美人画の巨匠 深水・夢二・松園―女性美の競演

こんにちは。
4日(土)の近代陶芸/近代陶芸PartⅡ オークションにご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。
さて、今週の18日(土)は、近代美術/近代美術PartⅡ オークションを開催いたします。
東京は緊急事態宣言発令中となりますので、新型コロナウイルスの感染予防対策として、会場にご入場いただける人数に定員を設け、オークションは予約制にて開催させていただきます。
(下見会は予約制ではありません)
詳細はこちらをご覧ください。
新型コロナウイルス感染予防対策について

今回のオークションの出品作品には、ご注目いただきたい美人画がたくさんあります。その中でも特におすすめの3点をご紹介いたします。


199 伊東 深水
《夕涼み》
 78.0×62.0cm
(額装サイズ104.5×88.5cm)
紙本・彩色 
右上に落款・印
共シール
東美鑑定評価機構鑑定委員会鑑定証書付
落札予想価格 ★¥3,000,000~¥5,000,000

まず一つ目は、歌川派浮世絵の流れを汲む美人画や同時代を生きる女性たちを描いたモダンな風俗画で高く評価された伊東深水(1898—1972)の作品です。

本作では、絽の着物を身につけた女性が縁台に腰掛け、夕涼みをする様子が表されています。左手の指をじっと見つめる仕草と傍らに置かれた団扇。一目見て、あの名作を思い出された方も多いと思います。
本作は、「美人画家・伊東深水」の名を決定的なものとした出世作であり、代表作の一つとしても名高い《指》(1922年作)と同じ題材、同じポーズで描かれています。異なる点は、《指》のモデルが左手の薬指に指輪をはめた深水の妻であったことでしょうか。《指》では若妻らしい初々しさが表現されていたのに対し、本作のモデルは指輪をつけておらず、《指》よりも成熟した女性の色香を漂わせています。


200
 竹久 夢二
《舞姫》
114.3×33.7cm(軸装サイズ184.5×52.6cm)
絹本・彩色
1921年作
右下に落款・印・年代
竹久みなみ箱
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書付
落札予想価格 ¥8,000,000~¥12,000,000

二つ目は、「夢二式美人画」と呼ばれる女性像を描き、大正ロマン香る詩情豊かな作風で大衆の人気を博した竹久夢二(1884-1934)の作品です。
明治末期から京都を度々訪れ、一時期住居も構えた夢二は、生涯を通して繰り返し舞妓を描きました。本作も画題の通り、舞妓を題材とした女性像です。画面右下には、「千九百二十一年晩秋」(大正10年)という年記と「為新瀧楼主人」という為書きが落款とともに記されています。この年の夏から秋にかけて、夢二は福島県を旅しており、本作は定宿の一つとして知られる会津東山温泉(会津若松市)の新瀧楼に宿泊した際、温泉場の舞妓をモデルに制作し、宿の主人に贈ったものでしょうか。
斜め後ろから舞妓を捉えた構図、足を描かず着物の裾を長く引いた危うげな立ち姿、舞妓の長いまつ毛と憂いを帯びた表情に、甘美な「夢二式美人画」の特徴が見て取れます。



203
 上村 松園
《柳さくら》
163.2×64.8cm(軸装サイズ253.0×88.7cm)
絹本・彩色
左下に落款・印
共箱
東美鑑定評価機構鑑定委員会鑑定証書付
『鎌倉大谷記念美術館名品選』
(2000年/鎌倉大谷記念館)№62
落札予想価格 ¥40,000,000~¥60,000,000

そして最後は、生涯を通して理想の女性美を追求し、気品溢れる女性像を数多く残した上村松園(1875-1949)の作品です。
同画題の類似作品の制作年代より、本作は1938(昭和13)年頃に制作された幅でしょうか。この昭和前期、松園は代表作の一つ《序の舞》(1936年作・東京藝術大学蔵・重要文化財)や《砧》(1938年作・山種美術館蔵)などを次々と発表し、充実した画業を展開しました。

本作では、桜の花びらが舞い散る中、若い女性たちが花見に興じる姿が表されています。この四季の風物を楽しむ二人組の女性という題材は、松園が好んで繰り返し描いたもの。左の日傘を持つ女性はその可愛らしく華やかな装いから、京都の豊かな町家の令嬢と見て取れ、右の島田髷と思しき髪を結った女性は年長者らしい落ち着いた優美さを漂わせています。二人の着物と髪型、傘を持つ、あるいは袖の中に手を隠す仕草より、浮世絵などの古画を参照し、江戸中後期の風俗を主題としたものと考えられます。円熟味を感じさせる端正ではりのある線描、洗練された感性による優雅な色彩と均整の取れた構図には高い品格が漂い、松園が追い求めた「一点の卑俗なところもなく、清澄な感じのする香高い珠玉のような絵」註)として描き上げられた作と言えるでしょう。

註)上村松園「棲霞軒雑記」『青眉抄・青眉抄拾遺』講談社 1976年

下見会では、近代を代表する美人画家による三者三様の女性美をお楽しみください。
オークション・下見会のスケジュールとご予約について、オンラインカタログはこちら

なお、ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなどの方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。
新型コロナウイルスの感染予防対策をしっかりと行い、皆様のご参加をお待ちしております。

(佐藤)

