きれい寂びの漆器《不昧公好 菊棗》と、 華やかな漆器・松田権六《千鳥蒔絵中次》

こんにちは。

今年も各地でいよいよ梅雨入りが始まりましたね。

紫陽花の開花前線も北上しており、6月らしい季節となってきました。

 

さて、今週末に「近代陶芸/古美術/近代陶芸PartⅡオークション」が開催されます。

今回はその中から漆芸作品についてご紹介したいと思います。

漆器制作が盛んな土地といえば、石川県です。石川県は輪島塗をはじめ、山中塗、加賀蒔絵の金沢漆器など伝統技術が今日まで受け継がれてきています。今年初めの震災で大きな被害を受けられたと思いますが、以前のように漆器制作が潤うことを願わずにはいられません。石川県の中でも金沢市では1978(昭和53)年から名誉市民の認定が行われていますが、第一号に認定されたのは、漆芸作家の松田権六(ごんろく)でした。

■LOT.122 松田権六《千鳥蒔絵中次》
H7.6×D7.3cm
高台内に銘「権六作」
1970(昭和45)年作
二重共箱
・「松田権六展」出品 東京国立近代美術館 / 1978(昭和53)年
・「松田権六展」出品 石川県立美術館他 / 1987(昭和62)年
・『人間国宝シリーズ21 松田権六 』掲載 図版46(講談社)
落札予想価格:150万円~250万円

       1896(明治29)年に金沢市で生まれた松田権六は、加賀蒔絵を近代の作家作品として昇華させました。権六は7歳のころから、仏壇職人であった兄から蒔絵制作を習い始めています。1914(大正3)年に石川県立工業学校(漆工科描金部)を卒業し、同年には東京美術学校(現東京藝術大学)の漆工科に入学しました。卒業後、同学校の助教授となり、法隆寺夢殿内に新調した救世観音の厨子の漆塗装監督を務め、戦後には東京藝術大学の教授に就任し、正倉院御物の髹漆品調査を行うなど国を代表とする漆芸作家になりました。そして1955(昭和30)年に蒔絵の技術で重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定され、漆の神様“漆聖”と謳われるまでに至りました。

 

本作は、1970(昭和45)年に制作された中次(なかつぎ)と呼ばれる薄茶器です。蓋には、青貝(鮑の貝殻)が玉虫色に輝いている部分が使用され、鑑賞者を引き込む美しさがあります。また側面は、研出(とぎだし)蒔絵という技法を用いて流水紋が描かれています。研出蒔絵とは、漆で文様を描き、その漆が乾く前に金銀の粉を蒔いて乾いた後に粉固めし、その上から再度漆を塗って乾燥させ、研いで文様を表す技法です。権六は、荒い粉を使用するという工夫を行い、研出蒔絵に取り組んだことで知られています。古来の技法を研究し、さらに独自に進化させた巧みな技が詰め込まれた作品と言えるでしょう。

そして、古美術オークションでは、華やかな蒔絵とは違い、闇(やみ)(黒)蒔絵と呼ばれる技法で制作された棗が出品されます。

■LOT.51 《不昧公好 菊棗》
H7.6×D7.4cm
蓋裏に松平不昧在判
松浦家貼紙
『肥前松浦伯爵家蔵品目録』掲載 二八四 東京美術倶楽部 / 昭和2(1927)年【目録付】
落札予想価格:50万円~80万円

 闇(黒)蒔絵とは、盛り上げた黒漆で絵を描き、その上からまた黒漆を塗ったもので、華やかな蒔絵の棗とは異なり、漆黒のなかにほのかに浮かび上がる文様が優美な蒔絵です。本作品は、江戸中期の大名茶人であり、石州流不昧派を創始した出雲松江藩(現・島根県)七代藩主・松平不昧(ふまい)【宝暦元-文政元(1751-1818)】が自分の好みの意匠を、漆工に指示し作らせたものです。不昧には、原羊遊斎や小島漆古斎といったお抱えの漆工がいたことでも知られています。本作の作家はあきらかではありませんが、かなりの技量を持った漆芸家であると言えるでしょう。

旧蔵者は、肥前国平戸藩(現・長崎県)の旧藩主・松浦(まつら)家。松浦家は、不昧と同じく石州流から武家茶道鎮信(ちんしん)派を創始した松浦鎮信(しげのぶ)【元和八-元禄十六(1622-1703)】を筆頭に、多くの茶に優れた藩主を輩出しました。本作は武家茶道の「きれい寂び」に見合い、大切に伝世されてきたことが分かります。

 

そのほかにも、加守田章二《青い壷》落札予想価格:500万円~800万円や、『大正名器鑑』に掲載されています《唐物茶入 鶴子》落札予想価格:1,500万円~2,000万円など、なかなか見ることのできない作品も出品されますので、ぜひ下見会場へ足をお運びください。

 

*下見会・オークション会場、スケジュール、そのほかの注目作品はこちら。

オークション前日と当日は、下見会を開催しておりませんので、お気を付けください。

 なお、ご入札はご来場のほか、書面入札、電話入札、オンライン入札、ライブビッディングなどの方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。お待ちしております。

 

 

                                                   (江口)

 

伊藤久三郎の抽象―《作品 N621》、《Moraine》

こんにちは。
新緑が目に鮮やかな季節となりました。
先月の西洋美術、BAGS/JEWELLERY&WATCHESオークションにご参加くださった皆様、誠にありがとうございました。

さて、今週25日(土)は近代美術/近代美術PartⅡ/Contemporary Art/Watch オークションを開催いたします。
皆様は、伊藤久三郎という画家をご存じでしょうか。
日本のシュルレアリスムを代表する画家の一人、あるいは抽象絵画の先駆的な存在としてご記憶されている方もいらっしゃるかもしれません。海外を含め、オークションではあまり見かけることがなく、当社のオークションに出品されるのもなんと24年ぶりとなります。
今回は伊藤の抽象絵画が2点出品されますので、ご紹介いたします。

