小出楢重の油絵―《裸女》と《ばらの花》

こんにちは。
先週の近代美術PartⅡオークション下見会にお越しくださいました皆様、誠にありがとうございました。新年のご挨拶が遅くなってしまいましたが、本年もよろしくお願い申し上げます。

さて、今週は2018年1回目のオークションとなる、近代美術/戦後美術&コンテンポラリーアート/近代美術PartⅡオークションを開催いたします。
その出品作品の中から、今回もおすすめの作品をご紹介いたします。
西洋にはない、日本女性独特の美しさを描き出し、「裸婦の楢重」と呼ばれた小出楢重(1887-1931)の名作2点です。


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 小出 楢重《裸女》
41.7×71.6cm
キャンバス・油彩 額装
大正14(1925)年頃作
右上にサイン
小出楢重の会鑑定証書付
落札予想価格 
★¥5,000,000~¥10,000,000

[掲載文献]
『小出楢重画集』(2002年/小出楢重画集刊行委員会)№H112  ほか多数
[出品歴]
「没後70年記念 小出楢重展」2000年(京都新聞社/京都国立近代美術館) ほか多数

楢重の裸婦の代表作の一つとして知られる作品です。
明治から大正期にかけて、多くの洋画家たちは西洋的なプロポーションを理想とし、裸婦像を描きました。しかし、楢重は絵画のモデルとしては好まれなかった日本人女性の身体に美しさを見出し、モデル一人一人の味を引き出すように裸婦像の連作に取り組んでいきました。

さらに、日本では現実味に乏しい「裸婦」というテーマに必然性を与えるために、西洋や中国のおしゃれな家具や小物をアトリエに設え、「裸婦が生活している自然な空間」を作り、そこに横たわる姿をモダンに表現しました。この翌年、楢重は当時流行していた洋風建築に転居しますが、本作はそれ以前にアトリエとして使っていた和室に外国製の敷物を敷いて描いたものでしょう。

裸婦は顔を背け、腰を大きくひねった姿で横たわっていますが、身体を大胆にデフォルメして画面に構成しつつ、豊満な肉のあたたかみやヴォリュームを際立たせるというこの手法は、マティスの裸婦像に影響を受けたものと思われます。楢重独特のねっとりとしてつやのあるマチエールにより、日本女性の肌の色や質感がよく表現されており、「日本の油絵」の魅力を感じさせる一点です。


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 小出楢重 《ばらの花》
105.5×54.5cm
キャンバス・油彩 額装
大正15(1926)年作
左上にサイン
裏に署名・タイトル・年代
小出楢重の会鑑定証書付
落札予想価格 
¥10,000,000~20,000,000

 [掲載文献]『小出楢重画集』
(2002年/小出楢重画集刊行委員会)№H135  ほか多数


1920年代、日本各地の都市で近代化が著しく進み、
洋風のモダン建築が次々に建設されていきました。楢重も芦屋に油彩画制作に相応しい洋風のアトリエを構え、また、友人の建築家・笹川愼一の依頼を受け、こうした洋風住宅の壁面を飾るための「装飾画」を数点手掛けました。楢重自筆の「作品控えメモ」より、1926年に《菊》(参考図版。完成後の画題は《菊花》)と一対の作品として制作された本作は、この「装飾画」の優れた作例であり、当時は西宮市の瀟洒な邸宅に飾られていたそうです。

本作は「装飾画」らしく、キャンバスの角を落とした八角形の支持体が使用されています。豪華な大輪の薔薇が《裸女》と同様に、つやと粘り気のある色彩、簡潔なフォルムによって描かれ、100cmを超える画面の中で堂々とした存在感を放っています。六角形の台座の上に散らされた花弁や葉が装飾的な意図を感じさせますが、画面には明暗のコントラストや奥行きが表わされ、「装飾画」の中でも特に絵画的な要素が強調された作品と言えます。単独の作品として鑑賞しても十分に見応えがあり、魅力的なのはそのためでしょう。題材の薔薇は、楢重が油絵を追求する上で意識し続けた西洋の象徴であり、ここでは満ち溢れるような花の香気や生命力とともに、モダンな西洋文化に憧れる時代の気分がよく表現されています。

残念ながら、下見会では一対で作品を展示できませんので、制作当時のように画像を並べてみました。昭和モダンの重厚な洋館に飾られているのを想像してみましょう。

            
    【オークション終了につき、画像は削除いたしました】

            参考図版:小出楢重《菊花》
            大正15年 キャンバス・油彩 105.5×55.0cm
                                           大阪新美術館建設準備室蔵

実際の作品で、ぜひ楢重のマチエールの魅力をご確認ください。
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これらの作品のほか、下見会では安井曽太郎や児島善三郎の名品もご覧いただけます。
皆様のご来場を心よりお待ちしています。

(佐藤)

華麗な金襴手作品―釉裏金彩・琳派

 いよいよ12月1日よりシンワアートオークション株式会社は、Shinwa wise Holdings株式会社へ変わります。これに伴い、Shinwa Auction 株式会社がオークション事業を承継いたします。より良い作品をご紹介できるよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

 

さて、今週末に開催されます「近代陶芸/古美術/近代陶芸PartⅡオークション」からこちらの作品をご紹介いたします。

LOT.156 加藤土師萌「色絵釉裏金彩水指 春夏秋冬」
     H13.4×D21.4cm
     高台内に描き銘「土師萌造」、蓋裏に「日吉篁居」記
     共箱/1963年作
     『原色現代日本の美術15陶芸(1)』掲載 P.65(小学館)【図録付】
     落札予想価格:¥2,500,000~¥3,500,000

 1900年、陶磁器の名産地として名高い愛知県瀬戸市で加藤土師萌(はじめ)(本名・一)は生まれました。小学校を卒業してすぐに製陶業者で画工見習いとして働き出した土師萌は、26歳の時に岐阜県陶磁器試験場の技手として勤務することになり多治見市へ移り住みます。

