月別アーカイブ: 2009年2月

20周年記念オークション、始動

 東京では春一番が吹いたと思ったら、一転して長雨が続きます。お身体など壊されていませんか?

 シンワでは今日から大阪下見会、来週月曜からは名古屋下見会を開催しております。今回は大阪の下見会場を移し、広くなったスペースに全作品を展示いたしますので、ぜひご来場下さいませ。会場地図はこちら

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 陶芸も展示しています。

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 奥にジュエリーのカウンターもございます。


 また今週半ばから、シンワのトップページが岸田劉生の作品に変わっておりますのはお気づきでしょうか。解説の文章は日本語のほか、中国語・韓国語にも翻訳されて、世界中へと魅力をお伝えしているところです。解説はこちら

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 大阪の下見会場での劉生コーナーです。


 3月の近代美術では、20周年記念として、劉生にまつわる講演会も開催致します。現在、DMやWEB、チラシなどをご覧になった方から、続々とお申し込みが寄せられております。
先着200名様です。お申込みはこちらから
講演者の田中先生は、岸田劉生や黒田清輝など、近代洋画を専門にご研究をされており、ご著書『画家がいる「場所」―近代美術の基層から―』は、当社でも作家について調べるときに、繰り返し参考にさせて頂いております。

 昨日よりカタログを発送させて頂いておりますが、中には「日本の近代美術」と題した教科書をお付けいたしました。コンテンポラリーが盛んに話題になったここ数年ですが、やはり近代美術あってこその、現在です。これからも力を入れてその魅力をお伝えできればと存じます。

 近代美術PartⅡ出品作品についても、3月の当ブログでご紹介して参りますので、どうぞご期待下さい!

(執筆者:I)

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展覧会レビュー:全光榮(チョン・クァンヨン)展

 今、六本木ヒルズの大きなクモの下をくぐりぬけ、52階の森アーツセンターギャラリーに昇ると、韓国の伝統と現代を同時に感じられる、特別な展覧会に出会うことができます。

 本日は、当社のオークションにも出品されたことがあり、韓国はもとよりアメリカ、イギリス、オーストラリアと世界各国で展覧会を開催し注目されてきた韓国の作家、全光榮(チョン・クァンヨン)の展覧会をご紹介いたします。


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 近年韓国のアート・フェアやオークションから注目され始めた全光榮の作品は、昨年の5月、クリスティーズ香港で約30万ドルに近い高値をつけたことで、コンテンポラリー作家としてのその立場を確立しました。また昨年の9月にはニューヨークのロバート・ミラーギャラリーにおける個展での大成功で、世界中からその評価を高めつつあります。このような彼の作品は、何よりその素材からにじみ出る「韓国の情緒」を中心に鑑賞すべき作品だと思われます。

 作品の素材である韓紙(ハンジ)と呼ばれる韓国独特の伝統紙は、楮(こうぞ)を原料とし、柔軟性や耐久性に優れ、千年以上もつと言われています。実際に全光榮が作品に用いる韓紙も、およそ50~100年前から使われてきたものだそうです。

 その韓紙を用いて三角形のポリスチレンフォームを包み(wrapping)、その小片を組み立て(assembling)、無数に集合(aggregation)させた彼の作品は、「集合」シリーズという名が付けられています。
中でも、規格が明確に決まっている西洋のボックス(Box)文化とは異なる、心のゆとりがある東洋の「ふろしき」文化から「包む」というイメージの作業が生まれたと作家自身が語ったのも、今回の展示の重要なポイントとなると思われます。

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<Aggregation 05-OC045>2005年© Chun Kwang‐Young


 日本で初の展覧会を開いた全光榮は、「日本で展覧会を行うのは、他の国々で成功をおさめてから」という強い希望をもっていたそうです。なぜなら、韓国の最も伝統的な素材を使うことで、最も韓国人の内面に染み込んできた「魂」、あるいは「情」を表す作品だからこそ、両国間の悲しい歴史を超えて、それを日本の観客にも伝えたい、あるいは感じてほしいという芸術家としての使命感ゆえではないでしょうか。


