加山又造の富士

こんにちは。
東京は桜の見頃を迎えていますが、皆様のお住いの地域はいかがでしょうか。
今年は新型コロナウイルスの影響で、お花見の宴会も各地で自粛となっているようです。
毎年の恒例行事にされている方は残念ですが、今年は公園を散策して桜を楽しみましょう。

さて、3月28日(土)は近代美術/戦後美術&コンテンポラリーアート/近代美術PartⅡ/BAGS/JEWELLERY&WATCHESオークションを開催いたします。

当社では、新型コロナウイルスの感染予防に関しまして、下記リンクのような対応を行っております。ご参加をご検討されている方はご確認ください。
皆様のご理解とご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

【ご参加されるお客様へ】お知らせ


今回の近代美術オークションには、現代の日本画を代表する画家、加山又造(1927-2004)の名作2点が出品されますのでご紹介いたします。
2点の題材は、ともに日本の最高峰「富士」です。

富士は日本美術において伝統的に描き続けられ、とりわけ近代以降の絵画では日本の象徴として様式化されて表現されてきました。加山は主要なシリーズを制作する一方で、30歳頃から40歳代を中心に各地の山々に取材に出かけ、そのスケッチをもとに雪に覆われた峰や渓谷の風景を晩年まで繰り返し描きました。特に、激しさと静けさを併せ持ち、美しい稜線を見せる火山に惹かれ、火山を訪ねて回る過程で、先人たちが描いてきた富士に自身も挑戦しようと思い立ったと考えられます。

 
 257
 《不二》
  89.8×115.8cm
  紙本・彩色 軸装
  昭和59(1984)年作
  右下に落款・印 共箱
  加山哲也鑑定書付

「加山又造展」2009年(国立新美
術館/日本経済新聞社)出品

 落札予想価格 
 ★¥10,000,000~¥20,000,000


《不二》は、雲海の中に聳え立つ富士をクローズアップして描き出した作品です。
色味の異なる数種類の金泥や金砂子を駆使し、画題通り「二つとない」美しさを誇る山容、霊峰と呼ばれるその姿から醸し出される荘厳な気配や迫力を輝かしく表現しています。この眩い金は、加山が憧れた琳派を象徴する色彩であり、豪奢で装飾的であるだけでなく、永遠性を孕んだ象徴的な空間を創り出しているようです。さらに、見方を変えると、単色による豊かな色彩表現はあたかも墨を金に置き換えたかのようでもあり、この時期に加山が取り組んでいた水墨画の「墨に五彩あり」の境地を思わせます。



 258
 《青富士》
   70.7×109.2cm
   紙本・彩色 軸装
   昭和53(1978)年作
   左下に落款・印 共箱
   加山哲也鑑定書付
                                                          ・『加山又造全集[第一巻]動物
      たち/風景』(1990年/学習
      研究社)№121

 ・「加山又造展」2009年(国立新
                                                                                                              美術館/日本経済新聞社)出品

                              落札予想価格 
                                                                         ★¥5,000,000~¥10,000,000

《青富士》は、代表作の一つとして知られる三部作《雪》《月》《花》(東京国立近代美術館蔵)が完成した昭和53年に制作された作品です。
青い山肌の富士は夏を表わす題材であり、本作では形態を単純化し、緑鮮やかな周辺の山々とともに雲の合間から姿を現す様子を描いています。写実に基づいて表わされた沸き立つような雲は、空全体に刷かれた銀泥と思われるメタリックな絵具の効果により、装飾性のみならず立体感や動感がいっそう際立たされているようです。また、群青と緑青の組み合わせは、琳派の尾形光琳や酒井抱一が描いた夏の花、燕子花を想起させる色でもあるでしょう。

東洋の古典絵画に倣い、それを現代的で洗練された表現に解釈し直すことにより、革新的で装飾性豊かな作風を展開した加山又造。二つの富士の大作は、現代に相応しい新たな美を紡ぎだそうというその挑戦をうかがわせる優れた作例と言えます。

2点とも本紙が横1メートルを超える大幅です。ぜひ下見会場で実物をご覧ください。
下見会スケジュール・オンライン入札はこちら

皆様のご来場を心よりお待ちしております。

(佐藤)

中東に魅せられた二人の陶芸家―三浦小平二と加藤卓男

こんにちは。

 

この季節は乾燥や花粉、さらに今年は新型ウイルスまで加わり体調管理が何かと大変と思いますが、いかがお過ごしでしょうか?オークションビッドは書面や電話、オンラインでもお受けできますので、 ぜひお気軽にご参加ください。

 

さて、3月7日(土)に行われます「近代陶芸/近代陶芸PartⅡオークション」よりこちらの作品をご紹介します。

 

