竹内浩一の動物画

こんにちは。
9日の近代陶芸/近代陶芸PartⅡオークションにご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

さて、今週の23日(土)は近代美術/近代美術PartⅡ/戦後美術&コンテンポラリーアートオークションを開催いたします。
今回はカタログでも特集を組んでおります、日本画家・竹内浩一(1941-)の作品をご紹介いたします。動物画を描く作家はたくさんいますが、動物の無垢さや生命のみずみずしさをこんなにも優しく細やかに描き出す作家はほかにいないのではないでしょうか。

当ブログでは初めてご紹介しますが、竹内浩一は現代の日本画を代表する動物画・花鳥画の名手です。
京都市の型染友禅の職人の家に生まれた竹内は、京都市立日吉ヶ丘高校日本画科を卒業後、テキスタイルデザインの仕事に従事。デザインコンクールで受賞を重ねる傍ら、日本画を描き始めました。1966年、中路融人の勧めで晨鳥社に入塾し、山口華楊に師事。翌年には第10回日展にて初入選します。1970年代後半からいよいよ写実的な動物画に着手し、第4回山種美術館賞展大賞を受賞。第11回日展では特選(文化庁買上げ)となりました。また、1984年には、横の会の結成に参加し、様々な団体の日本画家たちと研鑽を積むほか、1995年に京都造形芸術大学、2002年には京都市立芸術大学の教授に就任するなど、後進の育成にも力を注いでいます。
近年は、第5回北京ビエンナーレに出品。大徳寺塔頭芳春院の襖絵を制作するなど、京都を拠点に活躍を続けています。


    57 《降》

 116.6×91.1cm
 紙本・彩色 額装
 2000(平成12)年作
 右下に印
 共シール
 『NHK趣味悠々 動物を描く 竹内浩一の日本画
 入門』(2009年/日本放送出版協会)P.60
 落札予想価格 ¥400,000~¥600,000

 
 
竹内が北海道北見市の牧場で出会ったというキツネが描かれた作品です。
入念に観察し、その姿と動きを写実的にとらえていますが、傍らには江戸の浮世絵師・歌川広重の《名所江戸百景 王子装束ゑの木大晦日の狐火》をイメージした狐火が配されています。まるで作家の目には狐火も見えていたかのようにそれが破綻なく調和していて、近作の「現代版鳥獣戯画」シリーズとの関連性もうかがわせます。

  
参考図版:
歌川広重
《名所江戸百景 王子装束ゑの木大晦日の狐火》
(左は拡大図)











58《玄》

116.7×72.8cm
紙本・彩色 額装
共シール
落札予想価格
¥400,000~¥600,000


小さな花をつけた枝垂れ柳とともに、猿を描いた作品です。猿は、竹内が得意とするモティーフ。山種美術館賞展や第5回日展の受賞作の題材も猿でした。
この作品では見事な毛描きによって、今にも動き出しそうなほど猿が生き生きと表現されていて、その思慮深そうな表情がどこか神秘的です。




59 《傘》
99.8×80.3cm
紙本・彩色 額装
左下に印
共シール
落札予想価格 ¥400,000~¥600,000


葡萄の木の下で一羽の鳩がじっとうずくまっています。雨宿りをしているのでしょうか。
ぼかしと胡粉を施した明るく淡い色調により、白昼の雨の場面が抒情的に表現されています。





60 《霖》
91.0×65.4cm
紙本・彩色 額装
左下に印
共シール
落札予想価格 ¥400,000~¥600,000

画題の《霖》(りん)は長雨を意味します。
この作品では、雲龍柳の枝に休む鳥が描かれていますが、柳は竹内が特に好み、繰り返し描き続けているモティーフ。曲線的な枝で画面全体を覆い尽くす構成が非常に装飾的です。





対象をつぶさに観察してスケッチし、丁寧な下塗りを何重も重ね、その実在感や生命感、周辺に吹く風や目に見えない気配までをも、緻密な描写と淡く静謐な画面によって描き出す、竹内浩一の動植物画。その魅力をぜひ、会場でご堪能ください。

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皆様のご来場を心よりお待ちしています。

(佐藤)

健やかな美「民藝」、生と死の三輪龍作の世界

こんにちは。

夏休みはいかがお過ごしになられましたか?

例年より雨に見舞われることの多い夏でしたので、レジャー先等でも悲喜こもごもあったのではないでしょうか。余談ですが、私は突然の大雨の後に虹を見ることが出来ましたので、ちょっと得した気分になりました。

 

さて、今週末に開催されます「近代陶芸/近代陶芸PartⅡオークション」についてご紹介いたします。今回は「民藝運動」を行った作家四人(富本憲吉/バーナード・リーチ/濱田庄司/河井寛次郎)にスポットを当てて、特集を組んでいます。

 

