坂本繁二郎の静物画

こんにちは。
11月も半ばに差し掛かり、いよいよ冬の足音が聞こえてきました。
さて、今週の16日(土)は、近代美術/戦後美術&コンテンポラリーアート/近代美術PartⅡ/MANGAオークションを開催いたします。
今回は、近代美術に坂本繁二郎の静物画が3点出品されますので、ご紹介いたします。

坂本繁二郎(1882-1969)は、現在の福岡県久留米市生まれ。幼なじみの青木繁に触発されて画家になることを決意し、20歳で上京します。小山正太郎の不同舎、次いで太平洋画会研究所に入門し、1907年、第1回文展に入選した後も同展で活躍しましたが、1914年には二科展の創立に参加します。そして、39歳の時、自らの技術や絵画理論を試すためにパリに留学しました。パリに滞在したおよそ3年間に、後の坂本芸術の重要な要素となる色彩や画面構成を獲得し、1924年に帰国。その後現在の八女市に移住し、馬と静物の主題に取り組んでいきます。1954年、第27回ヴェネチア・ビエンナーレ日本代表となり、1956年には文化勲章を受章。夭折した青木繁が早熟であったのに対し、坂本の画業は大器晩成とも評され、年齢を重ねるごとに滋味を増し、幽玄さを深めていったと言えるでしょう。

では、出品作3点を制作年代順に見ていきましょう。

Lot.73 《柿》
 38.2×45.7cm
キャンバス・油彩 額装
昭和16(1941)年作
 左下にサイン・年代
坂本暁彦鑑定証付
『坂本繁二郎作品全集』
(1981年作/朝日新聞社)№303
『坂本繁二郎[油彩]全作品集』
(2009年/さかもと)№212
落札予想価格
¥1,000,000~¥2,000,000


題材の柿は坂本の好物で、作品に繰り返し登場する果物です。本作は戦時中の1941年(当時59歳)に制作されているため、貴重な食糧でもあったかもしれません。描かれているのは干し柿でしょうか。刃物で皮を剥いたような断面が四角形や三角形の色面の構成で表わされ、3個の配置や直線的な枝のフォルムによって画面にリズムがもたらされています。
また、背景の微妙な紫色は、静物画のモティーフを生かす舞台として坂本が考案したものです。



Lot.75 《能面》
23.8×33.0cm
板・油彩 額装
昭和24(1949)年作
右下にサイン
坂本暁彦鑑定証付
『坂本繁二郎作品全集』
(1981年作/朝日新聞社)№350
『坂本繁二郎[油彩]全作品集』(2009年/さかもと)№280
落札予想価格
¥5,000,000~¥8,000,000

「坂本の作品は、馬よりも能面が好き」という方も多いのではないでしょうか。能面は、大正初期に詩人の三木露風とともに能楽堂に通い、能に感銘を受けて以来、その味わいを描きたいとずっと思い続けた題材です。作者不明の素朴な能面を骨董屋で買い集め、実際に制作に着手したのは坂本が還暦を過ぎてからであり、本作も1949年(当時67歳)に制作されたもの。若い女性を表わす小面(こおもて)と扇子、箱らしきものが画面に構成されていますが、面のみを写実技法によって立体的に捉え、そのほかのモティーフを平面的に描いた点が特徴的です。能面は能楽師が顔に付け、役の感情の機微を表現する道具であるため、物というより生きた人間の顔を描くように捉えられたとも考えられるでしょう。
また、能面の周囲に広がる濃い陰影は、光が作り出したものというより、面の醸し出す幻想性や幽玄な趣、人間的な情念を表わす色面のように見えます



Lot.74 《三壺》
32.1×41.0cm
キャンバス・油彩 額装
 昭和27(1952)年作
右下にサイン
坂本暁彦鑑定証付
『坂本繁二郎作品全集』
(1981年作/朝日新聞社)№484
『坂本繁二郎[油彩]全作品集』(2009年/さかもと)№304
落札予想価格
¥2,500,000~¥3,500,000


本作は1952年、古希(当時70歳)の年に制作されたものです。坂本家で使用されていたと思われる壺が並べて描かれています。ご注目いただきたいのは、壺の周囲に抽象的な色面として広がる陰影です。こちらも光によって対象の像が映されたものというより、壺の持つ存在感、そこに宿る魂のようなものが表わされているように見えます。さらに、本作では、坂本の壺への愛着を反映するかのように画面に朗らかさや華やぎが漂っています。

画業を通して、対象の生命や存在の神秘を表わすことを追い求めた坂本にとって、静物画は時に馬以上に重要なテーマでした。日常の中にあるものとじっくりと向き合い、対話するように描かれた作品の数々。出品作品の3点はそのあくなき探究心と東洋的な自然観を色濃く感じさせます。
ぜひ下見会場で、坂本の静物画の世界にじっくりと浸ってみてはいかがでしょうか。

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皆様のご来場を心よりお待ちしています。

(佐藤)

ルネサンスの花―《ルネサンス期殉教聖女像フレスコ画》

こんにちは。
19日のWINEオークションは、開催日延期にもかかわらず、たくさんのお客様にご来場いただきました。ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。

