鏑木清方と芝居絵―《歌舞伎のはじめ》

こんにちは。
2024年1回目のブログ更新となります。
本年もよろしくお願い申し上げます。

今年は元日から大きな災害や事故が相次ぎました。このたびの能登半島地震で被災された皆様には心よりお見舞いを申し上げます。真冬の寒さの中、非常に厳しい状況が続いていることと思いますが、皆様の安全と被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

さて、今週の27日(土)は近代美術/近代美術PartⅡ/Contemporary Artオークションを開催いたします。今回も出品作品の中からおすすめの1点をご紹介いたします。



     112  鏑木清方
   《歌舞伎のはじめ》
  141.8×56.8cm(軸装サイズ249.3×78.8cm)
      絹本・彩色
      1938(昭和13)年作
      右下に落款・印
      共箱
      東美鑑定評価機構鑑定委員会鑑定証書付

      掲載文献:
   『美之國 第十四巻 第十二号』(1938年/美之國社)
   『塔影 第十五巻 第一号』(1939年/塔影社)
   『美術街 第六巻 第二号』(1939年/美術街社)
   『阿々土 第二十四号』(1939年/阿々土社)
   『日本美術年鑑』(1940年/美術研究所・岩波書店)№163 
   『鏑木清方画集 資料編』(1998年/ビジョン企画出版社)
      №645
   『市井展の全貌―淡交会、珊々会、尚美展から東京会まで      (戦前編)―』(2012年/東京美術倶楽部・八木書店)p.33

    展覧会:「七絃会 第九回展」1938年(日本橋三越)

                                                               落札予想価格 ★¥1,000,000~¥1,500,000


鏑木清方は、上村松園とともに「西の松園、東の清方」と称された近代日本画を代表する美人画の名手です。近年は、市井の人々の暮らしの情景をあたたかな眼差しで描いたことでも高く評価されています。
1878
(明治11)年、清方は戯作者・條野採菊の子として、東京の下町に生まれました。挿絵画家を目指し、13歳の時に浮世絵歌川派の流れを汲む水野年方に入門。新聞や雑誌で人気を博す一方、第3回文展(1909年)で初入選するなど、画壇においても頭角を現します。また、この頃浮世絵を独学し、江戸風俗を題材とした美人画や明治の庶民生活に取材した風俗画の制作に専念していきました。
関東大震災の後は、古き良き東京の姿を描き留めようという意識をいっそう強め、1927(昭和2)年に《築地明石町》、1930年には《三遊亭円朝像》(ともに重要文化財)といった名作を次々に発表。戦後は鎌倉に移住して「卓上芸術」の制作にも力を注ぎ、画帖や絵巻物など、細やかな筆遣いや色彩を手元で楽しむことができる作品を数多く手掛けました。

3歳の頃から芝居好きの両親とともに歌舞伎座や新富座に通ったという清方は、生涯にわたって芝居を好み、挿絵画家時代には雑誌『歌舞伎』の挿絵や表紙絵を手掛け、新聞に劇評を書くなど、特に歌舞伎に造詣が深かったといいます。日本画家となった清方が、江戸の風俗や浮世絵の世界を絵画の画題に選び、愛して描き続けたのは、このように幼少期から親しんだ歌舞伎の影響が大きかったのかもしれません。その後は「京鹿子娘道成寺」や「鷺娘」など、歌舞伎の演目を題材とした作品も度々描きました。

1938(昭和13)年作の本作も歌舞伎を題材とした作品の一つです。描かれているのは画題の通り、「歌舞伎のはじめ」、つまり歌舞伎の“祖”とされる出雲の阿国(おくに)と名古屋山三(さんざ)です。阿国は安土桃山時代から江戸初期、出雲大社の巫女と称して諸国を巡り、男装してかぶき踊りを始めたという人物。山三は蒲生氏郷に小姓として仕えた後、阿国歌舞伎の演出家や役者を務めたと伝えられています。本作では《風俗図(彦根屏風)》(国宝)に描かれた若衆の姿を引用し、太刀にもたれた男装の阿国とその傍らに腰を下ろす美男子の山三のファッショナブルな佇まいを、ふくよかで簡潔な輪郭線と精緻な線描を使い分けて洒脱に表しています。なお、本作は下絵となる素描作品が残されており、現在それは鎌倉市鏑木清方記念美術館に収蔵されています。

ぜひ下見会場で実際の作品をご覧ください。
オークション・下見会スケジュール、オンラインカタログはこちら

なお、ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなどの方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。


(佐藤)

精良な祥瑞と朴訥な古染付

こんにちは。

先日丸ビルで開催されましたMANGA/Super Athletes Collectibles/近代美術PartⅡ/Contemporary Art/近代美術オークション、SHINWA COLLET Watch Auctionにご参加いただいた皆様、ありがとうございました。今週は、弊社にて今年最後のオークション・近代陶芸/古美術/近代陶芸PartⅡオークションが行われます。 

 

今回は、お茶道具が数多く出品されます。江戸前期の茶匠の筆が添えられた茶道具類や、樂家代々の茶碗、茶人から珍重されてきた見立ての品々、現代作家による写しの作品など、風合いや、用途、作家別でご覧になられても面白いかと思います。

