月別アーカイブ: 2008年9月

芸術の秋―秋の展覧会シーズン、スタート!

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PartⅡオークション、ジュエリー&ウォッチ・オークションにご来場頂いたお客様、ありがとうございました。当日は、「今日から秋」という涼しさで、清々しい秋晴れの下でのオークションとなりました。


今週半ばにはもう10月ですね。クールビズを推進してきた当社も、そろそろ秋服です。オークションのラインナップも、10月は西洋アンティークやワイン。季節を感じますね(ワイン・オークションは例年、寒い季節に開催されています)。

芸術の秋、食欲の秋、スポーツの秋・・・と申しますが、皆様は秋にどのようなイメージをお持ちでしょうか?シンワでは、芸術をなりわいとしながらも、ベテランにはグルメが多く、若手には体を動かすのが好きな社員が多いので、「食欲の秋」・「スポーツの秋」派がけっこういます。私は、その中では少数派の「芸術の秋」派です。

秋になると、日本では大型企画展覧会が開催されます。シンワでは、落札されたお客様の作品を展覧会に貸し出す仲介も行っているので、展覧会情報は自然に集まってきます。この秋のお勧めをいくつか挙げてみると・・・。


<巨匠の名品>
●巨匠ピカソ展 国立新美術館 (10月4日~)
 ・・・有名な《ドラ・マールの肖像》が出ます。
●大琳派展 東京国立博物館(10月7日~)
 ・・・見たことがありそうで実は無い作品が並びます。
●ボストン美術館 浮世絵名品展 江戸東京博物館(10月7日~)
 ・・・世界有数のコレクション。殆どが日本初公開。

<近代絵画がお好きな方は>
●高山辰雄展 練馬区立美術館(~11月3日)
 ・・・今年の9月で一周忌です。更に評価を高めていくことでしょうね。
●中山忠彦展 北九州市立美術館 (~10月28日)
 ・・・作家が所蔵するアンティークドレスも展示されます。

<コンテンポラリーアートの展覧会>
●横浜トリエンナーレ 新港ピア・赤レンガ倉庫ほか(~11月30日)
●エモーショナル・ドローイング 東京国立近代美術館(東京は10月13日迄。その後京都に巡回)


楽しみですね~。私も既に一つは見て、大興奮。手帳にはここからあと5つの展覧会を回るスケジュールが書き込まれています。
11月のシンワアートオークションに出品される作家の新作を観たり、調査をするために行くことが多いのですが、好きなアートが出ていると嬉しくなります。こっそりメモ帳に感想を書いておいたりするのが、芸の肥しになります。

10月末からはコンテンポラリーアート、近代美術、PartⅡ・・・とオークションが続きます。皆様も当社でどうぞ芸術の秋をお楽しみください。
(執筆:I)

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宝石・時計、PartⅡオークション作品ご紹介

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    Lot429《ヒスイ ダイアモンドブローチ》
     落札予想価格:150万円~250万円
陶芸オークションにご来場頂いた皆様、ありがとうございました。
前日には、あわや台風が上陸かしら・・・というハラハラした気持ちでしたが、幸いにも当日朝には行き過ぎて、銀座の空には晴れ間が覗いていました。

さて、初秋のオークション・ウィーク第三弾は、
今週末のジュエリー&ウォッチ、
近代美術PartⅡオークションです。
 
lot356

     Lot356《ダイアモンドリング》
     落札予想価格:7万円~15万円

先週末に私が見た映画で、ジュエリーのオークションのエピソードがありました。競りに参加した女性が、欲しいリングを競り落とせなくて残念そうにしていると、その女性のパートナーがリングを突然プレゼントしてくれるというシーンがありました。実は、競りの相手は彼女の恋人の男性だったのです。

ジュエリーのオークションにはこうしたロマンティックな物語がしばしば誕生します。以前、婚約者への指輪を探しているという男性のお客様もいらっしゃいました。今回のオークションではどんな出会いが生まれるのでしょうか――。

PartⅡオークションには、エッシャーの版画が二点出品されます。上から見ても、下から見ても、どこか矛盾している複雑な世界が描かれています。エッシャーはオランダ生まれの版画家ですが、1950年代にアメリカで人気を博し、日本にも紹介されると爆発的に人気を集めました。2006年には東京渋谷のBunkamuraで大規模な展覧会が開催され、リバイバル・ブームとなりました。

