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東京下見会はじまります

 Asian Auction Week in Hong Kongにお越しくださった皆様、海外まではるばるありがとうございました。先週は、日本でも下見会を開催しておりました。東京、名古屋、大阪会場にご来場いただいた皆様にもお礼申し上げます。

 さて、今週も東京で下見会を開催いたします。近代美術、JEWELLERY & WATCHESの作品を展示いたしますので、ぜひお越しください。期間中は、ご希望があれば近代美術PartⅡの作品もご覧いただけますので、お気軽に会場スタッフにお声をかけてくださいね。

 本日は、5/23の近代美術オークションの出品作品の中から、横山大観の作品をご紹介いたします。今回のオークションでは、横山大観の大正期から晩年までの作品6点が出品されます。時代やテーマごとの大観作品の魅力をぜひ会場でご堪能ください!

言わずと知れた近代日本画の巨匠ですが、まずは横山大観を簡単にご紹介します。

 横山大観(1868-1957)は、近代の幕開けの年、明治元年に水戸で生まれました。1889年第1期生として東京美術学校に入学。日本美術の改革を目指した岡倉天心に学び、その志を受け継ぎます。同期の菱田春草とともに、朦朧体と呼ばれる描線を排した表現方法で日本画の近代化をはかっていきました。1898年東京美術学校騒動が起こり、東京美術学校助教授の任を辞職。日本美術院の創立に参加して主軸として活躍し、《生々流転》や通称《海山十題》といった豪放で壮大な大作を数多く残しました。明治・大正・昭和、約70年に渡って画壇のリーダーとして生き、日本画の改革運動を進め、後世の日本画壇に多大な影響を与えた画家です。

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Lot.88 横山大観
《若葉の頃》
130.0×41.8cm
絹本・彩色 軸装
大正12年作
右下に落款・印
共箱
『横山大観 第2巻 大正』掲載 P.260(大日本絵画)
横山大観記念館登録あり
エスティメイト ★¥3,000,000 – 5,000,000



 大正12年作(当時55歳)。同じ年、大観は自身の地位を確固たるものにした代表作《生々流転》を完成させており、壮年期の脂の乗った時期に制作されたものと言えるでしょう。木々の青さが眩しいこの季節にぴったりの作品です。
 大観はこの時期、色彩画、水墨画両方の研究に力を入れていますが、本作品においては、縦構図の画面を生かし、色彩によって広大な空間の広がりを表しています。東洋画固有の色彩描写の優位を、作品を通じて表現しようとしているかのようです。


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Lot.104 横山大観《雨後嵐峡》
54.5×71.3cm
絹本・彩色 軸装
昭和17年作
右下に落款・印
共箱
『横山大観 第3巻 昭和Ⅰ』掲載 P.210(大日本絵画)
横山大観記念館登録あり
エスティメイト ★¥5,000,000 – 8,000,000


 こちらは昭和17年作(当時74歳)。霧の漂う雨後の連峰を、緑と墨の濃淡で雄大に描き出した作品です。山腹には滲みを効果的に用い、画面全体の統一された空気を感じさせます。
 本作品を描く2年前に大観は代表作《海に因む十題》《山に因む十題》を制作して大きな賞賛を集めました。円熟期を迎えた本作品では、長い画業を経て追求してきた朦朧体や水墨の濃淡渇潤の複雑な変化が表現され、そこからは深山を覆う霊気までもが伝わってくるようです。年齢を重ねてもなお、「日本画で空気を描く」という青年時代からの課題や気韻生動を求め続ける大観の画業の深まりを感じさせる作品です。

<オークションと下見会の日時、会場の詳細はこちらから>

みなさまのお越しを心よりお待ちしております。

(執筆:S)

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