なかでも近代に入り、古美術の蒐集家として質量ともに優れていたと知られる三者の数寄者に渡った作品をご案内いたします。

◆LOT.155「祥瑞輪花口紅松竹梅詩入向附 五人」
H5.7×D11.8cm他
各高台内に「大明成化年製」記
①『第三回赤星家所蔵品入札目録』掲載 一九六
  東京美術倶楽部 / 大正6(1917)年【目録付】
②『故田竹邨先生遺愛品入札目録』掲載 二三三
  京都美術倶楽部 / 大正12(1923)年【目録付】
③『益田家御所蔵品入札もくろく』掲載 二三九
  東京美術倶楽部 / 大正12(1923)年
落札予想価格:70万円~100万円

 「祥瑞(しょんずい)」とは、中国明時代末期の崇禎年間(1628-1644)に景徳鎮で焼成された磁器で、小堀遠州など日本の茶人らの注文によって焼かれた染付を指します。胴部には、文人の美徳や理想を表す「三友」(松竹梅)を詠んだ漢詩と絵付けが施され、見込みにも太陽に例えられた「菊」という目出度い図柄があり、薄造りで文人趣味の品ある作です。

 本作が、一番初めに世に出されたのは、薩摩出身の明治時代の実業家で、裏千家十三代圓能斎に茶の湯を学んだ赤星弥之助(1853-1904)の売立でした。赤星の旧蔵品の中には、現在国宝に指定されている南宋の画家・梁楷(りょうかい)の《雪景山水図》(東京国立博物館蔵)などが有名です。その後、文人画家・田能村直入に師事した田近竹邨(たぢかちくそん)(1864-1922)が所持しました。竹邨は、師の師である田能村竹田の《亦復一楽帖》を所持しており、これは現在公益財団法人名勝依水園・寧楽美術館が所蔵し、重要文化財の指定を受けている作品です。竹邨は、この作品を手にした喜びで、自身も「一楽荘」と号し、本作の箱にも「一楽荘」の蔵印を捺しています。そして三人目に、近代茶人・益田鈍翁(どんのう)の末弟にあたり古美術商・多聞店を開いた益田紅艶(こうえん)(1865-1921) の元へ渡りました。紅艶は、重要文化財である《玳皮盞 鸞天目(たいひさん らんてんもく)(茶碗)》を所有しており、現在は三井記念美術館の所蔵となっています。このように本作も、国宝や重要美術品に指定されるほどのコレクションを形成した、目の肥えた人物を魅了した逸品であると言えるでしょう。

 また、「祥瑞」を“上手”とするなら、“下手”とされたのは、「古染付」でした。釉薬が胎土に密着せずにこぼれた部分・虫喰いが出来てしまうのが特徴的で、日本人は、その古朴さを愛でたと言います。

◆LOT.154「古染附蝶模様香爐」
  H9.8×W9.5cm
 『当市石田五兵衛氏並ニ某家所蔵品入札目録』掲載  一二六
   京都美術倶楽部 / 大正14(1925)年【目録付】
落札予想価格:40万円~60万円

こちらは、今回出品されます古染附の香炉です。形も面白く、朴訥な草花や蝶の絵付けがなんとも愛らしいです。北大路魯山人は、明代に完成したこの染付の登場を「こんなスキッとした美しい焼物は実に見たくも見られなかったというべきだ」『魯山人著作集第一巻陶芸論集』(五月書房)と称賛しています。そして自身も古染付の写しを作成しており、今回はその中の一つ、鯰(なまず)の向付が出品されます。

◆LOT.301 北大路魯山人「染着鯰魚向付 十客」
  H3.5×W17.0cm 他
  各底部に描き銘「魯」(九客)
  共箱   六客ホツ有
  東美鑑定評価機構鑑定委員会鑑定証書付
落札予想価格:100万円~150万円

魯山人の鯰向付は有名ですが、実際弊社で出品されるのは初めてのことです。なんとも言えない表情をした鯰。染付の色味は発色が豊かで、それぞれ異なる風合いを見せてくれます。

 

染付の味わい深い美しさをぜひご堪能いただければと思います。

下見会・オークションスケジュールはこちら

また、今回もオークション当日は、下見会を開催しておりませんので、お気を付けください。

 なお、ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなどの方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。お待ちしております。

                                        (江口)

伊東深水の美人画―《春の雪》

こんにちは。
先月の西洋美術、BAGS/JEWELLERY&WATCHESオークションにご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。
さて、今週26日(日)は、MANGA/Super Athletes Collectibles/近代美術PartⅡ/Contemporary Art/近代美術オークション、SHINWA COLLET Watch Auctionを開催いたします。下見会場は通常通り銀座の弊社、オークション会場は丸ビルホール(丸ビル7F)となります。また、今回は日曜日の開催となりますので、お間違えのないようご注意ください。

今回も出品作品の中からこれからの季節にぴったりの一点をご紹介いたします。
美人画の名手・深水の線描の巧みさに改めてうっとりしてしまう名品です。

【 オークション終了につき、画像は削除させていただきました 】

247  伊東深水
《春の雪》
143.1×56.8cm(軸装サイズ244.5×79.5cm)
絹本・彩色 
右下に落款・印 共箱
「伊東深水名品展」1957年(白木屋/東京新聞社)出品
落札予想価格 ¥10,000,000~20,000,000


