岡鹿之助が描いた三色菫

こんにちは。
海の日も過ぎ、梅雨明けの待ち遠しい季節となってまいりました。

さて、今週20日(土)は、近代美術/近代美術PartⅡオークションを開催いたします。
今回も出品作品の中からおすすめの作品をご紹介いたします。


【オークション終了につき、画像は削除させていただきました】

52 岡鹿之助

《三色スミレ》
33.5×24.4cm
キャンバス・油彩 額装
昭和47年(1972)作
右下にサイン
裏に署名・年代 共箱
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書付
『岡鹿之助画集』(1978年/美術出版社)№304

落札予想価格 ¥8,000,000~¥12,000,000



岡鹿之助(1898-1978)は、独特の点描技法により、ヨーロッパの古城や群落、発電所、
三色菫パンジーなどのモティーフを詩情豊かに描き上げた画家です。
岡は、劇作家や小説家として知られる岡鬼太郎の長男として東京に生まれました。1919年東京美術学校(現在の東京藝術大学)西洋画科に入学し、岡田三郎助教室に学びます。卒業後はフランスに渡り、レオナール・フジタの指導を受けながら、サロン・ドートンヌなどの公募展に精力的に出品。第二次世界大戦が勃発した1939年に帰国を余儀なくされるまで、油彩技法の研究に励みました。帰国後は春陽会を舞台に活躍する一方、度々パリを訪れ、堅牢なマチエールと静謐な佇まいの作品を描きました。1972年にはその功績が高く評価され、文化勲章を受章します。

本作はこの1972年に制作された《三色スミレ》です。「ルノワールは薔薇に、ルドンはアネモネに自分を託したように、絵描きは自分を託して表現するのにもっとも具合のいいものをつかまえることに努力します。私の場合、三色すみれなどもそれに似ているのですよ。」(『美術手帖』142号 美術出版社 1958年)と語っているように、岡にとってこの花は自身の代名詞となる重要なモティーフでした。
また、岡の作品において、三色菫は皆正面を向いて描かれますが、そこには小さな子どもたちがこちらを向いている姿や、まるで笑ったり怒ったりしているかのような豊かな表情がイメージとして重ねられています。本作でも、花たちが顔を寄せ合い、こちらに向かって微笑んでいるかのようであり、その曲線的で緊密な構成と緻密な筆致が調和し、可憐さや素朴なあたたかさを感じさせます。

近代美術PartⅡには、三色菫をモティーフとしたインク作品も出品されます。
表情の豊かさという点では、こちらの方が率直に表現されているかもしれません。
まるで花たちが、ニコニコ笑いながらおしゃべりしてるようにも見えませんか?


【オークション終了につき、画像は削除させていただきました】

643  岡鹿之助
《Pensees variees》
18.4×13.0cm 
紙・インク 額装
左上にタイトル、右下にサイン

落札予想価格 ¥100,000~¥200,000  

今回の下見会も近代美術/近代美術PartⅡ同時開催となりますので、ぜひ可愛らしい花たちを会場でご覧ください。

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皆様のお越しを心よりお待ちしています。

(佐藤)

モーリス・ユトリロの「白の時代」―《モンマルトルへの道》

こんにちは。
お祝いムードのGWが終わり、ようやく日常が戻ってまいりました。
10連休だった方も、そうでない方も、体調を崩しやすい時期ですのでお気をつけください。

さて、今週18日(土)は、令和元年1回目のオークションを開催いたします。
下見会、オークションともに、近代美術/近代美術PartⅡ/MANGA 同時開催となります。
お間違えのないようよろしくお願いいたします。

では、今回も近代美術の出品作品の中から、おすすめの1点をご紹介したいと思います。
レオナール・フジタやモディリアーニ、キスリングらと同様、狂乱の時代のパリで「エコール・ド・パリ」として人気を博した風景画家の作品です。







 

 

 


100   モーリス・ユトリロ(1883-1955)
《モンマルトルへの道》
65.0×91.0cm
キャンバス・油彩 額装
1910年頃作
右下にサイン
Jean Fabris/Cedric Pallier 鑑定証書付
P.Petrides, L’oeuvre Complet de Maurice Utrillo, tomeⅠ, Paris, 1959, no.154
落札予想価格 ★¥8,000,000~¥15,000,000

モーリス・ユトリロは、モデルで画家のシュザンヌ・ヴァラドンの息子として、パリに生まれました。実父を知らず、母の愛情を得られない寂しさから、少年時代にアルコール中毒に陥り、治療の一環として絵を描き始めます。
その才能はすぐに開花し、20歳代は、職業を転々としながら街の風景をメランコリックに描き、やがて建物の漆喰の壁の質感に自身の感情を投影させた、静謐で哀愁漂う作風を確立しました。
30歳を過ぎた頃から、鮮やかな色彩と一点透視図法を多用した絵画へと作風を一変させ、1920年代にはエコール・ド・パリの寵児として注目を集めます。孤独とアルコールに苛まれながら、生涯を通して詩情豊かなパリの風景を描いた画家です。