「青磁」で重要無形文化財保持者【人間国宝】に認定されている三浦小平二(1933-2006)は、新潟県佐渡の無名異焼(むみょういやき)の窯元で生まれました。無名異焼は鮮やかな緋色を特長とする高温焼成で焼締められた陶器です。小平二はその土を使い、上から青磁釉を掛け、土と釉薬の伸縮の違いで美しい貫入を生じさせました。また、釉調も深みのある明るいもので、国内外から高い評価を受けています。更に青磁作品には珍しく白磁で余白部分を作り、そこに豆彩(とうさい)技法で絵付けを行う独自のスタイルを確立しました。

30代半ば頃から旅してきた中近東やアフリカ、中国、インド等で、その際写生した景色をモチーフに絵付けをしています。摘みもオリエンタルな建造物や動物、人物などを丸みの帯びた形で成形し、豆彩技法で淡色を施すことによって、幻想的な作品を生み出しました。

今回出品される4点は、ろば、鳴き兎、らくだ、そして孔雀といった動物の摘みがそれぞれに付いています。異国情緒溢れ、愛らしさは随一。三浦小平二の世界感をどうぞお楽しみください。

 

続きまして加藤卓男(1917-2005)の作品をご紹介します。

加藤卓男も小平二と同じく、江戸時代より続く窯元・岐阜県多治見市の幸兵衛窯の跡取りとして生まれ、伝統的な志野・織部等を作陶する一方、中東の焼き物青釉やミナイ手(色絵)、三彩技法を中心に作品を生み出しました。なかでも、18世紀に途絶えていた幻の名陶《ラスター彩》を復活させた功績は大きく、現地トルコ・イスタンブールでも称賛され、国立トプカプ宮殿博物館で個展が開催されるまでに至りました。また日本においては、宮内庁より正倉院三彩の鼓胴と二彩鉢の復元を依頼され、9年の歳月を掛けて復元に成功しました。その後、「三彩」で重要無形文化財保持者【人間国宝】に認定されています。

 

今回出品される6点の内2点は、上部に鶏と鳳の頭を装飾した花瓶です。特に鳳首瓶は唐三彩でよく見かける柔和な意匠とは異なり、鋭利な眼光と嘴は、日本でおそらく最もなじみのある鳳凰像、宇治平等院鳳凰堂の鳳凰像の厳しさに近しいものがあります。また、三彩の花瓶2点とも胴部の貼花(型取られた模様)は技巧が凝らしてあり、ラスター彩の花瓶の透かしも古陶磁の再現性の高さが伺え見応えがあります。

 

三浦小平二と加藤卓男。中東に魅せられた両作家がそれぞれに極めた陶磁器をぜひご堪能ください。

 

下見会、オークションスケジュールはこちら

 

執筆者:E

 

 

夭折の洋画家たち 松本竣介と古賀春江

こんにちは。
本来なら一年で一番寒い時期のはずですが、今年の冬は暖かい日が多いですね。皆様のお住いの地域はいかがでしょうか。
新年のご挨拶が遅くなりましたが、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

2/1(土)は今年最初のオークションとなります、近代美術/戦後美術&コンテンポラリーアート/近代美術PartⅡを開催いたします。
今回は出品作品の中から、30代という若さでこの世を去ったことから、「夭折の画家」とも呼ばれる二人の画家の作品をご紹介いたします。


   
   241 松本 竣介

   《男の横顔》
    22.5×15.5cm
            板・油彩 額装   
            東美鑑定評価機構鑑定委員会鑑定証書付   

            落札予想価格
            ¥2,000,000~¥3,000,000


          松本竣介(1912-1948)は、東京渋谷に生ま
          れ、少年時代を岩手で過ごしました。13歳の
    時に病気で聴覚を失いましたが、画家を志し、
          1929年に上京。太平洋画会研究所に入所し、
          1935年第22回二科展に初めて出品して入選し
          ます。この頃より絵画制作の傍ら、雑誌『雑記
                                                                                 帳』を刊行するなど、画家の立場から社会に対する発言を積極的に行いました。1943年には、麻生三郎らと新人画会を結成。戦時下の美術活動や画壇のあり方を模索していきますが、病に倒れ、36歳の若さで早世しました。戦前から戦後に至る困難な時代、都市の風景とそこに生きる人々の姿を、純粋な眼差しと豊かな抒情で捉えた画家です。

竣介は、画業を通して本作のような人物の頭像を多く描いています。男の横顔を捉えた本作は、太い輪郭線、絵具を薄く幾層にも重ねたマチエールが、ルオーの影響をうかがわせる一点です。深く澄んだ青は、都会の雑踏をモンタージュの手法で描いた「街」シリーズでも使用された色。この繊細な色調と、大胆な線、簡潔なフォルムが混然となって、画家の詩情を色濃く伝えています。

 

         
        245 古賀 春江
       《ダリヤなど》  
          50.0×38.0cm
          紙・水彩 額装
         大正14(1925)年
         左下にサイン
         東美鑑定評価機構鑑定委員会鑑定証書付
     
       ・『古賀春江―前衛画家の歩み』
          (1986年/石橋美術館、ブリヂストン美術
              館)№77
       ・『古賀春江―創作のプロセス 東京国立近
              代美術館所蔵作品を中心に』
   (1991年/東京国立近代美術館)
    p.52・参考図版