伊東深水(1898-1972)は上村松園、鏑木清方と並び称される、近代の日本画を代表する美人画家です。
1898(明治31)年、東京の下町に生まれた深水は、11歳で印刷の仕事に就き、その傍らで図案部門の顧問であった結城素明に画才を認められ、鏑木清方に入門します。再興第1回院展、第9回文展に初入選し、16歳の若さで画壇にデビュー。新聞や雑誌の挿絵、新版画運動への参加を活動の中心とした時期を経て日本画制作に専念し、その後は帝展や日展を中心に活躍。歌川派浮世絵の流れを汲む美人画や同時代を生きる女性たちを描いたモダンな風俗画で、美術界の評価のみならず広く大衆の人気を博しました。


舞い落ちる雪の中、傘を差して歩く女性を描いた傘美人の主題は、浮世絵の好画題として数多く制作され、浮世絵から多くを学んだ深水もこの主題を好んで描きました。
本作は、深水による傘美人の代表作の一つとして知られる《春の雪》(1946年作)と同じ下図を使用したと考えられる類似作品であり、1957(昭和32)年に開催された「伊東深水名品展」(日本橋・白木屋)の出品作です。
また、本作の箱書きには「青衿会美人展出品作」と記されています(参考図版参照)。これは『自由美術』第1巻第1号(1946年)や『鏑木清方と昭和の美人画―青衿会及び「婦人画報」関係作品所収―』(鎌倉市鏑木清方記念美術館、2021年)などの青衿会展関係の資料より、深水が中心となって結成した青衿会の第6回展(1946年)を指すものと考えられます。それゆえに本作も1946(昭和21)年頃に制作された作品でしょうか。


江戸後期の風俗に取材した作と思われる本作では、雪化粧した梅の花を楽しむような二人の女性の姿が、端正で流麗な線描によって艶やかに表現されて
います。
美しく結われた女性たちの髪、華やかな着物の文様と生地の質感、機能美に富んだ傘を緻密な筆致で描き出す一方、背景では梅の花の形態を様式化し、雪との組み合わせを情緒的に表しています。人物だけでなく、このように背景の自然描写に力を注ぐことは、昭和期の深水の美人画において重要なテー
マでした。本作では深水が得意とした雪を胡粉の濃淡と淡墨によって捉え、枝にふんわりと積もる様子を巧みに表して画面を充実させています。伝統的な主題を季節の風情とともに描き出した作であり、優美でありながら凛とした女性たちの佇まいには江戸の粋と深水の確かな描写力を感じさせます。


← 参考図版:本作に付属する箱書きです。

ぜひ下見会場で実際の作品をご覧ください
オークション・下見会スケジュール、オンラインカタログはこちら

 
                       このほかにも日本画は東山魁夷、加山又造、平山郁夫、杉山寧、徳岡神泉
                                         など、洋画は熊谷守一、国吉康雄など、外国絵画はシャガール、マルケ、
                                         ユトリロなどの巨匠たちの作品が出品されます。

なお、ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなど
の方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。

(佐藤)

芹沢銈介《型絵染 釈迦十大弟子尊像》

こんにちは。
9月に入りましたが、まだまだ真夏のように暑い日が続きますね。
引き続き熱中症にはご注意ください。

さて、16日(土)は、近代美術/コンテンポラリーアート/近代陶芸/近代美術PartⅡ/近代陶芸PartⅡ オークションを開催いたします。
今回は近代美術PartⅡの出品作品の中から、おすすめの1点をご紹介いたします。


【 オークション終了につき、画像は削除いたしました 】

舎利弗(しゃりほつ)  魔訶目犍連(まかもくけんれん) 魔訶迦葉(まかかしょう)


阿那律(あなりつ)    須菩提(しゅぼだい)    富楼那(ふるな)


魔訶迦旃延(まかかせんねん) 優波離(うばり)    羅睺羅(らごら)

阿難(あなん)
(各作品の画題は共箱より)


  165 芹沢銈介
 《型絵染 釈迦十大弟子尊像》
 各102.0×41.5cm(軸装サイズ各173.4×61.5cm)
 各紙・型絵染 
 各軸装
 各共箱
 落札予想価格 ★¥800,000~¥1,200,000

 

芹沢銈介(1895-1984)は、民藝運動を代表する作家の一人、そして型絵染の重要無形文化財保持者(人間国宝)として国内外で高く評価された染色家です。
1895年、静岡県に生まれた芹沢は、少年時代に洋画家を志しますが、実家の全焼によって断念し、1913年に東京高等工業学校図案科に入学します。卒業後は図案の仕事に従事しますが、1927年に民藝運動を提唱した美術評論家・柳宗悦と、翌年には沖縄県の伝統的な染色技法である紅型と出会い、染色家の道に進みました。1939年、民藝の同人たちと初めて沖縄に渡り、紅型の技法を習得。1956年に型絵染*の重要無形文化財保持者に認定されました。1976年、パリの国立グラン・パレ美術館にて大規模な個展を開催し、その後フランス芸術文化功労勲章を受章。動植物や風景、人物、文字、道具など、身の回りにある様々な事物を意匠化し、型絵染や肉筆画によって味わい深く表現しました。