《最晩年の色彩》浅蔵五十吉/《1973年のドット》加守田章二

こんにちは。

東京では引き続き緊急事態宣言出ておりますが、今週末に「近代陶芸/近代陶芸PartⅡオークション」を開催致します。オークション・下見会ともに新型コロナウイルスの感染予防対策を行いながら実施してまいりますので、何卒ご協力のほどお願い致します。オークション当日は、ご予約が必要ですのでご注意ください。詳細はこちらをご覧ください。
新型コロナウイルス感染予防対策について

さて、今回数多く出品されますのが、九谷焼作家の作品です。初代徳田八十吉、三代徳田八十吉、浅蔵五十吉、須田菁華、そして武腰潤らの作品が出品されます。九谷焼とは、石川県で370年ほど前から製陶されている色絵磁器です。作風は様々で、青・黄・紫・赤・緑の五彩を用いて絵画的表現力の高い「古九谷風」のものや、青木木米の指導により、赤を基調とした唐子など描いた「木米風」もの。また、赤絵の細密画で全面に仕上げられた「飯田屋風」や、永楽和全の指導で始まった「京焼金襴手風」などが挙げられます。更に、大正期以降には、青粒(あおちぶ)と言われる細かい緑色の点を盛り上げ並べ、絵を構成する「青粒技法」や、徳田八十吉に見られる「彩釉技法」、吉田美統らに見られる「釉裏金彩・銀彩技法」など今なお発展を遂げている焼き物です。

そのなかから一点、こちらの作品についてご紹介します。

LOT.10 浅蔵五十吉「白陽彩牡丹飾壷」
H33.4×D33.8cm
高台内に掻き銘「五十吉作」、「平成十年初春」刻
共箱 1998(平成10)年作
「第37回 日本現代工芸美術」出品 東京都美術館他/1998(平成10)年
落札予想価格:★2万円~5万円

 

二代浅蔵五十吉は、父から陶技を習い、15歳・1928年(昭和3)に初代徳田八十吉に、1946年(昭和21)に北出塔次郎に師事し、九谷焼を学びました。同年に開催された第1回日展に入選以後、九谷焼の伝統を踏まえ、独自の色彩感覚で新たな九谷焼を発表し続けました。1977年(昭和52)には日展内閣総理大臣賞を受賞。1993年(平成5)には日展の顧問となり、1996年(平成8)に文化勲章を受章しました。

本作は、制作年から言っても、二代の作品でしょう。「白陽彩牡丹飾壷」は、没年である1998年に制作され、「第37回日本現代工芸美術」展に出品された作品です。当初明るい黄色や緑を基調に用いてきた作風は、プラチナを用いた銀彩へ移行し、最晩年には、「白陽」と称する白釉へ辿り着きました。本作は、大輪の牡丹の青が銀地に鮮やかに映え、重厚感があるのにどこかさわやかさを感じさせる作品です。色彩と最期まで向き合った五十吉ならではの一作でしょう。

 

また今回最後を飾るのは、1973年の加守田章二の作品です。

LOT.173 加守田章二「壷」
H24.8×W15.9cm
底部に掻き銘「章」、「一九七三」刻
共箱
1973(昭和48)年作
『加守田章二全仕事』掲載 P.286(講談社)
落札予想価格:200万円~300万円

 

LOT.174 加守田章二「壷」
H17.2×W21.2cm
底部に掻き銘「章」、「一九七三」刻
共箱
1973(昭和48)年作
『加守田章二全仕事』掲載 P.287(講談社)
落札予想価格:200万円~300万円

LOT.173は、褐色の線状の上に細かい灰青と灰色の丸が綺麗に並んでいます。魚の鱗のようにきらめいて見えるドット柄です。LOT.174もドット柄ですが、灰青と茶褐色の輪の中心部が丸く捺され大きく感覚を取って並べられています。全体は人間のデコルテ部分を抽出したような有機的な形で、対称的に口辺と側面は鋭利な形と刻文が施されています。どちらもサイズは小さいものの、1973年の加守田らしさを凝縮した作品と言えるでしょう。

コレクター心をくすぐる作品をぜひご堪能ください。

なお、ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなどの方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。
新型コロナウイルスの感染予防対策をしっかりと行い、皆様のご参加をお待ちしております。

                                  (執筆者:E)

下見会スケジュールはこちら

三岸好太郎の風景画―《崖の風景》と《天白溪》

こんにちは。
3日(土)の近代陶芸/古美術/近代陶芸PartⅡ オークションにご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。
さて、今週の17日(土)は、近代美術/近代美術PartⅡ/戦後美術&コンテンポラリーアート オークションを開催いたします。
今週、東京に緊急事態宣言が発令されましたので、新型コロナウイルスの感染予防対策として、会場にご入場いただける人数に定員を設け、オークションは予約制にて開催させていただきます。
詳細はこちらをご覧ください。
新型コロナウイルス感染予防対策について

では、今回も出品作品の中からおすすめの作品をご紹介いたします。
夭折の画家・三岸好太郎の油彩がなんと2作品同時に出品されることになりました。



334
 三岸 好太郎
《崖の風景》
  31.7×40.9cm
(額装サイズ 51.9×61.2cm)
  キャンバス・油彩 額装
   左上にサイン
   東美鑑定評価機構鑑定委員会
  鑑定証書付