  落札予想価格 ¥2,000,000~¥3,000,000

福岡県久留米市の仏門に生まれた古賀春江(1895-1933)は、画家の道を目指して17歳で上京。太平洋画会研究所、日本水彩画研究所で学び、水彩と油彩の制作に力を注ぎました。1917年第4回二科展に初入選し、1922年の第9回展では二科賞を受賞。同年、若手作家たちによる前衛グループ「アクション」の結成にも参加します。1929年には二科会員となり、精力的に制作に励みますが、病のため38歳で早世しました。自ら「前衛」を標榜し、セザンヌ風の水彩画、キュビスム、クレー風、シュルレアリスムなど、西洋絵画の最新の動向を積極的に取り入れ、抒情的で幻想的な作風を展開した画家です。

大正14(1925)年作の本作には、《花》(1925年頃作・石橋財団アーティゾン美術館蔵)と題された類似作品が存在するほか、東京国立近代美術館には、技法や作風の異なる様々なヴァリエーションとなる作品が所蔵されています。本作では、花瓶に生けた花々のかたちを円や半円形にまで単純化し、赤いダリヤを際立たせるように明るく爽やかな色面を配置した点に、キュビスムや抽象絵画の構成に対する古賀の強い関心をうかがわせます。また、作品に表われた自由で生き生きとした雰囲気は、翌年から始まるクレー風の時代を予感させるものと言えるでしょう。

松本竣介、古賀春江の作品が当社のオークションに出品されるのは、比較的珍しいことです。ぜひ下見会で、惜しくも若くして散ってしまった二つの才能に触れてください。
オークション・下見会スケジュールはこちら

皆様のご来場を心よりお待ちしております。

(佐藤)

吉祥文ー瓢箪と椿《12月近代陶芸/古美術》       

こんにちは。

気が付けば師走。あっという間に「もういくつ寝るとお正月」の歌が聞こえてきそうです。来年は、令和としての初めての年明けでもあり、オリンピックが開催されるなど華やかな一年になりそうですね。そんな年始にふさわしい、おめでたい吉祥文をモチーフにした作品を今週末に行われます「近代陶芸/古美術/近代陶芸PartⅡオークション」からいくつかご紹介したいと思います。

まずは古美術オークションより、瓢箪(ひょうたん)に関する作品から。

瓢箪は、三つで「三拍(瓢)子揃って縁起が良い」や、六つで「無病(六瓢)息災」など語呂合わせで縁起が良いとして古くから人気のあるモチーフです。『日本書記』にはすでに記述があり、戦国武将や大名茶人、絵師たちが好み「瓢(ひさご・ふくべ)」形の品が多く伝世されてきました。

LOT.71は、「浮瓢軒」とも名乗っていた片桐石州が所蔵していたのではないかとされる小さく愛らしい形の茶入です。LOT.74は、良く見るふくよかな瓢形ではなく、ひょろ長く寂びた絵付けを施している香合で、仁清という作家の奇抜な人となりを伺い知ることができます。そして、LOT.75は、上部を切り取った、瓢そのものを乾燥させ花入にしたものです。元々、千利休が考案した掛花入で、利休の侘茶を目指していた大名茶人の松平不昧が模して作ったとされています。最後にLOT.108狩野探幽「朱印瓢箪畫名印」ですが、金彩のみで瓢の一部を浮き上がらせ、自身の瓢形の朱印を用いて瓢箪そのものとしているところが珍しく、洗練された趣があり「洒脱」という言葉がふさわしい一幅です。

他にも、立身出世の蟹が彫刻された「郭索硯」(LOT.68)や、子孫繁栄の象徴の唐子が描かれた「南京赤繪唐子火入」(LOT.78)、また唐子を背に乗せた麒麟の香爐「色繪銅麒麟人物香爐」(LOT.103)、そして松竹梅を「松茸・筍・梅果」で表現した呉春の「松竹梅 三幅対」(LOT.81)など様々な吉祥文を用いた作品が、古美術オークションに彩りを加えています。

 

続きまして近代陶芸オークションより、椿があしらわれた作品をご紹介します。

椿は常緑樹で青々とした葉が落ちないことから、繁栄の象徴と考えられています。11月下旬頃に開花するので、最近ご覧になられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

紅椿の花言葉は、「謙虚な美徳」。彌弌の香盒と香爐にも紅椿がありますが、どちらも蕾の姿をしており、その控えめな花言葉にふさわしい美しい図柄です。また白椿の花言葉「完全な美しさ」を知ってから香爐を見ると、ぱっと咲いた白い椿の華やかさが際立つ気がします。音丸の椿香合も、花びらの部分をあえて白くしていることから、白椿を元にしているのかもしれません。金箔も使用されており、お正月の初釜に見合う一品ではないでしょうか。

 