伊藤久三郎(1906-1977)は京都市に生まれ、京都市立美術工芸学校予科から京都市立絵画専門学校(現・京都市立芸術大学)へ進み、10年間にわたり日本画を学びました。卒業後は前衛的な油彩画を描くことを志向し、上京。一九三〇年協会洋画研究所(後の独立美術協会)に入所し、第16回二科展にフォーヴィスムの影響を示した作品を出品し、初入選します。1933年頃からはシュルレアリスムの夢幻的な作風に転じ、二科会内に結成された前衛画家たちのグループ、九室会に参加。吉原治良や山口長男とともに日本の前衛芸術をリードする存在となりました。戦時下の1944年には京都に拠点を移し、終戦後は行動美術協会に参加します。この頃より抽象絵画に取り組み、1957年には第4回サンパウロ・ビエンナーレに出品し、抽象表現の世界的な流行の中で活躍しました。1960年代からは絵具を厚く盛り、引っ掻き、穴を開けるなどの実験的な表現やグラフィカルな作品を展開し、画業を通して新しい芸術を追求し続けました。


     
  202
《作品 N621》
              145.4×112.4cm(額装サイズ146.7×113.5cm)
    キャンバス・油彩  額装
    1962年作
    右下にサイン・年代
    裏木枠に署名
   「第17回行動美術展」(1962年/東京都美術館)
    出品
   「伊藤久三郎―透明なる叙情と幻想展」1995年
   (財団法人品川文化振興財団O美術館)出品

    落札予想価格 ¥300,000~¥400,000


   
    203  《Moraine》 
               144.7×112.0cm(額装サイズ146.2×113.5cm) 
               キャンバス・油彩 額装
    1967年作
     左下にサイン・年代
    裏木枠に署名・タイトル
    『伊藤久三郎画集』
    (1980年/成安女子短期大学総合芸術研究所)№147
 
    落札予想価格 ¥200,000~¥300,000



伊藤はシュルレアリスムや抽象絵画などの多様な画風を展開し、先駆的な前衛画家の一人として独特の存在感を放ちました。その作品は「夢で見た世界」や「偶然に思いついたアイデア」註1)をもとに、欧米の現代美術に関する豊富な知見を生かした理知的な画面構成と豊かな詩情によって造形化されたものです。

本オークションの出品作品、LOT.202《作品 N621》とLOT.203《Moraine》は、ますます多様性に富んだ作風が示された円熟期の作品です。
1962年作のLOT.202は、同年に開催された第17回行動展の出品作。毛羽立つようなざらついた赤の絵具と厚く盛り上げられた黒い点の集合により触覚的なマチエールが形成されています。そのマットな質感の中に散見される艶が生々しさを感じさせ、赤と黒の深層にあたかも何かが蠢いているかのようです。

そして、1967年に制作されたLOT.203には、氷河によって運ばれた岩石、砂などの堆積物を意味する《Moraine》というタイトルがつけられています。四角形とそれを囲む枠の構成の中に、綿棒のような白い線が立体的でリズミカルに表されており、それらの歪みのあるフォルムとLOT.202同様のざらついたマチエールは、伊藤芸術独特のユーモアやあたたかみを感じさせます。「夢で見た世界」註2)を様々なイメージや記号と結びつけて統一的な絵画空間を構成するという伊藤の制作過程をうかがわせる作品と言えます註3)。

 
ぜひ下見会場で実際の作品をご覧ください。
オークション・下見会スケジュール、オンラインカタログはこちら

※下見会・オークション会場は、千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1Fとなります。
 24、25日は下見会を開催しておりませんので、ご注意ください。

また、近代美術オークションでは、速水御舟、前田青邨、日本画の五山(東山魁夷・杉山寧・髙山辰雄・加山又造・平山郁夫)、黒田清輝、坂本繁二郎、国吉康雄、梅原龍三郎、ジョルジュ・ルオー、ピエール=オーギュスト・ルノワールなどの作品が出品されます。

ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなどの方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。

(佐藤)

 

註1)「伊藤久三郎エスキス展」京都新聞 1971年8月27日
註2)前掲註1
註3)乾由明「伊藤久三郎の芸術」『伊藤久三郎画集』成安女子短期大学綜合芸術研究所 1980年

4/13(土)開催オークションのご案内―ミントン《パテ・シュール・パテ花鳥文飾壷》など

こんにちは。
今週、東京はまだ桜が見頃ですが、皆様のお住まいの地域はいかがでしょうか。
昔は入学式の時期に桜が咲いていた記憶がありますが、4月に桜が咲いているのを見るのは何年ぶりでしょう。
いつもより遅めのお花見、どうぞお楽しみください。

さて、今週13日(土)は、西洋美術/BAGS/JEWELLERY&WATCHESオークションを開催いたします。今回は西洋美術オークションの出品作品の中からおすすめの1点をご紹介いたします。



43   ミントン

《パテ・シュール・パテ花鳥文飾壷》
H65.3×W43.0cm
胴部にサイン「AB」
底部に窯印

落札予想価格 
¥3,000,000~¥4,000,000

















1793年、ミントン窯はトーマス・ミントンによりイギリス中部の街ストーク・オン・トレントに設立されました。1798年頃より、牛の骨灰を陶土に混ぜ、美しい乳白色を表現するボーン・チャイナ(骨灰磁器)の製造を開始。1851年の第1回ロンドン万博にて銅賞を受賞すると、ヴィクトリア女王の賞賛を得て王室に愛用されました。そして、1870年にはフランスのセーブル窯からデザイナーのルイ・ソロンを迎え、パテ・シュール・パテ技法を導入します。ヴィクトリア朝時代以降、新古典主義、ロココ、ゴシック、アール・ヌーヴォーなどの華麗な装飾様式で世界各国の王侯貴族たちを魅了した、イギリスを代表する名窯の一つです。

