月別アーカイブ: 2008年11月

WINTER+AUCTION開催!

 来週末の12月6日(土)、WINTER+AUCTIONと題して、デザイナーズ家具、コンテンポラリーアートのオークションを開催いたします。

 そもそもこのブログは、7月に開催したSUMMER+AUCTIONに関する情報をお知らせすることを目的にはじめたのですが、あれから半年が経過し、こうしてWINTER+AUCTIONを告知できることに喜びを感じています。いつもブログを読んでくださっている皆様、ありがとうございます。

 さて、前回のSUMMER+AUCTIONではじめて試みたデザイナーズ家具。今回はさらにパワーアップし、椅子、ソファ、テーブルなど、78点出品されます。シンワアートジャーナルでも取り上げましたが、倉俣史朗の幻の遺作、カウンターテーブル《橘》は一見に値します。(詳細はこちら

 その他、アルネ・ヤコブセンの《エッグチェアー》をはじめとするモダンなデザインの椅子や、フィン・ユール、ハンス・ウェグナーといったデンマークを代表するデザイナーの存在感溢れる家具、イタリア建築界の巨匠、アンジェロ・マンジャロッティの大理石のテーブルなど、美しさだけでなく、機能性を兼ね備えた名品が出品されています。空間をよりスタイリッシュに演出するデザイナーズ家具の数々を、この機会にぜひご覧ください。
◆DESIGN and CONTEMPORARY ART◆
=WINTER + AUCTION=
12月6日(土) 17:00~
下見会 12月3日(水)~5日(金) 10:00~19:00
      12月6日(土) 10:00~12:00

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 また同日、ワインオークションも併催いたします。こちらでは、キラキラと輝くゴールドのボトルが印象的なアルマン・ド・ブリニャック(Armand de Brignac、シャンパーニュ)が登場します。これを生産しているキャティア家は、1763年から フランスのシャンパーニュ地方の中心ランスにてシャンパンの製造を行ってきた老舗。すべての生産工程を手作業で行っており、ピノ・ノアール、シャルドネ、ピノ・ムニエの3種類の葡萄を3分の1ずつ使用した独自のブレンドが特徴です。アメリカでは高級シャンパンとしてセレブリティーを中心に人気を博しているといいます。

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 その他、ブルゴーニュ地方におけるワインの神様と称されている醸造家、アンリ・ジャイエ(Henri Jayer)のワインも出品されています。彼が2006年に亡くなってからその価格は高騰していますが、中でも1級畑の葡萄で生産されたヴォーネ・ロマネ・クロ・パラントゥー(Vosne Romanee Cros Parantoux)は生産量が少なく、大変貴重な逸品です。
 これからイベントが盛り沢山なこの季節に、ラグジュアリーなワインはいかがですか?

◆ワインオークション◆
12月6日(土) 14:00~
下見会:12月5日(金) 13:00~15:00、寺田倉庫品川トランクルームにて
※下見会は予約制となっております。ご連絡お待ちしております。

(執筆者:M)

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夜を描く作家、鈴木雅明

いよいよ明日はオークション当日です。
マカオの本日の最高気温は28℃ということですが、こちら東京は日増しに寒くなっていきますね。
日が落ちるのも早くなり、なんとはなしに気忙しい気分にさせられます。
そうこうするうちに師走を迎え、2008年も締めくくりとなっていくのでしょうか。

すこしばかり、気が早いですね。
さて、本日もAsian Auction Weekに出品される作品をご紹介します。


鈴木雅明
鈴木雅明は1981年生まれの、まだ20代のアーティストです。
とはいえ、その活躍はめざましく、2005年には若手作家の登竜門のひとつであるシェル美術賞のグランプリも受賞しました。
当社のコンテンポラリーアートオークションにもほぼ毎回作品が出品され、人気を博しています。

鈴木が描くのは、夜の街角です。
暗闇にふわりと浮かぶ街灯や、家々から漏れる灯り。道端に佇む人々。
クールでありながら、どこかセンチメンタルな空気を漂わせるこれらの風景は、
鑑賞者それぞれが持つ、夜の街の記憶を呼び起こさせます。