新たな年へ向けて道具の取り合わせを考えながらご覧になるのも、一興かと思います。

ぜひ下見会、オークション会場へ足をお運びください。

オークションスケジュールはこちら。

追加訂正事項はこちら。

                        【執筆者:E】

坂本繁二郎の静物画

こんにちは。
11月も半ばに差し掛かり、いよいよ冬の足音が聞こえてきました。
さて、今週の16日(土)は、近代美術/戦後美術&コンテンポラリーアート/近代美術PartⅡ/MANGAオークションを開催いたします。
今回は、近代美術に坂本繁二郎の静物画が3点出品されますので、ご紹介いたします。

坂本繁二郎(1882-1969)は、現在の福岡県久留米市生まれ。幼なじみの青木繁に触発されて画家になることを決意し、20歳で上京します。小山正太郎の不同舎、次いで太平洋画会研究所に入門し、1907年、第1回文展に入選した後も同展で活躍しましたが、1914年には二科展の創立に参加します。そして、39歳の時、自らの技術や絵画理論を試すためにパリに留学しました。パリに滞在したおよそ3年間に、後の坂本芸術の重要な要素となる色彩や画面構成を獲得し、1924年に帰国。その後現在の八女市に移住し、馬と静物の主題に取り組んでいきます。1954年、第27回ヴェネチア・ビエンナーレ日本代表となり、1956年には文化勲章を受章。夭折した青木繁が早熟であったのに対し、坂本の画業は大器晩成とも評され、年齢を重ねるごとに滋味を増し、幽玄さを深めていったと言えるでしょう。

では、出品作3点を制作年代順に見ていきましょう。


【 オークション終了につき、画像は削除いたしました 】

Lot.73 《柿》
 38.2×45.7cm
キャンバス・油彩 額装
昭和16(1941)年作
 左下にサイン・年代
坂本暁彦鑑定証付
『坂本繁二郎作品全集』
(1981年作/朝日新聞社)№303
『坂本繁二郎[油彩]全作品集』
(2009年/さかもと)№212
落札予想価格
¥1,000,000~¥2,000,000


題材の柿は坂本の好物で、作品に繰り返し登場する果物です。本作は戦時中の1941年(当時59歳)に制作されているため、貴重な食糧でもあったかもしれません。描かれているのは干し柿でしょうか。刃物で皮を剥いたような断面が四角形や三角形の色面の構成で表わされ、3個の配置や直線的な枝のフォルムによって画面にリズムがもたらされています。
また、背景の微妙な紫色は、静物画のモティーフを生かす舞台として坂本が考案したものです。



【 オークション終了につき、画像は削除いたしました 】

Lot.75 《能面》
23.8×33.0cm
板・油彩 額装
昭和24(1949)年作
右下にサイン
坂本暁彦鑑定証付
『坂本繁二郎作品全集』
(1981年作/朝日新聞社)№350
『坂本繁二郎[油彩]全作品集』(2009年/さかもと)№280
落札予想価格
¥5,000,000~¥8,000,000

「坂本の作品は、馬よりも能面が好き」という方も多いのではないでしょうか。能面は、大正初期に詩人の三木露風とともに能楽堂に通い、能に感銘を受けて以来、その味わいを描きたいとずっと思い続けた題材です。作者不明の素朴な能面を骨董屋で買い集め、実際に制作に着手したのは坂本が還暦を過ぎてからであり、本作も1949年(当時67歳)に制作されたもの。若い女性を表わす小面(こおもて)と扇子、箱らしきものが画面に構成されていますが、面のみを写実技法によって立体的に捉え、そのほかのモティーフを平面的に描いた点が特徴的です。能面は能楽師が顔に付け、役の感情の機微を表現する道具であるため、物というより生きた人間の顔を描くように捉えられたとも考えられるでしょう。
また、能面の周囲に広がる濃い陰影は、光が作り出したものというより、面の醸し出す幻想性や幽玄な趣、人間的な情念を表わす色面のように見えます



【 オークション終了につき、画像は削除いたしました 】

Lot.74 《三壺》
32.1×41.0cm
キャンバス・油彩 額装
 昭和27(1952)年作
右下にサイン
坂本暁彦鑑定証付
『坂本繁二郎作品全集』
(1981年作/朝日新聞社)№484
『坂本繁二郎[油彩]全作品集』(2009年/さかもと)№304
落札予想価格
¥2,500,000~¥3,500,000


本作は1952年、古希(当時70歳)の年に制作されたものです。坂本家で使用されていたと思われる壺が並べて描かれています。ご注目いただきたいのは、壺の周囲に抽象的な色面として広がる陰影です。こちらも光によって対象の像が映されたものというより、壺の持つ存在感、そこに宿る魂のようなものが表わされているように見えます。さらに、本作では、坂本の壺への愛着を反映するかのように画面に朗らかさや華やぎが漂っています。

画業を通して、対象の生命や存在の神秘を表わすことを追い求めた坂本にとって、静物画は時に馬以上に重要なテーマでした。日常の中にあるものとじっくりと向き合い、対話するように描かれた作品の数々。出品作品の3点はそのあくなき探究心と東洋的な自然観を色濃く感じさせます。
ぜひ下見会場で、坂本の静物画の世界にじっくりと浸ってみてはいかがでしょうか。