 本作は、ミントンの代名詞とも言うべき装飾技法、パテ・シュール・パテによる飾壷です。パテ・シュール・パテは、主に白色の陶土を色付きの素地に薄く塗り重ねることで、カメオ状の文様を形成する手法。底部の窯印より、19世紀後半から20世紀初頭に制作された作でしょうか。胴部の下方に記されたサインは、ソロンに学んだデザイナー、アルボイン・バークスのものと推測されます。

また、胴部にはこの技法により、優雅な花々とそこに集まる可愛らしい鳥たちが写実的に描かれ、重なり合う花弁と鳥の羽の柔らかな質感が巧みに表現されています。一方、首部には彩色のパテ・シュール・パテにより、幾何学的にデザインされた花の模様が表されており、二種類の異なる花の表現にはデザイナーの洗練された感性をうかがわせます。大型作品でありながら、パテ・シュール・パテの緻密な表現が圧巻であり、隆盛期のミントンの魅力に溢れる作品です。




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鳥たちが花に遊ぶ様子が描かれています。
はばたく姿の躍動感や羽毛の繊細な表現がみどころです。











ぜひ下見会場で実際の作品をご覧ください。
オークション・下見会スケジュール、オンラインカタログはこちら

※下見会・オークション会場は、千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1Fとなります。
 12、13日は下見会を開催しておりませんので、ご注意ください。
 



また、同日開催のBAGS/JEWELLERY&WATCHESオークションでは、こちらの作品がおすすめです。
下見会場ではご試着もしていただけますので、スタッフまでお気軽にお申しつけください。



 655   パライバトルマリン ダイヤモンドリング<ブラジル産>
 本体サイズ:14.0×21.5mm
 リングサイズ:15号(不可)
 打刻:PT900 PA1.155 D2.63
 重量:7.2g
 中央宝石研究所宝石鑑別書・分析報告書付
 鉱物名:天然トルマリン
 宝石名:トルマリン
 透明度と色:透明緑青色
 カットの形式:オーバル ファンシーカット
 重量:PA1.155 D2.63(刻印)
                寸法:7.9×5.3×測定不可mm
                落札予想価格 ¥7,000,000~¥10,000,000



  658   ライトピンキッシュブラウンダイヤモンド
  サイズ:14.76-14.79×8.46mm
  GIA COLORED DIAMOND REPORT付
  落札予想価格
  ¥23,000,000~¥35,000,000






661   レッドダイヤモンド
サイズ:4.67×4.65×2.69mm
GIA COLORED DIAMOND REPORT付
落札予想価格 ¥60,000,000~¥80,000,000









 664   ブルーダイヤモンド ピンクダイヤモンド
           ダイヤモンドペンダントネックレス(by DE BEERS)
 本体サイズ:35.0×13.8mm

 長さ:42.0cm(3.0cm減調節環付)
 打刻:なし
 チェーン打刻:DE BEERS DB880V 950/750 950Pt
 重量:8.4g
 GIA COLORED DIAMOND REPORT付
 DE BEERS JEWELLERY DIAMOND GRADING REPORT付

 落札予想価格 ¥40,000,000~¥80,000,000


ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなどの方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。


(佐藤)

3月開催オークション-近代化を目指した陶芸作家・波山と憲吉-

こんにちは。

一日の寒暖差や、花粉に乾燥、何かと体調を崩しやすい時期ですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか?

さて2月末日に、弊社は事務所を中央区銀座から、東京駅丸の内出口にほど近い郵船ビルディング(東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階2階)へ移転いたしました。それに伴いまして皆様にご不便、ご迷惑をお掛けしており大変申し訳ありませんが、引き続きご愛顧賜りますようお願い申し上げます。

 

そして、来週23日土曜日に新規会場にて「近代美術/コンテンポラリーアート/近代美術PartⅡ/近代陶芸/近代陶芸PartⅡオークション」を開催いたします。

その中から、近代陶芸オークションに出品されます作品をご紹介したいと思います。

 

 板谷波山【1872-1963(明治5-昭和38)】と富本憲吉【1886-1963(明治19-昭和38)】は、陶芸界を近代化させた立役者と言って過言ではありません。波山と富本は、14歳の年の差がありましが、奇しくも1963(昭和38)年に二人ともこの世を去っています。同じように陶芸作家としての高みを目指した二人でしたが、波山は1960(昭和35)年に、重要無形文化財保持者に推挙されるも辞退しており、一方、富本は1955(昭和30)年の2月に、「色絵磁器」で第一回重要無形文化財保持者の認定を受けました。二人の最終的に目指した先は、似て非なるものでしたが、近代化していく社会へ見合う陶芸作品を模索し続けました。

◇LOT.148 富本憲吉《色繪金彩黄蜀葵飾壷》
 H27.4×D32.2cm 高台内に描き銘「富」
      共箱 1930(昭和5)年作
      「富本憲吉展」出品 東京国立近代美術館工芸館/1991(平成3)年
      『富本憲吉全集2』掲載 No.227(小学館)
落札予想価格:300万円~500万円