鈴木雅明
鈴木雅明「街灯」
キャンバス、油彩 / 145.5×112.1cm
落札予想価格:HK$30,000~50,000


鈴木雅明―略歴―
1981 愛知県生まれ
2004 名古屋造形芸術大学洋画コース卒業
2006 第21回ホルベインスカラシップ奨学者
現在 愛知県立芸術大学大学院 美術研究科 油画専攻 在学中


【主なグループ展】
2004 シェル美術賞展2004(代官山ヒルサイドフォーラム)
2005 第4回夢広場はるひ絵画ビエンナーレ(はるひ美術館)
   シェル美術賞展2005(代官山ヒルサイドフォーラム)
2006 名古屋市美術館特別展「名古屋」の美術-これまでとこれから- (名古屋市美術館)
2007 夢広場はるひ収蔵作品展(はるひ美術館)
   第26回損保ジャパン美術財団-選抜奨励展(損保ジャパン東郷青児美術館)


【受賞】
2005 第4回夢広場はるひ絵画ビエンナーレ 夢広場はるひ大賞
   シェル美術賞2005 グランプリ
2007 第26回損保ジャパン美術財団選抜奨励展 秀作賞

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名和晃平 研ぎ澄まされた空間

 シンワではいよいよ明日からのAsian Auction Weekに向けて、多くの社員が海外に出張しています。お問い合わせのお電話と、ご来社頂くお客様の多さに、いない社員の存在をひしひしと感じる連休明けです。
 海の向こうと連携しつつ、つつながくオークションが成功するよう、東京チームも頑張ります!


 さて、今日は、当社のコンテンポラリーアート通が一押ししているアーティスト・名和晃平をご紹介します。
 シンワではここ一年のコンテンポラリーアートオークションに連続して出品されている人気作家です。

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名和晃平《PixCell-Banana#1, 2007》
H19.8×w24.3×d24.3cm
Est. 香港$20,000~30,000



 そのキャリアは、京都市立芸大大学院在学中に英国王立美術院に留学し、京芸博士課程を修了後、キリンアートアワード受賞、森美術館での展覧会「六本木クロッシング」で審査員特別賞受賞・・・と、極めて順調です。2008年の夏には、東京都現代美術館で「パラレルワールド もうひとつの世界」にも出展しており、この二つの話題性ある展覧会に参加したというだけでも、近年の活躍ぶりがうかがわれますよね。
 今年はドバイ、バルセロナ、バーゼル、チューリッヒ、北京と海外での作品発表が続いています。

 
 今回マカオに出品される、バナナが入ったプリズムボックスは、光の屈折で、実際には存在しないバナナの虚像が浮かび上がる構造になっています。プリズムシリーズ以外の名和の作品には、ビーズを利用して球体の表面に無数のイメージが反射するものや、水面を利用したものがあり、そのどれもが、実像と虚像を扱っています。
 名和が選ぶ素材は現代のテクノロジーで生まれた工業製品が多く、その主題もつかみどころのないイメージが氾濫する現代社会におけるものであるだけに、とてもクールな印象を受けます。

 名和の作品を見ていて気付いたのですが、実際に見えているものと、実際に存在する物とは違う、ということは、実は昔にはこれほど多くなかったはずですよね。インターネットの普及やCGの技術的な革新があってこそ、私達はすでに無くなってしまったモノや、これから誕生するであろうモノを目にすることができるのです。
 
 確かなコンセプトと、きちんとそれを形にしていくスタイルには、安定感があります。
 ぜひ今後ともご注目ください。


CONTEMPORARY ART AUCTION概要
=Asian Auction Week in Macao=
オークション日時: 2008年11月28日(金)13:00
オークション会場: ザ・ヴェネチアン・マカオ・リゾートホテル フローレンスルーム(マカオ)
下見会:ザ・ヴェネチアン・マカオ・リゾートホテル ホールD
11月25日(火)~28日(金) 

(執筆者:I)

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石田徹也―僕たちの自画像―展 &《作品,2001》のご紹介

 土曜日の近代美術PartⅡオークションにご参加くださった皆様、ありがとうございました。連休初日ということで、たくさんのお客様にお越しいただき、とても活気のあるオークションになりました。

 さて、今週はいよいよAsian Auction Week in Macao、コンテンポラリーアートオークションとなりました!初めての海外オークションということで、スタッフはみな気合い十分で臨んでおります。マカオでは本日15時から下見会がスタートしますので、現地にお越しの皆様はぜひお立ち寄りください。いつもブログを書いている私たちは、東京に残って情報を更新していきますので、今ブログをご覧の皆様はたとえマカオにいらっしゃっても、毎日チェックしてくださいね!