 それはまた、展覧会のオープニング・パーティ直後、以下のように語った彼の言葉からもよく伝わってきます。

 「展覧会のため日本へ向かっている間、韓紙で作られた自分の作品が、韓国の先祖や自分自身の歴史に関わる物語であることを、日本の方々にうまく伝えられるだろうかと、ずっと心がひりひりしていました。」「日本の心臓である東京、その中でもハイレベルな美術館として話題になっている森美術館で、自分の作品を見せることができたなんて信じられません。40年という作家活動の中で、一番感動的な瞬間でした。」

 彼にとって日本初という今回の展覧会が持つ意味がどれほど特別なものなのか深く感じられました。

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<Aggregation 05-AU033>2005年 © Chun Kwang‐Young

 極めて伝統的な韓紙という素材の中から民族的な魂を感じつつ作品に向かうという全光榮の作品は、それに相反した、極めて現代的でダイナミックなものになっています。
 今回展示されている、悩む人間の頭像や心臓をイメージした大きい造形作品などは、まるで活発に息をしている生き物のような動的イメージで溢れています。


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<Aggregation 08-OC034 RED>2008年 © Chun Kwang‐Young

 今回の展覧会は、今までに公開されたことのない1970-80年代の平面絵画を含め、約30点の作品が展示されています。その中の「集合」シリーズのすべての作品が新作ということは、作家の意気込みがいかほどであったかを再認識させてくれます。

 皆様、東京の中心で、韓国の伝統の「情」を感じてみてはいかがでしょう?このように特別な展覧会は、是非お見逃しなく!


<展覧会概要>
会期:2009年2月14日~3月15日(日) 会期中無休
時間:10:00~20:00(入館は19:30まで)
会場:森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階)
展覧会公式サイト:http://www.roppongihills.com/jp/events/macg_Chun.html

(執筆者:W)

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大阪・名古屋下見会のお知らせ

一気に春がきたような陽気だった週末から一転、東京には凍えるような寒さが戻ってきました。
三寒四温といいますし、少しずつ春が近づいている証拠かもしれませんね。

梅

さて、本日は3月に開催するオークションと、大阪・名古屋の下見会についてお知らせします。
3月は21日(土)にJEWELLERY&WATCHES / 近代美術Partll / 近代美術オークション、28日(土)に近代陶芸オークションを開催いたします。とりわけ、近代美術オークションは当社の20周年記念オークションとして開催いたします。
このブログでも出品作品をご紹介していきますので、どうぞお楽しみに。

これらのオークションの下見会を大阪・名古屋にて2/27(金)・28(土)及び、3/2(月)・3(火)に開催します。
特に今回の大阪下見会は会場が変更となり、より多くの作品をご覧いただくことができるようになりました。


~下見会スケジュール~
<大阪下見会>
会期:2/27(金)・28(土) 10:00~17:00
会場:御堂会館 南館B1Fホール(地図はこちら

<名古屋下見会>
会期:3/2(月)・3(火) 10:00~18:00
会場:DAITEC SAKAE 6F クリエイトホール(地図はこちら

展示作品:
近代美術・JEWELLERY & WATCHES(全作品展示) / 近代陶芸(大阪のみ一部展示)

主な展示予定作家:
■近代美術
岡 鹿之助 / 岸田 劉生 / 熊谷 守一 / 佐伯 祐三 / 中村 彝 / 中川 一政 / 林 武 / 三岸 好太郎 / レオナール・フジタ / 山口 長男 / 川合 玉堂 / 杉山 寧 / 前田 青邨 / 棟方 志功 / 平山 郁夫 / 横山 大観 / アンリ・マティス / ジャン・ピエール・カシニョール / ポール・アイズピリ / ラウル・デュフィ 

■近代美術Partll
池田 満寿夫 / 絹谷 幸二 / 小杉 小二郎 / 平野 遼 / 山形 博導 / 池田 遙邨 / 今野 忠一 / 後藤 純男 / 清水 規 / アンドレ・ボーシャン

■近代陶芸(大阪のみ)
板谷 波山 / 音丸 耕堂/ 金重 陶陽 / 金重 素山 / 加守田 章二 / 河井 寛次郎 / 北大路 魯山人 / 楠部 彌弌 / 富本 憲吉 / 浜田 庄司 / 藤田 喬平 /樂 了入 / 樂 覚入 / 芹沢 介


長男
山口長男「作品」
60.2×91.0cm / 板・油彩 額装
落札予想価格:700万円~1,000万円

(近代美術オークション出品)