当時の多治見市には荒川豊蔵、加藤唐九郎ら才気溢れる若手の陶芸家達が集まり、切磋琢磨し合って共に新たな陶芸界の構築を目指している時期でもありました。多くの仲間と古陶磁器を研究する中で、土師萌は特に中国・明の嘉(か)靖(せい)年間の技法に傾倒し研究を進め、後の制作の礎を築きました。1940年独立の際には、地場の瀬戸や多治見ではなく、横浜・日吉へ移り住み「日吉窯」を築窯しました。

今回使用された「釉裏金彩」とは、“白磁の素地の上に緑釉などの釉をムラのないように掛けて窯で焼き、その上に金箔を貼って百度前後の温度で焼き付け、さらにその上から低火度釉を全面に掛けて焼成する方法”註)のことです。金箔が釉薬に挟まれる形になり、落ち着いた色見の金に透けて見える緑釉が美しい作品です。蓋と身にわたり描かれている草花文が、釉裏金彩を用いていない赤の色絵で縁取られ、全体を引き締めています。

地位や名声を手に入れてもなお飽くことなく研究を進めた、実に脂の乗った時期の名品といえるでしょう。釉薬の美しさをぜひ間近でご覧下さい。

LOT.115 鈴木其一「秋草図屏風」
   140.3×340.3cm
   六曲一隻(155.0×365.2cm)
   『時代屏風聚花』掲載 53番しこうしゃ/平成二年(1990)【図録付】
   落札予想価格:¥5,000,000~¥10,000,000

 鈴木其一(きいつ)【寛政八年‐安政五年(1796‐1858)】は、「江戸琳派の旗手」と称される絵師。江戸初期の京都にて、本阿弥光悦や俵屋宗達が創始した琳派は、江戸後期の江戸の地で酒井抱一によって再興されました。その新様式を江戸琳派と呼びます。

十八歳の時に抱一に入門し、その高弟となった其一は、琳派の伝統を継承しながら、鮮やかな色彩と斬新な構図によって新しい絵画表現を追求していきました。近年には各地で大回顧展が開催されるなど、その個性的な作風でますます注目を集めています。

 本作は、琳派の伝統的な画題の一つ、秋の草花を描いた屏風。白菊と芒を主な題材として金地に配した典雅な作品であり、其一の号「祝琳斎」の朱文円印が左下に捺されています。特筆すべきは、草花を三つのブロックに分けて三角形に配した特徴的な画面構成でしょう。それぞれのブロックには、桔梗、羊歯(しだ)、山帰来などの秋草も添えられています。

 また、左上から右下へ斜めに淡墨を刷く雨の表現は、古くは鎌倉時代から使用され、室町時代には雪村も試みたものです。それに合わせて、左から右方向へなびく芒は、強い風雨を表わすとともに画面に動きをもたらしています。其一はこうした表現を時折使用しましたが、琳派の作品の中では稀有と言えるでしょう。四季や気象の変化の中で、自然が見せる表情をいかに的確に捉えて描くかを、其一が独自に追求していたことをうかがわせる作品です。

今回の古美術では加賀前田家が旧蔵していた「島物花瓶口茶入」、初代大西浄林の「石州好 俵形釜」、そして重要美術品の後西天皇「宸翰御消息」など、近代陶芸では、北大路魯山人、十三代・十四代酒井田柿右衛門、河井寛次郎といったおなじみの作家群のほかに、宮之原謙も多数出品されます。皆様のご来場を心よりお待ち申し上げております。

                              執筆者:E

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江戸の華―北斎、歌麿、写楽の浮世絵

こんにちは。
今週の近代美術PartⅡ下見会にご来場くださいました皆様、ありがとうございました。

さて、来週の18日(土)は近代美術/近代美術PartⅡ/戦後美術&コンテンポラリーアートオークションを開催いたします。近代美術では、加山又造や平山郁夫、ピサロなど、戦後美術&コンテンポラリーアートでは、草間彌生の《INFINITY-NETS[QPRS]》など、それぞれお勧めはありますが、今回は近代美術PartⅡに浮世絵の名品がたくさん出品されますので、その中から3人の絵師の作品をご紹介いたします。

葛飾北斎(1760-1849)といえば、代表作《富嶽三十六景》です。
この作品がゴッホやドビュッシーに影響を与えたことはあまりにも有名ですが、現在も国際的に評価が高く、四十六図のうちの一つ《神奈川沖浪裏》は今年4月にニューヨークで行われたオークションで、943,500ドル(約1億370万円)という高額で落札されています。
このたび出品される2点も人気の高い図柄です。



763  葛飾 北斎

《富嶽三十六景 甲州石班沢》
25.3×36.6cm
落札予想価格 
¥6,000,000~¥9,000,000

画題は、「こうしゅうかじかざわ」と読みます。現在の山梨県富士川町の風景だそうです。
《富嶽三十六景》は、北斎の天才的な構図のセンスが光るシリーズでもありますが、この作品は最もそれが端的に表われたものの一つ。漁師を頂点として網と岩がつくる三角形が富士山と相似形をなすという、緊張感溢れる画面構成が見事です。



764 葛飾 北斎
《富嶽三十六景 山下白雨》
25.1×36.6cm

落札予想価格 
¥6,000,000~¥9,000,000

《神奈川沖浪裏》、《凱風快晴》とともにシリーズ中最も有名な作品の一つです。
「白雨」は夕立を指し、画面右下には稲妻が光っています。まるで上空から富士を眺めているような構図は、飛行機のない江戸時代、とても斬新なものだったに違いありません。