  落札予想価格
  ★¥300,000~¥600,000







335
 三岸 好太郎
《天白溪》
  32.0×41.1cm
(額装サイズ 49.5×58.5cm)
キャンバス・油彩 額装
1933
裏木枠に署名・タイトル・年代
東美鑑定評価機構鑑定委員会鑑定証書付
『三岸好太郎全画集』
(1983年/朝日新聞社)№260

落札予想価格
                                                                                                             ★¥300,000~¥600,000


三岸好太郎(1903-1934/明治36-昭和9)は、わずか11年の画業においてめまぐるしく作風を変貌させ、大正から昭和の初期を疾風のごとく駆け抜けた洋画家。ロマンティシズムと理知性に富んだその作品は、現在も多くのファンを魅了しています。

北海道札幌区(現・札幌市)に生まれた三岸は、中学在学中から油絵を描き始め、卒業とともに画家を目指して上京します。独学で絵画制作に励み、1924年の春陽会第2回展にて春陽会賞を首席で受賞。岸田劉生やアンリ・ルソーに感化された素朴な作風で、一躍脚光を浴びました。同じ頃、画家の吉田節子(後の三岸節子)と結婚。1930年、独立美術協会の結成に参加し、フォーヴィスム風の「道化」シリーズ、シュルレアリスムやコラージュなどの手法を取り入れた前衛的な作品を次々に制作していきました。1934年には代表作となった幻想的な「蝶と貝殻」の連作を発表しますが、持病の悪化により31歳で早世しました。

一つ目のLot.334《崖の風景》は、赤土が露になった崖を中心として、その上に鬱蒼と生い茂る木々、下に2軒の茅葺き屋根の家屋が描かれた作品です。モティーフや構図が類似していることから、1924年から2年間にわたり数点が制作された、千葉県我孫子に取材した風景画の一つでしょうか。岸田劉生をはじめとする草土社の画家たちが参加した初期の春陽会では、ルソーを思わせる「稚拙味」のある素朴な作風が流行しました。また、彼らの多くは我孫子に住居を構え、あるいは度々訪れ、こぞって手賀沼周辺の風景を描きました。この流行に倣ったと思われる本作では、遠近法によらず、対象を上に積み上げるように平面的に捉え、朴訥とした雰囲気とあたたかな抒情の漂う風景を表しています。

そして、二つ目のLot.335《天白溪》(てんぱくけい)は、名古屋市にかつて存在した同名の景勝地を、1933(昭和8)年に訪れた際に描いた作品です。この時期、造形に関する様々な実験を試みた三岸でしたが、本作ではフォーヴ的な感覚と伸びやかで勢いのあるタッチにより、身近な自然を生き生きと表現しています。

二つの風景画は、くしくも画業の初期と後期に制作されたものと考えられます。それゆえ、画家が関心を抱き、表現しようとしたものはそれぞれ異なりますが、共通しているのは、新たな美の創造に高揚し、心から歓びを感じながらキャンバスに向かう異才・三岸好太郎の姿を想像させる点ではないでしょうか。

下見会では、ぜひ二つの風景画を見比べてみてください。
オークション・下見会のスケジュールとご予約について、オンラインカタログはこちら

(※オークション当日は下見会を開催いたしません)

なお、ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなどの方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。
新型コロナウイルスの感染予防対策をしっかりと行い、皆様のご参加をお待ちしております。

(佐藤)

日本の工芸意匠家_光琳と富本憲吉

こんにちは。
梅雨に入り、蒸し暑さが増してきましたね。何かとすっきりしない日々は続くかと思いますが、ぜひ一時の心の清涼剤として、今週末に開催されます「近代陶芸/古美術/近代陶芸PartⅡオークション」をお楽しみください。また、緊急事態宣言は取り下げられておりますが、オークション・下見会ともに新型コロナウイルスの感染予防対策を行いながら実施してまいりますので、何卒ご協力のほどお願い致します。詳細はこちらをご覧ください。
新型コロナウイルス感染予防対策について

 

まずは近代陶芸オークションより、こちらをご紹介します。

LOT.215 富本憲吉
《金銀彩・四辯花飾筥》
H11.5×W14.5cm
1960(昭和35)年、1961(昭和36)年作
高台内に描き銘「富」(二つ)
共箱
「富本憲吉作陶五十年記念展」出品 日本橋高島屋 / 1961(昭和36)年
落札予想価格:1,000万円~1,500万円

 富本憲吉(とみもと けんきち)【1886-1963(明治19-昭和38)】は、陶芸界を近代化へと導き、後進へ多大なる影響を与えた陶芸作家です。地場産業としての陶芸ではなく、楽焼からはじまり、土焼、白磁、染付、色絵磁器、金銀彩と技法を様々に変化させ、それぞれに見合った作品を生み出しました。とりわけ1921年(大正10)頃に、絵付けを施した平らな陶の制作に成功し「陶板(とうばん)」と命名したことで知られています。以降、多くの作家が陶板を制作するに至りました。また、独自の模様を多く創り出した図案意匠家としての面も持ち合わせており、西洋化する日本の生活の中でインテリアとしての陶芸作品の可能性を広げました。