     西洋化する室内装飾の一つとして、富本は「飾壷(かざりつぼ)」を多く手掛けました。本作のモティーフである“黄蜀葵”(おうしょっき)とは、“とろろあおい”とも読み、中国原産のアオイ科の植物のことです。黄蜀葵の根は、手すき和紙の繊維を均一にする「ネリ」として使用されており、夏に咲く黄色い大ぶりな花は、古くから画題として扱われてきました。富本憲吉は、模様作りのために描いた写生を『模様選集』として残しており、そのなかには黄蜀葵の図案も見られます。1923(大正12)年8月31日、関東大震災の前日に広島の尾道向島で写生されたもので、元々、富本の父が好んだ花であったことから、自宅の庭に植えられていた馴染み深いものでした。

本作制作の前年1929(昭和4)年に制作された東京国立近代博物館蔵《銀襴手大飾壷》は、本作と同じように胴部に大きく黄蜀葵が配置されていますが、銀でさらっと輪郭が描かれているだけです。一方本作は、しっかりとした金の縁取りに、銀で中を塗り込めており、力強い作品に仕上げられています。この年に金銀泥の同時焼成を試みており、後の色絵金銀彩に繋がる成功例の貴重な作といえるでしょう。

 

また、板谷波山も動植物の写生集『器物図集』を著しています。

 

◇LOT.145 板谷波山《彩磁水差 草花文》
      H18.5×D17.4cm 高台内に印銘「波山」
      1941(昭和16)年頃の作
 板谷佐久良箱 東美鑑定評価機構鑑定委員会鑑定証書付
 落札予想価格:200万円~300万円

板谷波山の図案で特徴的なのは、アール・ヌーヴォー、アール・デコなど研究をし、意匠の変遷が見られることです。

明治期末から大正期にかけ、大胆で優美な曲線を生かしたアール・ヌーヴォー調の作品が制作されました。そして昭和初期にかけては、花卉や茎がまっすぐに配置されたアール・デコの特徴を持った図案や、更紗文様を取り入れた意匠が手掛けられました。本作は、風に揺らいでいるようなヌーヴォー的な曲線の葉と、デコに通じる直線の茎と一輪の花、そして左右対称の図案はインド更紗を想起させます。波山の次男・佐久良氏の識によると、1941(昭和16)年前後の作であるといいます。この頃は、以前花瓶に使用していた最先端のデザインを、伝統的な茶道具・水指に絵付けすることで、新たな茶陶を生み出そうとしていました。本作もその一連の作品の一つでしょう。

近代陶芸界の道を切り開いた二人の陶芸家は、お互い最新の技術や様式を学び傑作を数々残しました。戦前に手掛けられたそれぞれの優品をぜひご覧になりにいらしてください。

 

また、今回のオークションから弊社移転に伴い、下見会・オークション会場も変更しております。こちらからスケジュールと共にご確認ください。

*下見会・オークション会場、スケジュール、そのほかの注目作品はこちら。

オークション前日と当日は、下見会を開催しておりませんので、お気を付けください。

 なお、ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなどの方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。お待ちしております。

                                        (江口)

 

 

      〔参考文献〕・富本憲吉展/東京国立近代美術館工芸館(1991年)

             ・板谷波山の意匠/出光美術館(2003年)

            ・生誕150年板谷波山-時空を超えた新たなる陶芸の世界/

鏑木清方と芝居絵―《歌舞伎のはじめ》

こんにちは。
2024年1回目のブログ更新となります。
本年もよろしくお願い申し上げます。

今年は元日から大きな災害や事故が相次ぎました。このたびの能登半島地震で被災された皆様には心よりお見舞いを申し上げます。真冬の寒さの中、非常に厳しい状況が続いていることと思いますが、皆様の安全と被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

さて、今週の27日(土)は近代美術/近代美術PartⅡ/Contemporary Artオークションを開催いたします。今回も出品作品の中からおすすめの1点をご紹介いたします。


【 オークション終了につき、画像は削除させていただきました 】

     112  鏑木清方
   《歌舞伎のはじめ》
  141.8×56.8cm(軸装サイズ249.3×78.8cm)
      絹本・彩色
      1938(昭和13)年作
      右下に落款・印
      共箱
      東美鑑定評価機構鑑定委員会鑑定証書付

      掲載文献:
   『美之國 第十四巻 第十二号』(1938年/美之國社)
   『塔影 第十五巻 第一号』(1939年/塔影社)
   『美術街 第六巻 第二号』(1939年/美術街社)
   『阿々土 第二十四号』(1939年/阿々土社)
   『日本美術年鑑』(1940年/美術研究所・岩波書店)№163 
   『鏑木清方画集 資料編』(1998年/ビジョン企画出版社)
      №645
   『市井展の全貌―淡交会、珊々会、尚美展から東京会まで(戦前編)―』
   (2012年/東京美術倶楽部・八木書店)p.33
     展覧会:「七絃会 第九回展」1938年(日本橋三越)

    落札予想価格 ★¥1,000,000~¥1,500,000


鏑木清方は、上村松園とともに「西の松園、東の清方」と称された近代日本画を代表する美人画の名手です。近年は、市井の人々の暮らしの情景をあたたかな眼差しで描いたことでも高く評価されています。
1878
(明治11)年、清方は戯作者・條野採菊の子として、東京の下町に生まれました。挿絵画家を目指し、13歳の時に浮世絵歌川派の流れを汲む水野年方に入門。新聞や雑誌で人気を博す一方、第3回文展(1909年)で初入選するなど、画壇においても頭角を現します。また、この頃浮世絵を独学し、江戸風俗を題材とした美人画や明治の庶民生活に取材した風俗画の制作に専念していきました。
関東大震災の後は、古き良き東京の姿を描き留めようという意識をいっそう強め、1927(昭和2)年に《築地明石町》、1930年には《三遊亭円朝像》(ともに重要文化財)といった名作を次々に発表。戦後は鎌倉に移住して「卓上芸術」の制作にも力を注ぎ、画帖や絵巻物など、細やかな筆遣いや色彩を手元で楽しむことができる作品を数多く手掛けました。