続いては、喜多川歌麿(1753?-1806)です。
歌麿といえば美人絵、しかも女性のバストアップを描く「大首絵」ですね。


769 喜多川 歌麿
《六玉川 野路の玉川》
37.8×25.1cm
落札予想価格 ¥2,500,000~¥4,000,000


《六玉川》(むたまがわ)は、古歌に詠まれた6つの玉川になぞらえて、当時吉原で最も人気の高かった6人の花魁を描いたシリーズです。
このシリーズは、花魁の顔の輪郭線が肌色で描かれているのが特徴で、そのためか、流行の「立兵庫」を結った本作の花魁は、やわらかでしっとりとした雰囲気を感じさせます。
なお、左上の短冊には、「たま川のたきとハ見せぬ八文字希に紫の花のよし原」という野辺亭広屋の狂歌が書かれています。



最後にご紹介するのは、東洲斎写楽(生没年不詳)です。
写楽は、およそ10ヶ月の間に役者絵と相撲絵150点あまりを版元・蔦谷重三郎から刊行し、姿を消したとされる伝説の浮世絵師。今回のオークションでも、役者絵2点が出品されます。


 766 東洲斎 写楽
《二世嵐竜蔵の金貸石部金吉》
36.4×22.8cm
落札予想価格  ¥6,000,000~¥8,000,000

「花菖蒲文禄曽我」という狂言に取材した作品です。二世嵐竜蔵という役者が演じる、金貸しの石部金吉という役が描かれています。石部金吉は、敵討ちをする主人公を助ける田辺文蔵から借金の取立てをする役どころ。口を真一文字に結び、腕まくりをして文蔵にすごむ場面をアップで捉え、デフォルメして表現しています。
背景の豪華な雲母摺り(きらずり=雲母の粉を摺り付ける技法)も見どころです。







778 東洲斎 写楽
《四代目岩井半四郎の乳人重の井》
  37.5×24.2cm
  大田蜀山人蔵印あり
  
落札予想価格  ¥7,000,000~¥12,000,000


歌舞伎「恋女房染分手綱義経千本桜」に取材した作品です。女形の名手として知られた四代目岩井半四郎が演じる、重の井という乳母の役が描かれています。上品でふっくらとした姿が印象的ですが、こちらでも雲母摺りの大首絵という写楽の本領が発揮されています。
また、本作は、江戸中後期に文人、戯作者、狂歌師としてマルチに活躍した大田南畝(蜀山人)の旧蔵印が捺されています。



上記を含む、全16点の名所絵、美人絵、役者絵が出品されます。

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(佐藤)

アール・デコのエレガンス―クリセラファンティン彫刻

こんにちは。
14日のワインオークションにご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

さて、今週の28日(土)は西洋美術オークションを開催いたします。
このジャンルは、いつの時代にどこの地域で作られたものが出品されるのか、個人的にいつも楽しみなのですが、今回はアール・デコの彫刻をご紹介いたします。

アール・デコは、1920~30年代にかけて、ヨーロッパやアメリカを中心に世界各地で花開いた装飾美術様式です。アール・ヌーヴォーに続いて登場したこの様式では、電気照明や電信電話、飛行機や列車など、この時期の科学技術の著しい発展を反映し、直線や円を組み合わせた幾何学的な造形、電光やスピードを表わす放射状のデザイン、ベークライトをはじめとするプラスチック素材が流行しました。また、それは絵画や彫刻だけでなく、工芸、建築、工業デザイン、宝飾品、ファッション、舞台美術といった生活を取り巻く広範な分野へと波及していきました。
例えば、ラリックのガラスやカッサンドルのポスター、レンピッカの絵画、さらに、ニューヨークのクライスラービルやココ・シャネルのスーツもアール・デコの精華と言えます。

このアール・デコ様式を象徴するもの一つに、「クリセラファンティン彫刻」があります。「クリセラファンティン」はギリシャ語を語源とし、古代ギリシャ彫刻のうち金と象牙で制作されたものを指しますが、アール・デコの彫刻ではそれらだけでなく、ブロンズや銀、漆、べっ甲などの異素材を組み合わせたものをそう呼称します。当時の植民地からもたらされる高級素材を使用し、ロシア・バレエをはじめとする流行のモティーフを取り入れて制作された彫刻の数々は、豪華な邸宅のサロンを彩る重要な美術品として、都会的で洗練された暮らしを愉しむヨーロッパの上流階級の人々に愛されました。
このたびのオークションでは、この「クリセラファンティン彫刻」の代表的な作家たちの作品が出品されます。



101 Ferdinand Preiss(1892-1943)

《Beach Dancer》
H39.0cm
台座に陰刻銘
落札予想価格 ★¥500,000~¥800,000

フェルディナンド・プライスは、ドイツの彫刻家です。
舞台にまつわるモティーフのほか、テニスやゴルフ、アイススケートなど、スポーツの題材を得意としました。
水着の女性を表現したこの作品も、水泳がテーマなのでしょう。ツーピースの水着は当時最もおしゃれなものだったと思われます。








105 Claire Colinet(1880-1950)
《Corinthian Dancer》

H55.2cm
下部に銘
落札予想価格 ★¥1,000,000~¥1,500,000

クレール・コリネは、ベルギーで生まれ、フランスで活躍した女性の彫刻家です。オダリスクやアラブのダンサーなど、流行のオリエンタリズムを取り入れた女性像を数多く制作しました。
《コリント人のダンサー》というタイトルの本作は、ギリシャの都市コリントスのダンサーを題材としたものです。アール・デコ期は、古代ギリシャ風のモティーフも好まれていたため、この作品も古典的な題材を躍動的に表現したものでしょう。








108 Demetre Chiparus
   (1886-1947)

《Friends Forever》
H63.0×W65.0cm
台座に陰刻銘
背面と台座後部に「Made in France」刻
背面に「19」刻
落札予想価格 
★¥2,000,000~¥3,000,000