 今回のオークションカタログをお持ちの方はご存じかと思いますが、表紙を飾っているのは石田徹也の大作です。石田徹也といえば、現在、練馬区立美術館で展覧会が開催されていますが、もうご覧になりましたか?私も先日展覧会に行ってきましたので、今日は石田徹也のお話をさせていただきます。

 石田徹也(1973-2005)は、静岡県生まれ。武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科卒業。キリンコンテンポラリーアートアワード98奨励賞や、VOCA展2001奨励賞などを受賞し、作家として活躍し始めた2005年の春、31歳という若さで急逝しました。翌年、NHK「新日曜美術館」で紹介されたことをきっかけに注目を集め、放映日当日のうちに遺作集の注文がインターネットの通販サイトに殺到したといいます。以来、多くの人々に支持され、現在は最も人気のある作家の一人と言っても過言ではないでしょう。
 
 石田徹也の主要作品およそ70点が集まったこの展覧会は、東京では初めての大きな個展です。展示は、遺作集の表紙を飾る《飛べなくなった人》(1996年作・静岡県立美術館蔵)からスタート。石田らしい有名な作品や、「これも石田?」という意外な作品まで、およそ年代を追って構成されています。まるで私たちの社会の縮図を見ているような共感やショックを感じながら、次第に石田の心の奥深くへと入っていくような感覚を覚えました。静岡で開催された展覧会をご覧になっていない方は、ぜひどうぞ。昨年11月の当社のオークションに出品された作品も展示されています。

【 開催概要 】
石田徹也―僕たちの自画像―展
会期  2008年11月9日(日)~12月28日(日)
会場  練馬区立美術館
http://www.city.nerima.tokyo.jp/museum/

 
 では、今週のコンテンポラリーアートオークションの出品作から、本日も1点ご紹介いたします。もちろん石田徹也の作品です。

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  Lot.353 石田徹也《作品,2001》
  キャンバス、油彩
  112×162 cm
  2001年作
  石田徹也追悼展「漂う人」出品 2006年(ガーディアン・ガーデン)
  エスティメイト HK$ 500,000 ~ 700,000


 2001年、VOCA展で奨励賞を受賞した年に制作された作品です。描かれているのは、鉄柱がむき出しになった建設中の建物。周囲には工事用の堅固な足場が組まれています。その囲いの中に、白いワイシャツにネクタイという出で立ちで、まるで建築資材の一部のようにすっぽりと収められた二人の人物。一人は何かを諦めたように目を閉じ、もう一人は虚ろな眼差しでどこか一点を見つめています。石田自身にもよく似た彼らは、作品に必ず登場して機械や日常の風景と合体した姿で描かれ、この物哀しい表情を浮かべるのです。石田は自らの制作ノートの中でこう語っています。「自分だけでなく、他人や社会の問題も取り入れて自画像をつくる。」つまり、この人物たちは、石田の自画像であるとともに、現代に生きる私たちの自画像なのです。その姿はまるで、「現代社会における様々な問題にからめとられて身動きできず、しかしそのなかで生きていくしかない個人の悲しみや、辛さ、孤独を表している」ようです。(『静岡県立美術館ニュース』 第86号より)
 
 鋭敏な感性で現代人の悲哀を痛々しいまでに描き出しながら、制作においてもう一つ、石田が求めていたことがあります。それは、「悩んだ部分を見せびらかすのではなく、それを笑いとばすユーモアやナンセンスのようなもの」でした。本作品でも、巨人化した人物がシュルレアリスム的な雰囲気やそこはかとない滑稽さを漂わせています。目を背けたくなるような現実の中にもある滑稽さ、作品に表現されたその複雑な状況が、より強いリアリティーをもって多くの人々の心に訴えかけているのかもしれません。

                                           (執筆:S)

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《李朝白磁壺》に宿る高潔な精神

 今週は近代美術PartⅡオークションの下見会を開催しております。今日はその中から、韓国の陶磁器についてご紹介いたします。

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Lot813 《李朝鉄砂龍文壷》
H30.2×32.5cm
★¥500,000~1,000,000.