本作は、鑑賞用陶器として創造された「飾筥」(かざりばこ)で、富本が得意とした形のひとつです。なかでもこの配色は珍しく、渋めの銀地と、赤く描いた輪郭線の上から金彩でなぞる富本の編み出した「カキオコシ」という技法を駆使し、富本の代表的な模様である「四辯花(しべんか)文」と「幾何学文」で構成されています。晩年の傑作・金銀彩を施した絢爛豪華な存在感を放つ飾筥をぜひご覧ください。

 

今回古美術オークションでは名立たる人物の作品が多く出品されます。良寛、宮本武蔵、長次郎、藤原俊成などなど。その中でも琳派の代表的な作家・光琳の「水辺芦撫子図団扇」をご紹介いたします。

LOT.160 光琳
《水辺芦撫子図団扇》
23.3×22.3cm(129.6×44.7cm)
紙本 軸装
萬野美術館旧蔵
「開館四十周年特別企画 萬野コレクションの名品一挙公開 琳派と茶道具」出品 サントリー美術館 / 平成13(2001)年
『栗山家愛藏品入札目録』掲載 三八 東京美術倶楽部 / 昭和10(1935)年
落札予想価格:1,500万円~2,500万円

光琳(こうりん)【万治一-享保一(1658-1716)】は、江戸中期に活躍した画家・工芸意匠家です。弟の乾山も、芸術性の高い陶器を創り出したことで知られています。光琳は、やまと絵の伝統を踏まえた革新的な装飾芸術を完成させ、《風神雷神図屏風》(重要文化財、東京国立博物館蔵)など、日本美術を代表する名作の数々を残しました。

本作は団扇図を描いた幅で、画面をS字の曲線で上下に分け、銀彩を施したと思われる上部には水辺に群生する芦、金彩を施した下部には可憐な撫子の花を描いています。特に、芦に見られるみずみずしい緑青とリズムに富んだ直線的な表現、水辺に表された光琳波(こうりんなみ)と称される流水文は、代表作《燕子花図屏風》(国宝、根津美術館蔵)や《紅白梅図屏風》(国宝、MOA美術館蔵)を想起させ、光琳の洗練されたデザイン力が存分に発揮された作と言えるでしょう。

 

日本の美術史上でも、偉業を成し遂げた名工達の作品をぜひお楽しみください。

 

オークション・下見会のスケジュールとご予約について、オンラインカタログはこちら

なお、ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなどの方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。
新型コロナウイルスの感染予防対策をしっかりと行い、皆様のご参加をお待ちしております。

                         執筆者:E

 

北大路魯山人の色絵―《雲錦鉢》と《椿づくし鉢》

こんにちは。
22日の近代美術/近代美術PartⅡ/戦後美術&コンテンポラリーアート/BAGS/JEWELLERY&
WATCHES/MANGAオークションにご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。

さて、今週の29日(土)は、WINE/LIQUOR/初夏特別オークションを開催いたします。
先週同様、緊急事態宣言下となりますので、オークション・下見会ともに新型コロナウイルスの感染予防対策として、会場にご入場いただける人数に定員を設け、予約制にて開催させていただきます。
詳細はこちらをご覧ください。
新型コロナウイルス感染予防対策について

では、今回は、初夏特別オークションの出品作品の中からおすすめの作品をご紹介いたします。
このオークションは、ある蒐集家の方から、北大路魯山人や藤本能道といった近代陶芸の名品を中心に、横山大観や加山又造といった日本の近代絵画など126点をご出品いただいたものです。
特に、陶芸、漆芸、書画、料理、篆刻など、様々な分野で類まれな才能を発揮した北大路魯山人(1882-1959)の作品がたくさん出品されます。その中でもご注目いただきたいのが、二つの色絵《雲錦鉢》と《椿づくし鉢》です。

「食器は料理のきもの」という魯山人の有名な言葉がありますが、この二つの作品はまさに「きもの」と呼ぶにふさわしい美しい図柄。魯山人は国内外の優れた古陶磁に心酔し、それらに造形の理想を求めましたが、「雲錦鉢」や「椿鉢」では、特に好んだ江戸時代の名工・尾形乾山の意匠を手本としました。



125  北大路 魯山人
《雲錦鉢》
H20.3×D37.2cm
高台内に掻き銘「魯山人」
共箱
ナオシ有

落札予想価格
¥8,000,000~¥16,000,000

 



「雲錦」とは、桜と紅葉を配した図柄のことで吉野山の見渡す限りの桜を雲に、竜田川の水面に流れる色鮮やかな紅葉を錦(織物)に見立てています。京焼で好まれた意匠で、仁阿弥道八の乾山写《色絵桜楓文鉢》(MOA美術館蔵)なども知られています。
 魯山人は、桜の花や紅葉の葉にほとんど線を用いず、色面によってそれら鮮やかに表現し                                     
ています。魯山人らしい大胆さと繊細さを併せ持った意匠と言えるでしょう。
                                        
        (別 面)                     





126   北大路魯山人

《椿づくし鉢》
H21.5×D42.4cm
高台内に掻き銘「魯山人」
共箱
ナオシ有

落札予想価格
¥10,000,000~¥20,000,000

 

 

魯山人は、様々な大きさの椿鉢を作陶していますが、こちらは大型の作品です。
鮮やかな赤、黄、緑、青の上絵具と白泥を用いて、椿の花を全体に描き出しています。絵画も描いた魯山人らしく、大胆な筆致と簡略化された造形で椿の華やかさとみずみずしさを見事に表現しており、発色も大変良いものと言えるでしょう。乾山の意匠を巧みに発展させたものであるとともに、精彩に富み、魯山人芸術の魅力である天衣無縫な趣を感じさせます。