ドゥメトル・シパリュスは、ルーマニアに生まれ、パリ国立美術学校でアントナン・メルシエに学んだ彫刻家です。写実に基づく確かな技術と洗練された作風により、アール・デコ期、パリの彫刻界の寵児となりました。
シパリュスの代表作として知られる本作は、3種類あるサイズのうち最も大きな作品のひとつ。ビーズやスパンコールがふんだんに施されたコルセット不要のドレス、ボブヘアにクローシェ(釣鐘型の帽子)という最先端のファッションに身を包んだ女性が2頭のボルゾイ犬を愛でています。ロシア原産のボルゾイは、流線型のフォルムがハリウッドスターたちの間で人気を呼び、絵画やポスターなどの題材として欧米で好まれました。女性を中心とする左右対称の構成もアール・デコらしいですね。

以上、3点をご紹介しましたが、今回は、合計10点の「クリセラファンティン彫刻」が出品されます。
今週から始まる下見会で、象牙とブロンズが織り成す装飾美をぜひご堪能ください。
また、同じアール・デコからは、ラリックのガラスも多数出品されますので、そちらも併せてご覧ください。


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(佐藤)

竹内浩一の動物画

こんにちは。
9日の近代陶芸/近代陶芸PartⅡオークションにご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

さて、今週の23日(土)は近代美術/近代美術PartⅡ/戦後美術&コンテンポラリーアートオークションを開催いたします。
今回はカタログでも特集を組んでおります、日本画家・竹内浩一(1941-)の作品をご紹介いたします。動物画を描く作家はたくさんいますが、動物の無垢さや生命のみずみずしさをこんなにも優しく細やかに描き出す作家はほかにいないのではないでしょうか。

当ブログでは初めてご紹介しますが、竹内浩一は現代の日本画を代表する動物画・花鳥画の名手です。
京都市の型染友禅の職人の家に生まれた竹内は、京都市立日吉ヶ丘高校日本画科を卒業後、テキスタイルデザインの仕事に従事。デザインコンクールで受賞を重ねる傍ら、日本画を描き始めました。1966年、中路融人の勧めで晨鳥社に入塾し、山口華楊に師事。翌年には第10回日展にて初入選します。1970年代後半からいよいよ写実的な動物画に着手し、第4回山種美術館賞展大賞を受賞。第11回日展では特選(文化庁買上げ)となりました。また、1984年には、横の会の結成に参加し、様々な団体の日本画家たちと研鑽を積むほか、1995年に京都造形芸術大学、2002年には京都市立芸術大学の教授に就任するなど、後進の育成にも力を注いでいます。
近年は、第5回北京ビエンナーレに出品。大徳寺塔頭芳春院の襖絵を制作するなど、京都を拠点に活躍を続けています。

【オークション終了につき、画像は削除いたしました】

    57 《降》

 116.6×91.1cm
 紙本・彩色 額装
 2000(平成12)年作
 右下に印
 共シール
 『NHK趣味悠々 動物を描く 竹内浩一の日本画
 入門』(2009年/日本放送出版協会)P.60
 落札予想価格 ¥400,000~¥600,000

 
 
竹内が北海道北見市の牧場で出会ったというキツネが描かれた作品です。
入念に観察し、その姿と動きを写実的にとらえていますが、傍らには江戸の浮世絵師・歌川広重の《名所江戸百景 王子装束ゑの木大晦日の狐火》をイメージした狐火が配されています。まるで作家の目には狐火も見えていたかのようにそれが破綻なく調和していて、近作の「現代版鳥獣戯画」シリーズとの関連性もうかがわせます。

  
参考図版:
歌川広重
《名所江戸百景 王子装束ゑの木大晦日の狐火》
(左は拡大図)

 






【オークション終了につき、画像は削除いたしました】

58《玄》

116.7×72.8cm
紙本・彩色 額装
共シール
落札予想価格
¥400,000~¥600,000

小さな花をつけた枝垂れ柳とともに、猿を描いた作品です。猿は、竹内が得意とするモティーフ。山種美術館賞展や第5回日展の受賞作の題材も猿でした。
この作品では見事な毛描きによって、今にも動き出しそうなほど猿が生き生きと表現されていて、その思慮深そうな表情がどこか神秘的です。


【オークション終了につき、画像は削除いたしました】

59 《傘》
99.8×80.3cm
紙本・彩色 額装
左下に印
共シール
落札予想価格 ¥400,000~¥600,000

葡萄の木の下で一羽の鳩がじっとうずくまっています。雨宿りをしているのでしょうか。
ぼかしと胡粉を施した明るく淡い色調により、白昼の雨の場面が抒情的に表現されています。



【オークション終了につき、画像は削除いたしました】

60 《霖》
91.0×65.4cm
紙本・彩色 額装
左下に印
共シール
落札予想価格 ¥400,000~¥600,000

画題の《霖》(りん)は長雨を意味します。
この作品では、雲龍柳の枝に休む鳥が描かれていますが、柳は竹内が特に好み、繰り返し描き続けているモティーフ。曲線的な枝で画面全体を覆い尽くす構成が非常に装飾的です。


対象をつぶさに観察してスケッチし、丁寧な下塗りを何重も重ね、その実在感や生命感、周辺に吹く風や目に見えない気配までをも、緻密な描写と淡く静謐な画面によって描き出す、竹内浩一の動植物画。その魅力をぜひ、会場でご堪能ください。

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(佐藤)

健やかな美「民藝」、生と死の三輪龍作の世界

こんにちは。

夏休みはいかがお過ごしになられましたか?