さて、今週の26日(土)は、西洋美術オークションを開催いたします。
今回も出品作品の中からおすすめの作品をご紹介いたします。



130  イタリア

                    《ルネサンス期殉教聖女像フレスコ画》

 画面 79.8×54.0cm
(額寸 86.8×61.2cm
 
  落札予想価格 
   ¥1,800,000~¥2,500,000



14世紀から16世紀、ルネサンス期のイタリアでは、宮殿や教会などの公的な建造物、貴族の邸宅のための壁画が盛んに描かれました。「ルネサンスの花」とも呼ばれたこの壁画の制作に用いられたのが、壁の表面に塗った漆喰が乾かないうちに、水で溶いた顔料で絵を描くフレスコ技法です。


キリスト教図像が描かれた本作は、教会の改修の際などに発見されたルネサンス期の壁画の断片と推測されるフレスコ画です。ルネサンス期の壁画は現存するものが少なく、きわめて貴重な一点と考えられます。
こうした宗教画や神話画、歴史上の人物を描いた西洋絵画では、描かれた人物のアトリビュート(持ち物)によってその人物を特定します。本作の女性と思われる人物は、光輪が背後に描かれていることから、聖人(殉教や徳行などによって列聖された人物)ということがわかります。アトリビュートを見てみると、赤い衣を身につけ、左手に本(聖書)、欠損している右手部分に殉教者の象徴である棕櫚(しゅろ)の葉を持っているようです。
これらの条件から、描かれた聖女は、危急時に信者がその名を呼ぶと難を救ってくれるという十四救難聖人の一人、①聖女カタリナ、あるいは②聖女バルバラのどちらかである可能性が考えられます。

①聖女カタリナ
実在の人物かどうかは定かではありませんが、一説には、3~
4世紀にエジプトのアレキサンドリアの貴族の家に生まれた女
性と伝えられています。才色兼備で知られ、若くして洗礼を
受けました。キリスト教徒を迫害する皇帝に逆らったため、
車輪に縛りつけられて身を引き裂かれる刑に処され、最後は
斬首されてしまいました。

この作品は、16~17世紀に活躍したイタリアのカラヴァッジ
ョ派の画家、バルトロメオ・カヴァロッツィ作《聖女カタリ
ナ》です。ここでは棕櫚の葉のほかに、カタリナの重要なア
トリビュートである刃の付いた車輪、剣も描かれています。
また、本オークションの出品作には描かれていませんが、
バルトロメオ・カヴァロッツィ   このように地位の高さを示す王冠を被っていることもカタリ
《聖女カタリナ》         ナの特徴の一つです。




②聖女バルバラ
こちらも実在の人物かどうかは定かではありませんが、3世紀頃に
トルコの裕福な家に生まれた女性と伝えられています。求婚者た
ちから遠ざけるため、美しい娘を溺愛する父によって塔に幽閉され、幽閉中にキリスト教に改宗。異教徒であった父の怒りを買
い、斬首されてしまいますが、父も雷に打たれて亡くなりました。

この作品は、14~15世紀の初期フランドル派の画家、ヤン・ファ
ン・エイクの《聖女バルバラ》(アントワープ王立美術館蔵、ベ
ルギー)です。出品作同様、聖書と棕櫚の葉を持っています。



ヤン・ファン・エイク
《聖女バルバラ》

Lot.130では、カタリナの車輪、バルバラの塔といった重要なアトリビュートが描かれた部分が失われているため、どちらかに特定することができません。しかし、残された部分には、信仰に情熱を
傾け、自らの生命を捧げた美しく清らかな女性の姿が鮮やかな色彩で表現されています。緊張感を孕んだ輪郭線、光と影による立体的な表現も見どころであり、また、聖女の背景や下半身部分にか
つて描かれていた図像を想像するのも本作の楽しみの一つです。

下見会にお越しいただき、ルネサンス期のイタリアを彩ったであろう画家の筆致をぜひ間近でご覧ください。
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皆様のご来場を心よりお待ちしています。
(佐藤)

舟越保武の女性像

こんにちは。
朝晩はずいぶん涼しくなり、少しずつ秋らしくなってまいりました。
土日祝日がお休みの方は三連休が続きますが、銀座でショッピングをされる際は、ぜひオークションにもお立ち寄りください。

さて、今週21日(土)は、近代美術/近代美術PartⅡ/戦後美術&コンテンポラリーアートオークションを開催いたします。今回のオークションでは、戦後の具象彫刻を代表する作家、舟越保武の作品が複数出品されますので、ご紹介いたします。

舟越保武(1912-2002)は、岩手県生まれ。17歳のときに高村光太郎訳『ロダンの言葉』に影響を受けて彫刻家を志し、東京美術学校(現・東京藝術大学)彫刻科に入学します。在学中から良きライバルであった佐藤忠良とともに切磋琢磨し、卒業後は二人で新制作派協会彫刻部の創立に参加。1940年頃から大理石彫刻に着手し、1950年にはカトリックの洗礼を受け、キリスト教を主題とした作品を制作していきます。1962年に第5回高村光太郎賞、1972年には第3回中原悌二郎賞を受賞。1967年から東京藝術大学、多摩美術大学などで教鞭を執り、後進の指導にも力を尽くしました。
ブロンズの重厚さと大理石の柔らかな肌合いを生かし、自らの深い精神性や祈りを込めた静謐な作風で知られる作家です。