魯山人の作品は、これらのほかに織部や備前、山水画なども出品されます。
下見会場でぜひ実物をご覧ください。
オークション・下見会のスケジュールとご予約について、オンラインカタログはこちら

なお、ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなどの方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。
新型コロナウイルスの感染予防対策をしっかりと行い、皆様のご参加をお待ちしております。

(佐藤)

松本竣介の子ども像―《コップを持つ子ども》

こんにちは。
5/22(土)は、近代美術/近代美術PartⅡ/戦後美術&コンテンポラリーアート/BAGS/JEWELLERY&WATCHES/MANGAオークションを開催いたします。
緊急事態宣言下となりますので、新型コロナウイルスの感染予防対策として、会場にご入場いただける人数に定員を設け、予約制とさせていただくことにいたしました。
詳細はこちらをご覧ください。

新型コロナウイルス感染予防対策について

なお、ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなどの方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。
では、今回も近代美術オークションの出品作品の中からおすすめの1点をご紹介いたします。



560   松本 竣介
《コップを持つ子ども》
35.5×27.5cm 
板・油彩 額装
1942年作
右下にサイン・年代
東美鑑定評価機構鑑定委員会鑑定証書付
『松本竣介画集』(1963年/
平凡社)№56

『松本竣介油彩』(1978年/
綜合工房)№100


落札予想価格
★¥3,000,000~¥5,000,000








松本竣介(1912-1948)は、都会の風景や建物、人物などを題材とし、絵具を薄く幾重にも塗り重ねた堅牢な色面と繊細で意志的な線描により、清澄で詩情豊かな作品を生み出した画家です。戦中から戦後の過酷な時代に一人の画家としての活動を模索し、執筆によってもその尊厳を訴え続けましたが、病気のため36歳という若さでこの世を去りました。

本作は画面右下の年記より、1942年1月に制作された子ども像です。
この時期は自画像や女性像なども手掛け、代表作として知られる《画家の像》(宮城県美術館蔵)、《立てる像》(神奈川県立近代美術館蔵)、《三人》という大作を二科展に3年連続で出品しており、人物の主題の充実期であったことがわかります。

本作の題材である子どももまた、この頃3歳になろうとする愛息をイメージの源泉とし、好んで描かれました。ここでは、西洋の古典絵画の描法を取り入れ、褐色を基調とした何種類もの色彩を塗り重ねて深みのある色面をつくり出し、対象の量感や質感を巧みに表しています。さらに、レンブラントのように明暗を強調してコップを持つ子どもの姿を画面に浮かび上がらせてもいるようです。

その一方、自身で「線は僕の気質なのだ」*1)と語ったように、伸びやかな線描によってフォルムを捉え、ユーモラスな雰囲気を画面にもたらしています。特に、飲み物をこぼさないようにコップを大事に抱える左右の手に画家の関心が注がれ、その幼児らしいふくよかな手が実に表情豊かに描かれています。耳の不自由な竣介にとって、手は重要な「コミュニケーションの手段」*2)であり、多くを語るものであったのでしょう。愛するわが子を見つめる父の眼差しを感じさせる作ですが、竣介は本作をはじめとする油彩の子ども像のために数多くの素描作品を残し、また、子ども像が可愛らしくなりすぎないよう配慮していたことも知られており、無垢な子どもの普遍的なイメージを表現しようとしていたことをうかがわせます。

なお、本作は『松本竣介油彩』(綜合工房)に「第1回新人画会展」(1943年)の出品作として掲載されています。同会は表現の自由が制限され、画材の入手も困難となった戦時中、「人間として最小限の自己主張をしたい」*3)と集まった8人の画家の作品発表の場として結成されました。開催された展覧会はわずか3回でしたが、自身の芸術を模索し、描くために生きた若者たちによる作品と活動は現在も語り継がれています。

下見会にお越しの際は、竣介らしい味わい深い線と西洋の古典を見事に消化したマチエール、そして「手」にご注目ください。
オークション・下見会のスケジュールとご予約について、オンラインカタログはこちら

また、今回は5ジャンル同日開催となるため、オークション当日の下見会は開催いたしませんので、ご注意ください。
新型コロナウイルスの感染予防対策をしっかりと行い、皆様のご参加をお待ちしております。


(佐藤)

引用文献
*1
)松本竣介『人間風景 新装増補版』中央公論社 1990
*2
)田中淳「松本竣介淀橋区下落合四丁目のアトリエのなかで」『画家がいる「場所」
         ―
代日本美術の基層から』ブリュッケ 2005
*3
)麻生三郎「旧新人画会展より『新人画会』の今日的意味」『美術グラフ』11巻第9
        1962

高級家具師としてのガレ ―《マルケットリー蝶と花文キャビネット》

こんにちは。
27日の近代美術/近代美術PartⅡ/戦後美術&コンテンポラリーアートオークションにご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。
さて、今週の10日(土)は西洋美術オークションを開催いたします。
今回は、アール・ヌーヴォーを代表する装飾芸術家ガレの家具が出品されますのでご紹介いたします。
ガレはガラスだけでなく、家具や陶器の製作にも優れた才能を発揮したことで知られています。