今回出品される《Convex and Concave》(エスティメイト80万~120万)《Belvedere》(エスティメイト100万~150万)は、どちらも有名な作品。価格もかなり!魅力的です。

また、お着物や帯も出品されます。作家ものの訪問着や、色打掛、小紋が、中にはエスティメイト5万円~からで計10点出品されるのですから、PartⅡのおトクさを感じて頂けることかと存じます。
最近では、「アンティーク着物」や「リサイクル着物」といった言葉もよく耳にするようになりましたね。外国のお客様のお宅では、帯を壁飾りとしてインテリアに利用される方もいらっしゃいます。外国の方というのは、日本のデザインを、伝統的使い方にとらわれずに斬新に取り入れられるので、勉強になります。

今回のクライマックスは、何と言っても芹沢介の作品でしょう。彼の作品117点が一挙にオークションにかけられるのですから、滅多に無いことで、もちろんシンワでも最も多い出品となります。

芹沢は1895年生まれの染色家(~1984年)です。沖縄の紅型(びんがた)に学び、創案した「型絵染め」で人間国宝に指定された人です。着物を染める手法を和紙に応用した初めての作家で、柳宗悦が提唱した「日本民藝」グループの一人としても知られています。
柳は、芹沢の作品に用いられている色を、「極楽の色だ」と評したといいます。確かに、芹沢作品には、植物の色らしい、優しく懐かしい風合いがあり、その配色は心を浮きうきさせるような感じがあります。ぜひ、会場でお手に取ってご覧くださいませ。(執筆:I)



<JEWELLERY&WATCHES/近代美術PartⅡ>
●オークション
会場:  シンワアートミュージアム
日時: 2008年9月27日(土)14:00より
●下見会
会場: シンワアートミュージアム
日時:9月24日(水)~27日(土) 10:00~18:00
※最終日の27日(土)は12:00まで

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9月近代美術オークションレビュー

皆さま、連休をどうお過ごしでしたか。
土曜日に、丸ビルで近代美術オークションへご参加いただいたお客様、ありがとうございました。

本日は、先週末開催した近代美術オークションのレビューをお届けします。
世界的に、秋は各オークションハウスのメインとなるセールが開催される季節です。
その第1弾ともいえる9月の近代美術オークション。
盛り上がりの程は・・・・?


~レオナール・フジタ「猫と少女」、大人気!~
エコール・ド・パリで時代の寵児として人気を博したレオナール・フジタ。
本作品を制作した1959年、藤田嗣治はレオナール・フジタと改名、キリスト者として生まれ変わりました。本作品は猫を抱くパリ娘の佇まいを、まるで幼児キリストを抱く聖母マリア像の如きピラミッド構図に描いています。早くに母を亡くしたフジタは特に聖母信仰に傾倒していました。自身の姿を猫に見立て、無垢な少女に永遠の処女マリア、ひいては安らぎの地・パリを見出したフジタの、美しき隠喩が感じられる作品です。
下見会の時から多くの注目を集めていたこの作品、オークショニアの発句を合図に、10以上のパドルが一斉に上がり、ぐんぐん価格が上昇しました。
最終的には、落札予想価格下限の約2倍である4,700万円で落札され、今回のオークションで最も高額で落札された作品となったのでした。



~熱い競り合いが繰り広げられた、ベルナール・ビュッフェ「弁慶」~
フランス人画家、ベルナール・ビュッフェは、当社のオークションでも人気のある作家の一人です。
今回のセールにも4点が出品されましたが、とりわけ熱い視線を浴びたのが、かの有名な武蔵坊弁慶を描いた作品です。ビュッフェは、日本の建築や風物を描いた作品をしばしば制作しており、ビュッフェの妻アナベルは、作家がたいへん日本を愛していたと語っています。

本ロットは、開始から数分にも渡る競り合いが続き(通常、1つのロットの競りに掛かる時間は1分弱)、
最終的に海外からの電話ビッド同士の一騎打ちになりました。
慎重にビッドし合う電話の向こうから、「この絵が欲しい」という強い思いが伝わってくるようで、会場は緊迫したムードに。
ようやく、落札予想価格下限の6倍である、2100万円でハンマーが下された時には
大きな拍手が沸き起こりました。


さて、今週20日(土)は近代陶芸オークションを開催いたします。
明日木曜日から下見会も始まります。
写真の浜田庄司の大皿のほか、根強い人気を誇る作家の作品が揃いますので、
是非ご来場ください。

浜田庄司
Lot126
浜田庄司「青釉白流描大鉢」
H13.9×D55.5cm / 共箱
落札予想価格:250万円~350万円


(執筆:N)

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明日は近代美術オークションです!