1910年(当時27歳)頃作の本作は、ユトリロが暮らしたパリ、モンマルトル付近の通りを描いたものです。画面の奥に向かって、点景人物が歩いていく様子がうかがえますが、通りの先は行き止まりのように見えます。人物の前には背の高い塀が立ちはだかり、通りの両側にも建物が並んでいます。
塀と建物の壁に用いられたのは、ユトリロ独特の白の絵具。「白の時代」と呼ばれるこの時期、ユトリロは、ときに油絵具に石灰や砂、卵の殻などを混ぜ、年代を経た漆喰の質感を表現しました。また、それと同時に、自らの心に渦巻く苦悩や葛藤、孤独をそこに塗り込めていきました。
本作でも、白の絵具と感情的な筆致、そして行き場を失った点景人物の姿に、ユトリロが感じていたであろう不自由さや空虚さが滲むようです。

冒頭にも書きましたが、今回は、下見会も近代美術/近代美術PartⅡ/MANGA 同時開催となります。
下見会では、ユトリロのほか、ジョルジュ・ルオー、荻須高徳、小出楢重、杉山寧、横山操など、
また、近代美術PartⅡのレンブラントやミレーの版画、歌川広重の「名所江戸百景」など、
MANGAの手塚治虫「魔神ガロン」や「火の鳥」原稿、藤子不二雄、赤塚不二夫、鳥山明などの色紙といった、バラエティに富んだラインナップが一度にご覧いただけます。
お好きな作品をきっと一つは見つけていただけると思いますので、ぜひ会場で実物をご覧ください。

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皆様のお越しを心よりお待ちしています。

(佐藤)

特集 棟方志功 墨が語り、祈る


こんにちは。
いよいよ今週、東京、名古屋、大阪、福岡など、各地で桜が開花するようです。来週にはお花見ができそうですね!

さて、今週の23日(土)は、近代美術/近代美術PartⅡオークションを開催いたします。このオークションには、棟方志功(1903-1975)の板画、倭画(やまとえ:肉筆画)、書、リトグラフが56ロット出品されます。今回は「文学」、「宗教」、「女性」の3つのテーマに沿って、出品作品の中からおすすめの作品をご紹介いたします。

● 文学
青年時代から詩歌を詠み、小説や演劇を愛した棟方は、版画家となった後も物語や詩を題材とし、絵とともに画面に文字を表わした板画絵巻を次々に生み出していきました。さらに、多くの著名な文学者たちと交流し、挿絵や表紙絵、装幀の仕事を積極的に手がけたことでも知られています。


【オークション終了につき、画像は削除させていただきました】

Lot.29 《流離抄板画巻 かにかくにの柵》
紙面:41.2×32.5cm
紙・板画、手彩色 額装
左下に印、中央に吉井勇印
棟方巴里爾シール
棟方志功鑑定委員会鑑定登録証付
落札予想価格 ¥150,000~¥300,000


【オークション終了につき、画像は削除させていただきました】

Lot.30 《流離抄板画巻 叡山の柵》
紙面:41.0×34.0cm
紙・板画、手彩色 額装
左下にサイン・印
棟方巴里爾シール
棟方志功鑑定委員会鑑定登録証付
落札予想価格 ¥150,000~¥300,000

《流離抄板画巻》は、歌人吉井勇が富山県に疎開していた際に詠んだ歌集『流離抄』を中心に、彼の歌集から31首を選んで絵をつけた作品です。遠く離れた京都を恋しく思う歌ですが、味わい深い文字と装飾的な絵、鮮やかな裏彩色が調和して、風雅な雰囲気を感じさせます。


● 神仏
 1936年の第11回国画会展に出品した《瓔珞譜(ようらくふ)・大和し美し版画巻》が柳宗悦や濱田庄司、河井寛次郎ら民藝運動の作家たちの目にとまり、棟方と彼らとの交流が始まりました。以後、彼らから学んだ芸術や哲学、宗教についての様々な知識が創作に反映されていきます。特に、以前から興味を抱いていた神や仏の世界についての話は、その後の棟方芸術に大きな影響を与えました。棟方が描いた神仏は、特定の宗教に対する信仰心の表出ではなく、宗教の境界を越えてそれらに対する自由なイマジネーションを表現した図像であり、それはまた、森羅万象に聖なるものを見出し、祈りを込めて描いた棟方ならではの神仏像とも言えます。


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Lot.46《茶韻十二ヶ月板画柵                 Lot.54《釈迦十大弟子
   幾利壽人(キリスト)の柵》                羅睺羅(らごら)の柵》
紙面:65.5×28.0cm                     紙面:103.2×37.8cm
紙・板画、手彩色 軸装                   紙・板画  軸装
昭和33(1958)年作                      昭和32(1957)年作
下にサイン・印・年代 共箱                            右上に印、

