月別アーカイブ: 2010年1月

コンテンポラリーアートの新しい傾向「アニマミックス」に注目

上海当代芸術館(MOCA,The Museum of Contemporary Art Shanghai)では現在、「アニマミックス・ビエンナーレ(Animamix Biennial、動漫美学双年展)」が開催されています。

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上海当代芸術館は2005年にオープンしたコンテンポラリーアートを専門としたガラス張りの建築が美しい美術館です。上海の中心地にある人民公園内にありますが、幅広いジャンルのアートを取り扱う歴史的建造物、上海美術館が人民公園脇の大通りに面しているのに対し、当代芸術館は公園の入り口からさらに奥へ進んだ先にあり、公園の木々に囲まれてひっそりと佇んでいます。

「アニマミックス(Animamix、動漫美学)」とはアニメーションとコミックを合わせたもので、上海当代芸術館のクリエイティブディレクターであり、この展覧会のキュレーターであるビクトリア・ルー(Victoria Lu)による造語です。ビクトリア・ルーは、アジアのコンテンポラリーアートにおいてアニメや漫画の影響が見られる作品が増加しており、この新しい美術傾向を表現する言葉として2006年に「アニマミックス」を提起しています。

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今回のビエンナーレは2007年に次いで2回目にあたり、上海(上海当代芸術館)、北京(今日美術館)、台北(台北当代芸術館)、広州(広東美術館)で同時開催または巡回される大型展覧会で、キュレーターにより選出されたグローバルに活躍する世界20カ国100以上のアーティストが参加しています。その多くはアニメや漫画と共に育った1970年代~80年代生まれの若手アーティストであり、日本人アーティストの作品も多く展示されています。

ビクトリア・ルーは、アジアの新しい世代のアーティストは日本のアニメや漫画、ゲーム等の影響を受けてきていますが、1960年代、70年代のポップアートの世代が漫画やアニメから視覚的象徴を単に取り入れたのと異なり、アニマミックスのアーティストは、根本的にそれらのメディアが彼ら自身の美的感覚の中に深く浸透しているといいます。彼らの作品は高尚な芸術とサブカルチャーとの境目を曖昧にしており、また様々な創作領域、例えばブランドとのコラボレーションやオリジナルグッツの制作等のクリエイティブな活動にも従事し、度々それらの活動と自身の作品を融合しているアーティストもいます。

上海展においては、日本人アーティストでは金田勝一、北川宏人、松浦浩之、長沢郁美、渡辺おさむ、吉田朗、森本めぐみ等が参加。また昨年、アーティストインレジデンスのプログラムで上海にて制作活動をしていた龍門藍の作品も3作品展示されていました。
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自然光が差し込む、吹き抜けのある空間に展示された作品は、わかりやすくかつ親しみやすいものが多く、「アニマミックス」というコンセプトゆえ当然なのかもしれませんが、キャラクター的要素の強い作品が多いのが特徴的でした。日本人アーティストに関しては当社のオークションでも取り扱い歴のある馴染みのある作品もあったのですが、「アニマミックス」というコンセプトで作品を見直す良い機会となりました。

またこの展覧会の出展作品に限らず、このコンセプトに相応するアーティスト、作品が見受けられるのも事実であり、今後、「アニマミックス」という言葉がコンテンポラリーアートの傾向として一般的になるのか、注目していきたいものです。(執筆:M)


非/現実のメタファー アニマミックス・ビエンナーレ2009-2010
(Metaphors of Un/Real – Animamix Biennial 2009-2010、
寓意 非/現実―2009動漫美学双年展)
会場:上海当代芸術館
会期:2009年12月12日~2010年1月31日
http://www.mocashanghai.org/

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長谷川利行など、情趣溢れる作品群

 昨日より、近代美術オークションの下見会が銀座でスタートしています。
 会場には新春にふさわしい絵柄の日本画や、長谷川利行の味わい深い作品群が並んでいます。

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シンワアートミュージアム1階の様子

奥に見えるのは川端龍子の作品。華麗な色彩で大空間を彩っています。
LOT15 川端龍子《花山》¥3,500,000.~¥4,500,000.


昔から日本画の画題として最もよく描かれてきた、春を祝う絵柄が、今回はよく揃っています。

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これは伊藤小坡という女流画家が描いた、桃の節句を祝う立雛(たちびな)の作品。
LOT5《立雛》¥600,000.~¥900,000.


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前田青邨の《紅白梅》(左/¥1,800,000.~¥2,500,000.)。

 このほか、LOT7奥村土牛の《梅》LOT19片岡球子の《わらべ梅の頃》も、春の梅を描いています。


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地下一階の様子


 前回のブログでもご紹介したように、長谷川利行の名品が並んだ今回のオークション。

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 中でも《ノア・ノア》(画面左)は利行の短い生涯の中でも最も優れた時代と言われる頃に描かれたもの。
新宿の喫茶ノア・ノアの給仕の女性を描いた作品です。
 チカチカと明滅するライトの下で堂々と座る女性を、利行が貪るような視線でとらえた様子が思い浮かびます。画家はこの作品を。わずか1時間で描き上げたと言います。


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 地下1階の奥の壁には、坂本繁二郎、梅原龍三郎、香月泰男といった近代の巨匠の作品が並び、さながら美術館の雰囲気を醸し出しています。
 こんな壁が、居間にあったらステキですね。