「民藝」とは、“民衆が日々用いる工藝品”のこと。「民藝」という言葉を造り出したのは、大正から昭和にかけての思想家・柳(やなぎ)宗悦(むねよし)(1889-1961)でした。柳は、無名の人々が造り出した日用雑器に魅了され、全国を行脚し、人々の暮らしのなかに当たり前のようにある工藝品として評価されていないものを蒐集し始めます。そこで集めたものを陳列する美術館を創設するべく、1926年(大正15・昭和元)に濱田庄司(1894-1978)・富本憲吉(1886-1963)・河井寛次郎(1890-1966)らとの連名で『日本民藝美術館設立趣意書』を発表しました。「民藝運動」のはじまりです。また、このころ日本に滞在していたバーナード・リーチ(1887-1979)も、それぞれの作家と共に作陶を行い、互いに影響を与え合いました。民藝派の窯元にも出向き、英国の伝統的な技法を教えるなど、初期の民藝運動を支えた一人と言えるでしょう。

当初は陶芸家のみの賛同でしたが、後に木工芸の黒田辰秋や、染色家の芹沢銈介、また木版画家の棟方志功らも参加し、運動は拡大して行きました。

★LOT.205  バーナード・リーチ 「HAROLD HYS SHIPPE」  D34.4cm   口縁部に描き銘「B・H・L」、「1919」記、 「HAROLD HYS SHIPPE 1066」記 高台内に「Bayeux」記 共箱(1920年) 1919年作 ホツ有 落札予想価格:30万円~60万円

★LOT.205 
バーナード・リーチ
「HAROLD HYS SHIPPE」
D34.4cm
口縁部に描き銘「B・H・L」、「1919」記、
「HAROLD HYS SHIPPE 1066」記
高台内に「Bayeux」記
共箱(1920年)
1919年作 ホツ有
落札予想価格:30万円~60万円

 

 バーナード・リーチの楽焼の大皿です。制作年が1919年となっていることから、同年に築窯された洋画家・黒田清輝邸内の「東門窯」で作陶された可能性が高い作品です。絵柄は、1066年に海を渡り戦いに出たイングランドの王・ハロルド2世であり、母国の歴史画を日本の楽焼で作陶するという、リーチだからこそ意味のある、東西の文化をつなぐ作品と言えるでしょう。その他にも、リーチの作品は染附の盒子や、箸置等も出品されます。濱田庄司や、富本憲吉の識箱の付いている作品も何点かありますので、より民藝派の絆を感じられるかと思います。

 

他にも以下のような民藝派の作品が出品されますので、ぜひご高覧ください。

民藝まとめ

 

その他今回のオークションでご注目頂きたいのが、三輪龍作の作品です。

いずれも大型作品で、「卑弥呼山」が2点と、「天・地・人」シリーズが3点出品されます。

LOT.132  三輪龍作  「天、地、人 後宮」   H22.6×W51.5cm   底部に描き銘「龍」   共箱 1986年作  「三輪龍作 天・地・人展」出品 京都四条・髙島屋/1986年  「陶芸・三輪龍作の世界―愛と死の造形―」出品 下関市立美術館/1994年 落札予想価格:20万円~30万円

LOT.132 
三輪龍作
 「天、地、人 後宮」
  H22.6×W51.5cm
  底部に描き銘「龍」
  共箱 1986年作
 「三輪龍作 天・地・人展」出品 京都四条・髙島屋/1986年
 「陶芸・三輪龍作の世界―愛と死の造形―」出品 下関市立美術館/1994年
落札予想価格:20万円~30万円

LOT.134  三輪龍作  「卑弥呼山」  H28.2×W33.5cm  胴部に掻き銘「龍」  共箱 落札予想価格:30万円~50万円

LOT.134
 三輪龍作
 「卑弥呼山」
 H28.2×W33.5cm
 胴部に掻き銘「龍」
 共箱
落札予想価格:30万円~50万円

 三輪龍作は、1940年に十一代三輪休雪の長男として生まれました。萩焼の名門に生まれた龍作は、東京藝術大学陶芸科大学院修了後、伝統的な茶道具ではなく、「ハイヒール」を代表とするオブジェ作品を次々と生み出しました。その作品群は、一貫して愛と死をテーマにしています。今回出品されます「天・地・人」シリーズは、釈迦の生誕から廟、そして新天地へと繋がる世界。もう一方の金色の「卑弥呼」シリーズは、三輪龍作のもっとも代表的なシリーズと言えるでしょう。「卑弥呼山」、「卑弥呼の書」などその世界は広がりを見せています。十二代三輪休雪を襲名された現在でも、黄金に輝く「オーロラ碗」や「シルクロード碗」など、龍作らしさを失わない新しい休雪像を築き上げています。

その独特な世界観をぜひご堪能ください。

                                 執筆者:E

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浜口陽三のメゾチント、長谷川潔のマニエール・ノワール

こんにちは。
先週の近代美術PartⅡ下見会にお越しいただいた皆様、ありがとうございました。

さて、今週の22日(土)は近代美術/近代美術PartⅡオークションを開催いたします。
今回は浜口陽三と長谷川潔の銅版画がたくさん出品されますので、「メゾチントの巨匠」と呼ばれる二人の作品をご紹介いたします。    

浜口と長谷川が追求した「メゾチント」とは…
17世紀にオランダで発明され、フランスやイギリスで盛んになった銅版画の技法の一つで、銅版の全面に無数の点刻線を刻み、その金属のささくれを削ることで描画するものです。この削りの深さを調節することによって、刷った際に黒から白への諧調を表わすことができます。19世紀の写真製版の登場や石版画の発明により、ヨーロッパでは忘れ去られていましたが、渡仏した浜口と長谷川はそれぞれこの技法を発見し、追求していきました。また、フランス語では、「マニエール・ノワール」といい、長谷川はこちらの呼び方を使用しました。