同じく民藝の作家である棟方志功も木版画を制作したことで知られる「釈迦十大弟子」は、仏教の開祖である釈迦の10人の高弟を題材とした尊像です。1982年、芹沢は愛宕一心会(天心社刊行会)から依頼を受け、インド・クシナガラの釈迦本堂に納める目的でこの作品を型絵染によって制作しました。その際、芹沢はインドに贈る縦180cmの作品とそれより小さな縦約102cmの作品という2種類のサイズを制作しており、後者は頒布用などを含め合計75部が作成されました。作品にエディションは明記されていませんが、後者には紙に「天心社刊行会」の透かしが入れられていることから、本作もその一つであるとわかります。
また、制作の工程において、87歳の芹沢は、特に体力と集中力を要する型彫りの作業に満身創痍で挑んだと言われています。晩年を迎えた作家が祈りを込めて取り組んだこの《型絵染 釈迦十大弟子尊像》は、芹沢の最後の型絵染の大作となりました。
本作では、弟子一人一人の人間性や宗教的な思想が細やかに表現されており、白と黒のコントラスト、素朴でありながら老齢を感じさせない充実した曲線が豊かな味わいと品格を感じさせます。

*型絵染…渋紙に模様を彫った型紙を布の上に置き、防染糊を使用しながら染液で模様を染める技法


ぜひ下見会場で実際の作品をご覧ください。
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皆様のご参加を心よりお待ちしております。

(佐藤)

佐伯祐三の第1次パリ時代 その2―《街角》

こんにちは。
梅雨が明けないうちから毎日すごい暑さですね。
今年の夏は猛暑が予想されているようですので、熱中症にはくれぐれもお気をつけください。
また、先月から各地で豪雨が続いていますが、被災された方々には心よりお見舞いを申し上げます。

さて、今月の22日(土)は近代美術/近代美術PartⅡ/コンテンポラリーアートオークションを開催いたします。今回も出品作品の中からおすすめの1点をご紹介いたします。



134 
佐伯祐三《街角》
45.7×38.2cm(額装64.6×56.7cm)
キャンバス・油彩
1925(大正14)年作
右上にサイン・年代

・『佐伯祐三全画集』
(1979年/朝日新聞社)№85
・「佐伯祐三展」1973年
(梅田近代美術館/朝日新聞社)出品
・「佐伯祐三―ある画家の生涯と芸術展」1973年(兵庫県立美術館)出品
・「佐伯祐三展 芸術家への道」2005年
(練馬区立美術館・和歌山県立近代美術館)出品

                                                                                      落札予想価格 ¥12,000,000~¥18,000,000

佐伯祐三(1898-1928)は、自らの生命をキャンバスに刻み込むかのような情熱と疾走感溢れる筆致でパリの街の風景を描き、わずか30歳でこの世を去った夭折の画家です。
10年に満たないその短い画業のうち、初めてパリの石畳を踏んだ1924(大正13)年1月から一時帰国の途に就く1926(昭和元)年1月までのおよそ2年間は、第1次パリ時代などと呼ばれています。この時期、佐伯はフォーヴィスムの巨匠ヴラマンクに激しく叱責されたことにより天賦の才能を覚醒させ、パリの風景を描いたユトリロの作品に魅了されたことを機に自身もその街角に立ち、裏街の通りや建物を描くことに挑んでいきました。

本作はこの第1次パリ時代にあたる、1925(大正14)年に制作された作品です。パリの街に数多く見られる集合住宅らしき建物を題材とし、その古びて薄汚れた壁を、躍動的なタッチと触覚的なマチエールによって表情豊かに描き出しています。そして、佐伯のパリ風景の特徴の一つ、建物に正対しクローズアップして捉える構図により、建物が醸し出す独特の佇まいや味わいが際立たされ、その歴史やここで暮らした人々の物語を鑑賞者に想像させるようです。また、佐伯が興味を抱いたというパリの古い建物の煙突、壁に並列する窓が豊かなリズムを感じさせ、通りに立つ点景人物が街角の情景に抒情を添えています。 
さらに、本作では、画面右上に速筆で書かれたサインと年記が画面に緊張感をもたらしてもいます。その文字と建物に引かれた奔放な黒の輪郭線は、この時期より描かれ始め、第2次パリ時代の作品に本格的に表されて佐伯芸術の代名詞となった、建物の壁や広告に狂わしく乱舞する尖鋭的な線の登場を予感させるものと言えるでしょう。


「Uzo Saeki 1925 a Paris」
画面右上に記されたサインと制作年のアップで す。大きく荒々しいサインは、佐伯の文字や線に対する意識の強さをうかがわせます。


ぜひ下見会場で実際の作品をご覧ください。
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 なお、ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなどの方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。

(佐藤)

北大路魯山人・香取秀真の蒐集した古美術/八木一夫の黒陶

 先日、丸ビルホールにて開催されました「Rubik’s Cube Charity Auction/MANGA/近代美術PartⅡ/近代美術/Contemporary Art/Luxury Evening Auction 」にご参加いただいた皆様ありがとうございました。盛況のうちにオークションを終了することができました。

 さて、前回オークションの目玉のひとつでありました「金茶道具一式」ですが、こちらは藤堂高虎を輩出した伊賀上野(現三重県伊賀市)藩主・藤堂家に伝わったものでした。そして今週末に行われます「近代陶芸/古美術/近代陶芸PartⅡオークション」の古美術オークションにも、名立たる大家が所有していた作品が出品されますので、そちらをご紹介いたします。

 

 