3歳の頃から芝居好きの両親とともに歌舞伎座や新富座に通ったという清方は、生涯にわたって芝居を好み、挿絵画家時代には雑誌『歌舞伎』の挿絵や表紙絵を手掛け、新聞に劇評を書くなど、特に歌舞伎に造詣が深かったといいます。日本画家となった清方が、江戸の風俗や浮世絵の世界を絵画の画題に選び、愛して描き続けたのは、このように幼少期から親しんだ歌舞伎の影響が大きかったのかもしれません。その後は「京鹿子娘道成寺」や「鷺娘」など、歌舞伎の演目を題材とした作品も度々描きました。

1938(昭和13)年作の本作も歌舞伎を題材とした作品の一つです。描かれているのは画題の通り、「歌舞伎のはじめ」、つまり歌舞伎の“祖”とされる出雲の阿国(おくに)と名古屋山三(さんざ)です。阿国は安土桃山時代から江戸初期、出雲大社の巫女と称して諸国を巡り、男装してかぶき踊りを始めたという人物。山三は蒲生氏郷に小姓として仕えた後、阿国歌舞伎の演出家や役者を務めたと伝えられています。本作では《風俗図(彦根屏風)》(国宝)に描かれた若衆の姿を引用し、太刀にもたれた男装の阿国とその傍らに腰を下ろす美男子の山三のファッショナブルな佇まいを、ふくよかで簡潔な輪郭線と精緻な線描を使い分けて洒脱に表しています。なお、本作は下絵となる素描作品が残されており、現在それは鎌倉市鏑木清方記念美術館に収蔵されています。

ぜひ下見会場で実際の作品をご覧ください。
オークション・下見会スケジュール、オンラインカタログはこちら

なお、ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなどの方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。


(佐藤)

精良な祥瑞と朴訥な古染付

こんにちは。

先日丸ビルで開催されましたMANGA/Super Athletes Collectibles/近代美術PartⅡ/Contemporary Art/近代美術オークション、SHINWA COLLET Watch Auctionにご参加いただいた皆様、ありがとうございました。今週は、弊社にて今年最後のオークション・近代陶芸/古美術/近代陶芸PartⅡオークションが行われます。 

 

今回は、お茶道具が数多く出品されます。江戸前期の茶匠の筆が添えられた茶道具類や、樂家代々の茶碗、茶人から珍重されてきた見立ての品々、現代作家による写しの作品など、風合いや、用途、作家別でご覧になられても面白いかと思います。

なかでも近代に入り、古美術の蒐集家として質量ともに優れていたと知られる三者の数寄者に渡った作品をご案内いたします。

◆LOT.155「祥瑞輪花口紅松竹梅詩入向附 五人」
H5.7×D11.8cm他
各高台内に「大明成化年製」記
①『第三回赤星家所蔵品入札目録』掲載 一九六
  東京美術倶楽部 / 大正6(1917)年【目録付】
②『故田竹邨先生遺愛品入札目録』掲載 二三三
  京都美術倶楽部 / 大正12(1923)年【目録付】
③『益田家御所蔵品入札もくろく』掲載 二三九
  東京美術倶楽部 / 大正12(1923)年
落札予想価格:70万円~100万円

 「祥瑞(しょんずい)」とは、中国明時代末期の崇禎年間(1628-1644)に景徳鎮で焼成された磁器で、小堀遠州など日本の茶人らの注文によって焼かれた染付を指します。胴部には、文人の美徳や理想を表す「三友」(松竹梅)を詠んだ漢詩と絵付けが施され、見込みにも太陽に例えられた「菊」という目出度い図柄があり、薄造りで文人趣味の品ある作です。

 本作が、一番初めに世に出されたのは、薩摩出身の明治時代の実業家で、裏千家十三代圓能斎に茶の湯を学んだ赤星弥之助(1853-1904)の売立でした。赤星の旧蔵品の中には、現在国宝に指定されている南宋の画家・梁楷(りょうかい)の《雪景山水図》(東京国立博物館蔵)などが有名です。その後、文人画家・田能村直入に師事した田近竹邨(たぢかちくそん)(1864-1922)が所持しました。竹邨は、師の師である田能村竹田の《亦復一楽帖》を所持しており、これは現在公益財団法人名勝依水園・寧楽美術館が所蔵し、重要文化財の指定を受けている作品です。竹邨は、この作品を手にした喜びで、自身も「一楽荘」と号し、本作の箱にも「一楽荘」の蔵印を捺しています。そして三人目に、近代茶人・益田鈍翁(どんのう)の末弟にあたり古美術商・多聞店を開いた益田紅艶(こうえん)(1865-1921) の元へ渡りました。紅艶は、重要文化財である《玳皮盞 鸞天目(たいひさん らんてんもく)(茶碗)》を所有しており、現在は三井記念美術館の所蔵となっています。このように本作も、国宝や重要美術品に指定されるほどのコレクションを形成した、目の肥えた人物を魅了した逸品であると言えるでしょう。

 また、「祥瑞」を“上手”とするなら、“下手”とされたのは、「古染付」でした。釉薬が胎土に密着せずにこぼれた部分・虫喰いが出来てしまうのが特徴的で、日本人は、その古朴さを愛でたと言います。

◆LOT.154「古染附蝶模様香爐」
  H9.8×W9.5cm
 『当市石田五兵衛氏並ニ某家所蔵品入札目録』掲載  一二六
   京都美術倶楽部 / 大正14(1925)年【目録付】
落札予想価格:40万円~60万円