65 《田沢湖のたつこ》

        H96.8×W24.7cm
  ブロンズ
  側部に刻銘
  台座付(H57.5×W45.0×D45.0cm)
  舟越苗子鑑定証付

  落札予想価格
  ★¥500,000~¥800,000


秋田県の田沢湖のほとりに立つ《たつこ像》のエスキースです。この地に生まれた美しい娘たつこが、永遠の若さと美しさを願ってお百度参りをし、観音様のお告げにしたがって山の奥深くに湧く泉の水を飲んだところ、大きな龍の姿に変わり、田沢湖の主となったという伝説がテーマとなっています。
本作では、舟越が偶然見かけたという工事現場で働く若い女性の姿からイメージを膨らませ、龍神となる前のたつこを美しく清らかに表現しています。








 

 

 

 

66 《若い女の顔》                67 《LOLA》
  
H31.0×W23.6cm                  H43.0×W42.0cm
  大理石                      ブロンズ
  側部に刻銘                    背部に刻銘
  台座付(H18.0×W31.8×D31.2cm)            台座付(H8.8×W53.5×D32.2cm)
  自筆証明書付                                                                     自筆証明書付
  落札予想価格                                                                     落札予想価格
   ★¥500,000~¥800,000                                               ★¥300,000~¥500,000

66《若い女の顔》と67《LOLA》は、舟越の代名詞的な主題、若い女性の像です。どちらの作品も表情に古代ギリシャ彫刻のアルカイック・スマイルが取り入れられ、微かに微笑みを浮かべた端正な顔立ちとなっています。さらに、ともに理知的で優美な雰囲気が漂い、理想化された女性美が表現されています。
また、66《若い女の顔》では、舟越芸術の根幹をなす大理石が素材とされています。滑らかに磨き上げられた顔と鑿の跡の残る頭髪部分に表われた柔らかな陰影、石肌の優しい風合いが女性像の魅力を増しているようです。


     68 《聖ベロニカ》
             H35.5×W26.0cm
            ブロンズ
             昭和52(1977)年作
             側部に刻銘 
            台座付(H17.0×W16.0×D16.0cm)
            舟越苗子鑑定証付
            落札予想価格
              ★¥300,000~¥500,000

舟越は、洗礼後、自身の信仰心を反映させた聖女像を数多く制作しました。
本作は、十字架を背負い、血と汗を流しながらゴルゴダの
丘を登るキリストのために、自らが身につけていたヴェールを差し出した女性、ベロニカが題材となっています。
キリストが汗を拭った後、ヴェールにはその顔が浮かび上                                                                        がり、それは「聖顔布」として現在もローマの教会に保存されているといいます。本作では、静けさの中にも、キリストの受難を前にしたベロニカの深い悲しみが眼差しや口元によく表されています。


角度によって表情が様々に違って見えるのも彫刻作品の魅力の一つです。
ぜひ下見会場で、舟越が創り出した女性像の美を360度からご堪能ください。

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皆様のご来場を心よりお待ちしています。

(佐藤)

 

藤田喬平・日本の美の再生―飾筥

こんにちは。

長く続いた酷暑もいよいよ終わりが見えてきましたが、まだしばらく蒸し暑さは残りそうですね。秋風が待ち遠しい今日この頃です。

さて、今週末に「近代陶芸/近代陶芸PartⅡオークション」が開催されますので、その中からいくつか出品作をご紹介いたします。

LOT.152 藤田喬平
「手吹飾小筥 七(淡雪/飛鳥/湖上の花/紅白梅/羽衣/夢殿/龍田)」
 H8.8×W9.3cm他 各底部に掻き銘「Kyohei Fujita」
各共箱(淡雪のみ藤田潤箱)
落札予想価格:¥1,300,000.~¥1,800,000.

藤田喬平(1921-2004)は、国際的なガラス工芸の第一人者といえる作家です。

戦争末期の1944(昭和19)年に東京美術学校工芸科彫金部(現東京藝術大学)を卒業後、母方のいとこである岩田藤七(1893-1980)率いる岩田工芸硝子株式会社に入社しました。当時の岩田工芸では、進駐軍向けのワイングラスや放電管を作る職人としての仕事が主でしたが、作家としての道を選んだ藤田は、1949(昭和24)年に独立し、自ら制作・販売を行うという生活を始めました。これは当時では世界的にも珍しく、1960年代、スタジオ・グラス運動(用として大量生産で作られるガラスではなく、芸術的なガラス作品を作り出す運動)がアメリカで始まる10年ほど前に、早くも個人で宙吹(ちゅうふき)ガラスの窯を創設していたことになります。

個展を中心に活動していた藤田は、1964(昭和39)年・東京オリンピックが行われた年に、「虹彩」というオブジェでもあり花器でもある作品を発表しました。後に「流動ガラス」と名付けたこの一連の作品群は、軟らかい状態のガラスを吹竿に巻き取り、息を吹き込み球状に膨らませ、鋏等で成形する宙吹ガラスの手法で作られており、流れるガラスの一瞬を切り取ったような躍動感ある形状をしています。この作品が藤田の出世作となりました。その後、「流動ガラス」を超えるものをと考え生み出したのが、「飾筥(かざりばこ)」です。

 