浜口陽三(1909-2000は、1927年に東京美術学校(現・東京藝術大学)彫刻科に入学。しかし、中退して1930年にフランスに渡り、独学で油彩画や銅版画を試みました。戦争の始まりとともに一時帰国し、1950年には本格的に銅版画制作に着手。1953年に再び渡仏すると、メゾチントに色彩を導入し、最大で五色を表現する「カラーメゾチント」を生み出しました。1957年、第4回サンパウロ・ビエンナーレで版画大賞を受賞した後には、日本を代表する版画家として国際的に活躍を続けました。

s-77

 

 

 

 

Lot.77  浜口陽三191つのさくらんぼ》
紙面:46.7×65.7cm   図版:23.8×54.0cm
紙・メゾチント 額装
1965年作
左下余白にEd.11/50、右下余白にサイン
『浜口陽三全版画作品集』(2000/中央公論美術出版)№108
落札予想価格 ¥800,000~¥1,200,000

浜口は、果物や昆虫などの小さなもの、身近にあるものを好み、題材としました。
その中でもさくらんぼは、繰り返し描かれた浜口作品を代表するモティーフです。
画面ではわかりづらいのですが、背景は黒一色ではなく、光や奥行きを感じさせる格子状の空間となっています。その中に配置されたさくらんぼは、一つ一つが舞台の上で個体としての存在感を主張しているようであり、それらが一列に並ぶ様子は豊かなリズムを感じさせます。

s-79

 

 

 

 

 

 

 

 

Lot.79  浜口陽三《パリの屋根》
紙面:37.8×28.0cm  図版:18.8×19.1cm
紙・メゾチント 額装
1956/1957
年作
左下余白にEd.epreuve、中央下余白に年代、右下余白にサイン
『浜口陽三全版画作品集』(2000/中央公論美術出版)№50
落札予想価格 ¥3,000,000~¥4,000,000

《パリの屋根》は、カラーメゾチントを見出して間もない1956年に制作された浜口の代表作の一つ。本作は翌年(当時48歳)に刷られたepreuve(d’artiste)(作家保存分)の一点です。当時、浜口が暮らしていたモンマルトルの家は、台所の窓からパリの風景を一望することができたそうです。浜口はその眺めを題材とし、「屋根の上にポコポコ出ている煙突がかわいらしくて、制作してみたのです。」(『芸術新潮』第36巻第6号 新潮社 1985年)と本作について語っています。
家並みには透明感のある青に黄色と赤がわずかに重ねられ、あたかも画面中央部に光が差し込んでいるかのように見えます。また、黒の部分にはクロスする繊細な直線が表わされ、その微妙なグラデーションが画面に織物のような複雑な表情をもたらしています。浜口の異邦人としての眼差しが詩的に表現された作品です。


長谷川潔(1891-1980)は、1912年に本郷洋画研究所に入り、岡田三郎助と藤島武二に油彩画を学びました。翌年から板目木版画や銅版画の制作を独学で開始。1918年フランスに渡り、以後一度も帰国することなくパリを中心に制作活動を行いました。1924年頃から、フランスで忘れ去られていたマニエール・ノワール(メゾチント)を蘇らせ、東洋の水墨画にも通じる、黒と白の静謐で抒情豊かな画世界を展開しました。

s-81

 Lot.81 長谷川潔
 
《狐と葡萄(ラ・フォンテーヌ寓話)》
 紙面:51.7×38.0cm
   
図版:36.0×26.8cm
     
紙・マニエール・ノワール 額装
  1963年作
 左下余白にEd.47/70・タイトル・年代、
 右下余白にサイン
 『長谷川潔の全版画』
     (1999/玲風書房)№327
 落札予想価格  2,500,0003,500,000

 

 

 

本作は、17世紀のフランスの詩人、ラ・フォンテーヌの寓話の一挿話「狐と葡萄」から想を得て制作されました。「狐と葡萄」は、葡萄棚にぶら下がったよく熟れた葡萄を取るため、狐があらゆる手段を講じる話。結局、狐は葡萄を取ることができず、「あの葡萄は酸っぱいから」と諦めます。
本作では狐のおもちゃが描かれていますが、深みのある黒の空間の中から、モティーフが光を湛えて浮かび上がるようで、洗練された画面構成と相まって神秘性すら感じさせます。

浜口陽三のカラーメゾチントと長谷川潔のマニエール・ノワール、いずれの作品も黒を基調としていますが、パソコンの画面では表現しきれない、実に豊かなニュアンスに富んでいます。
ぜひ下見会場で実物をご覧ください。

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皆様のご来場を心よりお待ちしています。

(佐藤)

 

 

華やぐ漆芸、涼を呼ぶ竹掛花入-音丸耕堂と松平不昧

こんにちは。

今週末に「近代陶芸/古美術/近代陶芸PartⅡオークション」が開催されます。ある程度湿度のあるこの季節には、乾燥を気にせず安心してお勧めできる作品をご紹介いたします。梅雨の室内を華やかにさせる菓子器と、夏の茶室に涼を誘う竹掛花入です。

