月別アーカイブ: 2012年1月

Area Parkの「写真の路」@エルメス・コリア

「写真の路-宮城県でアルバムを拾う」展

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エルメス・コリアが運営するアトリエ・エルメスは、アーティストの発掘及び支援、またその企画展示を目的に、2000年ソウル一番のオシャレのメッカと呼ばれるチョンダムドンに設立されました。今年初の企画展には、日本を拠点に情熱溢れる活動を見せている韓国出身の写真作家、Area Park(エリア パク)が選ばれ日韓アート界の注目を浴びています。


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〈オープニングパーティの風景〉


作家、Area Park(エリア パク
本名は、朴晋暎(パク、ジンヨン)、「Area Park」というアーティストネームで日本と韓国を中心に活動している若手写真家です。
1972年韓国の釜山生まれ。大学と大学院で報道写真とドキュメンタリー写真を勉強したパクは、韓国のテレビ局であるMBCのフォトエッセイ<人>、KBSの<人物現代史>、<日曜スペシャル>などのドキュメンタリー番組でスチール写真を担当し、作家としての基礎を固めました。2004年朝興(ゾフン)ギャラリーでの<ソウル...間隔の社会>展で作家としてデビューして以降、Kumho美術館で5回の個展と共に、ドイツでの韓国現代写真展<Fast Forward>、ロダンギャラリー<思春期の徴候>、第1回デグ写真ビエンナーレ<テーマ展>、国立現代美術館<韓国写真60年>、ソウル市立美術館<韓国現代写真の風景>、ヒューストンミュージアム<Chaotic Harmony>の他、およそ100回の国内外グループ展に参加し、現在は東京に居住しながら活動を続けています。


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名取市_写真額縁(14.7m), light jet print, 220×180cm, 2011 

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名取市_カメラ(14.7m), light jet print, 220×180cm, 2011 


今回の「写真の路-宮城県でアルバムを拾う」展は、昨年の東日本大震災発生の4日後に酷い交通渋滞と通行制限された道路を潜り抜けて訪ねた宮城県で作家の目に入った印象的な風景から始まります。泥まみれになって風に揺れている持ち主の分からない数枚の写真、そしてその写真を拾い集めて水で洗っている人々の姿、「今一番探したいものは何か」という質問に「家族のアルバムだ」と一様に答える人々。そして跡形もなく消えてしまった写真館の建物と既にゴミになってしまった数百個のカメラ。作家の目の前に広がったその全ての場面は、まるで巨大な「死」の下で忘却と闘争する人類の現状、そのものであったのでしょうか。


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石巻市_銅像(13.8m), light jet print, 120×150cm, 2011 

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陸前高田_Yamaha(16.7m), light jet print, 150×120cm, 2011 


今回の展示のモチーフは、被災地の宮城県で偶然に拾った金子さんというアマチュア写真家のアルバム。娘であるマリさん(生存していれば60歳前後)の成長過程を残したものと類推されるこのアルバムの発見から、パクの作業は記録としての行為だけではなく、時や言葉を超えた写真家同士、あるいは同じ人間としての共感を求める行為が加わります。

アナログカメラの研ぎ澄まされた視線とフィルムの純粋性をいまだに信頼すると言い、「写真の路」の連作を通して写真本来の意味とその存在価値を問い掛けてきたパクが、何万人もの人々が亡くなったこの場所で見つけたのはいったい何だったのでしょうか。それは「家族のアルバム」という再び取り戻すことのできない世の中で一番大切な「懐かしさ」だったのではないでしょうか。
「おそらく展示会場には私が撮った写真もあるだろうが、それよりも私が見つけた数枚の写真がもっと重要な意味を付け加えてくれるだろう。」と作家は語ります。


【展示概要】
会期:2012年1月6日~3月13日
会場:アトリエ・エルメス
   MAISON HERMES Dosan Park
630-26 Shinsa-dong, Gangnam-gu, Seoul KOREA
TEL: 82・2・544・7722


そして、いよいよ今週からは「近代美術PartⅡオークションの下見会」をはじめ、新年初のオークション月間に入ります。皆様のご来場を心からお待ちしております。

【オークション】
2012年2月4日 丸ビルホール
15:00-近代美術PartⅡ/ 福井良之助コレクション
18:00-近代美術

【下見会】
近代美術PartⅡ/ 福井良之助コレクション
シンワアートミュージアム
2012年1月25日(水)~27日(金) 10:00~18:00
2012年1月28日(土)      10:00~17:00

近代美術
シンワアートミュージアム
2012年2月1日(水)~3日(金) 10:00~18:00
2012年2月4日(土)      10:00~12:00


〈執筆:W〉

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器の歪み ─ 歪みの美学(志野焼)

一月も半ばに入り、寒さがますます厳しくなってきました。
遅ればせながら、本年も弊社をよろしくお願いいたします。また箸休め的にこちらのブログもチェックしてみてくださいね。

 さて、今年は陶芸の産地毎のそれぞれの見どころをご紹介できればと思います。では焼き物生産量トップである美濃焼(みのやき)の「志野」から。

「志野」というのは、岐阜県多治見市、土岐市、瑞浪市など作られている美濃焼の種類のひとつです。他にも「織部」「黄瀬戸」「瀬戸黒」、「天目釉」など種類が多岐に渡ります。ただこれは基本の種類であって、ここから「鼡志野」、「織部黒」、「鳴海織部」など派生し約15種類にも及ぶそうです。下記の画像でも分かるように艶やかな色が特徴といえるでしょう。
美濃焼4画像450

荒川豊蔵、加藤唐九郎、加藤卓男、鈴木蔵氏などが代表的な作家として挙げられます。
2010年には加藤孝造氏が人間国宝(重要無形文化財保持者:瀬戸黒)に認定されました。
  
 

さて、器の楽しさ、美しさとはどこにあるのか。日々素晴らしい器に触れさせていただく中で、それは器特有の「歪み」にあるのではないかとふと思うことがあります。歪みといっても、単にひしゃげていたり、乱雑に手が加えられたということではなく、たとえば手びねりによる歪み、形態が持つ独特の歪みは否定的な意味を超え、接する者にとって愛着のある美となりえます。
個人的に志野焼は、この歪みが合うように思います。志野の長石釉の美しさは、たとえば有田焼のような凛とした白磁の器の美しさとは全く異なるものです。手に取れば温かみを感じるような土くささが魅力なのではないでしょうか。
 器の醍醐味は、視覚だけでなく、直接作品に触れるという+アルファの鑑賞ができることです。つまり、愛着を持つことにあると思います。
こちらの鈴木蔵氏の《志野白梅皿》の魅力は、雪のような志野の釉薬、ほっこりするような緋色の暖かさといった視覚から感じられるものはもちろん、作家が愛でながら成型したであろう心地よいでこぼこ ─ 「歪み」にあると思います。白梅のモチーフや志野特有の柔らかい釉薬の質感に手で触れることによって、一層温かみが感じられるのです。

オークションの下見会は、見て、愛でる機会でございます。

本年もぜひ、絵画・立体に関わらず、弊社オークションにお足運びいただけましたら幸いです。

(執筆者:E)

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