オークション・下見会スケジュールはこちら

皆様のご来場を心よりお待ちしています。

(佐藤)

ルネサンスの花―《ルネサンス期殉教聖女像フレスコ画》

こんにちは。
19日のWINEオークションは、開催日延期にもかかわらず、たくさんのお客様にご来場いただきました。ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。

さて、今週の26日(土)は、西洋美術オークションを開催いたします。
今回も出品作品の中からおすすめの作品をご紹介いたします。



130  イタリア

                    《ルネサンス期殉教聖女像フレスコ画》

 画面 79.8×54.0cm
(額寸 86.8×61.2cm
 
  落札予想価格 
   ¥1,800,000~¥2,500,000



14世紀から16世紀、ルネサンス期のイタリアでは、宮殿や教会などの公的な建造物、貴族の邸宅のための壁画が盛んに描かれました。「ルネサンスの花」とも呼ばれたこの壁画の制作に用いられたのが、壁の表面に塗った漆喰が乾かないうちに、水で溶いた顔料で絵を描くフレスコ技法です。


キリスト教図像が描かれた本作は、教会の改修の際などに発見されたルネサンス期の壁画の断片と推測されるフレスコ画です。ルネサンス期の壁画は現存するものが少なく、きわめて貴重な一点と考えられます。
こうした宗教画や神話画、歴史上の人物を描いた西洋絵画では、描かれた人物のアトリビュート(持ち物)によってその人物を特定します。本作の女性と思われる人物は、光輪が背後に描かれていることから、聖人(殉教や徳行などによって列聖された人物)ということがわかります。アトリビュートを見てみると、赤い衣を身につけ、左手に本(聖書)、欠損している右手部分に殉教者の象徴である棕櫚(しゅろ)の葉を持っているようです。
これらの条件から、描かれた聖女は、危急時に信者がその名を呼ぶと難を救ってくれるという十四救難聖人の一人、①聖女カタリナ、あるいは②聖女バルバラのどちらかである可能性が考えられます。

①聖女カタリナ
実在の人物かどうかは定かではありませんが、一説には、3~
4世紀にエジプトのアレキサンドリアの貴族の家に生まれた女
性と伝えられています。才色兼備で知られ、若くして洗礼を
受けました。キリスト教徒を迫害する皇帝に逆らったため、
車輪に縛りつけられて身を引き裂かれる刑に処され、最後は
斬首されてしまいました。

この作品は、16~17世紀に活躍したイタリアのカラヴァッジ
ョ派の画家、バルトロメオ・カヴァロッツィ作《聖女カタリ
ナ》です。ここでは棕櫚の葉のほかに、カタリナの重要なア
トリビュートである刃の付いた車輪、剣も描かれています。
また、本オークションの出品作には描かれていませんが、
バルトロメオ・カヴァロッツィ   このように地位の高さを示す王冠を被っていることもカタリ
《聖女カタリナ》         ナの特徴の一つです。




②聖女バルバラ
こちらも実在の人物かどうかは定かではありませんが、3世紀頃に
トルコの裕福な家に生まれた女性と伝えられています。求婚者た
ちから遠ざけるため、美しい娘を溺愛する父によって塔に幽閉され、幽閉中にキリスト教に改宗。異教徒であった父の怒りを買
い、斬首されてしまいますが、父も雷に打たれて亡くなりました。

この作品は、14~15世紀の初期フランドル派の画家、ヤン・ファ
ン・エイクの《聖女バルバラ》(アントワープ王立美術館蔵、ベ
ルギー)です。出品作同様、聖書と棕櫚の葉を持っています。



ヤン・ファン・エイク
《聖女バルバラ》

Lot.130では、カタリナの車輪、バルバラの塔といった重要なアトリビュートが描かれた部分が失われているため、どちらかに特定することができません。しかし、残された部分には、信仰に情熱を
傾け、自らの生命を捧げた美しく清らかな女性の姿が鮮やかな色彩で表現されています。緊張感を孕んだ輪郭線、光と影による立体的な表現も見どころであり、また、聖女の背景や下半身部分にか
つて描かれていた図像を想像するのも本作の楽しみの一つです。

下見会にお越しいただき、ルネサンス期のイタリアを彩ったであろう画家の筆致をぜひ間近でご覧ください。
オークション・下見会スケジュールはこちら

皆様のご来場を心よりお待ちしています。
(佐藤)

舟越保武の女性像

こんにちは。
朝晩はずいぶん涼しくなり、少しずつ秋らしくなってまいりました。
土日祝日がお休みの方は三連休が続きますが、銀座でショッピングをされる際は、ぜひオークションにもお立ち寄りください。

さて、今週21日(土)は、近代美術/近代美術PartⅡ/戦後美術&コンテンポラリーアートオークションを開催いたします。今回のオークションでは、戦後の具象彫刻を代表する作家、舟越保武の作品が複数出品されますので、ご紹介いたします。