こちらは、今回出品されます古染附の香炉です。形も面白く、朴訥な草花や蝶の絵付けがなんとも愛らしいです。北大路魯山人は、明代に完成したこの染付の登場を「こんなスキッとした美しい焼物は実に見たくも見られなかったというべきだ」『魯山人著作集第一巻陶芸論集』(五月書房)と称賛しています。そして自身も古染付の写しを作成しており、今回はその中の一つ、鯰(なまず)の向付が出品されます。

◆LOT.301 北大路魯山人「染着鯰魚向付 十客」
  H3.5×W17.0cm 他
  各底部に描き銘「魯」(九客)
  共箱   六客ホツ有
  東美鑑定評価機構鑑定委員会鑑定証書付
落札予想価格:100万円~150万円

魯山人の鯰向付は有名ですが、実際弊社で出品されるのは初めてのことです。なんとも言えない表情をした鯰。染付の色味は発色が豊かで、それぞれ異なる風合いを見せてくれます。

 

染付の味わい深い美しさをぜひご堪能いただければと思います。

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また、今回もオークション当日は、下見会を開催しておりませんので、お気を付けください。

 なお、ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなどの方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。お待ちしております。

                                        (江口)

伊東深水の美人画―《春の雪》

こんにちは。
先月の西洋美術、BAGS/JEWELLERY&WATCHESオークションにご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。
さて、今週26日(日)は、MANGA/Super Athletes Collectibles/近代美術PartⅡ/Contemporary Art/近代美術オークション、SHINWA COLLET Watch Auctionを開催いたします。下見会場は通常通り銀座の弊社、オークション会場は丸ビルホール(丸ビル7F)となります。また、今回は日曜日の開催となりますので、お間違えのないようご注意ください。

今回も出品作品の中からこれからの季節にぴったりの一点をご紹介いたします。
美人画の名手・深水の線描の巧みさに改めてうっとりしてしまう名品です。

【 オークション終了につき、画像は削除させていただきました 】

247  伊東深水
《春の雪》
143.1×56.8cm(軸装サイズ244.5×79.5cm)
絹本・彩色 
右下に落款・印 共箱
「伊東深水名品展」1957年(白木屋/東京新聞社)出品
落札予想価格 ¥10,000,000~20,000,000


伊東深水(1898-1972)は上村松園、鏑木清方と並び称される、近代の日本画を代表する美人画家です。
1898(明治31)年、東京の下町に生まれた深水は、11歳で印刷の仕事に就き、その傍らで図案部門の顧問であった結城素明に画才を認められ、鏑木清方に入門します。再興第1回院展、第9回文展に初入選し、16歳の若さで画壇にデビュー。新聞や雑誌の挿絵、新版画運動への参加を活動の中心とした時期を経て日本画制作に専念し、その後は帝展や日展を中心に活躍。歌川派浮世絵の流れを汲む美人画や同時代を生きる女性たちを描いたモダンな風俗画で、美術界の評価のみならず広く大衆の人気を博しました。


舞い落ちる雪の中、傘を差して歩く女性を描いた傘美人の主題は、浮世絵の好画題として数多く制作され、浮世絵から多くを学んだ深水もこの主題を好んで描きました。
本作は、深水による傘美人の代表作の一つとして知られる《春の雪》(1946年作)と同じ下図を使用したと考えられる類似作品であり、1957(昭和32)年に開催された「伊東深水名品展」(日本橋・白木屋)の出品作です。
また、本作の箱書きには「青衿会美人展出品作」と記されています(参考図版参照)。これは『自由美術』第1巻第1号(1946年)や『鏑木清方と昭和の美人画―青衿会及び「婦人画報」関係作品所収―』(鎌倉市鏑木清方記念美術館、2021年)などの青衿会展関係の資料より、深水が中心となって結成した青衿会の第6回展(1946年)を指すものと考えられます。それゆえに本作も1946(昭和21)年頃に制作された作品でしょうか。


江戸後期の風俗に取材した作と思われる本作では、雪化粧した梅の花を楽しむような二人の女性の姿が、端正で流麗な線描によって艶やかに表現されて
います。
美しく結われた女性たちの髪、華やかな着物の文様と生地の質感、機能美に富んだ傘を緻密な筆致で描き出す一方、背景では梅の花の形態を様式化し、雪との組み合わせを情緒的に表しています。人物だけでなく、このように背景の自然描写に力を注ぐことは、昭和期の深水の美人画において重要なテー
マでした。本作では深水が得意とした雪を胡粉の濃淡と淡墨によって捉え、枝にふんわりと積もる様子を巧みに表して画面を充実させています。伝統的な主題を季節の風情とともに描き出した作であり、優美でありながら凛とした女性たちの佇まいには江戸の粋と深水の確かな描写力を感じさせます。


← 参考図版:本作に付属する箱書きです。

ぜひ下見会場で実際の作品をご覧ください
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                       このほかにも日本画は東山魁夷、加山又造、平山郁夫、杉山寧、徳岡神泉
                                         など、洋画は熊谷守一、国吉康雄など、外国絵画はシャガール、マルケ、
                                         ユトリロなどの巨匠たちの作品が出品されます。

なお、ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなど
の方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。

(佐藤)

芹沢銈介《型絵染 釈迦十大弟子尊像》

こんにちは。
9月に入りましたが、まだまだ真夏のように暑い日が続きますね。
引き続き熱中症にはご注意ください。

さて、16日(土)は、近代美術/コンテンポラリーアート/近代陶芸/近代美術PartⅡ/近代陶芸PartⅡ オークションを開催いたします。
今回は近代美術PartⅡの出品作品の中から、おすすめの1点をご紹介いたします。