例年より雨に見舞われることの多い夏でしたので、レジャー先等でも悲喜こもごもあったのではないでしょうか。余談ですが、私は突然の大雨の後に虹を見ることが出来ましたので、ちょっと得した気分になりました。

 

さて、今週末に開催されます「近代陶芸/近代陶芸PartⅡオークション」についてご紹介いたします。今回は「民藝運動」を行った作家四人(富本憲吉/バーナード・リーチ/濱田庄司/河井寛次郎)にスポットを当てて、特集を組んでいます。

 

「民藝」とは、“民衆が日々用いる工藝品”のこと。「民藝」という言葉を造り出したのは、大正から昭和にかけての思想家・柳(やなぎ)宗悦(むねよし)(1889-1961)でした。柳は、無名の人々が造り出した日用雑器に魅了され、全国を行脚し、人々の暮らしのなかに当たり前のようにある工藝品として評価されていないものを蒐集し始めます。そこで集めたものを陳列する美術館を創設するべく、1926年(大正15・昭和元)に濱田庄司(1894-1978)・富本憲吉(1886-1963)・河井寛次郎(1890-1966)らとの連名で『日本民藝美術館設立趣意書』を発表しました。「民藝運動」のはじまりです。また、このころ日本に滞在していたバーナード・リーチ(1887-1979)も、それぞれの作家と共に作陶を行い、互いに影響を与え合いました。民藝派の窯元にも出向き、英国の伝統的な技法を教えるなど、初期の民藝運動を支えた一人と言えるでしょう。

当初は陶芸家のみの賛同でしたが、後に木工芸の黒田辰秋や、染色家の芹沢銈介、また木版画家の棟方志功らも参加し、運動は拡大して行きました。

★LOT.205  バーナード・リーチ 「HAROLD HYS SHIPPE」  D34.4cm   口縁部に描き銘「B・H・L」、「1919」記、 「HAROLD HYS SHIPPE 1066」記 高台内に「Bayeux」記 共箱(1920年) 1919年作 ホツ有 落札予想価格:30万円~60万円

★LOT.205 
バーナード・リーチ
「HAROLD HYS SHIPPE」
D34.4cm
口縁部に描き銘「B・H・L」、「1919」記、
「HAROLD HYS SHIPPE 1066」記
高台内に「Bayeux」記
共箱(1920年)
1919年作 ホツ有
落札予想価格:30万円~60万円

 

 バーナード・リーチの楽焼の大皿です。制作年が1919年となっていることから、同年に築窯された洋画家・黒田清輝邸内の「東門窯」で作陶された可能性が高い作品です。絵柄は、1066年に海を渡り戦いに出たイングランドの王・ハロルド2世であり、母国の歴史画を日本の楽焼で作陶するという、リーチだからこそ意味のある、東西の文化をつなぐ作品と言えるでしょう。その他にも、リーチの作品は染附の盒子や、箸置等も出品されます。濱田庄司や、富本憲吉の識箱の付いている作品も何点かありますので、より民藝派の絆を感じられるかと思います。

 

他にも以下のような民藝派の作品が出品されますので、ぜひご高覧ください。

民藝まとめ

 

その他今回のオークションでご注目頂きたいのが、三輪龍作の作品です。

いずれも大型作品で、「卑弥呼山」が2点と、「天・地・人」シリーズが3点出品されます。

LOT.132  三輪龍作  「天、地、人 後宮」   H22.6×W51.5cm   底部に描き銘「龍」   共箱 1986年作  「三輪龍作 天・地・人展」出品 京都四条・髙島屋/1986年  「陶芸・三輪龍作の世界―愛と死の造形―」出品 下関市立美術館/1994年 落札予想価格:20万円~30万円

LOT.132 
三輪龍作
 「天、地、人 後宮」
  H22.6×W51.5cm
  底部に描き銘「龍」
  共箱 1986年作
 「三輪龍作 天・地・人展」出品 京都四条・髙島屋/1986年
 「陶芸・三輪龍作の世界―愛と死の造形―」出品 下関市立美術館/1994年
落札予想価格:20万円~30万円

LOT.134  三輪龍作  「卑弥呼山」  H28.2×W33.5cm  胴部に掻き銘「龍」  共箱 落札予想価格:30万円~50万円

LOT.134
 三輪龍作
 「卑弥呼山」
 H28.2×W33.5cm
 胴部に掻き銘「龍」
 共箱
落札予想価格:30万円~50万円

 三輪龍作は、1940年に十一代三輪休雪の長男として生まれました。萩焼の名門に生まれた龍作は、東京藝術大学陶芸科大学院修了後、伝統的な茶道具ではなく、「ハイヒール」を代表とするオブジェ作品を次々と生み出しました。その作品群は、一貫して愛と死をテーマにしています。今回出品されます「天・地・人」シリーズは、釈迦の生誕から廟、そして新天地へと繋がる世界。もう一方の金色の「卑弥呼」シリーズは、三輪龍作のもっとも代表的なシリーズと言えるでしょう。「卑弥呼山」、「卑弥呼の書」などその世界は広がりを見せています。十二代三輪休雪を襲名された現在でも、黄金に輝く「オーロラ碗」や「シルクロード碗」など、龍作らしさを失わない新しい休雪像を築き上げています。

その独特な世界観をぜひご堪能ください。

                                 執筆者:E

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浜口陽三のメゾチント、長谷川潔のマニエール・ノワール

こんにちは。
先週の近代美術PartⅡ下見会にお越しいただいた皆様、ありがとうございました。

さて、今週の22日(土)は近代美術/近代美術PartⅡオークションを開催いたします。
今回は浜口陽三と長谷川潔の銅版画がたくさん出品されますので、「メゾチントの巨匠」と呼ばれる二人の作品をご紹介いたします。    

浜口と長谷川が追求した「メゾチント」とは…
17世紀にオランダで発明され、フランスやイギリスで盛んになった銅版画の技法の一つで、銅版の全面に無数の点刻線を刻み、その金属のささくれを削ることで描画するものです。この削りの深さを調節することによって、刷った際に黒から白への諧調を表わすことができます。19世紀の写真製版の登場や石版画の発明により、ヨーロッパでは忘れ去られていましたが、渡仏した浜口と長谷川はそれぞれこの技法を発見し、追求していきました。また、フランス語では、「マニエール・ノワール」といい、長谷川はこちらの呼び方を使用しました。