舟越保武(1912-2002)は、岩手県生まれ。17歳のときに高村光太郎訳『ロダンの言葉』に影響を受けて彫刻家を志し、東京美術学校(現・東京藝術大学)彫刻科に入学します。在学中から良きライバルであった佐藤忠良とともに切磋琢磨し、卒業後は二人で新制作派協会彫刻部の創立に参加。1940年頃から大理石彫刻に着手し、1950年にはカトリックの洗礼を受け、キリスト教を主題とした作品を制作していきます。1962年に第5回高村光太郎賞、1972年には第3回中原悌二郎賞を受賞。1967年から東京藝術大学、多摩美術大学などで教鞭を執り、後進の指導にも力を尽くしました。
ブロンズの重厚さと大理石の柔らかな肌合いを生かし、自らの深い精神性や祈りを込めた静謐な作風で知られる作家です。


65 《田沢湖のたつこ》

        H96.8×W24.7cm
  ブロンズ
  側部に刻銘
  台座付(H57.5×W45.0×D45.0cm)
  舟越苗子鑑定証付

  落札予想価格
  ★¥500,000~¥800,000


秋田県の田沢湖のほとりに立つ《たつこ像》のエスキースです。この地に生まれた美しい娘たつこが、永遠の若さと美しさを願ってお百度参りをし、観音様のお告げにしたがって山の奥深くに湧く泉の水を飲んだところ、大きな龍の姿に変わり、田沢湖の主となったという伝説がテーマとなっています。
本作では、舟越が偶然見かけたという工事現場で働く若い女性の姿からイメージを膨らませ、龍神となる前のたつこを美しく清らかに表現しています。








 

 

 

 

66 《若い女の顔》                67 《LOLA》
  
H31.0×W23.6cm                  H43.0×W42.0cm
  大理石                      ブロンズ
  側部に刻銘                    背部に刻銘
  台座付(H18.0×W31.8×D31.2cm)            台座付(H8.8×W53.5×D32.2cm)
  自筆証明書付                                                                     自筆証明書付
  落札予想価格                                                                     落札予想価格
   ★¥500,000~¥800,000                                               ★¥300,000~¥500,000

66《若い女の顔》と67《LOLA》は、舟越の代名詞的な主題、若い女性の像です。どちらの作品も表情に古代ギリシャ彫刻のアルカイック・スマイルが取り入れられ、微かに微笑みを浮かべた端正な顔立ちとなっています。さらに、ともに理知的で優美な雰囲気が漂い、理想化された女性美が表現されています。
また、66《若い女の顔》では、舟越芸術の根幹をなす大理石が素材とされています。滑らかに磨き上げられた顔と鑿の跡の残る頭髪部分に表われた柔らかな陰影、石肌の優しい風合いが女性像の魅力を増しているようです。


     68 《聖ベロニカ》
             H35.5×W26.0cm
            ブロンズ
             昭和52(1977)年作
             側部に刻銘 
            台座付(H17.0×W16.0×D16.0cm)
            舟越苗子鑑定証付
            落札予想価格
              ★¥300,000~¥500,000

舟越は、洗礼後、自身の信仰心を反映させた聖女像を数多く制作しました。
本作は、十字架を背負い、血と汗を流しながらゴルゴダの
丘を登るキリストのために、自らが身につけていたヴェールを差し出した女性、ベロニカが題材となっています。
キリストが汗を拭った後、ヴェールにはその顔が浮かび上                                                                        がり、それは「聖顔布」として現在もローマの教会に保存されているといいます。本作では、静けさの中にも、キリストの受難を前にしたベロニカの深い悲しみが眼差しや口元によく表されています。


角度によって表情が様々に違って見えるのも彫刻作品の魅力の一つです。
ぜひ下見会場で、舟越が創り出した女性像の美を360度からご堪能ください。

下見会・オークションスケジュールはこちら

皆様のご来場を心よりお待ちしています。

(佐藤)

 

藤田喬平・日本の美の再生―飾筥

こんにちは。

長く続いた酷暑もいよいよ終わりが見えてきましたが、まだしばらく蒸し暑さは残りそうですね。秋風が待ち遠しい今日この頃です。

さて、今週末に「近代陶芸/近代陶芸PartⅡオークション」が開催されますので、その中からいくつか出品作をご紹介いたします。

LOT.152 藤田喬平
「手吹飾小筥 七(淡雪/飛鳥/湖上の花/紅白梅/羽衣/夢殿/龍田)」
 H8.8×W9.3cm他 各底部に掻き銘「Kyohei Fujita」
各共箱(淡雪のみ藤田潤箱)
落札予想価格:¥1,300,000.~¥1,800,000.