LOT.131「芦屋真形釜」
H24.0×D23.9cm
香取秀真箱
重要美術品認定証書付
『新撰 茶之湯釜圖録』掲載 四六(寶雲舎)
『茶之湯釜全集1 筑前芦屋の上』掲載 No.53(駸々堂出版)【本付】
落札予想価格:500万円~700万円

 茶の湯釜は、鎌倉時代末期より鋳造が始まり、室町時代・応仁の頃から多数製作され、肥前・伊勢・越前・石見など各地に分派したとされています。元々は、筑前国(ちくぜんのくに)(現・福岡県)遠賀(おんが)川沿岸の山鹿庄(やまがのしょう)芦屋津(あしやづ)で鋳造されはじめ、「芦屋釜」と称されました。芦屋釜は、真形のかたちをしており、鐶付は鬼面、肌は絹肌か鯰肌で優美な茶の湯釜としての特徴があります。本作もその一つで、室町時代(1336-1573)中期に製作されたと推測されており、なおかつ重要美術品の認定を受けた貴重な品です。また旧蔵者も、明治期を代表する鋳金工芸作家で、東京美術学校(現東京藝術大学)の教授や、文化財審議会専門委員などを歴任し、工芸作家として初の文化勲章を受章したことでも知られている香取秀真(ほつま)(本名秀治郎)や、京都国立博物館に茶室「堪庵」を寄贈した、近代京都を代表する茶人・上田堪一郎(堪庵)であったことからも、本作の茶の湯釜としての価値の高さが窺えます。

LOT.130「青井戸茶碗」
H7.1×D15.6cm
・『北大路家蒐蔵古陶展覧會』掲載 五十四 大阪日本橋松坂屋 / 昭和10(1935)年【本付】
落札予想価格:300万円~400万円

 こちらは、北大路魯山人【明治十五-昭和三十四(1882-1959)】が愛蔵した「青井戸(あおいど)茶碗」です。「青井戸」とは、高麗茶碗のうち、井戸茶碗をさらに分類した呼び名で、小振りで背も低く、口造りが朝顔の花のようにやや開いている特徴を持ちます。また、胴部から高台に掛けて肉が厚く削り出され、轆轤目が良く目立ち、他の井戸茶碗よりも侘び味が深いと茶人らに喜ばれ、茶の湯の碗に見立てられてきました。魯山人も、朝鮮で作られた焼き物を好んでおり、無造作な造りが、日本人の美意識と似通っていて“親しみを感じる”註)と述べています。【註)平野雅章編『魯山人著作集 第一巻陶芸論集』1980年】

 魯山人の美の琴線に触れた、侘びの美の宿る逸品と言えるでしょう。

 

また、近代陶芸オークションには八木一夫の黒陶作品が出品されます。

LOT.204八木一夫「多面的に」
H29.2×W24.2cm
下部に掻き銘
共箱
ホツ有
1978(昭和53)年作
・「没後二十五年 八木一夫展」出品 京都国立近代美術館他 / 2004(平成16)年
・『八木一夫作品集』掲載 No.158(講談社)
・『やきものの美 現代日本陶芸全集 第十四巻 八木一夫』掲載 P.75(集英社)
落札予想価格:400万円~600万円

 本作は、八木一夫(1918-1979)の代表的な作風と知られる黒陶です。陶器は、一度造形したものに火を通し、最後は自然の力に出来上がりを任せることが醍醐味でもありますが、八木はその偶然性をなるべく排除することを目指していました。辿り着いた結果が、黒陶であったといいます。低温で焼いた素地に煤を付着させ、磨くと金属のように陶器が黒光りするというもの。1957年から制作され始め、晩年には、黒陶に鉛板を貼るなどしてより無機質な要素を駆使し表現しました。本作も、鉛板が貼られた作品のひとつで、急逝する前年の還暦を迎えた年に制作されました。

 その後、八木と同じく現・京都市立芸術大学出身の加守田章二(LOT.203「壷」落札予想価格:200万円~300万円)や、栗木達介(LOT.202「銀彩花器」落札予想価格:60万円~90万円)の作品も出品されますので、ぜひ下見会場に足をお運びください。

 

 

オークションは、10日土曜日15時からです。当日は下見会を行っておりませんので、ご留意ください。スケジュール詳細は下記をご参考ください。

オークション・下見会のスケジュールとご予約について、オンラインカタログはこちら

なお、ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなどの方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。

 

 

藤堂伯爵家 400年の名宝―《金茶道具一式》

こんにちは。
今週27日(土)は東京駅前の丸ビルホールにてオークションを開催いたします。
開催ジャンルは、Rubik’s Cube Charity Auction/MANGA/近代美術PartⅡ/近代美術/Contemporary Art/Luxury Evening Auction となります。
下見会はいつも通り、銀座の当社ギャラリーで開催いたします。

さて、今回はLuxury Evening Auctionの出品作品の中から注目の1点をご紹介いたします。
戦国武将・藤堂高虎を祖先とする藤堂伯爵家に代々伝わった、黄金色に輝く茶道具です。















1007  《金茶道具一式》

茶碗:H6.8×D12.0cm
天目台:H7.6×D15.8cm
茶入:H6.2×D5.9cm
釜:H22.2×D20.8cm
風炉:H23.3×W39.4cm
釜鐶:各D7.7cm
杓立:H22.4×D12.0cm
火箸:28.8cm
建水:H10.0×D17.2cm
蓋置:H5.1×D7.1
藤堂家旧蔵
「日本名寶展覧会」1929年(東京府美術館/読売新聞社)出品
落札予想価格 ¥150,000,000~¥300,000,000