「飾筥」は、鉄の型の中に吹いたガラスを軟らかいうちに入れ、角型の作品を作ることに成功し誕生しました。これは、「尾形光琳や俵屋宗達が生きていたら、ガラスでどんなものを作ったのだろう」という発想のもと生み出されたといいます。そのため「源氏物語」や「竹取物語」、「古都」や「花散る里」など日本の美をテーマに創作されました。

 

「飾筥」シリーズの成功によって海外からの招待が頻繁となり、世界的に評価を高めていきました。1977(昭和52)年からイタリアのヴェネチアにあるムラノ島で毎年制作を行い、「手吹ヴェニス」と題された作品は今現在も、数多く残ります。2003(平成15)年に文化勲章を受章し、翌2004(平成16)年に亡くなるまで、藤田は新作展を開催し続けました。今作の「手吹飾小筥 淡雪」は、亡くなられた年に発表されたものです。最期まで「日本の美」を独自の手法で追求した藤田のガラスをぜひご覧ください。

 

こちらは「飾小筥」でしたが、通常の「飾筥」も三作品出品されます。

LOT.150 藤田喬平「手吹飾筥 湖上の花」
H16.3×W12.0cm
底部に掻き銘「Kyohei Fujita」
共箱
落札予想価格:¥450,000~¥650,000

LOT.151 藤田喬平「手吹飾筥 源氏物語」
H23.0×W17.4cm
底部に掻き銘「Kyohei Fujita」
共箱
落札予想価格:¥700,000~¥1,000,000

LOT.153 藤田喬平「手吹飾筥 湖上の月」
H22.3×W24.0cm
底部に掻き銘「Kyohei Fujita」
共箱
落札予想価格:¥900,000~¥1,300,000

 

その他にも、珍しいところでは松井康成、鈴木蔵、藤本能道、八木一夫といった作家から四者四様の陶板作品が出品されます。こちらも用ではなく、鑑賞としての陶芸作品ですので、ご興味のある方はぜひ足をお運びください。

スケジュールはこちら。

 

執筆者:E

 

 

岡鹿之助が描いた三色菫

こんにちは。
海の日も過ぎ、梅雨明けの待ち遠しい季節となってまいりました。

さて、今週20日(土)は、近代美術/近代美術PartⅡオークションを開催いたします。
今回も出品作品の中からおすすめの作品をご紹介いたします。


【オークション終了につき、画像は削除させていただきました】

52 岡鹿之助

《三色スミレ》
33.5×24.4cm
キャンバス・油彩 額装
昭和47年(1972)作
右下にサイン
裏に署名・年代 共箱
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書付
『岡鹿之助画集』(1978年/美術出版社)№304

落札予想価格 ¥8,000,000~¥12,000,000



岡鹿之助(1898-1978)は、独特の点描技法により、ヨーロッパの古城や群落、発電所、
三色菫パンジーなどのモティーフを詩情豊かに描き上げた画家です。
岡は、劇作家や小説家として知られる岡鬼太郎の長男として東京に生まれました。1919年東京美術学校(現在の東京藝術大学)西洋画科に入学し、岡田三郎助教室に学びます。卒業後はフランスに渡り、レオナール・フジタの指導を受けながら、サロン・ドートンヌなどの公募展に精力的に出品。第二次世界大戦が勃発した1939年に帰国を余儀なくされるまで、油彩技法の研究に励みました。帰国後は春陽会を舞台に活躍する一方、度々パリを訪れ、堅牢なマチエールと静謐な佇まいの作品を描きました。1972年にはその功績が高く評価され、文化勲章を受章します。

本作はこの1972年に制作された《三色スミレ》です。「ルノワールは薔薇に、ルドンはアネモネに自分を託したように、絵描きは自分を託して表現するのにもっとも具合のいいものをつかまえることに努力します。私の場合、三色すみれなどもそれに似ているのですよ。」(『美術手帖』142号 美術出版社 1958年)と語っているように、岡にとってこの花は自身の代名詞となる重要なモティーフでした。
また、岡の作品において、三色菫は皆正面を向いて描かれますが、そこには小さな子どもたちがこちらを向いている姿や、まるで笑ったり怒ったりしているかのような豊かな表情がイメージとして重ねられています。本作でも、花たちが顔を寄せ合い、こちらに向かって微笑んでいるかのようであり、その曲線的で緊密な構成と緻密な筆致が調和し、可憐さや素朴なあたたかさを感じさせます。

近代美術PartⅡには、三色菫をモティーフとしたインク作品も出品されます。
表情の豊かさという点では、こちらの方が率直に表現されているかもしれません。
まるで花たちが、ニコニコ笑いながらおしゃべりしてるようにも見えませんか?


