤卓男。中東に魅せられた両作家がそれぞれに極めた陶磁器をぜひご堪能ください。

 

下見会、オークションスケジュールはこちら

 

執筆者:E

 

 

夭折の洋画家たち 松本竣介と古賀春江

こんにちは。
本来なら一年で一番寒い時期のはずですが、今年の冬は暖かい日が多いですね。皆様のお住いの地域はいかがでしょうか。
新年のご挨拶が遅くなりましたが、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

2/1(土)は今年最初のオークションとなります、近代美術/戦後美術&コンテンポラリーアート/近代美術PartⅡを開催いたします。
今回は出品作品の中から、30代という若さでこの世を去ったことから、「夭折の画家」とも呼ばれる二人の画家の作品をご紹介いたします。


   
   241 松本 竣介

   《男の横顔》
    22.5×15.5cm
            板・油彩 額装   
            東美鑑定評価機構鑑定委員会鑑定証書付   

            落札予想価格
            ¥2,000,000~¥3,000,000


          松本竣介(1912-1948)は、東京渋谷に生ま
          れ、少年時代を岩手で過ごしました。13歳の
    時に病気で聴覚を失いましたが、画家を志し、
          1929年に上京。太平洋画会研究所に入所し、
          1935年第22回二科展に初めて出品して入選し
          ます。この頃より絵画制作の傍ら、雑誌『雑記
                                                                                 帳』を刊行するなど、画家の立場から社会に対する発言を積極的に行いました。1943年には、麻生三郎らと新人画会を結成。戦時下の美術活動や画壇のあり方を模索していきますが、病に倒れ、36歳の若さで早世しました。戦前から戦後に至る困難な時代、都市の風景とそこに生きる人々の姿を、純粋な眼差しと豊かな抒情で捉えた画家です。

竣介は、画業を通して本作のような人物の頭像を多く描いています。男の横顔を捉えた本作は、太い輪郭線、絵具を薄く幾層にも重ねたマチエールが、ルオーの影響をうかがわせる一点です。深く澄んだ青は、都会の雑踏をモンタージュの手法で描いた「街」シリーズでも使用された色。この繊細な色調と、大胆な線、簡潔なフォルムが混然となって、画家の詩情を色濃く伝えています。

 

         
        245 古賀 春江
       《ダリヤなど》  
          50.0×38.0cm
          紙・水彩 額装
         大正14(1925)年
         左下にサイン
         東美鑑定評価機構鑑定委員会鑑定証書付
     
       ・『古賀春江―前衛画家の歩み』
          (1986年/石橋美術館、ブリヂストン美術
              館)№77
       ・『古賀春江―創作のプロセス 東京国立近
              代美術館所蔵作品を中心に』
   (1991年/東京国立近代美術館)
    p.52・参考図版

  落札予想価格 ¥2,000,000~¥3,000,000

福岡県久留米市の仏門に生まれた古賀春江(1895-1933)は、画家の道を目指して17歳で上京。太平洋画会研究所、日本水彩画研究所で学び、水彩と油彩の制作に力を注ぎました。1917年第4回二科展に初入選し、1922年の第9回展では二科賞を受賞。同年、若手作家たちによる前衛グループ「アクション」の結成にも参加します。1929年には二科会員となり、精力的に制作に励みますが、病のため38歳で早世しました。自ら「前衛」を標榜し、セザンヌ風の水彩画、キュビスム、クレー風、シュルレアリスムなど、西洋絵画の最新の動向を積極的に取り入れ、抒情的で幻想的な作風を展開した画家です。

大正14(1925)年作の本作には、《花》(1925年頃作・石橋財団アーティゾン美術館蔵)と題された類似作品が存在するほか、東京国立近代美術館には、技法や作風の異なる様々なヴァリエーションとなる作品が所蔵されています。本作では、花瓶に生けた花々のかたちを円や半円形にまで単純化し、赤いダリヤを際立たせるように明るく爽やかな色面を配置した点に、キュビスムや抽象絵画の構成に対する古賀の強い関心をうかがわせます。また、作品に表われた自由で生き生きとした雰囲気は、翌年から始まるクレー風の時代を予感させるものと言えるでしょう。

松本竣介、古賀春江の作品が当社のオークションに出品されるのは、比較的珍しいことです。ぜひ下見会で、惜しくも若くして散ってしまった二つの才能に触れてください。
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皆様のご来場を心よりお待ちしております。

(佐藤)

吉祥文ー瓢箪と椿《12月近代陶芸/古美術》       

こんにちは。

気が付けば師走。あっという間に「もういくつ寝るとお正月」の歌が聞こえてきそうです。来年は、令和としての初めての年明けでもあり、オリンピックが開催されるなど華やかな一年になりそうですね。そんな年始にふさわしい、おめでたい吉祥文をモチーフにした作品を今週末に行われます「近代陶芸/古美術/近代陶芸PartⅡオークション」からいくつかご紹介したいと思います。

まずは古美術オークションより、瓢箪(ひょうたん)に関する作品から。

瓢箪は、三つで「三拍(瓢)子揃って縁起が良い」や、六つで「無病(六瓢)息災」など語呂合わせで縁起が良いとして古くから人気のあるモチーフです。『日本書記』にはすでに記述があり、戦国武将や大名茶人、絵師たちが好み「瓢(ひさご・ふくべ)」形の品が多く伝世されてきました。

LOT.71は、「浮瓢軒」とも名乗っていた片桐石州が所蔵していたのではないかとされる小さく愛らしい形の茶入です。LOT.74は、良く見るふくよかな瓢形ではなく、ひょろ長く寂びた絵付けを施している香合で、仁清という作家の奇抜な人となりを伺い知ることができます。そして、LOT.75は、上部を切り取った、瓢そのものを乾燥させ花入にしたものです。元々、千利休が考案した掛花入で、利休の侘茶を目指していた大名茶人の松平不昧が模して作ったとされています。最後にLOT.108狩野探幽「朱印瓢箪畫名印」ですが、金彩のみで瓢の一部を浮き上がらせ、自身の瓢形の朱印を用いて瓢箪そのものとしているところが珍しく、洗練された趣があり「洒脱」という言葉がふさわしい一幅です。

他にも、立身出世の蟹が彫刻された「郭索硯」(LOT.68)や、子孫繁栄の象徴の唐子が描かれた「南京赤繪唐子火入」(LOT.78)、また唐子を背に乗せた麒麟の香爐「色繪銅麒麟人物香爐」(LOT.103)、そして松竹梅を「松茸・筍・梅果」で表現した呉春の「松竹梅 三幅対」(LOT.81)など様々な吉祥文を用いた作品が、古美術オークションに彩りを加えています。

 

続きまして近代陶芸オークションより、椿があしらわれた作品をご紹介します。

椿は常緑樹で青々とした葉が落ちないことから、繁栄の象徴と考えられています。11月下旬頃に開花するので、最近ご覧になられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

紅椿の花言葉は、「謙虚な美徳」。彌弌の香盒と香爐にも紅椿がありますが、どちらも蕾の姿をしており、その控えめな花言葉にふさわしい美しい図柄です。また白椿の花言葉「完全な美しさ」を知ってから香爐を見ると、ぱっと咲いた白い椿の華やかさが際立つ気がします。音丸の椿香合も、花びらの部分をあえて白くしていることから、白椿を元にしているのかもしれません。金箔も使用されており、お正月の初釜に見合う一品ではないでしょうか。

 

新たな年へ向けて道具の取り合わせを考えながらご覧になるのも、一興かと思います。

ぜひ下見会、オークション会場へ足をお運びください。

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追加訂正事項はこちら。

                        【執筆者:E】