 
 
 

 

LOT.177 音丸耕堂 「彫漆カトレヤ菓子器」 H12.9×W15.5cm 下部に銘「耕堂」 共箱 落札予想価格:80万円~120万円

LOT.177 音丸耕堂
「彫漆カトレヤ菓子器」
H12.9×W15.5cm
下部に銘「耕堂」
共箱
落札予想価格:80万円~120万円

 

 日本古来の輪島塗や京漆器とは違い、江戸時代後期に高松松平家の命により生まれたのが「香川(高松)漆器」です。鞘塗師(さやぬりし)であった玉楮象谷(たまかじぞうこく)(1806-1869)が、中国漆器や東南アジアの漆器の技法を研究しその基礎を作り上げました。以来長きにわたり高松は多くの漆芸家を排出しており、その筆頭に挙げられるのが音丸耕堂(おとまるこうどう)です。

 音丸耕堂(本名・芳雄)は、明治三十一年(1898)に高松市で生まれました。実兄・山下光雪、実弟・山下楊哉も共に漆芸家です。耕堂は、13歳の時に讃岐彫の名工・石井磬堂(けいどう)(1877-1944)の元へ弟子入りし彫刻の技術を学びました。その後、伯母の音丸家に養子に行き、独立後、玉楮象谷の作品から独学で彫漆を学んでいきます。

彫漆とは、漆を何層にも塗り重ね、削り、彫り下げ、形作る技法の事です。音丸は、多くの色漆を創り出し、豊かなグラデーションと巧みな彫りにより、器体に重厚感ある華やかさをもたらしました。実際手に取るとその軽さに驚かされ、いかに薄く塗り重ね上げられたものかを実感できます。今回の「菓子器」も塗りの期間におよそ3カ月かかっており、計算された順番で51もの色漆が丁寧に塗り重ねられています。その類まれなる技量により昭和三十年(1955)に「彫漆」で重要無形文化財保持者の認定を受けました。

 この“カトレヤ文様”は、昭和六十一年(1986)、88歳の時に新作として発表され、以後亡くなる前年の平成八年(1996)、98歳に到るまで制作され続けたモチーフです。年齢をまったく感じさせない、最晩年のキレのある彫漆作品をぜひご覧ください。

 

さて、皆さんは先週まで開催されていた上野の東京国立博物館・特別展「茶の湯」をご覧になられたでしょうか?その中で松平不昧の茶が江戸時代の「古典復興」の一つとして紹介されていましたが、今回の古美術オークションでも松平不昧の掛花入が出品されます。

 

LOT.112  松平 不昧 「尺八」 H25.2×D6.2cm 下部に銘「宗納造」、在判 溝口直諒甲書、阿部休巴箱 『不昧公とその時代―不昧が育てた出雲の文化―』出品  出雲文化伝承館/平成二十三年(2011)【図録付】 落札予想価格:100万円~200万円

LOT.112 
松平 不昧 「尺八」
H25.2×D6.2cm
下部に銘「宗納造」、在判
溝口直諒甲書、阿部休巴箱
『不昧公とその時代―不昧が育てた出雲の文化―』出品 
出雲文化伝承館/平成二十三年(2011)【図録付】
落札予想価格:100万円~200万円

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「松江藩中興の祖」と称される出雲松江藩主、松平不昧(ふまい)【治郷(はるさと)】【寛延四年-文政元年(1751-1818)】は、江戸後期の茶の湯文化を牽引した大名茶人として知られています。藩主となった十代の頃から茶の湯や禅を学び、茶禅一味を基礎として自らの茶道観を確立しました。また、茶道具の蒐集と研究にも力を注ぎ、『古今名物類聚』を著したほか、藩内の美術工芸の振興を図り、お抱えの陶工や塗師たちを指導して優れた好み物の数々を制作しました。

 本作は、白竹を用いた不昧自作の尺八花入です。下部の正面やや右側に現れた一筋の染みが美しく、三節からなる端正な姿の景色となっています。そして、その裏に記された「宗納造」の銘は類例が少なく貴重であり、不昧の美意識がよく表現された自信作であることを窺わせます。なお、平成三十年(2018)は不昧公二百年忌にあたり、本作は茶事の話題の要ともなる花入と言えるでしょう。

シンワアートオークションにぜひ足をお運びください。

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                                  執筆者:E

現代の写実画―森本草介、中山忠彦、藤井勉の女性像

こんにちは。
先週の近代美術PartⅡ下見会にお越しいただいた皆様、ありがとうございました。

突然ですが、もうお気づきでしょうか。
弊社のホームページのトップページに「メールマガジンに登録」というフォームができました。
オークション開催のご案内や落札結果などをメールでお知らせいたしますので、まだご登録いただいていない方は、ぜひご登録ください。

さて、今週の20日(土)は近代美術/近代美術PartⅡオークションを開催いたします。
今回も出品作品の中からおすすめの作品をご紹介いたしますが、今回は現代写実画のトップランナーたちの作品を集めてみました。

写実は、「現実的な主題をありのままに描くこと。あるいは、対象を細部まで正確に描く手法」です。ご存じの通り、絵画の伝統的で基本的な手法の一つですが、2010年頃から、国内ではにわかに現存作家たちによる「写実画」の人気が高まってきました。
以来、画壇の重鎮から平成生まれの若手まで、才気溢れる作家たちが凌ぎを削るジャンルの一つとして、作品の質や作家の層ともに充実した様相を見せています。