 韓国の陶磁器は、高麗青磁と李朝白磁が世界中に知られております。陶磁器の専門家ではなくても高麗青磁や李朝白磁の価値の高さは、ある程度一般の方々にも知られているようですね。
 韓国の場合、不良の息子が家出をする際に家から必ず盗み出す定番の家宝として、テレビドラマでもよく使われています。今日は、今回の近代美術PartⅡに出品される李朝陶磁壺の魅力を、皆様と一緒に感じていきたいと思います。


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Lot811《李朝白磁壷》
H33.2×D31.2cm
★¥300,000~500,000.


 まず、歴史的な話に少し触れてみると、皆様ご存知のように高麗青磁は、昔の韓国の名称で、高麗時代(10世紀~14世紀末)、李朝白磁は、李朝時代(14世紀末~20世紀初)に作られた焼き物のことを言います。
 両方とも当時は生活の中で必需品としてよく使われたものであったはずですが、芸術品として今まで残されたものは、当時も良質な作品として、名人たちが一生懸命作り残したものと考えられます。


 神秘的な薄い青色を帯びる青磁は、仏教を国教にしていた高麗時代の文化が、どれほど華麗な色使いの文化であったのかをよく見せてくれるものですね。
 しかし、だんだん派手なものに近づきつつあった高麗文化は、腐敗してきた政治に呆れた庶民たちによって歴史の川に流されてしまうのです。それに代わって、清廉潔白の理念を求める儒教が新しい国家の理念として採用されるようになりました。それが李朝文化です。

 この李朝文化を理解していただくためには、まず李朝の基礎理念である「ソンビ精神」という言葉を知っていただきたいと思います。「ソンビ」とは、韓国語で「学識が高くて言動・礼節が正しい、義理・原則を守るが、官職・財産をむさぼらぬ、人格の高潔な人」を意味し、その精神を一生かけて求めることを「ソンビの精神」と言います。
 このソンビ精神は、500年という長い間、李朝を支配していた大事な理念でした。何より大切にされた李朝のソンビ精神、それは、陶磁器にもよく表れております。世俗に染められない美しい白さ、それが李朝に込められた一番大切な精神性です。このようにソンビ精神から生まれたその白さは、「素朴の美」と言われ、今の韓国でも一番大切にされる優美の一つです。

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Lot809《李朝白磁壷》
H20.1×D20.1cm
★¥80,000~150,000.

 厳選されたきれいな高嶺土(カオリン)のみを素材に使用し、1300°cの中で、長い時間をかけて焼き上げられた不思議な白さ、皆様、李朝陶磁壷を絶対!見逃さないでください。

(執筆者:W)

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日中漫画オークション・AITチャリティーオークションのお知らせ

立冬を過ぎて、銀座の街にも冬の気配が漂ってきました。
銀座・有楽町界隈は早くもクリスマス仕様。
先日帰りがけに目にした、キラキラと輝くイルミネーションには心が踊りました。

さて本日は、当社がお手伝いするチャリティーオークションと、
日中友好条約30周年記念「日中漫画オークション」のお知らせをお届けします。


【日中友好条約30周年記念~日中漫画オークション~】
日中友好条約30周年を記念して、これまで漫画を通して様々な交流を続けてきた日本、そして中国を代表する漫画家達の作品を集めた「日中漫画交流展」が、11月27日から、東京・港区の「元麻布ギャラリー」にて開催されます。その展覧会に出展される作品がオークションにかけられます。

~開催概要~
展覧会<下見会>
●日時:11月27日(木)~12月6日(土)10:00~19:00 / 最終日のみ15:00まで
●会場:元麻布ギャラリー(東京都港区元麻布3-12-3) / 入場無料
オークション
●日時:12月7日(日)14:00 / 開場13:00
●会場:シンワアートミュージアム(東京都中央区銀座7-4-12ぎょうせいビル1F)