1929(昭和4)年3月、東京・上野の東京府美術館において、閑院宮載仁親王を総裁とし、読売新聞社が主催する美術展覧会「日本名寶展覽會」が開催されました。この展覧会は、国宝や重要文化財・皇室の御物とともに、華族などの名家に伝来し、門外不出とされてきた美術品の数々が一堂に会し、大きな話題となりました。その優れた名宝の中でも、最も来場者の注目を集めたという出品作品の一つが、眩いばかりの黄金色に輝く金の茶道具一式でした。

 当時、この茶道具は伯爵藤堂高紹(とうどうたかつぐ)の所蔵品であり、藤堂家の当主でさえもほとんど目にすることのできない秘蔵の家宝だったそうです。藤堂家は、室町時代に藤堂姓を名乗った三河守藤原景盛を始祖とし、江戸時代には藤堂高虎(1556-1630)が伊勢国津藩(現在の三重県津市)初代藩主となり、明治時代に伯爵に叙任された家柄です。
本作は藤堂家に代々伝わり、この「日本名寶展覽會」で広く世に知られ、脚光を浴びることとなった重宝ですが、第二次世界大戦中の金属類回収令を免れることはできず、供出されて日本銀行の買い取りとなりました。しかし幸運にも、茶道具は武器製造の資源として使用されず、終戦後も日本銀行に残されていたため、1960年に売り戻され、再び藤堂家の所蔵となりました。

この《金茶道具一式》は、茶碗、天目台、茶入、釜と付属する釜鐶、風炉、蓋置、建水、杓立、火箸からなる茶道具です。同じ材質や色味で揃えられた茶道具一式を皆具(かいぐ)と呼ぶことから、本作も当初は皆具として作られたものと考えられます。皆具は、台子(だいす)という点茶用の棚に飾り置かれ、書院の茶で使用される道具ですが、現在本作に台子は付属していません。このような「台子皆具」の様式は室町時代に武家社会に普及し、やがて武家の威信を示し、茶の湯の奥義を伝える格式の高い道具となっていきました。その中でも、本作のような金製の茶道具は最上級とされ、豊臣秀吉が黄金の茶室のために作らせ、徳川家康も皆具を所持するなど、天下人やごく一部の有力大名の権威を象徴するものでした。
なお、戦時中に日本銀行が本作を買い取った際に行った金の品位測定によると、本作はおおよそ金80~88%、銀12~20%などの合金で制作されています。

さらに、本作は台子皆具の中で最も格の高い道具として珍重された唐物写しで構成されています。全体として、黄金色の輝きが湛える豪奢さや優雅さとともに、唐物写し独特の気品と荘重な趣が漂い、また、一つ一つの造形のみならず、施された文様も非常に精緻で優美です。そして、作品の随所に作者の高度な技術をうかがわせ、このような大量の金を使用し、優れた腕を持つ者に制作を依頼することのできる注文主の財力と政治力を想像させます。大名家に伝来した古格ある金の茶道具は、徳川美術館蔵《純金台子皆具》が現存する皆具として重要文化財に指定されていますが、本作はもう一つのきわめて重要な作品と言えるでしょう。


「日本名寶展覽會」(1929年)のポストカード。
この展覧会では茶道具を台子にのせて展示したようです。





また、本作には藤堂高虎にまつわる興味深い逸話が残されています。その一つをご紹介しますと、秀吉が明(中国)征服を目論み、朝鮮半島に進軍した文禄・慶長の役にて、高虎は水軍を率いて活躍しました。秀吉はその敢闘を称え、高虎の出家を引き止めて伊予国板島(現在の愛媛県宇和島市)七万石の大名に取り立て、その後も一万石を加増するなど、ひときわ厚遇したといいます。さらに、褒美の一つとして、自らが黄金の茶室で愛用していた金の茶道具を授けたとも言われています。朝鮮出兵から400年以上が経過した現在、真相は誰にもわかりませんが、藤堂家に伝わった本作のみが歴史の真実を知るのでしょう。


安土桃山時代、太閤秀吉が愛用し、高虎に授けたと伝えられる藤堂家の秘宝。茶道具としての美しさだけでなく、歴史的にも価値ある逸品です。
下見会でぜひ実際の作品をご覧ください。
オークション・下見会スケジュール、オンラインカタログはこちら
同日開催の近代美術オークションには、橋本関雪、鏑木清方、加山又造、髙山辰雄、安井曽太郎などの名品が出品されます。こちらもあわせてご覧ください。

なお、ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなどの方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。

(佐藤)

鴨居玲の老人像

こんにちは。
先週、多くの地域で早くも桜が開花しましたが、東京は今週末に見頃を迎えるそうです。
飲食を伴うお花見が解禁となった公園もたくさんあるようで、にぎやかな春の光景が少しずつ戻ってきましたね。

さて、今週の25日(土)は、近代美術/近代美術PartⅡ/コンテンポラリーアートオークションを開催いたします。今回は近代美術オークションに鴨居玲の作品がたくさん出品されますので、ご紹介いたします。