107
 ガレ
《マルケットリー蝶と花文キャビネット》
H130.2×W73.7×D42.6cm
天板にマルケットリー銘
鍵なし
落札予想価格 
¥1,000,000~¥1,500,000



1885年、ガレは自身の設計による高級家具専用の工房を設立し、本格的に家具製作に取り組み始めました。
本作は、日本建築の設えの一つ、書院造りの違い棚に倣って制作されたキャビネットです。あたかも寺社の屋根のように両端を上方へ反らせた天板をはじめ、ガレが心酔した日本美術の影響が顕著に表われたデザインに特徴があります。 
さらに、自然の造形が随所に取り入れられ、可憐に咲く花々と儚く舞い散る花弁、その周囲に遊ぶ蝶が、天板と棚板、側板にマルケットリー(象嵌)によって表わされています。枝を象った透かし彫
                          り、幹を象った支柱や台にも花弁があし
                          らわれ、ガレの自然主義と洗練されたデ
                          ザイン力が見て取れます。


360度、どこから見てもガレの高級家具師(エベニスト)としての技が光る作品なので、ぜひ細部をご覧ください。


木片を素地にはめ込んで模様を表現するマルケットリ
ー技法を用いて、草花が繊細に表現されています。
マルケットリーは、ガラス工芸の分野でガレが1898年
に特許を取得した技法ですが、実は家具の寄木細工に
ヒントを得て創案されたと言われています。








 

扉部のガラスには、なんとも優美な花の図がエナメル彩で写実的に描かれています。
ジャポニスムや自然主義といったアール・ヌーヴォーの哲学を感じさせる作としてだけでなく、ガレの芸術のエッセンスであるガラスを組み合わせた家具という点でも大変魅力的で、希少な一点です。









このたびのオークションには、ほかにも同じくアール・ヌーヴォーの芸術家ルイ・マジョレルのソファーセットやベッド、アール・デコの彫刻家Demetre・Chiparusの女性像、ギリシャ・ペルシャ・ガンダーラなどの古代の土器や石仏が出品されます。さらに、フレンチの名店レストラン・クレッセントの特集コーナーには、三菱財閥の創業家である岩崎家注文のテーブルウェア、国立西洋美術館設立の契機となったことで知られる松方コレクションの絵画などの貴重な作品も含まれます。全450ロット、盛りだくさんの内容となりますので、ぜひ下見会でお気に入りの品を見つけてください。
オークション・下見会スケジュール、オンラインカタログはこちら

ご入札は、ご来場のほか、書面・電話・事前のオンライン入札・ライブビッドでも承っておりますので、ご都合に合わせてご活用ください。引き続き新型コロナウイルスの感染予防対策に取り組み、皆様のご参加をお待ちしております。

(佐藤)

夭折の天才・佐伯祐三の《下落合風景》

こんにちは。
東京はいよいよ桜が見頃となってまいりました。
緊急事態宣言が解除となりましたので、お花を眺めながら乾杯したいところですが、今年もお花見はできるだけお散歩で楽しみましょう。
なお、今週のオークションは通常通りご予約なしでご入場いただけます。

さて、今週27日(土)は、近代美術/近代美術PartⅡ/戦後美術&コンテンポラリーアートオークションを開催いたします。今回も出品作品の中からおすすめの一点をご紹介いたします。
パリの街頭の風景を狂おしいほどの情熱で描き、30歳という若さで夭折した画家、佐伯祐三(1898-1928)の作品です。


















302 佐伯祐三 《下落合風景》
45.4×53.1cm
板にキャンバス・油彩 額装
1926年頃作
裏に佐伯米子署名・印・年代・タイトル
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書付
『佐伯祐三全画集』(1968年/講談社)№206
『佐伯祐三全画集』(1979年/朝日新聞社)№381
『パリに燃えつきた天才画家の芸術 佐伯祐三 絵と生涯』(1991年/講談社)
落札予想価格 ¥12,000,000~¥22,000,000


1924年、25歳で念願のパリに渡った佐伯祐三は、フォーヴィスムの画家ヴラマンクとの出会いを機にその天賦の才を大きく開花させました。パリの裏街の風景、特に街の歴史と市井の人々の生活感を漂わせる壁をモティーフに自らの芸術を確立しましたが、1926年に一時帰国することを決意します。
一時帰国中は、留学仲間の里見勝蔵や前田寛治らとともに一九三〇年協会を結成し、同年の第13回二科展で二科賞を受賞。さらに個展も開催するなど、再びパリに旅立つまでのわずか1年4ヶ月ほどの間に洋画壇で華々しく活躍しました。また、「下落合風景」や「滞船」を主題とした連作の制作にも精力的に取り組みました。

1926年頃に制作された本作は、東京の下落合(現・新宿区中落合)にある自身のアトリエ周辺に取材した「下落合風景」の連作の一つです。近所の空き地あるいは畑から、木造家屋が立ち並ぶ集落の風景を描いています。生い茂る緑の部分に見られる、疾走するような激しい筆致やペインティングナイフの引っ掻き痕、空に表わされた深みと透明感を湛えた青は、パリ時代の作品に共通する佐伯芸術の魅力を感じさせます。
また、ここではこの連作の重要なモティーフである電柱が3本、集落の中に細くバランスよく配され、画面に垂直のリズムをもたらしています。画面右下にも白い柵が力強く描かれ、佐伯が帰国直前に関心を抱いた線の表現を引き続き試みる様子が見て取れます。こうした線の表現が、再びのパリにて街のポスターをはじめとする様々なモティーフに狂気を孕んで乱舞する線へと昇華しました。さらに、本作では、家屋の簡潔なフォルムを黒の輪郭線で強調しており、それらもまた第2次パリ時代に描かれるモラン風景の連作を予感させます。