いよいよオークション前日となりました。
みなさま、下見会にはご来場いただけましたでしょうか?
明日は13:00まで開催しておりますので、
まだご覧になっていない方は、ぜひぜひお越しください!

 会場
明日のオークション会場はこちら。
丸ビル7階の丸ビルホールです。

銀座の当社で下見会をご覧になって、
      ↓
銀座・丸の内エリアでランチ。
銀座の老舗も魅力的ですが、丸ビルのレストランも充実してます。
しばしショッピングでお楽しみいただいた後は…、
  ↓
丸ビルホールでオークションに参加!
という優雅な休日をお過ごしになってみてはいかがでしょうか。

オークションは17時から開催いたします。
詳細はこちらへどうぞ。
シンワアートオークションHP


本日も1点、おすすめ作品をご紹介いたします。
Lot.46 萬鉄五郎《風景》です。
萬 鉄五郎
萬鉄五郎 YOROZU Tetsugoro(1885-1927)
《風景》
33.4×45.6cm
キャンバス・油彩 額装
1926年作
落札予想価格:250万円~350万円


萬は、ゴッホやマティスの感化を受けた《裸体美人》(東京国立近代美術館蔵・重要文化財)や、キュビスム、フォーヴィスム風の前衛的な作品で知られる大正期の画家です。大正時代に活躍した画家たちは個性派が多いのですが、以前このブログでもご紹介しました岸田劉生と同様に、萬も後世に幅広い影響をおよぼしたカリスマ的な画家と言えるでしょう。

本作品は晩年にあたる1926年、終の住み処となった茅ヶ崎で制作されたものです。この地に移住してからの萬は、特に南画をはじめとする東洋絵画に関心を深め、水墨画なども手掛けました。油彩画では、東洋の南画と西洋のモダニスムを融合させた画風を展開していきます。豊かな自然に恵まれ、半農半漁の人々が暮らすこの土地は、穏やかな文人的作品を描くのにぴったりだったのでしょう。明るい光に満ちた色彩と自由でゆったりとしたタッチは、萬がヨーロッパの模倣ではなく、東洋人ならではの油彩画を見出したことを確信させます。

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下見会はじまりました

爽やかな秋晴れの本日、近代美術オークション下見会がオープンいたしました!
当ブログでは数回にわたって今回のオークションに出品される作品をご紹介してまいりましたが、本日は下見会をご案内いたします。


エントランス
エントランス風景。
秋を先取りして、鮮やかな紅葉の屏風がみなさまをお迎えします。


音声ガイド

続いてこちらは音声ガイド。
今回は出品作品の中から、選りすぐりの24点分をご用意しました。
ぜひ会場でご利用ください。




深水
1Fは日本画のフロアです。
今回は浮世絵の系譜を継ぐ美人画家、伊東深水の作品がずらり。
粋なデザインの表具にもご注目ください。



鉄斎
右は富岡鉄斎《藻刈舟圖》。《もかりぶねず》と読むこの画題は、江戸時代、大阪の商人たちに人気があったものだそうです。「もかり」、「もうかり」、「儲かり」…ってことですね。


鉄斎の作品は、東京国立博物館で開催された「対決 巨匠たちの日本美術」展にも出品されていましたが、ほかにも今年の夏休み、全国各地の美術館で行われた展覧会を賑わせた画家たちの作品が並んでいます。



地下1Fは日本洋画、外国絵画のフロアです。
SHINWA ART JOURNALでもご紹介しました長谷川利行のコーナー。
激しいタッチが圧巻です。

利行

会場全体


などなど、ご覧いただきたい作品が目白押しです!

今回の9/13(土)開催の近代美術オークションには、全部で135点の作品が出品されます。
このほかにも東山魁夷やレオナール・フジタ、マティス、カンディンスキーと、
そうそうたる顔ぶれが揃いました。



下見会は、本日より9/12(金)までは、10:00~18:00まで。
オークション当日の9/13(土)は、10:00~13:00まで開催しております。
みなさまのご来場を心よりお待ちしています。(執筆:S)

シンワアートオークションHP

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社長が感銘を受けた一冊の本とは・・・?

