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「陶器」と「磁器」

陶器と磁器
こんにちは。
突然ですが皆さん、陶芸作品はお好きですか?私は陶芸を勉強していく中で一番最初の大きな「?」がこの問題でした。美術品の良さがどうしたらわかるのだろう?と。
そこで今回は、陶芸作品を鑑賞する上での最も大枠、「陶器」と「磁器」について説明してみようかと思います。一度見方が分かると、あれよあれよという間に陶芸に興味を持てるかもしれません!
 
まず、「何焼か」という判断はというと、・・・ほぼ見た目です。
陶芸は生産地によって釉薬や土が違うので、見た目でどこの土地で作られたかおおよそ判断できます。でも、いくつも見ないと系統が分からず、ややこしいですね。しかも土や釉薬は簡単に運ぶことができるので、最近では「○○の土」としてホームセンターなどで売られていたりします。なので「○○焼」というより、「○○焼き風」と言ったものも多いようです。実際に多くの種類の陶芸作品が生まれ、どこの焼き物か分類できないものまで増えてきています。
そこでまず、もっともシンプルに、且つ大胆に「陶器」と「磁器」に分類してみましょう。
 たとえば、「楽焼」「備前焼」などは「陶器」に、「有田焼」「九谷焼」は「磁器」に分類されます。
陶器3点小


「陶器」は「土もの」とも呼ばれ、釉薬を掛けず素地を焼成して完成だったり、土の中に含まれる石がそのまま表面に出ていたりします。比較的低温(800℃~1000℃)で焼かれ、吸水性も高いことが特徴です。


磁器3点小

反対に「石もの」とも呼ばれる「磁器」は、白い素地でなめらかな陶土で成形され、高温(1200℃~1500℃)で焼いた硬質で吸水性の低い焼き物のことをいいます。叩くと「キーン」という金属音が出るのも特徴的です。
 前者は朴訥とした温かみを感じ、後者は洗練された美しさを感じます。これはその土地で「採れる土」で決まります。中国では古くから磁器の代表とも言える青磁が作られてきました。世界的に最も価値があるのは、南宋時代に作られた砧青磁かもしれません。日本では豊臣秀吉の時代に朝鮮から李三平(り さんぺい)という陶工が連れてこられ、現在の佐賀県有田市で磁器の作れる陶土を発見し有田焼が作られ始めました。その後有田では、色絵磁器が江戸の絢爛豪華な元禄文化を反映し花開き、さらには輸出され、ヨーロッパで柿右衛門様式として模倣されるようにまでなったのです。
 磁器は硬質で型を使い作れることからも、湯飲みや茶碗など量産品としても多く生産されます。そしてこれまで述べたように静謐で気品あふれる作品を生み出すことができるのも磁器です。
 一方陶器は、江戸初期の茶人・古田織部が作らせた歪んだ美を持つ「織部焼」、千利休の千家が認めた茶碗師・樂家の焼く「楽焼」という形で日本の茶の湯とともに、発展していきました。もともと中国から伝わってきた茶の湯は「唐物」と呼ばれる中国製の高価な茶道具が好まれてきましたが、利休が考案した「わび茶」と呼ばれる簡素な茶の湯が広まっていくにつれ、唐物ではなく欠けた水指や茶碗などが「美」として認識されていったのです。それを表現しやすかったのが、磁器ではなく陶器だったのでしょう。
 このように陶器と磁器は、相反するような特徴を持っているのです。

 そうは言っても、作品の見方が難しく、良さを理解することもなかなか簡単ではないのかもしれません。それでも、例えば「きりっとした派」か?「ほのぼの派」か?どちらが好きか、まずは選んでみてください。そしてさらにその中でどのような種類が好きかなぁなどと考えながら触れていくにつれ、生産地がだんだん分かりだし、陶芸の楽しみ方が少しづつ分かってくると思います。

瀬戸物屋さんで売られている大量生産の磁器だけでなく、美術品としての「陶磁器」の世界に一歩足を踏み入れてみてはいかがでしょう?   

(執筆者:E)

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