なお、「下落合風景」の連作については、佐伯自筆の制作メモが残されています。
この制作メモを分析し、古地図や様々な資料をもとに佐伯作品の描画ポイントを推測されているブロガーさんがいらっしゃいます。その方のブログによると、この作品に描かれた左側の赤い壁の家は、なんと里見勝蔵宅である可能性が高いそうです。
とても興味深い内容ですので、こちらもぜひご覧ください。

ChinchikoPapa様ブログ「落合学(落合道人 Ochiai-Dojin)」より
「『森田さんのトナリ』に住んでいたのは?[気になる落合学]」


佐伯祐三は現在でもファンの多い作家ですが、その作品がオークションに出品されるのはとても希少です。ぜひ下見会場で実際の作品をご覧ください。

オークション・下見会スケジュール、オンラインカタログはこちら

ご入札はご来場のほか書面や電話、オンラインでも承っておりますので、ご都合に合わせてご活用ください。引き続き新型コロナウイルスの感染予防対策に取り組み、皆様のご参加をお待ちしております。

(佐藤)

近代柿右衛門を代表する花瓶/魯山人の哲学を表した染付皿

こんにちは。

春めく陽気となったかと思えば、また冬の天気に逆戻り。今年はこの三寒四温の温度差が激しいために、体調を崩される方も多いと聞きます。感染症や花粉症と相まって何かと気持ちも落ち込みがちですが、心の滋養にどうぞオークション作品をお楽しみください。

 

さて、現在東京都は緊急事態宣言の期間中につき、オークション当日はご予約制とし、会場にお入りいただける人数に定員を設け、感染予防対策に取り組みながら開催させていただきます。
ご来場以外に書面、電話、オンライン、ライブビッディングなどでもご入札いただけますので、そちらもぜひご活用ください。

 

今週末に開催されます「近代陶芸/近代陶芸PartⅡオークション」からこちらの作品をご紹介します。

★LOT.196
十三代 酒井田 柿右衛門 『染錦東海道五拾参次画花瓶』
H41.0×D32.3cm
共箱
高台内に描き銘「柿右衛門作」
台座付
落札予想価格:80万円~160万円

酒井田柿右衛門(1906-1982)は、江戸時代初期に輸出用の色絵磁器として繁栄した有田焼の「柿右衛門様式」を継ぐ十三代目にあたります。父・十二代柿右衛門と共に、『濁手(にごしで)』技法を現代に蘇らせ、スケッチを元にした型にとらわれない模様を生み出し、“近代柿右衛門”を確立しました。作品のみならず、日本伝統工芸展を始めとする多くの展覧会にもすすんで出品し、佐賀県の陶磁協会の会長を務めるなど多くの人々と交流を図るなかで、現代作家としての確固たる地位を得ました。

本作は、十三代の初期の頃の作品と言われています。「東海道五十三次画」をモチーフにした作品は、江戸期の伊万里作品でも人気があり、十二代の時代にも大型作品の代表として挙げられています。十四代も制作したということで、この「染錦東海道五拾参次画花瓶」は、近代の柿右衛門にとっては、技量を示す重要な作品と言えるようです。

また、今回は柿右衛門の置物も多く出品されます。十二代から続く型物なかでもLOT.99 十三代柿右衛門窯の「飛龍置物」は、ロボットアニメを彷彿とさせる形で作られており、新たな試みが伺い知れる一品です。

★LOT.99 十三代 柿右衛門窯                
 「飛龍置物」                         
H31.8×W29.8㎝                        
底部に描き銘「柿右衛門作」                   
共箱                              
落札予想価格:20万円~30万円

★LOT.102 十三代 柿右衛門窯
「色絵立像御薬湯観音置物」
H40.9×W12.6cm
高台内に描き銘「柿右衛門作」
共箱 ナオシ有
落札予想価格:10万円~15万円

そして、今回北大路魯山人(1882-1959)の作品で特に注目していただきたいのが、こちらの額装された染付皿です。

 

★LOT.229
北大路 魯山人『染付 福雅美生活 皿額』
各D21.7cm
額装(29.6×133.6cm)
「北大路魯山人展」出品 日本橋髙島屋他/1997~1998(平成9~平成10)年
『雅美生活 第一巻 第三號』表紙掲載(内四点)(雅美生活発行所)
落札予想価格:150万円~250万円

「福」の字はやはり根強い人気がありますが、「雅」「美」「生」「活」は、魯山人が星岡茶寮を追われて心機一転出版した雑誌『雅美生活』の表紙の為だけに制作したと思われます。「雅美(がび)」であることは、魯山人に取って藝術上、さらに言えば生きていく上で何よりも重要でした。それは、自身が興した「大雅堂古美術店」や「魯山人雅陶藝術研究所」に”雅(みやび)“が使用されていたことからも想像が付きます。

「雅美に親しめる風雅人は人一倍幸福だといふことである。」

『雅美生活』の創刊号に寄せた魯山人の言葉です。魯山人の哲学が生んだとも言える作品をぜひご覧ください。

 

下見会はご予約なしでご入場いただけますが、マスクの着用、検温・手指の消毒にご協力をお願いいたします。
皆様のご参加を心からお待ちしています。

 

オークション・下見会のスケジュールはこちら

 

 

                                  執筆者:E

坂本繁二郎の馬 ― ヴェネチア・ビエンナーレ出品作がやってきました!