【オークション終了につき、画像は削除させていただきました】

643  岡鹿之助
《Pensees variees》
18.4×13.0cm 
紙・インク 額装
左上にタイトル、右下にサイン

落札予想価格 ¥100,000~¥200,000  

今回の下見会も近代美術/近代美術PartⅡ同時開催となりますので、ぜひ可愛らしい花たちを会場でご覧ください。

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皆様のお越しを心よりお待ちしています。

(佐藤)

モーリス・ユトリロの「白の時代」―《モンマルトルへの道》

こんにちは。
お祝いムードのGWが終わり、ようやく日常が戻ってまいりました。
10連休だった方も、そうでない方も、体調を崩しやすい時期ですのでお気をつけください。

さて、今週18日(土)は、令和元年1回目のオークションを開催いたします。
下見会、オークションともに、近代美術/近代美術PartⅡ/MANGA 同時開催となります。
お間違えのないようよろしくお願いいたします。

では、今回も近代美術の出品作品の中から、おすすめの1点をご紹介したいと思います。
レオナール・フジタやモディリアーニ、キスリングらと同様、狂乱の時代のパリで「エコール・ド・パリ」として人気を博した風景画家の作品です。







 

 

 


100   モーリス・ユトリロ(1883-1955)
《モンマルトルへの道》
65.0×91.0cm
キャンバス・油彩 額装
1910年頃作
右下にサイン
Jean Fabris/Cedric Pallier 鑑定証書付
P.Petrides, L’oeuvre Complet de Maurice Utrillo, tomeⅠ, Paris, 1959, no.154
落札予想価格 ★¥8,000,000~¥15,000,000

モーリス・ユトリロは、モデルで画家のシュザンヌ・ヴァラドンの息子として、パリに生まれました。実父を知らず、母の愛情を得られない寂しさから、少年時代にアルコール中毒に陥り、治療の一環として絵を描き始めます。
その才能はすぐに開花し、20歳代は、職業を転々としながら街の風景をメランコリックに描き、やがて建物の漆喰の壁の質感に自身の感情を投影させた、静謐で哀愁漂う作風を確立しました。
30歳を過ぎた頃から、鮮やかな色彩と一点透視図法を多用した絵画へと作風を一変させ、1920年代にはエコール・ド・パリの寵児として注目を集めます。孤独とアルコールに苛まれながら、生涯を通して詩情豊かなパリの風景を描いた画家です。

1910年(当時27歳)頃作の本作は、ユトリロが暮らしたパリ、モンマルトル付近の通りを描いたものです。画面の奥に向かって、点景人物が歩いていく様子がうかがえますが、通りの先は行き止まりのように見えます。人物の前には背の高い塀が立ちはだかり、通りの両側にも建物が並んでいます。
塀と建物の壁に用いられたのは、ユトリロ独特の白の絵具。「白の時代」と呼ばれるこの時期、ユトリロは、ときに油絵具に石灰や砂、卵の殻などを混ぜ、年代を経た漆喰の質感を表現しました。また、それと同時に、自らの心に渦巻く苦悩や葛藤、孤独をそこに塗り込めていきました。
本作でも、白の絵具と感情的な筆致、そして行き場を失った点景人物の姿に、ユトリロが感じていたであろう不自由さや空虚さが滲むようです。

冒頭にも書きましたが、今回は、下見会も近代美術/近代美術PartⅡ/MANGA 同時開催となります。
下見会では、ユトリロのほか、ジョルジュ・ルオー、荻須高徳、小出楢重、杉山寧、横山操など、
また、近代美術PartⅡのレンブラントやミレーの版画、歌川広重の「名所江戸百景」など、
MANGAの手塚治虫「魔神ガロン」や「火の鳥」原稿、藤子不二雄、赤塚不二夫、鳥山明などの色紙といった、バラエティに富んだラインナップが一度にご覧いただけます。
お好きな作品をきっと一つは見つけていただけると思いますので、ぜひ会場で実物をご覧ください。

下見会・オークションスケジュールはこちら

皆様のお越しを心よりお待ちしています。

(佐藤)

特集 棟方志功 墨が語り、祈る


こんにちは。
いよいよ今週、東京、名古屋、大阪、福岡など、各地で桜が開花するようです。来週にはお花見ができそうですね!

さて、今週の23日(土)は、近代美術/近代美術PartⅡオークションを開催いたします。このオークションには、棟方志功(1903-1975)の板画、倭画(やまとえ:肉筆画)、書、リトグラフが56ロット出品されます。今回は「文学」、「宗教」、「女性」の3つのテーマに沿って、出品作品の中からおすすめの作品をご紹介いたします。

● 文学
青年時代から詩歌を詠み、小説や演劇を愛した棟方は、版画家となった後も物語や詩を題材とし、絵とともに画面に文字を表わした板画絵巻を次々に生み出していきました。さらに、多くの著名な文学者たちと交流し、挿絵や表紙絵、装幀の仕事を積極的に手がけたことでも知られています。


【オークション終了につき、画像は削除させていただきました】

Lot.29 《流離抄板画巻 かにかくにの柵》
紙面:41.2×32.5cm
紙・板画、手彩色 額装
左下に印、中央に吉井勇印
棟方巴里爾シール
棟方志功鑑定委員会鑑定登録証付
落札予想価格 ¥150,000~¥300,000


【オークション終了につき、画像は削除させていただきました】

Lot.30 《流離抄板画巻 叡山の柵》
紙面:41.0×34.0cm
紙・板画、手彩色 額装
左下にサイン・印
棟方巴里爾シール
棟方志功鑑定委員会鑑定登録証付
落札予想価格 ¥150,000~¥300,000

《流離抄板画巻》は、歌人吉井勇が富山県に疎開していた際に詠んだ歌集『流離抄』を中心に、彼の歌集から31首を選んで絵をつけた作品です。遠く離れた京都を恋しく思う歌ですが、味わい深い文字と装飾的な絵、鮮やかな裏彩色が調和して、風雅な雰囲気を感じさせます。