~オークションスケジュール~
<JEWELLERY & WATCHES / 近代美術Partll / 近代美術オークション>
日時:3/21(土) 
14:00~(JEWELLERY & WATCHES /近代美術Partll)
18:30~(近代美術)
会場:丸ビル7階 丸ビルホール

<近代陶芸オークション>
日時:3/28(土)  16:00
会場:シンワアートミュージアム


みなさまのお越しを心よりお待ちしております。

(執筆:N)

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ルビー&サファイア

幼い頃、母に読んで聞かせてもらったオスカー・ワイルドの童話、「幸福な王子」。金箔で包まれた王子の像が、ツバメの手を借りて自身の眼のサファイア、剣の柄についたルビーを貧しい人に与える、という物語に胸が揺らいだ記憶が蘇ります。
古から、ルビーとサファイアは聖書や神話など様々な物語にも登場し、愛されてきました。
本日は、弊社のジュエリー&ウォッチオークションではおなじみ、ルビーとサファイアについてお伝えいたします。

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lot323 パープルサファイア 
ダイアモンドリング
エスティメイト:5万円~10万円

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lot369 ピンクサファイア 
ダイアモンドリング
エスティメイト:7万円~15万円

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lot423 ルビー ダイアモンドリング
エスティメイト:13万円~20万円
ルビーとサファイアは、鉱物学では同じコランダムに属しており、ダイアモンドに次ぐ硬さを持ちます。主な成分はアルミニウムと酸素です。純粋なコランダムは無色で、1%程クロムが混入することで赤くなったのがルビー、鉄とチタンの混入で青くなったものがサファイアです。その他のものはサファイアに分類されており、「ファンシーカラー・サファイア」として、色のバリエーションが豊富にあります。

例えば、ルビーとしては淡い赤色のものは「ピンクサファイア」、黄色は「イエローサファイア」など、サファイアの前に色を冠った名称が付けられています。また、ピンクとオレンジの中間色をしたサファイアは「パパラチア」(蓮の花)と呼ばれ、その微妙な美しい色合いから高い人気を誇っています。
しかし、これらのファンシーカラー・サファイアの色合いのはっきりとした線引きは難しく、鑑別機関や販売業者に委ねられています。

写真上からパープルサファイア、ピンクサファイア、ルビー。
微妙な色の違い、お分かりになりますか?


ルビーの語源はラテン語で赤を意味するルベウス。主な産地は、ミャンマー、タイ、スリランカ、アフリカなどです。ミャンマーのモゴック地方の鉱山から採掘されるルビーは柔らかい色が特徴ですが、中でも「ピジョンブラッド」(鳩の血の色)と呼ばれる透明度の高い、濃厚な色のルビーは、最高級品として評価されています。10カラットを超えるルビーの希少性は高く、宝石の中ではダイアモンド以上に最も高額で取引されています。

一方、サファイアの主な産地は、ミャンマー、インド、スリランカ、オーストラリアなど。通常、サファイアとルビーは同じ鉱山から採掘されますが、産地により比率が異なり、スリランカではサファイアが多く採掘されています。最高級品とされるのはインド、カシミール産のサファイアです。柔らかく優しい色合いから、「コーンフラワー」(矢車草)の色合いに例えられていますが、現在はほとんど産出されていません。

またサファイアは、気品に溢れた高貴な風格から、古より王室や聖職者に愛されてきたという歴史があります。イギリス王室では、多くのブルーサファイアの宝物があり、王室第一級公式王冠であるインペリアル・ステート・クラウンには、サファイアが使用されています。ダイアナ妃がチャールズ皇太子から贈られた婚約指輪も美しいブルーサファイアだったそうですが、ダイアナ妃はロイヤルファミリーの色であるブルーサファイアを好み、よく身に付けていたといいます。

3月21日開催のジュエリー&ウォッチオークションは、約200ロット出品され、ルビー、サファイアもお手頃な価格で多数取り揃えています。来週末からは大阪、続いて名古屋で下見会を開催いたしますので、お近くの方はぜひ、会場に足をお運びください。皆様のご来場をお待ちしております。(執筆:M)