【 オークション終了につき、画像は削除いたしました 】

舎利弗(しゃりほつ)  魔訶目犍連(まかもくけんれん) 魔訶迦葉(まかかしょう)


阿那律(あなりつ)    須菩提(しゅぼだい)    富楼那(ふるな)


魔訶迦旃延(まかかせんねん) 優波離(うばり)    羅睺羅(らごら)

阿難(あなん)
(各作品の画題は共箱より)


  165 芹沢銈介
 《型絵染 釈迦十大弟子尊像》
 各102.0×41.5cm(軸装サイズ各173.4×61.5cm)
 各紙・型絵染 
 各軸装
 各共箱
 落札予想価格 ★¥800,000~¥1,200,000

 

芹沢銈介(1895-1984)は、民藝運動を代表する作家の一人、そして型絵染の重要無形文化財保持者(人間国宝)として国内外で高く評価された染色家です。
1895年、静岡県に生まれた芹沢は、少年時代に洋画家を志しますが、実家の全焼によって断念し、1913年に東京高等工業学校図案科に入学します。卒業後は図案の仕事に従事しますが、1927年に民藝運動を提唱した美術評論家・柳宗悦と、翌年には沖縄県の伝統的な染色技法である紅型と出会い、染色家の道に進みました。1939年、民藝の同人たちと初めて沖縄に渡り、紅型の技法を習得。1956年に型絵染*の重要無形文化財保持者に認定されました。1976年、パリの国立グラン・パレ美術館にて大規模な個展を開催し、その後フランス芸術文化功労勲章を受章。動植物や風景、人物、文字、道具など、身の回りにある様々な事物を意匠化し、型絵染や肉筆画によって味わい深く表現しました。

同じく民藝の作家である棟方志功も木版画を制作したことで知られる「釈迦十大弟子」は、仏教の開祖である釈迦の10人の高弟を題材とした尊像です。1982年、芹沢は愛宕一心会(天心社刊行会)から依頼を受け、インド・クシナガラの釈迦本堂に納める目的でこの作品を型絵染によって制作しました。その際、芹沢はインドに贈る縦180cmの作品とそれより小さな縦約102cmの作品という2種類のサイズを制作しており、後者は頒布用などを含め合計75部が作成されました。作品にエディションは明記されていませんが、後者には紙に「天心社刊行会」の透かしが入れられていることから、本作もその一つであるとわかります。
また、制作の工程において、87歳の芹沢は、特に体力と集中力を要する型彫りの作業に満身創痍で挑んだと言われています。晩年を迎えた作家が祈りを込めて取り組んだこの《型絵染 釈迦十大弟子尊像》は、芹沢の最後の型絵染の大作となりました。
本作では、弟子一人一人の人間性や宗教的な思想が細やかに表現されており、白と黒のコントラスト、素朴でありながら老齢を感じさせない充実した曲線が豊かな味わいと品格を感じさせます。

*型絵染…渋紙に模様を彫った型紙を布の上に置き、防染糊を使用しながら染液で模様を染める技法


ぜひ下見会場で実際の作品をご覧ください。
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なお、ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなどの方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。

(佐藤)

佐伯祐三の第1次パリ時代 その2―《街角》

こんにちは。
梅雨が明けないうちから毎日すごい暑さですね。
今年の夏は猛暑が予想されているようですので、熱中症にはくれぐれもお気をつけください。
また、先月から各地で豪雨が続いていますが、被災された方々には心よりお見舞いを申し上げます。

さて、今月の22日(土)は近代美術/近代美術PartⅡ/コンテンポラリーアートオークションを開催いたします。今回も出品作品の中からおすすめの1点をご紹介いたします。



134 
佐伯祐三《街角》
45.7×38.2cm(額装64.6×56.7cm)
キャンバス・油彩
1925(大正14)年作
右上にサイン・年代

・『佐伯祐三全画集』
(1979年/朝日新聞社)№85
・「佐伯祐三展」1973年
(梅田近代美術館/朝日新聞社)出品
・「佐伯祐三―ある画家の生涯と芸術展」1973年(兵庫県立美術館)出品
・「佐伯祐三展 芸術家への道」2005年
(練馬区立美術館・和歌山県立近代美術館)出品

                                                                                      落札予想価格 ¥12,000,000~¥18,000,000

佐伯祐三(1898-1928)は、自らの生命をキャンバスに刻み込むかのような情熱と疾走感溢れる筆致でパリの街の風景を描き、わずか30歳でこの世を去った夭折の画家です。
10年に満たないその短い画業のうち、初めてパリの石畳を踏んだ1924(大正13)年1月から一時帰国の途に就く1926(昭和元)年1月までのおよそ2年間は、第1次パリ時代などと呼ばれています。この時期、佐伯はフォーヴィスムの巨匠ヴラマンクに激しく叱責されたことにより天賦の才能を覚醒させ、パリの風景を描いたユトリロの作品に魅了されたことを機に自身もその街角に立ち、裏街の通りや建物を描くことに挑んでいきました。

本作はこの第1次パリ時代にあたる、1925(大正14)年に制作された作品です。パリの街に数多く見られる集合住宅らしき建物を題材とし、その古びて薄汚れた壁を、躍動的なタッチと触覚的なマチエールによって表情豊かに描き出しています。そして、佐伯のパリ風景の特徴の一つ、建物に正対しクローズアップして捉える構図により、建物が醸し出す独特の佇まいや味わいが際立たされ、その歴史やここで暮らした人々の物語を鑑賞者に想像させるようです。また、佐伯が興味を抱いたというパリの古い建物の煙突、壁に並列する窓が豊かなリズムを感じさせ、通りに立つ点景人物が街角の情景に抒情を添えています。 
さらに、本作では、画面右上に速筆で書かれたサインと年記が画面に緊張感をもたらしてもいます。その文字と建物に引かれた奔放な黒の輪郭線は、この時期より描かれ始め、第2次パリ時代の作品に本格的に表されて佐伯芸術の代名詞となった、建物の壁や広告に狂わしく乱舞する尖鋭的な線の登場を予感させるものと言えるでしょう。