 さて最後にひとつご紹介です。

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 シンワアートミュージアムの近代美術オークション下見会では、お客様がご自由に美術品の相場をお調べ頂ける、パソコンを常設しております。
 簡単な操作で、シンワアートオークションに出品された過去の作品の落札データを瞬時に表示することが可能です。

 ご利用はもちろん無料です!
 美術品をお求め・売却の思案中といった方は、会場の作品とともに是非ご利用下さい。

(井上素子)

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長谷川利行《カフェ・パウリスタ》

 こんにちは。今週はいよいよ今年初めてのオークションです。
近代美術オークションの出品作品の中からおすすめの1点をご紹介します。


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長谷川利行 (1891-1940)
《カフェ・パウリスタ》
40.7×60.3cm
キャンバス・油彩 額装
1928-29年作
右下にサイン
木村東介シール
長谷川利行遺作油繪鑑賞展(1974年・東京美術會館)
生誕100年記念 長谷川利行展(1991年・新宿小田急百貨店)
没後60年長谷川利行展(2000年・神奈川県立近代美術館)
鬼才長谷川利行と二人―熊谷登久平・矢野茫土 一関ゆかりの画家生誕百年―(2001年・一関市博物館)
エスティメイト ¥3,500,000~5,000,000



 長谷川利行は、「リコウ」の愛称と放浪の画家として知られる画家です。その激情的な生き様と作風から「日本のゴッホ」とも称されています。利行は1891(明治24)年、京都に生まれました。中学時代から詩や短歌を創作し、28歳の時、私家版歌集『木葦集』を刊行。やがて独学で始めた油絵に夢中になり、1921年頃上京した後は公募展への出品を始めました。関東大震災を機に京都に戻りましたが、1926年再び上京。1927年第14回二科展で樗牛賞、翌年に第3回1930年協会展奨励賞を受賞します。住居を定めなかった利行は、簡易宿泊所などを転々としながら東京の下町を描き続けました。1936-37年には、新宿の天城画廊で集中的に作品を発表。1940年行き倒れとなり、49年の破天荒な生涯を閉じました。

 本作品のモティーフとなった「カフェ・パウリスタ」は、現在も銀座8丁目にあるカフェです。100年近い歴史を持つこの老舗のカフェは、岸田劉生、高村光太郎、永井荷風、芥川龍之介といったそうそうたる芸術家や文化人たちが通った知的社交場として名高いお店です。当時のカフェは1Fにバーやサロン、2Fに食堂があるのが普通で、現在の喫茶店とはまったく別物だったそうです。利行は銀座の街をしばしば描きましたが、その中でも特にこの「カフェ・パウリスタ」を好んでいたようです。
 本作品を描いた時期、利行は二科展と1930年協会展でたて続けに受賞を重ねた直後であり、人生で最も野心と夢に溢れていました。大震災から急速な復興を遂げたモダンな銀座、文化の香り高いカフェで夢を描く画家の姿を想像させる作品です。

 近代美術、Jewellery&Watches下見会は明日から開催いたします。
スケジュールはこちら

 銀座7丁目にありますシンワの下見会場とカフェ・パウリスタはすぐ近くです。
作品をご覧になった後は、コーヒーを楽しみながら利行の時代に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
みなさまのご来場を心よりお待ちしております。

(執筆:S)

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新春 下見会スタートです


 あけましておめでとうございます!
寒い寒いお正月でしたが、皆様はお元気に新年をお迎えでいらっしゃいますか。


昨日より、シンワアートミュージアムでは近代美術パート2オークションの下見会を開催しております。
東京ではこれが新春初めの下見会となります。

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会場風景
正面に児玉三鈴の金屏風が立ち、いかにも新春らしい会場の雰囲気です。

LOT571 児玉 三鈴《松の図屏風》
左隻175.6×181.0cm(180.2×186.0cm) 
右隻175.8×181.0cm(180.2×186.0cm)
各紙本・彩色
左隻:左下に落款・印
児玉陶欧シール
Est. ¥150,000.~¥300,000.

 児玉三鈴(こだま・さんれい/1915-2002)とは、川端龍子に師事した日本画家です。
青龍会で活躍した後に日本画府という画壇を創立し、理事長まで務めた人物です。
 本作品は龍子を彷彿とさせる堂々とした作風が魅力的です。


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LOT661 モーゼル《飾り壷》
H63.7×D18.4cm
下部に陰刻銘
Est. ¥200,000.~¥400,000.

 珍しいモーゼルの壷も出品されています。
 モーゼル(Moser)は、ルドヴィック・モーゼルによって1857年に設立されたブランドで、最高級のボヘミアングラスと言われます。
 職人気質で造形された芸術性の高い工芸品は贈答品としても人気があります。


 今回のオークションで注目を集めているのが、織田広喜の作品群。

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 壁一角が織田の作品で埋まり、展覧会を見ているような気にすらなります。
 茶系や灰褐色を主調にした作品の数々を眺めていると、このような色彩の混ざり合いの中から、これ程の心地よい世界を描くことができた画家の才能に改めて驚きます。
 

 近代美術・ジュエリー&ウォッチに関しては、既に今週月曜と火曜に大阪下見会を終え、金曜と土曜には名古屋で下見会を開催しております。
 東京でご覧いただけるのは1月20日(水)~23日(土)となります。

詳しい時間等はこちら


 皆様のご来場をお待ち申し上げます。

(井上素子)
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