棟方志功鑑定委員会鑑定登録証付              左下にサイン・印・年代
落札予想価格  ¥300,000~¥500,000            棟方巴里爾箱
                             棟方志功鑑定委員会鑑定登録証付
                             落札予想価格
                             ¥3,000,000~¥4,500,000

Lot.46(左)は、柳宗悦が「死ぬまでにくりかえしこの一枚に眺め入るであろう」と絶賛したキリスト像です。キリスト教の教えや聖書の内容に捉われることなく、鋭い直線と幾何学模様を効かせ、主に陰刻によって仕上げています。これが茶掛として制作されたというのも驚きですね。Lot.54(右)は、ヴェネチア・ビエンナーレに出品されて注目を集めたという棟方の代表作《釈迦十大弟子》の一点。釈迦の実子と言われる羅睺羅の柔和な佇まいが、黒と白、線と面の見事な構成によって表わされています。


● 女性

「裸体の、マッパダカの顔の額の上に星をつければ、もう立派な佛様になって仕舞うんだから、ありがたく、忝(かたじ)けないんですね。それが、ホトケさまというものなのです。(中略)その額の星が、つくと、付かないので、タダの素裸の女であったり、ホトケサマに成り切ったりするという大きな世界は、うれしいものです。」(棟方志功『板画の肌』河出書房 1956年)

これは、棟方が自身の作品における神仏について述べた文章ですが、女性についての考え方を示唆するものでもあります。女性、特に裸婦は、戦後を中心に繰り返し表わされた代表的な主題です。その多くは額に星を付けられ、神や仏として、ときには生身の女性として、あるいはどちらでもあるような美しく神秘的な存在として思いのままに描き出されました。

【オークション終了につき、画像は削除させていただきました】

Lot.55《大顔の柵》
紙面:31.8×30.5cm
紙・板画、手彩色 額装
昭和49(1974)年作
左下にサイン・印・年代
共シール
棟方志功鑑定委員会鑑定登録証付
落札予想価格
¥1,800,000~¥2,800,000


【オークション終了につき、画像は削除させていただきました】

Lot.56 《光明妃図》
41.3×32.7cm
紙・肉筆 額装
左上に印、中央下に落款・印
棟方巴里爾シール
棟方志功鑑定委員会鑑定登録証付
落札予想価格
¥2,500,000~¥3,500,000

Lot.55(板画)とLot.56(倭絵)は、それぞれ技法は異なりますが、ともに浮世絵の大首絵の様式を取り入れ、胸から上の部分をクローズアップして描かれた女性像です。女性のふっくらとした丸顔と豊満な姿態が生命感豊かに表わされています。特に、Lot.56は、上の言葉の通り、額に星が描かれ、円窓の中に配されており、憧れの対象として描かれていることがわかります。

ここでは紹介しきれませんが、聖徳太子の逸話を板画化した《上宮太子版画鏡》シリーズ、足の速い神様を疾走感溢れるタッチで描いた《韋駄天(いだてん)図》など、ほかにもご覧いただきたい作品はたくさんあります。バラエティに富んだ56ロットをぜひ下見会でご覧ください。

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皆様のお越しを心よりお待ちしております。

(佐藤)

3月近代陶芸オークションより 平櫛田中・北大路魯山人・富本憲吉の名品

こんにちは。
ひなまつりも過ぎ、季節は少しずつ春めいてまいりました。花粉症の方にはつらい季節でもありますが、がんばって乗り越えてまいりましょう。

さて、今週9日(土)は近代陶芸/近代陶芸PartⅡオークションを開催いたします。今回も出品ラインナップの中から注目作品をご紹介いたします。


【 オークション終了につき、画像は削除させていただきました 】

130   平櫛 田中
《洽堂萬福 郭汾陽》
H28.8×W18.6cm
背面に銘「九十三翁中作之」、「昭和甲辰十月」刻
共箱
平櫛弘子証明書付
1964(昭和39)年作

落札予想価格 
★¥1,500,000~¥3,000,000


平櫛田中(1872-1979)は、伝統的な木彫に西洋彫刻の写実性を取り入れ、明治・大正・昭和を通して、日本の近代彫刻を牽引した作家です。

モデルとなった郭汾陽(かくふんよう)は、中国の唐代中期、国家の危機を救ったと伝えられる武将で、別名を郭子儀(かくしぎ)と言います。
たくさんの子どもや孫がいたという汾陽は、皆の名前を覚えきれず、名前を記した札を見ながら子どもたちを呼んだと言われており、本作はその姿を表わしたものでしょう。
好々爺となった名将の佇まいが味わい深く表わされており、平野富山らが手掛けたと思われる彩色も見事な仕上がりです。子宝や長寿、多幸を象徴する作とも言えるでしょう。