「Uzo Saeki 1925 a Paris」
画面右上に記されたサインと制作年のアップで す。大きく荒々しいサインは、佐伯の文字や線に対する意識の強さをうかがわせます。


ぜひ下見会場で実際の作品をご覧ください。
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 なお、ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなどの方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。

(佐藤)

北大路魯山人・香取秀真の蒐集した古美術/八木一夫の黒陶

 先日、丸ビルホールにて開催されました「Rubik’s Cube Charity Auction/MANGA/近代美術PartⅡ/近代美術/Contemporary Art/Luxury Evening Auction 」にご参加いただいた皆様ありがとうございました。盛況のうちにオークションを終了することができました。

 さて、前回オークションの目玉のひとつでありました「金茶道具一式」ですが、こちらは藤堂高虎を輩出した伊賀上野(現三重県伊賀市)藩主・藤堂家に伝わったものでした。そして今週末に行われます「近代陶芸/古美術/近代陶芸PartⅡオークション」の古美術オークションにも、名立たる大家が所有していた作品が出品されますので、そちらをご紹介いたします。

 

 

LOT.131「芦屋真形釜」
H24.0×D23.9cm
香取秀真箱
重要美術品認定証書付
『新撰 茶之湯釜圖録』掲載 四六(寶雲舎)
『茶之湯釜全集1 筑前芦屋の上』掲載 No.53(駸々堂出版)【本付】
落札予想価格:500万円~700万円

 茶の湯釜は、鎌倉時代末期より鋳造が始まり、室町時代・応仁の頃から多数製作され、肥前・伊勢・越前・石見など各地に分派したとされています。元々は、筑前国(ちくぜんのくに)(現・福岡県)遠賀(おんが)川沿岸の山鹿庄(やまがのしょう)芦屋津(あしやづ)で鋳造されはじめ、「芦屋釜」と称されました。芦屋釜は、真形のかたちをしており、鐶付は鬼面、肌は絹肌か鯰肌で優美な茶の湯釜としての特徴があります。本作もその一つで、室町時代(1336-1573)中期に製作されたと推測されており、なおかつ重要美術品の認定を受けた貴重な品です。また旧蔵者も、明治期を代表する鋳金工芸作家で、東京美術学校(現東京藝術大学)の教授や、文化財審議会専門委員などを歴任し、工芸作家として初の文化勲章を受章したことでも知られている香取秀真(ほつま)(本名秀治郎)や、京都国立博物館に茶室「堪庵」を寄贈した、近代京都を代表する茶人・上田堪一郎(堪庵)であったことからも、本作の茶の湯釜としての価値の高さが窺えます。

LOT.130「青井戸茶碗」
H7.1×D15.6cm
・『北大路家蒐蔵古陶展覧會』掲載 五十四 大阪日本橋松坂屋 / 昭和10(1935)年【本付】
落札予想価格:300万円~400万円

 こちらは、北大路魯山人【明治十五-昭和三十四(1882-1959)】が愛蔵した「青井戸(あおいど)茶碗」です。「青井戸」とは、高麗茶碗のうち、井戸茶碗をさらに分類した呼び名で、小振りで背も低く、口造りが朝顔の花のようにやや開いている特徴を持ちます。また、胴部から高台に掛けて肉が厚く削り出され、轆轤目が良く目立ち、他の井戸茶碗よりも侘び味が深いと茶人らに喜ばれ、茶の湯の碗に見立てられてきました。魯山人も、朝鮮で作られた焼き物を好んでおり、無造作な造りが、日本人の美意識と似通っていて“親しみを感じる”註)と述べています。【註)平野雅章編『魯山人著作集 第一巻陶芸論集』1980年】

 魯山人の美の琴線に触れた、侘びの美の宿る逸品と言えるでしょう。

 

また、近代陶芸オークションには八木一夫の黒陶作品が出品されます。

LOT.204八木一夫「多面的に」
H29.2×W24.2cm
下部に掻き銘
共箱
ホツ有
1978(昭和53)年作
・「没後二十五年 八木一夫展」出品 京都国立近代美術館他 / 2004(平成16)年
・『八木一夫作品集』掲載 No.158(講談社)
・『やきものの美 現代日本陶芸全集 第十四巻 八木一夫』掲載 P.75(集英社)
落札予想価格:400万円~600万円

 本作は、八木一夫(1918-1979)の代表的な作風と知られる黒陶です。陶器は、一度造形したものに火を通し、最後は自然の力に出来上がりを任せることが醍醐味でもありますが、八木はその偶然性をなるべく排除することを目指していました。辿り着いた結果が、黒陶であったといいます。低温で焼いた素地に煤を付着させ、磨くと金属のように陶器が黒光りするというもの。1957年から制作され始め、晩年には、黒陶に鉛板を貼るなどしてより無機質な要素を駆使し表現しました。本作も、鉛板が貼られた作品のひとつで、急逝する前年の還暦を迎えた年に制作されました。

 その後、八木と同じく現・京都市立芸術大学出身の加守田章二(LOT.203「壷」落札予想価格:200万円~300万円)や、栗木達介(LOT.202「銀彩花器」落札予想価格:60万円~90万円)の作品も出品されますので、ぜひ下見会場に足をお運びください。

 

 

オークションは、10日土曜日15時からです。当日は下見会を行っておりませんので、ご留意ください。スケジュール詳細は下記をご参考ください。

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