その中でも、長きにわたりこの写実画を牽引してきた森本草介は、亡くなった今もなお名実ともにその頂点に君臨する作家と言えるでしょう。

 

【オークション終了につき、画像は削除させていただきました】

 136 森本 草介(1937-2015)
《裸婦》

72.7×90.9cm
キャンバス・油彩 額装
1985年作
左下にサイン
裏に署名・タイトル
「森本草介―敬虔なる写実―」
2001年(日本橋髙島屋/日本経済新聞社)出品

落札予想価格
¥10,000,000~¥18,000,000

 

「女性像の画家」として名高い森本が女性を描き始めたのは、1980年頃のこと。それは、一人の女性との運命的な出会いがきっかけだったと言われています。
1985年(当時48歳)に制作された本作は、その「創造のミューズ」となった女性をモデルとした裸婦像です。目を伏せてソファーにもたれる女性のしっとりとした肌の質感と頭髪の一本一本、布の素材感と室内に注ぐ光など、そこにあるすべてが圧巻とも言うべき写実技法により、きわめて精緻に描写されています。そして、できるだけ筆触が目立たないように、絵具を薄く丹念に塗り重ねた滑らかな絵肌と施されたスフマート(ぼかし)技法の効果により、女性を包む柔らかな空気と静謐さ、作家の抒情までもが豊かに表わされています。

特筆すべきは、このように手を伸ばせば触れられそうなほど克明に表現されていながら、女性が決して触れてはならない、聖なる者のような気品と清らかさを湛えていることでしょう。それは、森本が女性の一瞬の輝きを描き留めるとともに、それを自身が抱く理想の女性美へと昇華させたためであり、この点に森本芸術の精華が見て取れます。


また、現代の写実画といえば、白日会の作家たちがよく知られていますが、若手作家の憧れの存在といえば、白日会会長を務めるこの作家でしょう。

【オークション終了につき、画像は削除させていただきました】

122 中山 忠彦(1935-)
《エマイユのイヤリング》

33.5×24.3cm
キャンバス・油彩 額装
左下にサイン
裏に署名・タイトル

落札予想価格 ¥1,000,000~¥1,500,000

中山忠彦の主要なテーマは、女性像とヨーロッパのアンティークドレスです。
そして、主に作品のモデルを務めているのは、画家の夫人だといいます。
本作のモデルも夫人と思われますが、イヤリングとドレスの水色のコーディネートが爽やかですね。中山は最も身近で大切な人の姿を通して、普遍的な女性美、すなわち「永遠の女神」を追求しているのでしょう。



【オークション終了につき、画像は削除させていただきました】

92 藤井 勉(1948-)
《清心》

72.7×60.7cm

キャンバス・油彩 額装
右下にサイン
共シール

落札予想価格 ★¥300,000~¥400,000

藤井勉は1980年代から活躍している写実の実力派。
そのテーマは少女像で、画家の3人の娘たちがモデルとなっています。
それは、愛娘の成長していく姿を愛おしみながら、あるいは幼き日を懐かしみながら記録したものですが、圧倒的な細密描写によって、少女の凛とした佇まいと今ここにいるかのような実在感が巧みに描き出されています。

女性の様々な美しさを描いたこれらの作品は、現在開催中の下見会にてご覧いただけます。
下見会・オークションスケジュールはこちら

皆様のご来場を心よりお待ちしております。

(佐藤)

古代の美―アピュリア《赤絵手アンフォーラ》

こんにちは。
東京の桜は満開の頃を過ぎてしまったようですが、お花見は行かれましたか?
散っていく様子もきれいなので、まだの方はぜひ桜吹雪をお楽しみください。

さて、今週の15日(土)は、西洋美術オークションを開催いたします。
大理石彫刻のように重量のある作品やマイセンの人形のように繊細な作品の多いこのオークションは、下見会の準備がとても大変なのですが、オープンしてみると、ヨーロッパを中心とした様々な地域の様々な時代の美術品が一堂に介していて、非常に見ごたえがあります。

今回も出品作品の中からおすすめの作品をご紹介いたします。
このたびのオークションは古代の作品が充実していますが、まずはカタログの表紙にもなっているこの作品です。


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273 アピュリア
  《赤絵手アンフォーラ》
   H85.0×W40.6cm
       落札予想価格 
   ¥2,800,000~3,800,000














「アピュリア」とは、現在の南イタリアのプーリア州を指します。紀元前8~3世紀頃にかけて、古代ギリシアの植民地となり、「マグナ・グラエキア」(大ギリシア)の一部となったこの地域では、ギリシア陶器が盛んに制作されました。

この時期のギリシア陶器には、赤色の素地の上に黒いシルエットで図像や文様を描き、線刻を施してその細部を表わす「黒絵式(黒像式)」と、素地を黒く塗り、塗り残した図像や文様の細部を絵筆によって描く「赤絵式(赤像式)」という二種類の絵付けの手法がありますが、この作品は「赤絵式」の手法によって制作されたアンフォーラです。