131 北大路 魯山人

《織部手桶花入》
H16.6×D42.0cm
高台内に掻き銘「魯山人」
共箱

落札予想価格
¥3,000,000~¥5,000,000


北大路魯山人(1883-1959)は、研ぎ澄まされた審美眼と溢れる創作意欲により、書、篆刻、陶芸、漆芸、絵画、料理など、様々な分野で才覚を発揮した美の探究者としてよく知られています。

本作は、魯山人の作品の中でもとりわけ大振りの桶花入。美のある生活を求め、また、自らの料理の理想を茶の湯の懐石とした魯山人は、食器だけでなく、こうした花入や茶碗といった茶陶、暮らしを美しく彩るやきものを数多く制作しました。
織部焼の技法は、その技術を高く評価され、重要無形文化財保持者(人間国宝)の認定を打診されるも辞退したという、魯山人の陶芸を代表するものです。ところどころ青みがかった緑釉が奥深く優雅で、草花のある風景を題材としたと思われる絵付けも風趣に富み、花を生けたときの豪奢な雰囲気を様々に想像させます。




132  富本 憲吉
《色繪瓢形大徳利》
H33.4×D24.0cm
 高台内に描き銘「富」
共箱
1944(昭和19)年作

・「富本憲吉展」出品
  東京国立近代美術館工芸館/1991年
・「近代陶芸の巨匠 富本憲吉展―色絵・
  金銀彩の世界―」出品
  奈良県立美術館他/1992年
・『富本憲吉全集2 東京時代』
  P.93 №121(小学館)

落札予想価格
¥6,000,000~¥12,000,000


色絵磁器の第一人者としての高度な技が評価され、第1回重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された富本憲吉(1886-1963)の作品です。

戦争によって思想や物資が統制された1943年から45年までの間、富本は窮屈な世相への諷刺を込め、「ぶらり、のんびり」の象徴である瓢形の大徳利を数点制作したといいます。1944年作の本作はその一つで、染付を主調とした菱形の連続模様と、四弁の白い花を図案化し、格子状に配した模様が交互に斜めに表されています。特に、この四弁花模様は、自宅に植えた定家葛(ていかかずら)の花をもとに創作されたという、富本の多彩な模様の中でも代表的なものの一つです。二種類の模様が織りなすリズムと徳利の豊満なフォルムとが美しく響き合う優れた作例と言えます。
なお、本作では、菱形模様が一マスだけ、緑地に黒の水玉模様となっています。これも富本の遊び心を感じさせる見どころの一つ。ぜひ下見会場で作品をご覧になり、探してみてください。


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皆様のご来場を心よりお待ちしております。

(佐藤)

坂本繁二郎が描いた郷里の自然―《繋馬》と《熟稲》

こんにちは。
いよいよ、平成最後の年が始まりました。今年も皆様にとって幸多い一年になりますようお祈りしております。
新年のご挨拶が遅くなりましたが、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて、26日(土)は今年最初のオークションとなります、近代美術/近代美術PartⅡオークションを開催いたします。今回も出品ラインナップの中から、注目作品をご紹介いたします。
画業の大半を福岡県で過ごし、パステル調の淡淡とした色彩で幽玄な世界を表現した、坂本繁二郎(1882-1969)の作品です。



32 坂本繁二郎
《繋馬》
23.7×33.0cm
板・油彩 額装
昭和9(1934)年作
左下にサイン
坂本暁彦鑑定証付

『坂本繁二郎作品全集』
  (1981年/朝日新聞社)№.263
『坂本繁二郎[油彩]全作品集』
  (2009年/株式会社さかもと)
     №.162  34-05

                                                                                       落札予想価格      ¥5,000,000~8,000,000


坂本といえば馬、という方も多いのではないでしょうか。
馬は、坂本が1930年頃から晩年に至るまで描き続けたモティーフです。「日の光に様々な変化を見せる膚(はだ)のつやだとか、陰影の変化、つぶらな目に宿る生きものの自然な情感が私をとりこにしたのでしょう。」(坂本繁二郎『私の絵私のこころ』日本経済新聞社 1969年)という言葉の通り、久留米や八女の明るくおおらかな自然の中で駆け回る馬の姿にすっかり魅了されてしまったようです。
 1934年作の本作は、つながれた馬の後ろ姿が描かれています。陽光の下で輝くような膚や、ゆらゆらと揺れる尾が興味深かったのでしょうか。馬の様々な姿をあらゆる角度から観察して描いたという坂本らしい構図ですね。白、青、茶などの微妙な色面を組み合わせ、身近な生命の存在感と美を表現しています。