【JEWELLERY&WATCHES】

オークション:2009年3月21日(土) 14時~ 丸ビルホール

下見会:【大阪】御堂会館 南館B1Fホール
            2/27(金)・28(土) 10:00~17:00 
     【名古屋】DAITEC SAKAE 6F・クリエイトホール
            3/2(月)・3(火) 10:00~18:00 
      【東京】 シンワアートミュージアム
            3/18(水)~20(金) 10:00~18:00   
            3/21(土) 10:00~12:00  

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2月14日はワインオークション・デー

 明日は2月14日、バレンタイン・デー。淑女の皆様は、チョコレートのご準備はお済みですか?
ビジネス・ウーマンの方は、今日が義理チョコ・デーかもしれませんね!

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 さて、シンワアートオークションでは、2月14日、ワイン・オークションを開催いたします。チョコの代わりにワインをプレゼントというのも素敵ですよね(※)。
今日はその中から、バレンタインにちなんで甘めのワインを選んでご紹介します。

 今回出品される中には、甘めのワインとして、
LOT46シャトーディケム(ソーテルヌ)1982・83年 各1本
エスティメイト50,000~80,000円
などがあります。この他にも、今回のオークションには甘いワインが比較的多く出品されていますので、チェックしてみてくださいね。

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甘いワインは、香りも濃厚なので、たとえばガーデン・パーティーをされる際や、お花見にお持ちになる際には最適です。

 お料理との相性としては、トリュフがもっともよく合うと言われています。お肉やお魚の食事と一緒に飲まれるよりも、食後のデザートワインとして楽しまれる方が多いようです。
 レストランによっては、普通のワイングラスではなく、おちょこ位のサイズにサーブして軽く味わう楽しみ方をお勧めしているお店もあります。

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本格的なお料理にあわせて赤・白のワイン、シャンパンを揃えられたら、このような甘めのワインもご用意されてみてはいかがでしょうか。
 これから迎える春の一日、お宅にお客様をお招きになった際に、こんなワインをお供にお庭やテラスでおしゃべりを満喫・・・なんて、とってもおしゃれですよね。


■シンワアートオークション・ヴィニコル共催
  ワイン・オークション日程
・オークション  2月14日(土)15:00より
・会場      シンワアートミュージアム

※ ワイン・オークションでご落札いただいた商品は、当日お引渡しすることができま
   せん。基本的にご配送とさせて頂きます。直接のお引渡しをご希望の場合は、
   3月5日(木)PM1:00から3:00、寺田トランクルーム(東京都品川区東品川二丁
   目6番10号)にてとなります。そのほかの日程をご希望の場合、ご落札時に社
   員までご相談ください。

(執筆者:I)

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加山又造展 

 本日は当社のオークションでもおなじみの日本画家・加山又造の展覧会をご紹介いたします。

 加山展といえば、2006、2007年とたて続けに開催されたのをご覧になった方も多いかもしれません。今回会場となっているのは、六本木の国立新美術館。東京では10年ぶりの大回顧展だそうです。ずらりと集結した代表作、約100点はまさに「豪華絢爛」という言葉がぴったりです。近年ご覧になった方も見逃してしまった方も、加山作品をお持ちの方もそうでない方も、ぜひご覧になってみてはいかがでしょうか。


図版1 《夜桜》 1982年 光記念館
(※図版は掲載許可の期間が終了したため削除させて頂きました。)


 まずは加山又造についてご紹介します。
加山は1927(昭和2)年、京都西陣の和装図案家の家に生まれました。幼い頃から絵の才能を発揮し、京都市立美術工芸学校絵画科に学んだ後、上京して東京美術学校日本画科に入学。卒業後は山本丘人に師事し、戦後間もなく創立された創造美術展(後の創画会展)に出品して入選を果たし、若くしてその才能を認められました。
 西洋絵画の影響が色濃く表れた初期の動物画から、琳派をはじめとする日本の古典に倣った華麗な屏風絵、浮世絵の線描表現の美しさに触発された裸婦像、北宋山水画に学んだ水墨画など、鋭敏な美的感覚で革新的な芸術世界を次々に展開しました。1966年に多摩美術大学日本画科教授、1988には年東京藝術大学美術学部教授に就任。2003年文化勲章を受章し、翌年76歳で逝去しました。