浜口陽三(1909-2000は、1927年に東京美術学校(現・東京藝術大学)彫刻科に入学。しかし、中退して1930年にフランスに渡り、独学で油彩画や銅版画を試みました。戦争の始まりとともに一時帰国し、1950年には本格的に銅版画制作に着手。1953年に再び渡仏すると、メゾチントに色彩を導入し、最大で五色を表現する「カラーメゾチント」を生み出しました。1957年、第4回サンパウロ・ビエンナーレで版画大賞を受賞した後には、日本を代表する版画家として国際的に活躍を続けました。

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Lot.77  浜口陽三191つのさくらんぼ》
紙面:46.7×65.7cm   図版:23.8×54.0cm
紙・メゾチント 額装
1965年作
左下余白にEd.11/50、右下余白にサイン
『浜口陽三全版画作品集』(2000/中央公論美術出版)№108
落札予想価格 ¥800,000~¥1,200,000

浜口は、果物や昆虫などの小さなもの、身近にあるものを好み、題材としました。
その中でもさくらんぼは、繰り返し描かれた浜口作品を代表するモティーフです。
画面ではわかりづらいのですが、背景は黒一色ではなく、光や奥行きを感じさせる格子状の空間となっています。その中に配置されたさくらんぼは、一つ一つが舞台の上で個体としての存在感を主張しているようであり、それらが一列に並ぶ様子は豊かなリズムを感じさせます。

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Lot.79  浜口陽三《パリの屋根》
紙面:37.8×28.0cm  図版:18.8×19.1cm
紙・メゾチント 額装
1956/1957
年作
左下余白にEd.epreuve、中央下余白に年代、右下余白にサイン
『浜口陽三全版画作品集』(2000/中央公論美術出版)№50
落札予想価格 ¥3,000,000~¥4,000,000

《パリの屋根》は、カラーメゾチントを見出して間もない1956年に制作された浜口の代表作の一つ。本作は翌年(当時48歳)に刷られたepreuve(d’artiste)(作家保存分)の一点です。当時、浜口が暮らしていたモンマルトルの家は、台所の窓からパリの風景を一望することができたそうです。浜口はその眺めを題材とし、「屋根の上にポコポコ出ている煙突がかわいらしくて、制作してみたのです。」(『芸術新潮』第36巻第6号 新潮社 1985年)と本作について語っています。
家並みには透明感のある青に黄色と赤がわずかに重ねられ、あたかも画面中央部に光が差し込んでいるかのように見えます。また、黒の部分にはクロスする繊細な直線が表わされ、その微妙なグラデーションが画面に織物のような複雑な表情をもたらしています。浜口の異邦人としての眼差しが詩的に表現された作品です。


長谷川潔(1891-1980)は、1912年に本郷洋画研究所に入り、岡田三郎助と藤島武二に油彩画を学びました。翌年から板目木版画や銅版画の制作を独学で開始。1918年フランスに渡り、以後一度も帰国することなくパリを中心に制作活動を行いました。1924年頃から、フランスで忘れ去られていたマニエール・ノワール(メゾチント)を蘇らせ、東洋の水墨画にも通じる、黒と白の静謐で抒情豊かな画世界を展開しました。

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 Lot.81 長谷川潔
 
《狐と葡萄(ラ・フォンテーヌ寓話)》
 紙面:51.7×38.0cm
   
図版:36.0×26.8cm
     
紙・マニエール・ノワール 額装
  1963年作
 左下余白にEd.47/70・タイトル・年代、
 右下余白にサイン
 『長谷川潔の全版画』
     (1999/玲風書房)№327
 落札予想価格  2,500,0003,500,000

 

 

 

本作は、17世紀のフランスの詩人、ラ・フォンテーヌの寓話の一挿話「狐と葡萄」から想を得て制作されました。「狐と葡萄」は、葡萄棚にぶら下がったよく熟れた葡萄を取るため、狐があらゆる手段を講じる話。結局、狐は葡萄を取ることができず、「あの葡萄は酸っぱいから」と諦めます。
本作では狐のおもちゃが描かれていますが、深みのある黒の空間の中から、モティーフが光を湛えて浮かび上がるようで、洗練された画面構成と相まって神秘性すら感じさせます。

浜口陽三のカラーメゾチントと長谷川潔のマニエール・ノワール、いずれの作品も黒を基調としていますが、パソコンの画面では表現しきれない、実に豊かなニュアンスに富んでいます。
ぜひ下見会場で実物をご覧ください。

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皆様のご来場を心よりお待ちしています。

(佐藤)

 

 

華やぐ漆芸、涼を呼ぶ竹掛花入-音丸耕堂と松平不昧

こんにちは。

今週末に「近代陶芸/古美術/近代陶芸PartⅡオークション」が開催されます。ある程度湿度のあるこの季節には、乾燥を気にせず安心してお勧めできる作品をご紹介いたします。梅雨の室内を華やかにさせる菓子器と、夏の茶室に涼を誘う竹掛花入です。

 
 
 

 

LOT.177 音丸耕堂 「彫漆カトレヤ菓子器」 H12.9×W15.5cm 下部に銘「耕堂」 共箱 落札予想価格:80万円~120万円

LOT.177 音丸耕堂
「彫漆カトレヤ菓子器」
H12.9×W15.5cm
下部に銘「耕堂」
共箱
落札予想価格:80万円~120万円

 

 日本古来の輪島塗や京漆器とは違い、江戸時代後期に高松松平家の命により生まれたのが「香川(高松)漆器」です。鞘塗師(さやぬりし)であった玉楮象谷(たまかじぞうこく)(1806-1869)が、中国漆器や東南アジアの漆器の技法を研究しその基礎を作り上げました。以来長きにわたり高松は多くの漆芸家を排出しており、その筆頭に挙げられるのが音丸耕堂(おとまるこうどう)です。