33 坂本繁二郎

《熟稲》
38.0×45.5cm
キャンバス・油彩 額装
昭和2(1927)年作
右下にサイン
坂本暁彦鑑定証付

『坂本繁二郎作品全集』
  (1981年/朝日新聞社)№.29
『坂本繁二郎[油彩]全作品集』
  (2009年/株式会社さかもと)
    №.116 27-02
「坂本繁二郎追悼展」1970年
                              (福岡岩田屋/朝日新聞社)出品

                                                                                             落札予想価格   ¥5,000,000~8,000,000

 
 1927年作の本作は、同年の第14回二科展出品作《熟稲》と同じ主題、構図で描かれています。画題の通り、筑後川や遠景に連なる耳納(みのう)山地とともに、黄色く実る秋の田が辺り一面に広がる情景が見て取れます。しかし、ここで水田と同等に、あるいはそれ以上に重視されているのは、あたかも鳥が大空を羽ばたき、魚が水中を泳ぐかのように、伸びやかに、リズミカルに空に浮かぶ雲でしょう。坂本は、時間と気象によって形を変えていく雲を「空の装飾」として大変好みました。本作でも秋空に浮かぶ雲を見つめ、郷里の自然に抱かれていることを実感しながら、自然の営みの偉大さを純粋に描き出しています。


これらの作品は、今週の下見会でご覧いただけます。
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皆様のご来場を心よりお待ちしています。


(佐藤)

12月古美術オークションより 仁清と明治の工芸

こんにちは。
先日の近代美術/近代美術PartⅡ/MANGAオークションにご来場いただいた皆様、誠にありがとうございました。
早いもので、2018年も残すところ1ヶ月と少しとなりました。
12/1(土)の近代陶芸/古美術/近代陶芸PartⅡオークション、12/8(土)のSHINWA MARKETのBAGS/JEWELLERY&WATCHESオークションで本年のオークションは終了です。本年も大変お世話になり、ありがとうございました。来年もどうぞ宜しくお願いいたします。

さて、本日は、1日(土)古美術オークションの出品作品の中からおすすめの作品をご紹介させていただきます。



122 仁清


《信楽写し瓢下耳付水指》
  H17.9×D18.2cm
  底部に印銘「仁清」
『陶磁大系23 仁清』№84
(平凡社)掲載【本付】

 落札予想価格
 ¥2,000,000~¥3,000,000


仁清(にんせい)(生没年不詳)は、江戸前期の京都で、彩り豊かな色絵陶器を完成させた京焼の祖と言われる名工です。

瀬戸や美濃などで修業を積み、正保四年(1647)頃に仁和寺門前に御室窯を開窯。仁和寺の「仁」と本名の清右衛門の「清」を一字ずつ取って仁清と号し、後水尾天皇を中心とした宮廷サロンや茶人・金森宗和との関わりの中で、優美で雅やかな陶器を生み出しました。

本作は、華麗な色絵ではなく、仁清作品のもう一つの魅力である轆轤成型による造形美が徹底して追求された水指です。仁清の色絵が大名好みだったのに対し、本作のように絵付けされていない作品は、京都の公家に好まれたと言われています。
本作では、下方に付けられた耳と温かみのある曲線を描く器形が典雅な趣を感じさせます。この特徴的な造形は、《白釉耳付水指》(出光美術館蔵)などにも見られる、仁清が得意としたものです。また、蓋つまみの縁が輪花形に刻まれていて、仁清の装飾性の高さと洗練された感性をうかがわせます。


123 梨子地菊蒔繪提箪笥

H30.4×W26.2×D39.6cm
『井上侯爵家御所藏品入札目録』二〇九  掲載
東京美術倶楽部/大正十四年(1925)【目録付】
「~超絶技巧~明治期の工芸展」№16 出品
日本橋三越本店/平成二十八年(2016)【目録付】

落札予想価格
¥3,000,000~¥5,000,000


絢爛豪華な装飾性とリアルな表現を徹底的に追求した明治の工芸は、その驚くべき「超絶技巧」で近年注目を集めています。
本作も、明治期の作と伝わる蒔絵の提箪笥(さげだんす)です。提箪笥は、主に身の回りの小物や書類などを携行する日常の道具ですが、本作はその華麗さゆえ、思わずうっとりと見入ってしまいます。表面の菊花の高蒔絵だけでも十分に美しいのですが、四隅や扉の金具、提鐶(さげかん:上面に付いた持ち手)に施された彫刻、引出し内側の梨子地(漆の上に金や銀粉を蒔き、さらに透明漆をかけ、粉が見えるよう研ぐ技法)なども本当にお見事。細部に至るまで技術の粋が尽くされています。


←扉の内側です。

     扉を開け、引出しを引くと、いっそう華やかな世界
     が広がります。皆様なら引出しの中に何をしまいま
     すか?