 展示は、第1章から第6章まで、動物画、屏風絵、裸婦、花鳥画、水墨画、絵画以外のアートワークと、多岐に渡ります。加山の画業は、一つの様式や題材を、生涯を通して発展させていったものではなく、「日本の美」を志向して様々な題材と画風に挑戦したものでした。そのため、この6章での構成は大変わかりやすく、その作風の変遷を辿ることができます。章から章への驚くべき変貌ぶり、どのテーマにおいても貫かれた加山の美意識と作品の完成度の高さに圧倒されます。

 展示室に入ると、まずお出迎えしてくれるのが、《雪》《月》《花》。これらを版画で再制作した作品は当社のオークションにも出品されたことがあります。そのせいか、もっと小さなサイズを想像していましたが…、なんと実際はそれぞれ350cm×450cmの大作です!リニューアル前の東京国立近代美術館のエントランスに展示されていたもので、加山が美術館に依頼され、8年間の歳月をかけて完成させた三部作だそうです。加山芸術を象徴するような3点に迎えられ、一気にその世界観に引き込まれるような気がしました。


図版2 《雪》《月》《花》 1978年 東京国立近代美術館
(※図版は掲載許可の期間が終了したため削除させて頂きました。)

 
 個人的には、「新しい日本画を描こう」という加山の強い意志と模索が熱く伝わってくる初期の動物画がおすすめなのですが、今回の展覧会で特にご注目いただきたいのは屏風絵と水墨画です。


図版3 《春秋波濤》 1966年 東京国立近代美術館
(※図版は掲載許可の期間が終了したため削除させて頂きました。)


 第2章屏風絵のコーナーに足を踏み入れた途端、《春秋波濤》、《千羽鶴》といった加山の装飾美の世界が絢爛豊麗に広がっています。役者が揃ったというのでしょうか、壮観とはこのことですね。日本美術が本来持っていた装飾性を、加山がいかに深く追求して取り入れ、現代的な表現へと解釈し直したかがよく感じられます。


図版4 《千羽鶴》 1970年 東京国立近代美術館
(※図版は掲載許可の期間が終了したため削除させて頂きました。)


 また、第5章水墨画のコーナーでは、それまでの華麗な色彩の作風から打って変って、モノクロームの世界が展開されます。ここでも加山は、雪舟や長谷川等伯などの古典に倣い、水墨によって日本的な情緒や装飾性を表現しました。加山は「墨に五彩あり」という言葉を好んだようですが、加山の水墨では、濃淡を駆使した色彩を感じさせる要素とともに、対象の動感と空気感が見事なまでに描出されています。岩に砕ける波や山岳を包み込むような霧、大きな体をくねらせる龍の姿が目の前にあるような錯覚すら覚えてしまいそうです。このコーナーにある《倣北宋水墨山水雪景》は近寄ってご覧になるだけでなく、離れたところからもご覧になってみてください。厳しく屹立する雪山がまるで3Dのようにこちらに迫ってくるように見えますよ。


図版5 《倣北宋水墨山水雪景》 1989年 多摩美術大学美術館
(※図版は掲載許可の期間が終了したため削除させて頂きました。)


 今回の展覧会の特色として、着物やジュエリー、陶器など、加山が手がけた絵画以外のアートワークが充実しています。それぞれに加山の洗練されたデザイン感覚が発揮され、絵画を描く片手間に取り組んだものでないことがはっきりとわかります。宗達や光琳など、江戸時代以前の美が日常に溶け込んだものであったように、加山も普段の生活の中にある美を目指してこうした制作に向かったのでしょうね。


図版6 《はぎ》アームレット 1985年 個人蔵
(※図版は掲載許可の期間が終了したため削除させて頂きました。)


 先日当ブログでご紹介した三瀬夏之介のように、コンテンポラリーアートの分野で最近活躍している作家の中にも、日本画を描く人たちがいます。彼らも日本の古典を取り入れながら、それぞれの個性を表現していますが、加山はその先駆的な存在と言えるかもしれません。多くの作家たちが西洋的なものを志向した近代の中で、加山は伝統的な日本美の可能性を信じて追求し、自身の研ぎ澄まされた感覚で表現しました。今回の展覧会はその画業の軌跡を通じて、加山が生涯を賭けて挑んだ「日本の美」の魅力を現代に生きる私たちに明確に見せてくれます。