~主な出品作家~
ウノカマキリ、鮎沢まこと、やなせたかし、ちばてつや、矢尾板賢吉、矢野功、横山孝雄、森田拳次 ほか(順不同、敬称略)

やなせたかし←やなせたかし先生の作品

ちばてつや←ちばてつや先生の作品

つね←中国の漫画家、常鉄鈞先生の作品




【AITファンドレイジング&チャリティーオークション】

キュレーターやアート・オーガナイザー6 名が、現代アートと視覚文化を考えるための場作りを目的として、2001 年に設立したNPO 団体であるAITが、新たなプロジェクトのためのファンドレイジング(寄付金集め)や、アフガニスタンの子供たちの学校設立や就学環境を整える活動へのチャリティーを目的としてオークションを開催します。
当日は、会田誠、畠山直哉 、名和晃平をはじめとする16か国32名のアーティストの手による作品がオークションにかけられます。

~開催概要~
下見会
●日時:12月15日(月)- 12月18日(木)11:00-19:00
●会場:AITルーム(東京都渋谷区猿楽町30-3 ツインビル代官山 A-502) / 入場無料、予約不要
オークション
●日時:2008年12月19日(金)18:00-20:30
●会場:ヒルサイドプラザ(代官山)東京都渋谷区猿楽町29-10
●タイムテーブル:18:00 ~ 開場、カクテル / 19:20 ~ オークション開始
●参加費:一般        ¥2,000(入札には事前登録が必要となります)
       AITハウスメンバー 無料
●主催:特定非営利活動法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]
  協力:シンワアートオークション株式会社、ヒルサイドテラス、
株式会社ポンテヴェキオホッタ、株式会社トップアート


~参加と入札について~
*オークションの見学のみをご希望の方は、参加費¥2,000にて入場が可能です。
*入札をご希望の方は、事前に入札の登録申込が必要となりますので、ご注意ください。
*オークションの入札方法、カタログの購入方法などの詳細については、下記のウェブサイトをご覧ください。
http://a-i-t.net/modules/bulletin/article.php?storyid=112

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栗田咲子《小豆洗い, 2007》

 日曜の夜に開催となった昨日の近代美術オークションにご来場下さいましたお客様、ありがとうございました。

 東京国際フォーラムから丸の内へと続く並木道も、美しくイルミネーションが輝きはじめて、ショッピングの楽しい季節になってきました。 

シンワアートオークションのブログでは、これまでにオークションに出品されることが珍しい作家や作品を取り上げてきましたが、今回は、解説担当のIが今、特に気になっている作家・栗田咲子をご紹介します。

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栗田咲子
《小豆洗い, 2007》
89.8×145.5cm
Est. 香港$15,000~30,000
 
 
 栗田咲子は、1997年京都市立芸術大学大学院美術研究科修了。2000年 VOCA展(上野の森美術館)に作品を出品したほか、年に1・2度の個展を定期的に開催し、力の抜けたどことなくユーモラスな作品を発表してきました。
 現在、大阪のギャラリー(11月1日~29日)と神戸アートヴィレッジセンター(11月1日~24日)で新作展を開催しています。

 11月のマカオに出品される作品は、《小豆洗い,2007》というタイトル。
 茶色の空に星がまたたき、麻雀パイのような立方体の足元でひたすら小豆洗いに勤しむ人間――。言葉に直してしまうと、何が何だか分からないのですが、その作品の強烈な存在感に、一目ぼれしました。
この画面には破たんが無く、空間の表現も、ある平面に必要な要素をぐっと押し込めたかのような密度の高いもので、画家の「絵ごころ」とテクニックが優れているであろうことを感じます。それでいて、伝わってくるものには自分の才能を誇示するような所がなくて、迷いや悩みが立ちこめているのです。

作家の人となりを伺ったところ、描く内容を初めから限定せず、描きながら悩み、模索するように制作していくと聞きました。今回出品される《小豆洗い, 2007》以外の作品でも、栗田咲子のポートフォリオにはそのことがにじみ出ている、密度の高いものがたくさんありました。
 