鴨居玲(1928-1985)は、絵画のモデルとしては特異な人々、例えば、酒に酔って踊る老爺や皺だらけの老婆、戦争で手足を失った傷痍軍人などをモティーフとし、描くことを通して人間とは何か、生きることとは何かを深く問い続けた画家です。「人間の心における暗い面、弱い面」、すなわち孤独や不安、さらには老い、醜さ、死などを真摯に見つめ、それらを研ぎ澄まされた感性と卓抜した描写力で捉えました。

【オークション終了につき、画像は削除しました】

207  《おじいさん》                 208 《おばあさん》
69.6×50.0cm(91.0×72.0cm)             76.0×56.0cm(100.0×80.0cm)   
紙・鉛筆 油彩 額装                 紙・鉛筆、パステル、水彩 額装
左下にサイン                     右下にサイン 
東美鑑定評価機構鑑定委員会鑑定証書付         東美鑑定評価機構鑑定委員会鑑定証書付 
落札予想価格 ¥3,500,000~¥4,500,000        落札予想価格 ¥3,300,000~¥4,300,000


旅先や移住した土地で出会った人々をモティーフとした老人像は、鴨居玲の代名詞的な画題です。1968年頃から本格的に手がけられ、特に1972年にスペインのバルデペーニャスに移住した後は、口をだらしなく歪めた酔っ払いの老爺などの単身像が次々に生み出されました。
画面の書き込みより、Lot.207《おじいさん》はスペイン滞在時、Lot.208《おばあさん》はその隣のポルトガルのナザレを訪れた際に描かれた老人像です。鴨居は学生時代の師・宮本三郎の教えを守り、画業を通してこうしたデッサンを重視しました。これらの2点においては得意としたクロッキー(速写技法)によって人物の特徴、鴨居が見つめた「老い」が表現されています。


【オークション終了につき、画像は削除しました】

        209 《ボリビア》にて
   147.8×71.4cm(156.4×80.0cm)
   紙・パステル、コンテ 額装
  1967年作
   右下にサイン・年代
        東美鑑定評価機構鑑定委員会鑑定証書付
  『鴨居玲画集』(2000年/日動出版)素描№51
  「没後15年 一期は夢よ 鴨居玲展」2000年
    (石川県立美術館/北國新聞社)出品
    「没後20年 鴨居玲展―私の話を聞いてくれ」2005年
   (石川県立美術館)出品

  落札予想価格 ¥5,000,000~¥10,000,000



1965年にボリビアを訪れた際に出会った人物を、帰国後の1967年に描いた作品です。鴨居が訪れたボリビアは、革命後もなお不安定な情勢が続き、市街地のあちらこちらで銃声が響き、火災の起こる危険な状況であったといいます。異なる方向を見つめる二人の人物は、そこにある生命の危機や未来への不安を漂わせています。


【オークション終了につき、画像は削除しました】                    

210 
《おばあさん》                   211 《酔って候》
72.8×53.1cm(90.4×70.5cm)               53.1×45.6cm(78.0×69.5cm)
キャンバス・油彩 額装                  キャンバス・油彩 額装
1970年作                                                                          右下にサイン
左下にサイン・年代                                                         裏に署名・タイトル
裏に署名・タイトル・年代                                             
東美鑑定評価機構鑑定委員会鑑定証書付
東美鑑定評価機構鑑定委員会鑑定証書付           落札予想価格 ¥7,000,000~¥10,000,000
「没後20年 鴨居玲展―私の話を聞いてくれ」
2005年(石川県立美術館)出品
落札予想価格 ¥12,000,000~¥22,000,000


こちらの2点は油彩による老人像です。こうした油彩画をアトリエで描く際、鴨居はしばしばキャンバスの横に鏡を置き、自らモデルを務めながら対象となる人物の姿や表情を表しました。それゆえに老人たちは鴨居自身の自画像とも言われています。
1970年作のLot.210《おばあさん》は、この年に訪れたパリやスペインで取材した老婆像でしょう。街で出会った逞しい老婆に、鴨居は自身の母の姿を重ね見ていたのかもしれません。明暗のコントラストを強調したドラマティックな表現が、翌年から始まるスペイン時代の作品を想起させます。また、Lot.211《酔って候》は、スペインで描き始められた酔っ払いの連作の一点です。顔を赤くした酔っ払いの老爺が腰に手を当て、口を大きく開けて歌うような様子が鋭い筆致で描き出されています。下半身は描かれていませんが、踊っていると思われるその姿はユーモラスであり、鴨居が彼らに抱いていたであろう愛着を感じさせます。

当社のあります銀座周辺には、日比谷公園や浜離宮恩賜公園など、お花見スポットがたくさんあります。お出かけの際は、ぜひ下見会にお立ち寄りいただき、作品を実際にご覧ください。
オークション・下見会スケジュール、オンラインカタログはこちら

なお、ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなどの方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。

(佐藤)

【3月陶芸オークション】下見会始まります!

こんにちは。3月に入り、だいぶ春めいてきましたね。桜の開花宣言も出され、今年はお花見など予定されている方も多いのではないでしょうか?