【展覧会概要】
加山又造展
会期:2009年1月21日(水)~3月2日(月) ※会期中展示替えあり
会場:国立新美術館 企画展示室1E(東京都港区六本木7-22-2)
開館時間:午前10時~午後6時
       (金曜日は午後8時まで。入館は閉館の30分前まで。)
展覧会公式サイト  http://www.kayamaten.jp/
巡回先:高松市美術館  2009年4月17日-5月31日

シンワブログ読者の5組10名様に抽選で、加山又造展(国立新美術館)のご招待券をプレゼントいたします!
下記のフォームに必要事項をご記入の上、ご応募ください。
当選の発表は賞品の発送をもって代えさせていただきます。

<応募期間終了>

                               (執筆:S)

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三瀬夏之介展~冬の夏~

今日は、1月15日より佐藤美術館で開催されている、三瀬夏之介展をご紹介いたします。

1999年に京都市芸術大学大学院美術研究科絵画専攻を修了した三瀬は、2002年「第2回トリエンナーレ豊橋 星野眞吾賞展」で星野眞吾賞受賞、本年は上野の森美術館が主催するVOCA展(「VOCA展 新しい平面の作家たち」)においてVOCA賞も受賞し、今後の活躍が期待される現代作家として注目を集めています。2007年から2008年にかけて、五島記念文化財団の研修員としてフィレンツェに滞在しました。また、弊社のオークションにも2007年より何点か出品され人気を博しています。

日本画の伝統的な技法に則りながら、現代に生きる新しい感性で描く画家として、町田久美、中村ケンゴ、山本太郎、松井冬子などがいますが、三瀬夏之介もその一人です。
三瀬の作品には、伝統的な日本画の価値観にとらわれない斬新さが見られます。たとえば、素材も岩絵の具だけではなく、様々な素材を塗り重ねた立体感のあるマチエールで表されていて、フィレンツェ滞在中の2007年に制作された「日本画滅亡論」では、チーズの包み紙と思われる素材をはじめ金箔や印刷物がコラージュされています。

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        《ぼくの神さま 2008》


佐藤美術館での展示は、3階と4階の2フロアを使って行われています。
まず順路の通り3階から入ると、三十四曲一隻の大作「奇景」が目を引きます。
2003年から2008年までの歳月をかけて紙片に描きためられたモチーフをつなげ、増殖させながら制作された絵巻物のような作品の中には、大魔神、西洋の塔、電車、飛行機といったモチーフが、延々と増殖するかのごとく描かれています。

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3階 《奇景》


4階では、三瀬のアトリエを再現した空間が設けられ、ラジカセからパイプオルガンの荘厳な音楽が流れる中、光、舟、はしご、剥製、流木、木といった素材を用いたインスタレーションが広がり、三瀬の世界観を垣間見ることができます。
個人的には、三瀬夏之介というと「日本的な風景」のイメージを持っていましたが、今回、インスタレーションを含めた幅広い作品群を見て、フィレンツェで三瀬が受けた影響を色濃く感じました。また、廃墟、飛行機、墓、山、森といったモチーフが広がるすべての絵画作品を貫く要素として、きらきら輝く「光」を強く感じました。

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4階 展示室

もう一つの見どころは、「日本画滅亡論」と同年に描かれた「日本画復活論」が同時に展示されていることです。同時期に描かれながらも相反するタイトルを掲げる2点の作品は、「ひとつのものごとを思考するときに、まったく逆のベクトルの可能性も考えてみる」のが癖だという三瀬の思想の両極を見ることができます。

画面を継ぎ足しながら時間をかけて描かれた絵巻物のような作品は、生きもののような増殖性を持ちます。日本の古都である奈良で生まれ育った三瀬が、イタリアの古都であるフィレンツェで過ごし、自身の原点に迫る中で編み出された、東洋と西洋の枠を超えた壮大な風景を、ぜひ堪能しに行ってみてください!

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「冬の夏」 三瀬夏之介展
2009年1月15日(木)~2月22日(日)
佐藤美術館 http://homepage3.nifty.com/sato-museum/
入場料:一般500円、学生300円
開館時間:午前10時~午後5時(金曜日は午後7時まで)
休館日:月曜日
*入場は閉館の15分前まで

                                  (執筆:K)

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