胴部の中央には槍を持ち、馬を伴った戦士と神殿風の建物、その両側に鏡や団扇を持つ女性たち、頸部には装飾的な文様が精緻に表わされています。アンフォーラは、主にぶどう酒や水などの貯蔵や運搬に使用される実用品ですが、本作は細やかに描かれた表裏の図像と高さ85cmという大きさから、戦場に散った地位の高い戦士を弔う副葬品として制作されたものでしょうか。主役である戦士と神殿の図は、遠近法と鮮やかな白の釉薬によって美しく際立たされており、赤絵式陶器の産地としてよく知られるアピュリアの高度に成熟した絵画表現が見て取れます。



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裏面:戦士の墓石を中心として、鏡を持った       側面:文様が隙間なく描かれ、作品の
   二人の女性が描かれています。             装飾性が高められています。



このほかにも古代文明のロマン香る作品がたくさん出品されます。


s-264264 ルリスタン
   《青銅製剣》
            34.6cm
   落札予想価格 
   ¥80,000~150,000

イラン南西部ルリスタン地方で出土したとされる青銅製の剣です。この地域では、紀元前1世紀頃を中心に青銅器文化が発達しました。



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  267 エトルリア
     《青銅製毛彫人物文鏡》
     27.0×12.8cm
                    市川清箱
     落札予想価格 ¥200,000~400,000

   
エトルリアは、まだ古代ローマの支配となる以前の紀         元前9~紀元前1世紀頃、イタリア中央部に栄えた公
   易都市です。
        本作の背面には、最古の彫金技法と言われる毛彫り  
      (たがねで金属板に細い線を描く手法)の鋭い線によ
        り、4人の人物像が表わされています。







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    280 エジプト
     《ウシャブティ》
    H14.3cm(台座含む)
    落札予想価格    ¥100,000~200,000

 
 《ウシャブティ》は古代エジプトのミイラ形の小像。
    死者に代わって冥界の賦役労働に従事する者として
    墳墓に納められた副葬品です。
    本作は石製ですが、木や陶で作られたものもあり、
    次第に副葬される数が増え、新王国時代以降のファ
    ラオの墓には365体以上ものウシャブティが納めら
       れたといいます。


    


また、今回は銀食器やアール・ヌーヴォーのガラス作品、ペルシャ絨毯などもたくさん出品されますので、ぜひ下見会場にお越しください。


下見会・オークションスケジュールはこちら

皆様のご来場を心よりお待ちしております。

(佐藤)

モノクロームの作品より―高山辰雄と五木田智央

こんにちは。
先週の下見会にご来場いただいた皆様、ありがとうございました。

今週は3/22(水)~3/24(金)まで、近代陶芸・人間国宝・近代陶芸PartⅡ/近代美術の下見会を、3/25(土)に近代美術PartⅡ/戦後美術&コンテンポラリーアート/近代陶芸・人間国宝・近代陶芸PartⅡ/近代美術のオークションを開催いたします。
複数ジャンル同日開催のため、通常とスケジュールが異なりますのでご注意ください。
(3月25日(土)オークション開催当日の下見会はありません)

下見会・オークションスケジュールの詳細はこちら


今回は3/25開催オークションの出品作品の中から、おすすめの作品2点をご紹介します。
どちらも洗練されたモノクロームの作品です。


【オークション終了につき、画像は削除させていただきました】

66 高山 辰雄(1912-2007)

《月光の路》
100.0×75.5cm
絹本・彩色 額装
1987年頃作
左下に落款・印
共箱、共シール
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書付

「高山辰雄 墨色の世界展」2004年
 (富山県水墨美術館/「高山辰雄
  墨色の世界展」
実行委員会)出品
「高山辰雄遺作展 人間の風景」2008年
 (練馬区立美術館)出品
                   
落札予想価格 ¥3,000,000~5,000,000

静謐で瞑想的な心象風景は、高山辰雄の最も重要なテーマの一つです。
特に、高山自身の故郷の風景を描いたものと言われる山間の集落を中心とした風景は、円熟期に繰り返し制作されました。
本作はその代表的な作例ですが、しんとした夜、小さな集落と路、山々が満月の光に明るく照らし出されています。タイトルが《月光の路》であることから、高山の関心は前景から山へと続いていく路にあることがわかります。高山にとって路は、「人間の営みの集積と歴史そのもの」であり、そこに立つことで「過去の、そして今生きる人々の生活の喜び、怒り、悲しみ、あるいは未来のそれさえもがふと伝わってくる」註)ものでした。
本作においても、集落を優しく包み込むようにカーブを描く路を通して、高山が抱いた、人々のささやかな生活への深い共感が感じられます。

註)『画業70年 高山辰雄展』日本経済新聞社  2000年

そしてもう1点は、戦後美術&コンテンポラリーアートの出品作品から。
(下見会は終了しています)

【オークション終了につき、画像は削除させていただきました】

832 五木田 智央(1969- )
《不吉誇張人》
194.0×259.0cm
キャンバス・アクリル、グワッシュ
2008年作
裏にサイン・タイトル・年代
「五木田智央 THE GREAT CIRCUS」2014年(DIC川村記念美術館)出品
落札予想価格 ¥5,000,000~8,000,000