これらのほか、このたびの古美術は、代々の天皇の宸翰(しんかん)、一休宗純の一行など、書がとても充実しています。また、近代陶芸では、加藤唐九郎の《志野茶盌 銘 薄ずみ》、北大路魯山人《金銀水玉花入》などもおすすめです。
ぜひ下見会で実物をご覧ください。

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皆様のお越しを心よりお待ちしています。

(佐藤)

パリを描いた画家 増田誠

こんにちは。
11月に入り、東京でもあちらこちらで紅葉が楽しめるようになってまいりました。
いよいよ秋が深まって、冬はもうすぐそこという感じがいたします。

さて、今週17日(土)は、近代美術/近代美術PartⅡ/MANGAオークションを開催いたします。今回は近代美術と近代美術PartⅡ、どちらにも出品されます増田誠の作品をご紹介いたします。



【 オークション終了に伴い、作品の画像は削除いたしました 】

67 増田 誠《街角》
        73.0×60.0cm
        キャンバス・油彩 額装
        右下にサイン

        落札予想価格
       ¥200,000~¥400,000


増田誠(1920-1989)は、パリを拠点にヨーロッパ各地を訪れ、街角や港、市井の人々の暮らしの中に漂う哀歓を親しみを込めて描き続けた画家です。対象のフォルムを平面的に捉え、その詳細を細やかな線描で描き加えるという手法によって生み出された作品は、「パリの庶民へのオマージュ」とも言われています。

山梨県に生まれた増田は、中学校卒業後、教員として働き始めましたが、1941年に従軍。戦後は、北海道釧路に移住し、得意の絵を生かして看板業を営みました。その傍らで画家を志し、一線美術の上野山清貢に師事します。1952年より上野山の勧めで一線美術展に出品し、受賞を重ねるも、次第にヨーロッパへの憧れを強め、1957年に念願のパリに渡りました。
パリでは、1960年にシェルブール国際展でグランプリを受賞し、1963年にサロン・ドートンヌ会員となり、画壇で活躍していきました。1970年からは、日本でも毎年個展を開催しています。

本作はパリの《街角》を描いたものでしょうか。
観光スポットや賑やかな大通りではなく、近くに住む人しか通らない裏道のようで、旅行者ではない、パリに暮らす者としての画家の眼差しを感じさせます。
また、建物をマッスとして捉え、走るような細い線でその詳細を描き込んでいくという増田らしい描法により、長い年月を経た建物が味わい深く表現されています。
道路の先に鑑賞者の視線を誘うような画面構成もドラマティックで、どこにでもある裏通りが特別な風景に見えてくるようです。
  

【 オークション終了に伴い、作品の画像は削除いたしました 】

668 《Bar Basque,Paris》

            46.3×38.1cm
            キャンバス・油彩 額装
            左下にサイン

            落札予想価格
            ¥100,000~¥200,000
         
            下見会は終了しています

こちらも観光客の来るような店ではなく、パリの片隅にあるバーといった雰囲気です。
バーに集う人々の喜びや哀しみに寄り添うように本作を描いたのでしょうか。



【 オークション終了に伴い、作品の画像は削除いたしました 】

671 《アムステルダム》
            38.3×55.1cm
            キャンバス・油彩 額装
            左下にサイン
            裏に署名・タイトル

            落札予想価格
           ¥150,000~¥250,000

          ※下見会は終了しています

増田は、ヨーロッパを中心に世界各地を訪れ、その街や人を描きました。
本作では、オランダ、アムステルダムの街を流れる運河と運河沿いの建物が表わされています。
歴史ある建物群と置時計型の特徴的な屋根に興味を抱いたのでしょう。水に映るもう一つの風景の美しさもまた見どころです。

増田誠はこのほかにも近代美術PartⅡに3点出品されます。
また、下見会では、岡鹿之助や荻須高徳など、増田と同じようにパリで暮らし、その風景を描いた作家たちの作品もご覧いただけます。同時開催いたしますMANGAオークションの作品も、引き続き展示していますので、ぜひ会場にお越しください。


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皆様のご来場を心よりお待ちしています。

(佐藤)

アール・ヌーヴォーの精華―アンドレ・トゥイエ、ドーム&マジョレル

こんにちは。
9月15日のリニューアル記念特別オークションから今月13日のワインオークションまで、当社ではほぼ1ヶ月間毎週オークションを開催しておりました。季節はずれの夏日も台風の日も、毎週のようにお越しいただいた皆様、誠にありがとうございました。

さて、今週27日(土)は、西洋美術オークションを開催いたします。
今回も出品作品の中から、おすすめの作品をご紹介いたします。
ともに19世紀末~20世紀初頭、アール・ヌーヴォー期に制作されたフランスの美の精華です。


 

 

 

 

         お顔のアップ。
      どの角度から見ても美少女
      です。

 

 