先週、当社の代表取締役社長倉田が取材を受けた本が発刊されました。
その名も【社長100人の「私の1冊」】。
100社100名の社長が感銘を受け、影響を受けた書籍を
一冊ずつ紹介しています。
倉田が感銘を受けたビジネス書でも、歴史書でもない、あの物語とは・・・?
取材に立ちあったNとしては、倉田の選んだ一冊に、新たな一面を見たような気がしました。

興味をもたれた方は、是非書店へお立ち寄りくださいね。

Kono1sathu

因みに、こちらはキャンペーンサイトだそうです。
http://metaimpact.com/campaign2/

その他、9/4付の日経新聞文化面に「文化往来 香港、アジア現代美術のハブに真実味」と題して、11月に開催する「Asian Auction Week in Macau」に関する記事が掲載されました。
また、その少し前、8/28の株式市場新聞のコラムでも、「がんばれシンワ」と言っていただきました。
社員一同秋のオークションの成功へ向けて、日々精進して参ります。

更に、8/28に発売された女性誌「25can(ヴァンサンカン)」に、
「ソーシャライツも活用する美術品オークション市場へGO!」と題して、
美術品オークションの楽しみ方をレクチャーする特集が掲載されています。
その中で当社のことも取り上げていただいています。

こうした記事を通して、オークションの楽しさ、気軽さを
一人でも多くの方に知っていただけるよう頑張ろう!
と決意を新たにする今日この頃です。

(執筆:N)

シンワアートオークションHP

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「浮世絵ベルギーロイヤルコレクション」展

歌川国芳
歌川国芳
《金魚づくし 百ものがたり》
ベルギー王立美術歴史博物館蔵

皆さん、浮世絵はお好きですか?


おちょぼ口が愛らしい春信の美人画や、雄々しい春章の役者絵、モダンな写楽の肖像画や、ユーモア溢れる北斎マンガ・・・。

はかない浮世暮らしを謳歌してしまう人間のエネルギーが頼もしく、擬人化された金魚が三味線を弾く姿の可笑しいことと言ったら!今風に言うなら、「キモ可愛い」、「カワ面白い」といったところでしょうか。
私は、大好きです。


現在、原宿駅前にある太田記念美術館では、「浮世絵ベルギーロイヤルコレクション展」として、ベルギー王立美術歴史博物館とベルギー王立図書館が所蔵する浮世絵を公開しています。

先日、オープニングパーティーにご招待をいただき、末席に連なって参りました。会場の東郷記念館には駐日ベルギー大使閣下もお見えになり、会場はフランス語での挨拶が飛び交います。

太田記念美術館では、ふだんから来館者の3割以上が外国のお客様だそうです。外国のガイドブックに美術館が掲載されていて、それをご覧になっていらっしゃる旅行者が多いとか。
原宿駅を出て、竹下通りで「Kawaii! カワイイ」、浮世絵の美術館で「Beautiful!」、表参道で「Luxury!」・・・、日本文化の奥行きを感じる旅になることでしょう。

浮世絵は、日本語がわからなくても、全く日本文化についてご存知なくても、楽しむことができる芸術です。大衆文化であった浮世絵版画を、芸術として認識したのはヨーロッパが先ですし、浮世絵の系譜にあたる日本のマンガやアニメーションも、海外で知られた途端に爆発的に人気を博しました。    
 
ベルギー王立図書館は、フランスのルーヴル美術館が浮世絵を収集するよりも早く、写楽や北斎の第一級の作品を購入しています。当時は、ヨーロッパ芸術の巨匠・ルーベンスの版画よりも、浮世絵一点当たりの価格が高かったにも関わらず、です。なんと先見の明と公平な評価を持ち合わせたコレクターでしょう。

写楽
東洲斎写楽《二代目小佐川常世》
ベルギー王立図書館蔵
今回の展覧会では、写楽が見ものです。例えば、本来はペアであったとされる作品の片方ずつを、世界で唯一、ベルギー王立美術歴史博物館とベルギー王立図書館が一点ずつ所蔵していて、それが組み合わせられて展示されています。何と感動的な再会でしょうか。どれも、木目も鮮やかな、保存状態が素晴らしい作品です。