藤田喬平(1921-2004)は、国際的なガラス工芸の第一人者といえる作家です。

戦争末期の1944(昭和19)年に東京美術学校工芸科彫金部(現東京藝術大学)を卒業後、母方のいとこである岩田藤七(1893-1980)率いる岩田工芸硝子株式会社に入社しました。当時の岩田工芸では、進駐軍向けのワイングラスや放電管を作る職人としての仕事が主でしたが、作家としての道を選んだ藤田は、1949(昭和24)年に独立し、自ら制作・販売を行うという生活を始めました。これは当時では世界的にも珍しく、1960年代、スタジオ・グラス運動(用として大量生産で作られるガラスではなく、芸術的なガラス作品を作り出す運動)がアメリカで始まる10年ほど前に、早くも個人で宙吹(ちゅうふき)ガラスの窯を創設していたことになります。

個展を中心に活動していた藤田は、1964(昭和39)年・東京オリンピックが行われた年に、「虹彩」というオブジェでもあり花器でもある作品を発表しました。後に「流動ガラス」と名付けたこの一連の作品群は、軟らかい状態のガラスを吹竿に巻き取り、息を吹き込み球状に膨らませ、鋏等で成形する宙吹ガラスの手法で作られており、流れるガラスの一瞬を切り取ったような躍動感ある形状をしています。この作品が藤田の出世作となりました。その後、「流動ガラス」を超えるものをと考え生み出したのが、「飾筥(かざりばこ)」です。

 

「飾筥」は、鉄の型の中に吹いたガラスを軟らかいうちに入れ、角型の作品を作ることに成功し誕生しました。これは、「尾形光琳や俵屋宗達が生きていたら、ガラスでどんなものを作ったのだろう」という発想のもと生み出されたといいます。そのため「源氏物語」や「竹取物語」、「古都」や「花散る里」など日本の美をテーマに創作されました。

 

「飾筥」シリーズの成功によって海外からの招待が頻繁となり、世界的に評価を高めていきました。1977(昭和52)年からイタリアのヴェネチアにあるムラノ島で毎年制作を行い、「手吹ヴェニス」と題された作品は今現在も、数多く残ります。2003(平成15)年に文化勲章を受章し、翌2004(平成16)年に亡くなるまで、藤田は新作展を開催し続けました。今作の「手吹飾小筥 淡雪」は、亡くなられた年に発表されたものです。最期まで「日本の美」を独自の手法で追求した藤田のガラスをぜひご覧ください。

 

こちらは「飾小筥」でしたが、通常の「飾筥」も三作品出品されます。

LOT.150 藤田喬平「手吹飾筥 湖上の花」
H16.3×W12.0cm
底部に掻き銘「Kyohei Fujita」
共箱
落札予想価格:¥450,000~¥650,000

LOT.151 藤田喬平「手吹飾筥 源氏物語」
H23.0×W17.4cm
底部に掻き銘「Kyohei Fujita」
共箱
落札予想価格:¥700,000~¥1,000,000

LOT.153 藤田喬平「手吹飾筥 湖上の月」
H22.3×W24.0cm
底部に掻き銘「Kyohei Fujita」
共箱
落札予想価格:¥900,000~¥1,300,000

 

その他にも、珍しいところでは松井康成、鈴木蔵、藤本能道、八木一夫といった作家から四者四様の陶板作品が出品されます。こちらも用ではなく、鑑賞としての陶芸作品ですので、ご興味のある方はぜひ足をお運びください。

スケジュールはこちら。

 

執筆者:E

 

 

岡鹿之助が描いた三色菫

こんにちは。
海の日も過ぎ、梅雨明けの待ち遠しい季節となってまいりました。

さて、今週20日(土)は、近代美術/近代美術PartⅡオークションを開催いたします。
今回も出品作品の中からおすすめの作品をご紹介いたします。


【オークション終了につき、画像は削除させていただきました】

52 岡鹿之助

《三色スミレ》
33.5×24.4cm
キャンバス・油彩 額装
昭和47年(1972)作
右下にサイン
裏に署名・年代 共箱
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書付
『岡鹿之助画集』(1978年/美術出版社)№304

落札予想価格 ¥8,000,000~¥12,000,000



岡鹿之助(1898-1978)は、独特の点描技法により、ヨーロッパの古城や群落、発電所、
三色菫パンジーなどのモティーフを詩情豊かに描き上げた画家です。
岡は、劇作家や小説家として知られる岡鬼太郎の長男として東京に生まれました。1919年東京美術学校(現在の東京藝術大学)西洋画科に入学し、岡田三郎助教室に学びます。卒業後はフランスに渡り、レオナール・フジタの指導を受けながら、サロン・ドートンヌなどの公募展に精力的に出品。第二次世界大戦が勃発した1939年に帰国を余儀なくされるまで、油彩技法の研究に励みました。帰国後は春陽会を舞台に活躍する一方、度々パリを訪れ、堅牢なマチエールと静謐な佇まいの作品を描きました。1972年にはその功績が高く評価され、文化勲章を受章します。