 音丸耕堂(本名・芳雄)は、明治三十一年(1898)に高松市で生まれました。実兄・山下光雪、実弟・山下楊哉も共に漆芸家です。耕堂は、13歳の時に讃岐彫の名工・石井磬堂(けいどう)(1877-1944)の元へ弟子入りし彫刻の技術を学びました。その後、伯母の音丸家に養子に行き、独立後、玉楮象谷の作品から独学で彫漆を学んでいきます。

彫漆とは、漆を何層にも塗り重ね、削り、彫り下げ、形作る技法の事です。音丸は、多くの色漆を創り出し、豊かなグラデーションと巧みな彫りにより、器体に重厚感ある華やかさをもたらしました。実際手に取るとその軽さに驚かされ、いかに薄く塗り重ね上げられたものかを実感できます。今回の「菓子器」も塗りの期間におよそ3カ月かかっており、計算された順番で51もの色漆が丁寧に塗り重ねられています。その類まれなる技量により昭和三十年(1955)に「彫漆」で重要無形文化財保持者の認定を受けました。

 この“カトレヤ文様”は、昭和六十一年(1986)、88歳の時に新作として発表され、以後亡くなる前年の平成八年(1996)、98歳に到るまで制作され続けたモチーフです。年齢をまったく感じさせない、最晩年のキレのある彫漆作品をぜひご覧ください。

 

さて、皆さんは先週まで開催されていた上野の東京国立博物館・特別展「茶の湯」をご覧になられたでしょうか?その中で松平不昧の茶が江戸時代の「古典復興」の一つとして紹介されていましたが、今回の古美術オークションでも松平不昧の掛花入が出品されます。

 

LOT.112  松平 不昧 「尺八」 H25.2×D6.2cm 下部に銘「宗納造」、在判 溝口直諒甲書、阿部休巴箱 『不昧公とその時代―不昧が育てた出雲の文化―』出品  出雲文化伝承館/平成二十三年(2011)【図録付】 落札予想価格:100万円~200万円

LOT.112 
松平 不昧 「尺八」
H25.2×D6.2cm
下部に銘「宗納造」、在判
溝口直諒甲書、阿部休巴箱
『不昧公とその時代―不昧が育てた出雲の文化―』出品 
出雲文化伝承館/平成二十三年(2011)【図録付】
落札予想価格:100万円~200万円

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「松江藩中興の祖」と称される出雲松江藩主、松平不昧(ふまい)【治郷(はるさと)】【寛延四年-文政元年(1751-1818)】は、江戸後期の茶の湯文化を牽引した大名茶人として知られています。藩主となった十代の頃から茶の湯や禅を学び、茶禅一味を基礎として自らの茶道観を確立しました。また、茶道具の蒐集と研究にも力を注ぎ、『古今名物類聚』を著したほか、藩内の美術工芸の振興を図り、お抱えの陶工や塗師たちを指導して優れた好み物の数々を制作しました。

 本作は、白竹を用いた不昧自作の尺八花入です。下部の正面やや右側に現れた一筋の染みが美しく、三節からなる端正な姿の景色となっています。そして、その裏に記された「宗納造」の銘は類例が少なく貴重であり、不昧の美意識がよく表現された自信作であることを窺わせます。なお、平成三十年(2018)は不昧公二百年忌にあたり、本作は茶事の話題の要ともなる花入と言えるでしょう。

シンワアートオークションにぜひ足をお運びください。

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                                  執筆者:E

現代の写実画―森本草介、中山忠彦、藤井勉の女性像

こんにちは。
先週の近代美術PartⅡ下見会にお越しいただいた皆様、ありがとうございました。

突然ですが、もうお気づきでしょうか。
弊社のホームページのトップページに「メールマガジンに登録」というフォームができました。
オークション開催のご案内や落札結果などをメールでお知らせいたしますので、まだご登録いただいていない方は、ぜひご登録ください。

さて、今週の20日(土)は近代美術/近代美術PartⅡオークションを開催いたします。
今回も出品作品の中からおすすめの作品をご紹介いたしますが、今回は現代写実画のトップランナーたちの作品を集めてみました。

写実は、「現実的な主題をありのままに描くこと。あるいは、対象を細部まで正確に描く手法」です。ご存じの通り、絵画の伝統的で基本的な手法の一つですが、2010年頃から、国内ではにわかに現存作家たちによる「写実画」の人気が高まってきました。
以来、画壇の重鎮から平成生まれの若手まで、才気溢れる作家たちが凌ぎを削るジャンルの一つとして、作品の質や作家の層ともに充実した様相を見せています。

その中でも、長きにわたりこの写実画を牽引してきた森本草介は、亡くなった今もなお名実ともにその頂点に君臨する作家と言えるでしょう。

 

【オークション終了につき、画像は削除させていただきました】

 136 森本 草介(1937-2015)
《裸婦》

72.7×90.9cm
キャンバス・油彩 額装
1985年作
左下にサイン
裏に署名・タイトル
「森本草介―敬虔なる写実―」
2001年(日本橋髙島屋/日本経済新聞社)出品

落札予想価格
¥10,000,000~¥18,000,000

 

「女性像の画家」として名高い森本が女性を描き始めたのは、1980年頃のこと。それは、一人の女性との運命的な出会いがきっかけだったと言われています。
1985年(当時48歳)に制作された本作は、その「創造のミューズ」となった女性をモデルとした裸婦像です。目を伏せてソファーにもたれる女性のしっとりとした肌の質感と頭髪の一本一本、布の素材感と室内に注ぐ光など、そこにあるすべてが圧巻とも言うべき写実技法により、きわめて精緻に描写されています。そして、できるだけ筆触が目立たないように、絵具を薄く丹念に塗り重ねた滑らかな絵肌と施されたスフマート(ぼかし)技法の効果により、女性を包む柔らかな空気と静謐さ、作家の抒情までもが豊かに表わされています。