         ヘッドマーク


77 アンドレ・トゥイエ
ビスクドール
H59.5cm
ヘッドマーク有
落札予想価格 ¥2,000,000~¥3,000,000


愛好家の垂涎の的と言われる、アンドレ・トゥイエのベベ・ドールです。
ビスクドールがお好きな方はもちろんご存じかと思いますが、アンドレ・トゥイエ(A.T)は1875年頃から1893年までの短期間にベベドールを製作したと言われる工房です。しかし、その詳細は明らかでなく、ジュモーやブリュに対して現存する作品数も圧倒的に少ないため、しばしば「幻のアンドレ・トゥイエ」と呼ばれています。
本作の優雅にカールしたロングヘア、大きなリボンと繊細なレースが施された衣装は、大変希少なオリジナルの装飾品です。ドレスの内側にも、リボンやレースの付いた可愛らしい下着を着ており、本作がとても丁寧に作られ、120年以上もの間大事にされてきたことがわかります。



106 ドーム&マジョレル
鉄台タンポポ型3灯式テーブルランプ

H59.5×W25.0cm
各傘に陰刻銘
鉄台下部に銘
ヴィトリフィカシオン

落札予想価格 
¥800,000~¥1,200,000


アール・ヌーヴォーの家具デザイナーとして知られるマジョレルと、ドームの共同制作によるテーブルランプです。ドームはマジョレルのほか、ブヴァルやブラントなど、優れた金工作家や家具デザイナーとともに様々なタイプのランプを制作しました。
ドームによる、タンポポのつぼみを模したランプは、点灯時、黄色とオレンジのグラデーションがとてもきれいです。また、マジョレルによる、直線と曲線を巧みに組み合わせた鉄台は、地面に折り重なるような立体的な葉のフォルムが美しく、19世紀末に流行した象徴主義的な雰囲気も感じさせます。

このほかにも、ガレやワルターのガラス、クムやイスファハンの絨毯34点など、制作された地域や時代の異なる様々な品々が出品されます。作品によっては実際にお手にとっていただくこともできますので、ぜひ下見会で実物をご覧ください。


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皆様のご来場を心よりお待ちしています。

(佐藤)

秋に楽しむ陶芸オークション

先週行われました「リニューアル記念特別オークションY氏コレクション―ART JUNGLE」にご参加いただいた皆様ありがとうございました。

今回は、今週末に行われる「近代陶芸/近代陶芸PartⅡオークション」の作品をご紹介いたします。

■LOT.209 加藤唐九郎「絵志野茶碗 銘 残月」
 H9.3×D15.0cm
 高台脇に掻き銘「玄」
 共箱 1984年作
 「生誕百年記念 加藤唐九郎展」出品 日本橋髙島屋他/1997年
 『加藤唐九郎作品集』掲載 №38(日本経済新聞社)
 落札予想価格
 ¥6,000,000~¥8,000,000

加藤唐九郎は、1897(明治30)年に愛知県東春日井郡水野村(現在の瀬戸市)で生まれました。唐九郎は誰よりも陶磁器を研究し、陶芸界に多大なる貢献を果たしました。その豪快でおおらかな人柄も相まって、未だ人気が衰えることなく愛され続けている陶芸家の一人です。

元々唐九郎は作品に作者銘をほぼ入れておらず、戦後の短期間だけ「TK」(唐九郎の意味)と記していましたが、作品に作者銘を入れることの必要性を感じ、1961年から作者銘を入れ始めました。この銘が年代とともに変遷することが、コレクター心をくすぐる一つの要因かもしれません。本作のほかにLOT.208「志野茶碗」の搔き銘は「一ム」と入っています。そのころ唐九郎は、漢学者の服部担風の元を訪れ、「からっぽになって一からやりなおせ」という意味で、「一無斎」という号を贈られました。そこから「一ム才」という銘を入れ始め、翌年にはそれを略した「一ム」という銘に変え、1979年頃まで使用しました。その後、「ヤト」「六三」「陶玄」と続き、晩年に本作で使用された「玄」へと移行しました。この「玄」は、「陶(とう)玄(くろう)」の略で、丸みを帯びたものだと「団子の玄」とも呼ばれます。

亡くなる前年に作陶された本作は、紫とまでは行かないまでも、ちょうど明るくなり始めた明け方の空を思わせます。そこに絵付けで入れられた半分消えかかった月。唐九郎自身が付けた作品の銘「残月」により、作品の情感がより際立っています。

 

また今回は蒔絵の作品が多数出品されます。

 

平安時代に発達した蒔絵は、日本の漆工芸を代表する装飾技法であり、仏教美術、茶道具、文房具、日常雑器と多岐に渡ります。本オークションでも印籠、香箱、太刀掛、刀掛、箪笥、笙、文箱、硯箱等をご覧頂くことが出来、いつもとは違ったきらびやかな下見会場をお楽しみいただけます。蒔絵や螺鈿といった技法のみならず、箪笥や箱物の仕立ての妙にもぜひご注目ください。

 