シンワアートオークションでは巨匠の描いた代表的作品を取扱うこともしばしばで、一つの様式美の極致を示しているものもあります。しかし、一方では、そうした作家が大成する前に描いた初期の作品にも、魅力があります。
コンテンポラリーアートオークションには、「この作家は今後どのように展開するのだろう」という興奮を感じさせてくれる作品があり、栗田咲子はまさにそのような作家なのです。

 
 作品は既に日本を発ち、マカオで開催されるオークション会場に向かっております。書面での入札も可能です。コンディション等はお気軽にお問い合わせください。
(執筆者:I)


CONTEMPORARY ART AUCTION概要
=Asian Auction Week in Macao=
 オークション日時: 2008年11月28日(金)13:00
  オークション会場: ザ・ヴェネチアン・マカオ・リゾートホテル フローレンスルーム(マカオ)
 下見会      :ザ・ヴェネチアン・マカオ・リゾートホテル ホールD
            11月25日(火)~28日(金) 

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日曜日は近代美術オークション

先週のコンテンポラリーに引き続き、近代美術オークションの下見会がオープンしました。
もうご覧いただきましたでしょうか?
まだお越しになっていないお客様、今週のオークションは11/9(日)ですので、
明日土曜日は18時まで、日曜日は13時まで下見会を開催しております。
ぜひぜひお越しください!

 音声ガイド
すっかりおなじみ?の音声ガイド →
いつもお聴きくださってる皆様、ありがとうございます!
今回も20作品分ご用意してあります。 


さて、秋は大きな展覧会が目白押しですが、
東京国立博物館で開催中の「大琳派展」はご覧になりましたか?
先日入場者数が20万人を突破し、連日大混雑のようですね。
金銀をふんだんに使用した豪華な色彩と、豊かなデザイン性が今見ても新鮮ということで、多くの雑誌に取り上げられ、ブームが再燃しているようです。

今回の近代美術オークション出品作家の中にも、琳派に憧れ、その影響を受けた人たちがいます。加山又造や平松礼二の装飾美へのこだわりは、まさに現代の琳派と呼んでもよいかもしれません。
特に、Lot.35 前田青邨《風神雷神》は、俵屋宗達や尾形光琳など、琳派の絵師たちが描き継いだ画題です。風神と雷神が乗る雲には、彼らにならって青邨が得意とするたらし込みの技法を使っています。
ですがもちろん、神様たちの愛嬌のある表情、線の魅力と墨の味わいを生かした表現はまさしく青邨流です。

下見会場20081107
↑ 1F日本画コーナー。加山又造や平松礼二はこちらに展示しています。


また、最近は琳派とともに注目を集めつつあるのが民藝。ご存じの方も多いかと思いますが、民藝とは「民衆の工芸」のこと。民衆の生活のための実用品を指す言葉として柳宗悦が提唱し、陶芸家の濱田庄司、河井寛次郎、版画家の棟方志功らが、人間の生活に欠かせない「平常の美」を豊かに表現しました。

 志功コーナー20081107
1F棟方志功コーナー →
今回はたくさん出品されます。
というわけで、本日ご紹介するのはこちら。
棟方志功の作品です。


Lot.28 《門舞頌 古記の柵》
 各紙面:127.5×61.0cm 各画面:125.0×58.0cm
 紙・板画 額装
 各印あり
 各棟方志功鑑定委員会鑑定登録証付
 エスティメイト \2,500,000 – \4,000,000


昭和16年、第16回国画会展に《門舞男女神人頌》として出品した全16柵のうちの4柵。この4柵(《東西南北頌》と題された)のみは先行して昭和14年に発表されました。今回のオークションに出品される本作品も4柵で1組、同じ板木を使って摺られた同型作品になります。この画題について、志功は次のように語っています。

「題材は仏さまに類したものがそれまでに多いので、神さまの形をかりてと思い、大和武尊以前の化け物、歴史の上にまだ姿をあらわさない混沌たる世界の人物を板画にしようと思いました。木花咲爺姫(このはなさくやひめ)、弟橘姫(おとたちばなひめ)代から段々に神代にさかのぼって十六枚の板木に彫り、八曲一双の屏風にしようと思ったのです。門舞という意味は、日本の一番最初の者たち、いわゆる門の中ではなく、門の外までのところ、大和武尊を門に入る人として、それ以前の超性の者を対象にしたところからきた名です。そういう者が、手をあげ足をあげ踊りを踊っている。」
 (『生誕100年記念 棟方志功展―わだばゴッホになる―図録』 より)