特筆すべきは、このように手を伸ばせば触れられそうなほど克明に表現されていながら、女性が決して触れてはならない、聖なる者のような気品と清らかさを湛えていることでしょう。それは、森本が女性の一瞬の輝きを描き留めるとともに、それを自身が抱く理想の女性美へと昇華させたためであり、この点に森本芸術の精華が見て取れます。


また、現代の写実画といえば、白日会の作家たちがよく知られていますが、若手作家の憧れの存在といえば、白日会会長を務めるこの作家でしょう。

【オークション終了につき、画像は削除させていただきました】

122 中山 忠彦(1935-)
《エマイユのイヤリング》

33.5×24.3cm
キャンバス・油彩 額装
左下にサイン
裏に署名・タイトル

落札予想価格 ¥1,000,000~¥1,500,000

中山忠彦の主要なテーマは、女性像とヨーロッパのアンティークドレスです。
そして、主に作品のモデルを務めているのは、画家の夫人だといいます。
本作のモデルも夫人と思われますが、イヤリングとドレスの水色のコーディネートが爽やかですね。中山は最も身近で大切な人の姿を通して、普遍的な女性美、すなわち「永遠の女神」を追求しているのでしょう。



【オークション終了につき、画像は削除させていただきました】

92 藤井 勉(1948-)
《清心》

72.7×60.7cm

キャンバス・油彩 額装
右下にサイン
共シール

落札予想価格 ★¥300,000~¥400,000

藤井勉は1980年代から活躍している写実の実力派。
そのテーマは少女像で、画家の3人の娘たちがモデルとなっています。
それは、愛娘の成長していく姿を愛おしみながら、あるいは幼き日を懐かしみながら記録したものですが、圧倒的な細密描写によって、少女の凛とした佇まいと今ここにいるかのような実在感が巧みに描き出されています。

女性の様々な美しさを描いたこれらの作品は、現在開催中の下見会にてご覧いただけます。
下見会・オークションスケジュールはこちら

皆様のご来場を心よりお待ちしております。

(佐藤)

古代の美―アピュリア《赤絵手アンフォーラ》

こんにちは。
東京の桜は満開の頃を過ぎてしまったようですが、お花見は行かれましたか?
散っていく様子もきれいなので、まだの方はぜひ桜吹雪をお楽しみください。

さて、今週の15日(土)は、西洋美術オークションを開催いたします。
大理石彫刻のように重量のある作品やマイセンの人形のように繊細な作品の多いこのオークションは、下見会の準備がとても大変なのですが、オープンしてみると、ヨーロッパを中心とした様々な地域の様々な時代の美術品が一堂に介していて、非常に見ごたえがあります。

今回も出品作品の中からおすすめの作品をご紹介いたします。
このたびのオークションは古代の作品が充実していますが、まずはカタログの表紙にもなっているこの作品です。


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273 アピュリア
  《赤絵手アンフォーラ》
   H85.0×W40.6cm
       落札予想価格 
   ¥2,800,000~3,800,000














「アピュリア」とは、現在の南イタリアのプーリア州を指します。紀元前8~3世紀頃にかけて、古代ギリシアの植民地となり、「マグナ・グラエキア」(大ギリシア)の一部となったこの地域では、ギリシア陶器が盛んに制作されました。

この時期のギリシア陶器には、赤色の素地の上に黒いシルエットで図像や文様を描き、線刻を施してその細部を表わす「黒絵式(黒像式)」と、素地を黒く塗り、塗り残した図像や文様の細部を絵筆によって描く「赤絵式(赤像式)」という二種類の絵付けの手法がありますが、この作品は「赤絵式」の手法によって制作されたアンフォーラです。

胴部の中央には槍を持ち、馬を伴った戦士と神殿風の建物、その両側に鏡や団扇を持つ女性たち、頸部には装飾的な文様が精緻に表わされています。アンフォーラは、主にぶどう酒や水などの貯蔵や運搬に使用される実用品ですが、本作は細やかに描かれた表裏の図像と高さ85cmという大きさから、戦場に散った地位の高い戦士を弔う副葬品として制作されたものでしょうか。主役である戦士と神殿の図は、遠近法と鮮やかな白の釉薬によって美しく際立たされており、赤絵式陶器の産地としてよく知られるアピュリアの高度に成熟した絵画表現が見て取れます。



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裏面:戦士の墓石を中心として、鏡を持った       側面:文様が隙間なく描かれ、作品の
   二人の女性が描かれています。             装飾性が高められています。



このほかにも古代文明のロマン香る作品がたくさん出品されます。


s-264264 ルリスタン
   《青銅製剣》
            34.6cm
   落札予想価格 
   ¥80,000~150,000

イラン南西部ルリスタン地方で出土したとされる青銅製の剣です。この地域では、紀元前1世紀頃を中心に青銅器文化が発達しました。



s-267
  267 エトルリア
     《青銅製毛彫人物文鏡》
     27.0×12.8cm
                    市川清箱
     落札予想価格 ¥200,000~400,000

   
エトルリアは、まだ古代ローマの支配となる以前の紀         元前9~紀元前1世紀頃、イタリア中央部に栄えた公
   易都市です。
        本作の背面には、最古の彫金技法と言われる毛彫り  
      (たがねで金属板に細い線を描く手法)の鋭い線によ
        り、4人の人物像が表わされています。







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    280 エジプト
     《ウシャブティ》
    H14.3cm(台座含む)
    落札予想価格    ¥100,000~200,000

 
 《ウシャブティ》は古代エジプトのミイラ形の小像。
    死者に代わって冥界の賦役労働に従事する者として
    墳墓に納められた副葬品です。
    本作は石製ですが、木や陶で作られたものもあり、
    次第に副葬される数が増え、新王国時代以降のファ
    ラオの墓には365体以上ものウシャブティが納めら
       れたといいます。


    


また、今回は銀食器やアール・ヌーヴォーのガラス作品、ペルシャ絨毯などもたくさん出品されますので、ぜひ下見会場にお越しください。


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皆様のご来場を心よりお待ちしております。

(佐藤)