● 神仏
 1936年の第11回国画会展に出品した《瓔珞譜(ようらくふ)・大和し美し版画巻》が柳宗悦や濱田庄司、河井寛次郎ら民藝運動の作家たちの目にとまり、棟方と彼らとの交流が始まりました。以後、彼らから学んだ芸術や哲学、宗教についての様々な知識が創作に反映されていきます。特に、以前から興味を抱いていた神や仏の世界についての話は、その後の棟方芸術に大きな影響を与えました。棟方が描いた神仏は、特定の宗教に対する信仰心の表出ではなく、宗教の境界を越えてそれらに対する自由なイマジネーションを表現した図像であり、それはまた、森羅万象に聖なるものを見出し、祈りを込めて描いた棟方ならではの神仏像とも言えます。


【オークション終了につき、画像は削除させていただきました】

Lot.46《茶韻十二ヶ月板画柵                 Lot.54《釈迦十大弟子
   幾利壽人(キリスト)の柵》                羅睺羅(らごら)の柵》
紙面:65.5×28.0cm                     紙面:103.2×37.8cm
紙・板画、手彩色 軸装                   紙・板画  軸装
昭和33(1958)年作                      昭和32(1957)年作
下にサイン・印・年代 共箱                            右上に印、

棟方志功鑑定委員会鑑定登録証付              左下にサイン・印・年代
落札予想価格  ¥300,000~¥500,000            棟方巴里爾箱
                             棟方志功鑑定委員会鑑定登録証付
                             落札予想価格
                             ¥3,000,000~¥4,500,000

Lot.46(左)は、柳宗悦が「死ぬまでにくりかえしこの一枚に眺め入るであろう」と絶賛したキリスト像です。キリスト教の教えや聖書の内容に捉われることなく、鋭い直線と幾何学模様を効かせ、主に陰刻によって仕上げています。これが茶掛として制作されたというのも驚きですね。Lot.54(右)は、ヴェネチア・ビエンナーレに出品されて注目を集めたという棟方の代表作《釈迦十大弟子》の一点。釈迦の実子と言われる羅睺羅の柔和な佇まいが、黒と白、線と面の見事な構成によって表わされています。


● 女性

「裸体の、マッパダカの顔の額の上に星をつければ、もう立派な佛様になって仕舞うんだから、ありがたく、忝(かたじ)けないんですね。それが、ホトケさまというものなのです。(中略)その額の星が、つくと、付かないので、タダの素裸の女であったり、ホトケサマに成り切ったりするという大きな世界は、うれしいものです。」(棟方志功『板画の肌』河出書房 1956年)

これは、棟方が自身の作品における神仏について述べた文章ですが、女性についての考え方を示唆するものでもあります。女性、特に裸婦は、戦後を中心に繰り返し表わされた代表的な主題です。その多くは額に星を付けられ、神や仏として、ときには生身の女性として、あるいはどちらでもあるような美しく神秘的な存在として思いのままに描き出されました。

【オークション終了につき、画像は削除させていただきました】

Lot.55《大顔の柵》
紙面:31.8×30.5cm
紙・板画、手彩色 額装
昭和49(1974)年作
左下にサイン・印・年代
共シール
棟方志功鑑定委員会鑑定登録証付
落札予想価格
¥1,800,000~¥2,800,000


【オークション終了につき、画像は削除させていただきました】

Lot.56 《光明妃図》
41.3×32.7cm
紙・肉筆 額装
左上に印、中央下に落款・印
棟方巴里爾シール
棟方志功鑑定委員会鑑定登録証付
落札予想価格
¥2,500,000~¥3,500,000

Lot.55(板画)とLot.56(倭絵)は、それぞれ技法は異なりますが、ともに浮世絵の大首絵の様式を取り入れ、胸から上の部分をクローズアップして描かれた女性像です。女性のふっくらとした丸顔と豊満な姿態が生命感豊かに表わされています。特に、Lot.56は、上の言葉の通り、額に星が描かれ、円窓の中に配されており、憧れの対象として描かれていることがわかります。

ここでは紹介しきれませんが、聖徳太子の逸話を板画化した《上宮太子版画鏡》シリーズ、足の速い神様を疾走感溢れるタッチで描いた《韋駄天(いだてん)図》など、ほかにもご覧いただきたい作品はたくさんあります。バラエティに富んだ56ロットをぜひ下見会でご覧ください。

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皆様のお越しを心よりお待ちしております。

(佐藤)

3月近代陶芸オークションより 平櫛田中・北大路魯山人・富本憲吉の名品

こんにちは。
ひなまつりも過ぎ、季節は少しずつ春めいてまいりました。花粉症の方にはつらい季節でもありますが、がんばって乗り越えてまいりましょう。

さて、今週9日(土)は近代陶芸/近代陶芸PartⅡオークションを開催いたします。今回も出品ラインナップの中から注目作品をご紹介いたします。


【 オークション終了につき、画像は削除させていただきました 】

130   平櫛 田中
《洽堂萬福 郭汾陽》
H28.8×W18.6cm
背面に銘「九十三翁中作之」、「昭和甲辰十月」刻
共箱
平櫛弘子証明書付
1964(昭和39)年作