門の中とは、ヤマトタケルが登場する日本の歴史のこと。ここでは、ヤマトタケル以前の門の外、つまり歴史以前の混沌とした世界に住む神々が踊る姿を中心に描きだしています。
4柵は左から、《ヤマトタケルの柵》、《コノハナサクヤの柵》、《スサノオの柵》、《アメノウズメの柵》です。(カタログをご参照ください)

白と黒のはっきりとしたコントラストや神様のデフォルメされた形に、志功が曲った木をそのまま板木として使ったために加わった体の動感、神話の世界の超性を持つ神々の雰囲気が見事に表現された作品です。

今回は棟方志功作品が充実していますので、独特の味わいのある雰囲気を、
ぜひ実物をご覧になってお確かめください。
皆様のお越しを心よりお待ちしております。

                                        (執筆:S)

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ピカソ、フジタ、展覧会中の作家を下見会で見るチャンス!

 先週、コンテンポラリーアートオークションの下見会にご来場下さいましたお客様、ありがとうございました。作品はすでに日本を発ち、入口に立っていた野田凪のパンダ君も、丁寧に梱包されて船でマカオへと向かっております。

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小林 和作《木曾御岳の秋》
31.8×40.8cm
Est. ★\300,000~500,000

 そろそろ秋も深まって参りました。
 私は週末、散歩がてら日比谷公園に菊を観に行ってきました。美術品コレクターの中には菊を育てるご趣味をお持ちの方が多く、菊を見ながら、近代美術オークションに出品される花の作品の数々を思い出しました。

 さて、今週水曜日からはいよいよ近代美術オークションが開催されます。
 今回のオークションには、ピカソが最後の恋人ジャクリーヌを描いた作品の版画や、レオナール・フジタが戦後にパリで描いた自画像など、現在展覧会が開催されている話題の作家が出品されます。
 サントリー美術館と国立新美術館では、現在、空前の規模でそれぞれピカソ展が開催されています。また今週15日からは上野の森美術館でフジタ展が開催されます。どちらも楽しみ!展覧会中の作品を間近でご覧頂けるチャンスとなっております。


 パブロ・ピカソ《シニヨンの女》(Est.¥2,500,000~3,500,000)は、1957年作のリトグラフ作品です(ピカソのサイン有)。ピカソは1952年にジャクリーヌ・ロックという45歳年下の女性と出会い、それ以来油彩・陶器・素描・版画・彫刻など様々な技法によって繰り返し彼女を登場させるようになりました。理想のモデルを追求して数多くの女性との恋愛を経てきた芸術家が、人生の円熟期に出会い、そしてその後最も長い年月を共に過ごした女性がジャクリーヌでした。
 法的な妻であるオルガが1955年に亡くなり、1961年にはジャクリーヌと正式に結婚しているので、原画はその間に制作されたものでしょう。画面右上の文字から、1957年12月28日に描かれたと推測されます。
 ジャクリーヌはピカソと同じ身長150センチ強の小柄な女性で、広い額とすらりとした鼻筋、鋭い眼光を持っていたといいます。ピカソは、奥ゆかしく気品ある彼女に、殆どポーズを取らせることはなかったと言います。この作品でも微笑みを湛えた横顔がとても自然で、凛々しく感じられます。


 ここで御紹介した作品は全て、下記の日程で当社のシンワアートミュージアムにてご覧頂けます。
銀座では11月に入ると、街にクリスマスのイルミネーションが飾られ始めますし、街歩きも楽しいこの頃。ぜひご来場をお待ちしています。


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和田 英作《薔薇》
40.4×53.0cm
Est. \1,000,000~1,500,000

<近代美術オークション概要>
オークション日時:2008年11月9日(日)17:00
オークション会場:丸ビル7階 丸ビルホール
下見会       :シンワアートミュージアム
              11月5日(水)~11月8日(金) 10:00~18:00
              11月9日(日) 10:00~13:00

(執筆者:I)

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