 

さて、今週末11日土曜日に、「近代陶芸/近代陶芸PartⅡオークション」が開催されます。それに伴いまして、本日から始まります下見会場の様子をご案内いたします。

 

今回はとにかく、大型作品が数多く出品されます。

地下・下見会場風景

高内秀剛、岸映子、小峰尚…大きさもさることながら、作者の表現したい思いが強く溢れ迫力があり、会場全体にパワーがみなぎるようです。

茶道具類の下見会風景

こちらは、茶道具類です。銅鑼(どら)は、重要無形文化財保持者(人間国宝)の初代魚住為楽(いらく)の作です。銅鑼を鳴らすと、体全体に響き渡るような、重厚感ある音が体感できます。黒樂茶碗は、樂家六代・左入【貞亨2-元文41685-1739)】のもの。釜は、角谷與斎の「鵬雲斎好 鶴雲釜」です。そのほかにも、京焼の名工と知られる仁清の茶碗など、新旧取り合わせた茶道具をお楽しみください。

 

そして、1971年に制作された加守田章二の「彩陶壷」も出品されます。

LOT.133 加守田章二
彩陶壷
H17.9×D22.3㎝
底部に描き銘「章」、「一九七一」記
共箱
1971(昭和46)年作
『加守田章二全仕事』掲載P.284(講談社)
落札予想価格:400万円~800万円

赤く、うろこ状の模様が張り巡らされた1971年の作品は、評価の高い年の作品の一つです。底部の銘まで緻密にデザインされたリズミカルな作品を、ぜひご覧ください。

 

オークションは、11日土曜日15からです。当日は下見会を行っておりませんので、ご留意ください。また、スケジュール詳細は下記をご参考ください。

オークション・下見会のスケジュールとご予約について、オンラインカタログはこちら

なお、ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなどの方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。

引き続き、感染症予防対策をしっかりと行い、皆様のご参加をお待ちしております。

                                             執筆者:江口

 

 

佐伯祐三の第1次パリ時代―《オニー風景》

こんにちは。
2023年を迎え、1回目のブログ更新となります。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

本日はまずおすすめの展覧会をご案内させていただきます。
1/21より東京ステーションギャラリーにて、「佐伯祐三 自画像としての風景」展が開幕しました。日本最大級の質と量を誇る大阪中之島美術館の佐伯祐三コレクションを中心に、画家の代表作が一堂に集結しています。こちらの展覧会には、過去に当社のオークションに出品された作品も出品されています。4/15からは大阪中之島美術館にも巡回しますので、佐伯ファンの方はぜひお近くの会場に足をお運びください。




「佐伯祐三 自画像としての風景」展公式ホームページ
 https://saeki2023.jp/











さて、1/28(土)に開催いたします、当社の近代美術オークションにも佐伯祐三の作品が出品されますので、ご紹介いたします。



99 佐伯祐三

《オニ―風景》
49.8×60.5cm(額装77.0×88.0cm)
キャンバス・油彩 
1924(大正13)年頃作
東美鑑定評価機構鑑定委員会鑑定証書付
落札予想価格 ¥20,000,000~¥30,000,000


掲載文献・出品歴
『佐伯祐三全画集』(1968年/講談社)№105
『佐伯祐三全画集』(1979年/朝日新聞社)№38
「佐伯祐三展」1968年(東京セントラル美術館/朝日新聞社)出品
「没後50年記念 佐伯祐三展」1978年(東京国立近代美術館・京都国立近代美術館/朝日新聞社)
出品

「佐伯祐三・ヴラマンク展」1980年(渋谷・東急百貨店/東京新聞)出品
「佐伯祐三展 芸術家への道」2005年(練馬区立美術館・和歌山県立近代美術館)出品


佐伯祐三は、自らの生命をキャンバスに刻み込むかのような情熱と疾走感溢れる筆致でパリの街の風景を描き、30歳という若さで早世した画家です。1923年、東京美術学校(現・東京藝術大学)を卒業した佐伯は、関東大震災という大きな困難を乗り越え、同年11月に神戸港からフランスに向けて出発しました。翌年1月にパリに到着してから日本に一時帰国するまでの2年間は、佐伯の画業における「第1次パリ時代」などと呼ばれています。

1924年頃作の本作はこの時期に制作された作品の一つです。取材地のオニーは、パリの北西に位置するイル・ド・フランス、ヴァル=ドワーズ県の村であり、佐伯は滞仏中に2年続けてこの地を訪れています。特に1924年の秋には、佐伯を「このアカデミック!」と厳しく叱責し、覚醒させたというエピソードで知られるフォーヴィスムの画家モーリス・ド・ヴラマンクの写生地を巡る旅行の途中、里見勝蔵とともに訪問してその長閑な風景に取り組みました。

また、題材は、類似作品の画題よりオニーの牧場と考えられます。ペインティングナイフを使用し、荒々しい筆致で風景全体を捉えており、暗調の色彩と白が妖しく混じり合うドラマティックな空の表現が、ヴラマンクの影響を感じさせます。その一方、建物や牧草地、樹木の形を大胆に簡素化し、平面的に表しており、後年のパリ風景に通じる、研ぎ澄まされた色彩感覚や形態把握の試みをうかがわせます。生来のフォーヴ的な感性を生かし、無我夢中で自らの表現を模索する佐伯の姿を想像させるようです。

東京ステーションギャラリーから当社へは地下鉄で1駅です。「佐伯祐三 自画像としての風景」展をご鑑賞される際は、ぜひ当社の下見会やオークションにもお立ち寄りください。
オークション・下見会スケジュール、オンラインカタログはこちら

なお、ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなどの方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。
新型コロナウイルスの感染予防対策をしっかりと行い、皆様のご参加をお待ちしております。

(佐藤)