アートをコレクションされるお客様にとって、一つの醍醐味は、自分が過去に蒐集した作品が後により高い評価を得るようになることでしょう。コンテンポラリーアートの若手作家の作品を、価格の安いうちに購入するのも一つの方法ですが、このベルギー王立図書館のように、古い作品の歴史的な価値を認めて購入するという方法もまた、大変に意義のあることです。

近代美術オークション出品作品を例に取ると、南薫造や萬鉄五郎、浅井忠は、歴史的な評価が高く、残して行かなければならない作家と言えるでしょう。またルシアン・クートーという作家は、シュールレアリスム風の作風で戦後いち早く日本に知られていたものの、当社のメインオークションでは初めて出品されます。

オークションは、現役の作家のMarket Value(市場的な価値)を知ることができると同時に、過去の作家の作品を売買することによって伝統的な美の価値を高めていく場でも、あるのですよね。(執筆:I)


<展覧会情報>
浮世絵 -ベルギーロイヤルコレクション展
2008年9月2日(火)~28日(日)
午前10時30分~午後5時30分(入館は午後5時まで)
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌日)
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前1-10-10
太田記念美術館
http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/H2009Belgium.html

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純粋絵画を求めて―夭折の画家、佐伯祐三

1928年、佐伯祐三が30歳という若さで亡くなってから80年。大阪市立美術館では9月9日より、『没後80年記念 佐伯祐三―パリで夭折した天才画家の道―』※が開催されます(10月19日まで)。佐伯の代表作が100点以上展示される、大規模な展覧会です。また、佐伯に影響を与えたヴラマンクやユトリロ、友人であった里見勝蔵、荻須高徳などの作品も同時に展示されるとのことです。お近くにお住まいの方や、大阪へ行かれる方は、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか?

さて、9月の近代美術オークションにおいても、佐伯の作品が出品されるのでご紹介します。

佐伯祐三
Lot49《塔の見える風景》
45.6×53.2cm
キャンバス・油彩 額装
落札予想価格:1800万円~2500万円
「佐伯祐三全画集」(講談社)、
「佐伯祐三のパリ」(新潮社)掲載


佐伯祐三は1898年、大阪・中津の光徳寺の次男として生まれました。1923年、東京美術学校を卒業後、妻子とともに渡仏。パリで2か月程ホテルに滞在した後、パリの南西、クラマールの一軒家に引っ越します。明るい陽光のさす緑豊かな土地で、日本人芸術家たちと集いながら、セザンヌの影響を窺わせる作品を展開していました。

転機が訪れたのは、1924年夏。佐伯は里見勝蔵の案内で、自信作であった裸婦の作品を携えてヴラマンクを訪れます。しかし、待っていたのは、「このアカデミック!」という罵声でした。ショックを受けた佐伯は、ヴラマンク、後にユトリロの影響を受けながらも独自の絵画を追求し、自身の芸術を開花させていくことになるのです。


本作品に描かれているのは、クラマールにある教会です。「佐伯祐三のパリ」(1998年、新潮社)によると、佐伯の自宅はこの教会から歩いて5分程の場所にあったといいます。この本には教会と本作の画像が掲載されているのですが、実際の教会は青い屋根と白い壁の清々しい建物であるにもかかわらず、本作は一種悲壮味を帯び、陰鬱な空気がたちこめています。

暗い色調、動感のある筆致にヴラマンクの影響が見られますが、一時のヴラマンクに傾倒した画風から脱しており、「ようやく自分の絵を描こうと、無我夢中になって」制作する、佐伯の焦燥にも似た感情が浮かび上がってきます。一見、寂寞とした風景には、ひたすら「純粋」に徹し、自身の画風を確立しようと格闘する佐伯の情熱が内包されているのです。(執筆:M)

シンワアートオークションHP


※〈展覧会情報〉
『没後80年記念 佐伯祐三―パリで夭折した天才画家の道―』
会期:2008年9月9日(火)~10月19日(日)
開館時間:午前9時30分~午後5時
休館日:9月16日(火)、22日(月)、29日(月)、10月6日(月)、14日(火)
観覧料:一般1200円、高大生900円
会場:大阪市立美術館(天王寺公園内) 大阪市天王寺茶臼山町1-82
http://osaka-art.info-museum.net/special020/special_saeki.html

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