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執筆者E

岸田劉生の人物画―《村娘座像》と《麗子像》

こんにちは。
いつのまにか暑すぎる夏が終わり、朝晩はすっかり涼しくなってまいりました。6月から行っておりました当社1階の改装工事も終了し、今回のオークションから新しい下見会場で皆様をお迎えすることになります。

というわけで、改装後初めてのオークションとなる9月15日(土)は、「リニューアル記念特別オークション Y氏コレクション―ART JUNGLE」を開催いたします。
このオークションは、下見会場のリニューアルオープンとShinwa Prive株式会社のギャラリー開廊のご挨拶として開催させていただくものです。創業以来、独創的な経営術で増収増益を更新し、一代で巨大企業を築き上げられた財界の革新者Y氏が、ご自宅の様々な空間に飾り、賞玩されたやきものや絵画、愛用されてきた家具など、そのプライベートコレクションが出品されます。

今回はその出品作品の中から、おすすめの作品をご紹介いたします。
没後90年を来年に控え、早くも各地で展覧会が開催されているあの偉才の名作です。




293 岸田劉生(1891-1929)
《村娘座像》
50.5×34.0cm
紙・水彩 額装
大正9(1920)年3月14日作
右上にタイトル、中央上にサイン、左上に年代
劉生の会登録証書付

落札予想価格 
¥60,000,000~¥120,000,000








【掲載文献】

・『岸田劉生画集』(1980年/岩波書店)No.70
・『郡山市立美術館 研究紀要 第3号 岸信夫作成「岸田劉生の作品に関する私ノート」1915-1929』
(2003年/郡山市立美術館)P.71、図29   ほか多数

【出品歴】
・「岸田劉生 三十三周忌記念 代表作展」1961年(銀座松坂屋/朝日新聞社)
・「没後50年記念 岸田劉生展」1979年(東京国立近代美術館)  ほか多数


岸田劉生は、夭折の画家にして、日本の近代美術を代表する巨匠の一人です。
重要文化財となった《道路と土手と塀(切通之写生)》(東京国立近代美術館蔵)や《麗子微笑(青果持テル)》(東京国立博物館蔵)など、幅広い主題に名作を残しました。
特に、人物画においては、「岸田の首狩り」と呼ばれるほど、家族や友人、知人の肖像を次々に手掛け、愛娘の麗子、そして村娘・お松をモデルとした優れた連作を生み出しました。

劉生の日記より、本作は大正9(1920)年3月13日に着手し、翌日完成させたお松9歳頃の座像。
14日の日記には、その出来栄えについて、「よく行きたる様なり」と記されています。
このお松という少女は、劉生が神奈川県鵠沼に住居を構えた時期(1917~1923)に近所に住んでいた漁師の娘で、麗子の遊び友だちとなり、劉生の絵のモデルも務めました。
一連のお松像では、田舎娘らしい素朴な美しさを表わすため、主に水彩や素描の技法が用いられていますが、劉生は水彩の「新鮮な自由な大胆な強い味」を好み、油彩ほど時間をかけずに対象の「美をいきなりつかむ」ことができる技法として重視しました。本作においても、お松から感じ取った「顔や眼や眉の変(ママ)に宿る不思議な澄んだ永遠な美、生きた力」を水彩で直ちに捉え、実にみずみずしく描き出しています。
少女の真直ぐさ、純粋さを感じさせる、きらきらと輝く瞳が印象的な作品です。


294  岸田劉生
《麗子像》
20.0×14.0cm
紙・インク  額装
大正9(1920)年11月3日作
中央上にサイン・年代・タイトル
劉生の会登録証書付

落札予想価格
¥2,000,000~¥4,000,000

【掲載文献】
『岸田劉生と草土社』(1985年/下関市立美術館)P.113
『郡山市立美術館 研究紀要 第3号 岸信夫作成「岸田劉生の作品に関する私ノート」1915-1929』
(2003年/郡山市立美術館)P.78、図70



【出品歴】

「江戸堀画廊開廊20周年 洋画物故作家展」1990年(江戸堀画廊)


近代美術を象徴するイメージ、と言っても過言ではない「麗子像」の一点です。
劉生は、生まれたばかりから16歳まで、座像を中心におよそ100点にも及ぶ様々な麗子像を描きました。
インクで描かれた本作の麗子は6歳頃。《麗子微笑(青果持テル)》と同様に、毛糸の肩掛けを羽織っています。この肩掛けは、元々お松が持っていたのを、劉生がその「毛糸のほつれた美しさ、色のひなびたとり合せの美しさ」に惹かれ、譲ってもらったものだそうです。彩色は施されていませんが、肩掛けのざっくりとした編み目やもこもことした暖かそうな質感が簡潔な線描で表わされています。
ちなみに、《村嬢於松立像》(東京国立近代美術館蔵)などでは、お松がこの肩掛けを身に付けています。


ぜひ劉生の名作を新しい会場でご覧ください。
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皆様のお越しを心よりお待ちしております。



(佐藤)