落札予想価格 
★¥1,500,000~¥3,000,000


平櫛田中(1872-1979)は、伝統的な木彫に西洋彫刻の写実性を取り入れ、明治・大正・昭和を通して、日本の近代彫刻を牽引した作家です。

モデルとなった郭汾陽(かくふんよう)は、中国の唐代中期、国家の危機を救ったと伝えられる武将で、別名を郭子儀(かくしぎ)と言います。
たくさんの子どもや孫がいたという汾陽は、皆の名前を覚えきれず、名前を記した札を見ながら子どもたちを呼んだと言われており、本作はその姿を表わしたものでしょう。
好々爺となった名将の佇まいが味わい深く表わされており、平野富山らが手掛けたと思われる彩色も見事な仕上がりです。子宝や長寿、多幸を象徴する作とも言えるでしょう。




131 北大路 魯山人

《織部手桶花入》
H16.6×D42.0cm
高台内に掻き銘「魯山人」
共箱

落札予想価格
¥3,000,000~¥5,000,000


北大路魯山人(1883-1959)は、研ぎ澄まされた審美眼と溢れる創作意欲により、書、篆刻、陶芸、漆芸、絵画、料理など、様々な分野で才覚を発揮した美の探究者としてよく知られています。

本作は、魯山人の作品の中でもとりわけ大振りの桶花入。美のある生活を求め、また、自らの料理の理想を茶の湯の懐石とした魯山人は、食器だけでなく、こうした花入や茶碗といった茶陶、暮らしを美しく彩るやきものを数多く制作しました。
織部焼の技法は、その技術を高く評価され、重要無形文化財保持者(人間国宝)の認定を打診されるも辞退したという、魯山人の陶芸を代表するものです。ところどころ青みがかった緑釉が奥深く優雅で、草花のある風景を題材としたと思われる絵付けも風趣に富み、花を生けたときの豪奢な雰囲気を様々に想像させます。




132  富本 憲吉
《色繪瓢形大徳利》
H33.4×D24.0cm
 高台内に描き銘「富」
共箱
1944(昭和19)年作

・「富本憲吉展」出品
  東京国立近代美術館工芸館/1991年
・「近代陶芸の巨匠 富本憲吉展―色絵・
  金銀彩の世界―」出品
  奈良県立美術館他/1992年
・『富本憲吉全集2 東京時代』
  P.93 №121(小学館)

落札予想価格
¥6,000,000~¥12,000,000


色絵磁器の第一人者としての高度な技が評価され、第1回重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された富本憲吉(1886-1963)の作品です。

戦争によって思想や物資が統制された1943年から45年までの間、富本は窮屈な世相への諷刺を込め、「ぶらり、のんびり」の象徴である瓢形の大徳利を数点制作したといいます。1944年作の本作はその一つで、染付を主調とした菱形の連続模様と、四弁の白い花を図案化し、格子状に配した模様が交互に斜めに表されています。特に、この四弁花模様は、自宅に植えた定家葛(ていかかずら)の花をもとに創作されたという、富本の多彩な模様の中でも代表的なものの一つです。二種類の模様が織りなすリズムと徳利の豊満なフォルムとが美しく響き合う優れた作例と言えます。
なお、本作では、菱形模様が一マスだけ、緑地に黒の水玉模様となっています。これも富本の遊び心を感じさせる見どころの一つ。ぜひ下見会場で作品をご覧になり、探してみてください。


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皆様のご来場を心よりお待ちしております。

(佐藤)

坂本繁二郎が描いた郷里の自然―《繋馬》と《熟稲》

こんにちは。
いよいよ、平成最後の年が始まりました。今年も皆様にとって幸多い一年になりますようお祈りしております。
新年のご挨拶が遅くなりましたが、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて、26日(土)は今年最初のオークションとなります、近代美術/近代美術PartⅡオークションを開催いたします。今回も出品ラインナップの中から、注目作品をご紹介いたします。
画業の大半を福岡県で過ごし、パステル調の淡淡とした色彩で幽玄な世界を表現した、坂本繁二郎(1882-1969)の作品です。



32 坂本繁二郎
《繋馬》
23.7×33.0cm
板・油彩 額装
昭和9(1934)年作
左下にサイン
坂本暁彦鑑定証付

『坂本繁二郎作品全集』
  (1981年/朝日新聞社)№.263
『坂本繁二郎[油彩]全作品集』
  (2009年/株式会社さかもと)
     №.162  34-05

                                                                                       落札予想価格      ¥5,000,000~8,000,000


坂本といえば馬、という方も多いのではないでしょうか。
馬は、坂本が1930年頃から晩年に至るまで描き続けたモティーフです。「日の光に様々な変化を見せる膚(はだ)のつやだとか、陰影の変化、つぶらな目に宿る生きものの自然な情感が私をとりこにしたのでしょう。」(坂本繁二郎『私の絵私のこころ』日本経済新聞社 1969年)という言葉の通り、久留米や八女の明るくおおらかな自然の中で駆け回る馬の姿にすっかり魅了されてしまったようです。
 1934年作の本作は、つながれた馬の後ろ姿が描かれています。陽光の下で輝くような膚や、ゆらゆらと揺れる尾が興味深かったのでしょうか。馬の様々な姿をあらゆる角度から観察して描いたという坂本らしい構図ですね。白、青、茶などの微妙な色面を組み合わせ、身近な生命の存在感と美を表現しています。