五木田智央は、1990年代から国内外の著名なアーティストたちのCDジャケットを数多く手掛け、イラストレーションの分野で熱狂的な支持を集めてきました。2000年代に入り、ニューヨークでドローイングが評価されたことを機に絵画制作に重点を置き、世界のアートシーンにおいても注目を浴び始めます。昨年の秋には、雑誌『POPEYE』の表紙を飾り、現在は東京で新作の個展を開催中。その人気はますます広がりを見せています。

本作は、《不吉誇張人》という耳慣れない言葉がタイトルとなっていますが、どうやら五木田は始めに英語でタイトルをつけ、その後日本語に訳しているようです。本作の英語タイトルは《Sinister Exaggerator》、五木田の好きな前衛音楽ユニットThe Residentsの同名の曲からつけたものでしょうか。

本作は、五木田の名を一躍有名にした、キャンバスに白と黒、二色のアクリルとグワッシュを使って描くモノクロームの絵画の一つです。このシリーズは、既成の図像をソースとし、自らの中に浮かんだイメージを感覚的に表現したものですが、本作は曲からインスピレーションを得てイメージを膨らませたのかもしれません。具体的なモティーフをグラデーションを生かした曲線的なかたちによって表わし、それを反復することによって大画面が満たされており、画面全体を見るとまるで抽象絵画のようです。白と黒のグラデーションがつくり出すメタリックな表情が美しく、絵具のグラデーションや滴りがもたらす偶然の造形を画家自身が楽しみ、即興的に発展させていった様子がうかがえます。

皆様のご来場を心よりお待ちしております。

(佐藤)

3月近代陶芸ご紹介―人間国宝・寛次郎の鐘渓窯・唐九郎の志野茶碗

こんにちは。ここ最近ようやく関東でも春めいてきましたが、まだまだ寒さが尾をひきそうですね。そして花粉も飛ぶ季節となってきましたので、皆様体調管理にはぜひお気を付けください。

 さて、今回は「近代陶芸・人間国宝・近代陶芸PartⅡオークション」の出品作の中からいくつかご紹介します。

人間国宝200

人間国宝」とは、「重要無形文化財保持者」の通称です。この「重要無形文化財保持者」は戦後、伝統工芸を守るために定められた文化財保護法の制度の一つで、陶芸、染織、漆芸、金工、木竹工、人形などに関する工芸技術を「無形の文化的所産」とし、その中でも、我が国にとって歴史上または芸術上特に価値の高い「技」を保持する作家(団体)が、それを後世へ継承し、発展させていくために認定をされるというもの。認定の際、陶芸ならば「色絵磁器」や「染付」など、その「技」も明示されます。

本オークションでは、初年に認定を受けた富本憲吉や濱田庄司をはじめ、弊社でも久しぶりの出品となる木工芸の黒田辰秋など32人(一団体を含む)の「人間国宝」の優れた作品をご紹介します。

 伝統の技と高度に成熟した芸術性を兼ね備えた匠たちの作品をぜひご覧ください。

 

続いて「近代陶芸」の作品をご紹介します。

鐘渓窯_200

河井寛次郎の作品は、今までも数多く出品されていますが、今回は初期の作品が出品されます。

 この二作品には、どちらも「鐘渓窯」(しょうけいよう)という印銘が押されています。後に自分は“無銘の陶工”でありたいという信念から銘を入れなくなるまでの、およそ4年間にしか見られない珍しい作です。

寛次郎は、1920年(大正9年)、30歳の時に、五条坂鐘鋳(かねい)町にあった清水六兵衛の窯を譲り受け、「鐘渓窯」と名付け住居と窯を構えました。現在の河井寛次郎記念館がある場所です。

その頃は宋の陶器に憧れ、唐子のモチーフや、青磁、辰砂、菁華などの技法を用いたものを多く作陶しました。当時の事を寛次郎は、「ねてもさめても宋の陶器、宋の太陽が輝いておったわけです。」註)と後に述懐しています。宋の太陽に魅入られていた頃の寛次郎作品をぜひご堪能ください。

 

そして、加藤唐九郎「志野茶碗」も出品されます。

唐九郎300-2

鮮やかで濃い赤紫の志野茶碗です。「玄」の掻き銘も高台脇に施され、晩年の作であることが伺えます。「玄」は「くろう」と読み、「陶玄」(とうくろう)という当て字を用いた銘から派生しました。一度は陶芸界の一線から遠ざかった唐九郎ですが、連作の志野茶碗を作ることにより見事に返り咲き、その勢いは最期まで増していきました。

堂々たる加藤唐九郎の志野茶碗をぜひお楽しみに。

また今回は、オークション当日に下見会を開催致しませんので、

お気を付けください。

下見会・オークションスケジュールはこちら。

註)『生命の歓喜 生誕120年河井寛次郎展』河井寛次郎記念館・毎日新聞社編集/2010年

 

                      執筆者:E

上村松園の美人画3

こんにちは。
先週の近代美術PartⅡ下見会にお越しいただいた皆様、ありがとうございました。
2017年1回目のブログ更新となります。ご挨拶が遅くなってしまいましたが、本年もよろしくお願い申し上げます。