本作はこの1972年に制作された《三色スミレ》です。「ルノワールは薔薇に、ルドンはアネモネに自分を託したように、絵描きは自分を託して表現するのにもっとも具合のいいものをつかまえることに努力します。私の場合、三色すみれなどもそれに似ているのですよ。」(『美術手帖』142号 美術出版社 1958年)と語っているように、岡にとってこの花は自身の代名詞となる重要なモティーフでした。
また、岡の作品において、三色菫は皆正面を向いて描かれますが、そこには小さな子どもたちがこちらを向いている姿や、まるで笑ったり怒ったりしているかのような豊かな表情がイメージとして重ねられています。本作でも、花たちが顔を寄せ合い、こちらに向かって微笑んでいるかのようであり、その曲線的で緊密な構成と緻密な筆致が調和し、可憐さや素朴なあたたかさを感じさせます。

近代美術PartⅡには、三色菫をモティーフとしたインク作品も出品されます。
表情の豊かさという点では、こちらの方が率直に表現されているかもしれません。
まるで花たちが、ニコニコ笑いながらおしゃべりしてるようにも見えませんか?


【オークション終了につき、画像は削除させていただきました】

643  岡鹿之助
《Pensees variees》
18.4×13.0cm 
紙・インク 額装
左上にタイトル、右下にサイン

落札予想価格 ¥100,000~¥200,000  

今回の下見会も近代美術/近代美術PartⅡ同時開催となりますので、ぜひ可愛らしい花たちを会場でご覧ください。

下見会・オークションスケジュールはこちら

皆様のお越しを心よりお待ちしています。

(佐藤)

モーリス・ユトリロの「白の時代」―《モンマルトルへの道》

こんにちは。
お祝いムードのGWが終わり、ようやく日常が戻ってまいりました。
10連休だった方も、そうでない方も、体調を崩しやすい時期ですのでお気をつけください。

さて、今週18日(土)は、令和元年1回目のオークションを開催いたします。
下見会、オークションともに、近代美術/近代美術PartⅡ/MANGA 同時開催となります。
お間違えのないようよろしくお願いいたします。

では、今回も近代美術の出品作品の中から、おすすめの1点をご紹介したいと思います。
レオナール・フジタやモディリアーニ、キスリングらと同様、狂乱の時代のパリで「エコール・ド・パリ」として人気を博した風景画家の作品です。







 

 

 


100   モーリス・ユトリロ(1883-1955)
《モンマルトルへの道》
65.0×91.0cm
キャンバス・油彩 額装
1910年頃作
右下にサイン
Jean Fabris/Cedric Pallier 鑑定証書付
P.Petrides, L’oeuvre Complet de Maurice Utrillo, tomeⅠ, Paris, 1959, no.154
落札予想価格 ★¥8,000,000~¥15,000,000

モーリス・ユトリロは、モデルで画家のシュザンヌ・ヴァラドンの息子として、パリに生まれました。実父を知らず、母の愛情を得られない寂しさから、少年時代にアルコール中毒に陥り、治療の一環として絵を描き始めます。
その才能はすぐに開花し、20歳代は、職業を転々としながら街の風景をメランコリックに描き、やがて建物の漆喰の壁の質感に自身の感情を投影させた、静謐で哀愁漂う作風を確立しました。
30歳を過ぎた頃から、鮮やかな色彩と一点透視図法を多用した絵画へと作風を一変させ、1920年代にはエコール・ド・パリの寵児として注目を集めます。孤独とアルコールに苛まれながら、生涯を通して詩情豊かなパリの風景を描いた画家です。

1910年(当時27歳)頃作の本作は、ユトリロが暮らしたパリ、モンマルトル付近の通りを描いたものです。画面の奥に向かって、点景人物が歩いていく様子がうかがえますが、通りの先は行き止まりのように見えます。人物の前には背の高い塀が立ちはだかり、通りの両側にも建物が並んでいます。
塀と建物の壁に用いられたのは、ユトリロ独特の白の絵具。「白の時代」と呼ばれるこの時期、ユトリロは、ときに油絵具に石灰や砂、卵の殻などを混ぜ、年代を経た漆喰の質感を表現しました。また、それと同時に、自らの心に渦巻く苦悩や葛藤、孤独をそこに塗り込めていきました。
本作でも、白の絵具と感情的な筆致、そして行き場を失った点景人物の姿に、ユトリロが感じていたであろう不自由さや空虚さが滲むようです。

冒頭にも書きましたが、今回は、下見会も近代美術/近代美術PartⅡ/MANGA 同時開催となります。
下見会では、ユトリロのほか、ジョルジュ・ルオー、荻須高徳、小出楢重、杉山寧、横山操など、
また、近代美術PartⅡのレンブラントやミレーの版画、歌川広重の「名所江戸百景」など、
MANGAの手塚治虫「魔神ガロン」や「火の鳥」原稿、藤子不二雄、赤塚不二夫、鳥山明などの色紙といった、バラエティに富んだラインナップが一度にご覧いただけます。
お好きな作品をきっと一つは見つけていただけると思いますので、ぜひ会場で実物をご覧ください。

下見会・オークションスケジュールはこちら

皆様のお越しを心よりお待ちしています。

(佐藤)