こんにちは。
1/30(土)は2021年最初のオークションとなります、近代美術/近代美術PartⅡ/戦後美術&コンテンポラリーアートオークションを開催いたします。
新年のご挨拶が遅くなりましたが、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

現在、東京都は緊急事態宣言の期間中につき、当日はご予約制とし、会場にお入りいただける人数に定員を設け、感染予防対策に取り組みながら開催させていただきます。
ご来場以外に書面、電話、オンラインなどでもご入札いただけますので、そちらもぜひご活用ください。
新型コロナウイルス感染予防対策・オークション来場予約について

では、今回も出品作品の中からおすすめの作品をご紹介いたします。
坂本繁二郎(1882-1969)の馬を題材とした油彩画2点です。
坂本は、馬や能面、月を題材とし、パステル調の繊細な色彩で存在の神秘を描き出した画家です。
本ブログでは坂本の作品を何度もご紹介しておりますが、それでもご紹介せずにはいられない名作がこのたび出品されることになりました。









347
《厩の母仔馬》
38.1×45.4cm
キャンバス・油彩 額装
昭和14(1939)年作
右下にサイン
落札予想価格
¥15,000,000~¥25,000,000

掲載文献
・『坂本繁二郎画集』(1962年/求龍堂)
・『世界名画全集 続巻7 安井曽太郎 坂本繁二郎』(1962年/平凡社)No.20
・『〈愛蔵普及版〉現代日本美術全集11 坂本繁二郎』(1973年/集英社)参考図版No.20
・『日本の名画11 坂本繁二郎』(1976年/中央公論社)No.26
・『増補 坂本繁二郎作品全集』(1981年/朝日新聞社)No.48
・『坂本繁二郎[油彩]全作品集』(2009年/さかもと)No.197
出品歴
・「坂本繁二郎展」1962年(日本橋白木屋/読売新聞社)出品

仔馬とその小さな体を優しく包み込むような母馬の仲睦まじい姿を表わした作品です。馬は誕生から離乳までの期間、母子が一緒に行動する動物ですが、幼くして父を失い、母に育てられた坂本は母子の情愛に脆く、寄り添う2頭の姿に自身と母との思い出や母に対する思慕を投影したのでしょう。ここでも坂本らしいエメラルド・グリーンを基調とした微妙な色彩を用いて、厩に差し込む光と影を馬の姿態に表わし、直線的な筆致の構成によって背景を省略し、2頭から醸し出される生命感とあたたかな情感を際立たせています。









348 《林間馬》
46.0×53.1cm
キャンバス・油彩 額装
昭和22(1947)年作
右下にサイン・年代
落札予想価格
¥25,000,000~¥35,000,000

掲載文献
・『坂本繁二郎画集』(1962年/求龍堂)
・『世界名画全集 続巻7 安井曽太郎 坂本繁二郎』(1962年/平凡社)No.26
・『〈愛蔵普及版〉現代日本美術全集11 坂本繁二郎』(1973年/集英社)No.39
・『日本の名画11 坂本繁二郎』(1976年/中央公論社)No.30
・『増補 坂本繁二郎作品全集』(1981年/朝日新聞社)No.327
・『坂本繁二郎[油彩]全作品集』(2009年/さかもと)No.258        ほか多数
出品歴
・「第27回ヴェネチア・ビエンナーレ」1954年 出品
・「石橋美術館開館50周年記念 坂本繁二郎展」2006年(石橋美術館)出品
・「没後50年 坂本繁二郎展」2019年(久留米市美術館/毎日新聞社)出品   ほか多数

上の出品歴にありますように、坂本が岡本太郎とともに日本の代表作家に選出された、1954年の「第27回ヴェネチア・ビエンナーレ」の出品作の一つです。静寂に満ちた夜の林間にて、木立の隙間から覗く明るく澄んだ月が3頭の馬の姿を浮かび上がらせています。いっそう繊細で複雑になった筆致と濃やかな色彩により、月光に照らされる樹木と馬の姿態が神秘的かつ幻想的に捉えられています。それらは「能面がはなやぎ、馬がはなやぎ、月までがはなやいでいる」と讃えられた晩年の画境を、また、描かれた月はやがて展開される月の連作を予感させるようです。

作家の有名・無名にかかわらず、数ある出品作の中から自分の好きな作品を見つけることはオークションの楽しみの一つですが、思いがけず作家の代表作の一つと言われる名作に出会えることもまた、その醍醐味ではないでしょうか。
坂本繁二郎の馬の名作2点をぜひ下見会でご覧ください。
オークション・下見会スケジュール、オンラインカタログはこちら

下見会はご予約なしでご入場いただけますが、マスクの着用、検温・手指の消毒にご協力をお願いいたします。
皆様のご参加を心からお待ちしています。

(佐藤)