33 坂本繁二郎

《熟稲》
38.0×45.5cm
キャンバス・油彩 額装
昭和2(1927)年作
右下にサイン
坂本暁彦鑑定証付

『坂本繁二郎作品全集』
  (1981年/朝日新聞社)№.29
『坂本繁二郎[油彩]全作品集』
  (2009年/株式会社さかもと)
    №.116 27-02
「坂本繁二郎追悼展」1970年
                              (福岡岩田屋/朝日新聞社)出品

                                                                                             落札予想価格   ¥5,000,000~8,000,000

 
 1927年作の本作は、同年の第14回二科展出品作《熟稲》と同じ主題、構図で描かれています。画題の通り、筑後川や遠景に連なる耳納(みのう)山地とともに、黄色く実る秋の田が辺り一面に広がる情景が見て取れます。しかし、ここで水田と同等に、あるいはそれ以上に重視されているのは、あたかも鳥が大空を羽ばたき、魚が水中を泳ぐかのように、伸びやかに、リズミカルに空に浮かぶ雲でしょう。坂本は、時間と気象によって形を変えていく雲を「空の装飾」として大変好みました。本作でも秋空に浮かぶ雲を見つめ、郷里の自然に抱かれていることを実感しながら、自然の営みの偉大さを純粋に描き出しています。


これらの作品は、今週の下見会でご覧いただけます。
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皆様のご来場を心よりお待ちしています。


(佐藤)

12月古美術オークションより 仁清と明治の工芸

こんにちは。
先日の近代美術/近代美術PartⅡ/MANGAオークションにご来場いただいた皆様、誠にありがとうございました。
早いもので、2018年も残すところ1ヶ月と少しとなりました。
12/1(土)の近代陶芸/古美術/近代陶芸PartⅡオークション、12/8(土)のSHINWA MARKETのBAGS/JEWELLERY&WATCHESオークションで本年のオークションは終了です。本年も大変お世話になり、ありがとうございました。来年もどうぞ宜しくお願いいたします。

さて、本日は、1日(土)古美術オークションの出品作品の中からおすすめの作品をご紹介させていただきます。



122 仁清


《信楽写し瓢下耳付水指》
  H17.9×D18.2cm
  底部に印銘「仁清」
『陶磁大系23 仁清』№84
(平凡社)掲載【本付】

 落札予想価格
 ¥2,000,000~¥3,000,000


仁清(にんせい)(生没年不詳)は、江戸前期の京都で、彩り豊かな色絵陶器を完成させた京焼の祖と言われる名工です。

瀬戸や美濃などで修業を積み、正保四年(1647)頃に仁和寺門前に御室窯を開窯。仁和寺の「仁」と本名の清右衛門の「清」を一字ずつ取って仁清と号し、後水尾天皇を中心とした宮廷サロンや茶人・金森宗和との関わりの中で、優美で雅やかな陶器を生み出しました。

本作は、華麗な色絵ではなく、仁清作品のもう一つの魅力である轆轤成型による造形美が徹底して追求された水指です。仁清の色絵が大名好みだったのに対し、本作のように絵付けされていない作品は、京都の公家に好まれたと言われています。
本作では、下方に付けられた耳と温かみのある曲線を描く器形が典雅な趣を感じさせます。この特徴的な造形は、《白釉耳付水指》(出光美術館蔵)などにも見られる、仁清が得意としたものです。また、蓋つまみの縁が輪花形に刻まれていて、仁清の装飾性の高さと洗練された感性をうかがわせます。


123 梨子地菊蒔繪提箪笥

H30.4×W26.2×D39.6cm
『井上侯爵家御所藏品入札目録』二〇九  掲載
東京美術倶楽部/大正十四年(1925)【目録付】
「~超絶技巧~明治期の工芸展」№16 出品
日本橋三越本店/平成二十八年(2016)【目録付】

落札予想価格
¥3,000,000~¥5,000,000


絢爛豪華な装飾性とリアルな表現を徹底的に追求した明治の工芸は、その驚くべき「超絶技巧」で近年注目を集めています。
本作も、明治期の作と伝わる蒔絵の提箪笥(さげだんす)です。提箪笥は、主に身の回りの小物や書類などを携行する日常の道具ですが、本作はその華麗さゆえ、思わずうっとりと見入ってしまいます。表面の菊花の高蒔絵だけでも十分に美しいのですが、四隅や扉の金具、提鐶(さげかん:上面に付いた持ち手)に施された彫刻、引出し内側の梨子地(漆の上に金や銀粉を蒔き、さらに透明漆をかけ、粉が見えるよう研ぐ技法)なども本当にお見事。細部に至るまで技術の粋が尽くされています。


←扉の内側です。

     扉を開け、引出しを引くと、いっそう華やかな世界
     が広がります。皆様なら引出しの中に何をしまいま
     すか?



これらのほか、このたびの古美術は、代々の天皇の宸翰(しんかん)、一休宗純の一行など、書がとても充実しています。また、近代陶芸では、加藤唐九郎の《志野茶盌 銘 薄ずみ》、北大路魯山人《金銀水玉花入》などもおすすめです。
ぜひ下見会で実物をご覧ください。

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皆様のお越しを心よりお待ちしています。

(佐藤)