さて、今週の28日(土)は今年最初のオークションとなります、近代美術/近代美術PartⅡオークションを開催いたします。
今回は出品作品の中から私のおすすめ、上村松園(1875-1949)の美人画2点をご紹介いたします。ともに画業の初期~中期に制作されたもので、明治や大正の頃の松園作品の魅力に溢れています。また、この時代の作はオークションにはあまり出品されませんので、そういった意味でも注目の作品です。


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59 《二美人觀書》
73.7×49.5cm
絹本・彩色 軸装
左上に落款・印
共箱
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書付
落札予想価格 ★¥8,000,000~15,000,000










二人の女性が、くつろいだ様子で楽しそうに本を読んでいます。
この「本を読む女性」という題材は、松園が浮世絵を参考とし、画業を通して取り組んだものです。
本作は、二人の柔らかで甘美な顔立ちから、大正末期から昭和初期の作でしょうか。女性たちを横方向から大胆にクローズアップして捉えた構図が特徴的で、本に夢中になる二人の生き生きとした表情が際立たされています。

彼女たちが何を読んでいるのかも気になるところですが、本の表紙には『多賀羅冨根』(宝船)と書かれているようです。おそらくこの本は、宝船の図とともに、「なかきよの とおのねふりの みなめさめ なみのりふねの おとのよきかな」などの回文が書かれたものでしょう。これは、「七福神を乗せた宝船の絵を枕の下に敷いて寝ると、縁起の良い初夢を見ることができる」という室町時代からの風習によるもので、大正時代の京都で流行したといいます。この図を枕の下に敷いて眠ったら、どんな夢が見られるのかしらと彼女たちも胸を躍らせているのかもしれませんね。
もう1月も下旬ですが、幸福な新年を願う女性たちの希望にみちた雰囲気は、年始めのオークションにふさわしくもあります。

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60 《處女愛児図》
135.2×51.5cm
絹本・彩色 軸装
明治43(1910)年頃作
左下に落款・印
共箱
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書付
『上村松園画集』(1989年/京都新聞社)№54
『上村松園画集 清新の女性美』
  (2004年/朝日新聞社)№33

落札予想価格 ★¥15,000,000~25,000,000











明治43年(当時35歳)頃作の本作では、振袖を着た若い女性が、幼児を高く抱き上げてあやす姿が描かれています。楽しげな笑い声が聞こえてきそうなほど、二人が生き生きと表現されていることから、松園の身近な人々の日常のひとこまを題材に、明治以前の風俗として表現したものでしょう。
S字状の大きな曲線を描くように女性を表わした動きのある構図、Lot.59《二美人觀書》にも共通する人物の柔和な表情は、凛とした雰囲気の漂う昭和期の作品とは異なる、初期の松園芸術の魅力に溢れています。

特にご注目いただきたいのは、人物のファッションです。自身も生涯着物を愛用し続け、また、自らの画業を「姉様遊び(人形を使ったままごと)をしたようなもの」と語った松園にとって、登場人物の着物や髪型は作品のとても重要な要素でした。それは、時代風俗や人物の属性、季節を表すだけでなく、時には人物の細やかな感情の機微を物語るものであり、さらに、松園の洗練された感性と、江戸や明治の女性風俗の研究の成果を発揮する場でもありました。本作の女性が身に付けた、赤い花柄の長襦袢がのぞく縞の着物と大きく結んだ市松模様の黒帯の組み合わせも遊び心に溢れていて、本当におしゃれですね。

これらの作品は25日(水)からの下見会にてご覧いただけます。
松園の作品はほかに、Lot.38《神ひな之図》、Lot.44《花下美人図》も出品されますので、そちらもお見逃しなく。また、「干支の鳥の絵を飾りたい」という方には、松園の孫、上村淳之の花鳥画もおすすめです。

下見会・オークションスケジュールはこちら

皆様のご来場を心よりお待ちしております。

(佐藤)

4年間ありがとうございました

こんにちは。
販売スタッフの田部井でございます。

今年もいよいよ残りわずかとなってしまいましたが、益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。

2012年9月より4年間にわたり、皆様からの温かいご支援をいただき営業してまいりましたジュエリー&ブランドショップは、誠に勝手ながら12/21をもちまして閉店いたします。
ご迷惑をおかけしますが、何卒ご理解賜りますよう宜しくお願い申し上げます。

長きにわたりご愛顧いただきまして誠にありがとうございました。
スタッフ一同、心より感謝申し上げます。

また、今後のアフターケア等につきましては引き続きシンワアートオークションへお問い合わせください。

 

*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・マネージャー挨拶・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・

2012年7月のプレオープンから、早いもので4年と5か月が経ちました。

今までショップをご利用いただいたお客様の、お一人お一人のお顔が思い浮かびます。
不慣れなオープン当初から何かと至らないことも多い中で、たくさんの温かいご支援をいただいた事に、只々感謝の気持ちで一杯です。

美しい宝飾品を通じて出会えたたくさんのお客様とのご縁は、私たちの大切な宝物です。
ショップが閉店してしまうことは誠に申し訳なく残念に思いますが、シンワアートオークションは引き続き営業してまいりますので、これからも末永くご愛顧賜りますよう何卒お願い申し上げます。

最後となりますが、皆々様のご多幸を心よりお祈り申し上げます。
4年間、本当にありがとうございました。

永井

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