月別アーカイブ: 2009年11月

Asian Auction Week in 香港!!

 本日(2009年11月27日)より明日まで、香港マンダリン・オリエンタル・ホテルにてオークション下見会を開催しております。
 今週はじめから現地入りしているスタッフに写真を送ってもらいました。

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下見会場入口


 今回は2008年11月のマカオ、2009年5月の香港に続き、第3回目となる、“Asian Auction Week”です。
 韓国(Kオークション)台湾(キングスレー)シンガポール(ララサティ)日本(シンワ)の4つのオークションハウスが集結し、合同でオークションを開催。
 各国を代表するコンテンポラリーアートを世界に発信します。

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マンダリン・オリエンタル・ホテル外観


開催日程詳細:https://www.shinwa-art.com/aaw/aaw0911.html

公式ウェブサイト: www.asianauctionweek.com


 シンワアートオークションからは、河原温、白髪一雄、草間彌生、奈良美智など日本人アーティストを中心に40点が出品されます。

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下見会場の風景

全4社の出品作品(英語):http://aaw2009.iauctionsystems.com/


 以前、今回のオークションに派遣されているスタッフとニューヨーク出張に行った時、各国オークションハウスの下見会を眺めながら「勉強すべきところ」「日本の方が優れているところ」という話をしたことを思い出します。
 今回、オークション運営のエキスパートとして香港入りした彼女。きっと大活躍して、今の日本作品を代表する作品たちを立派に展示してきてくれるでしょう!

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香港の街角1


 “Asian Auction Week”でオークションを共同開催する3社には熱意溢れる若手スタッフが多く、高いモチベーションでこのプロジェクトに挑んでいる印象を受けます。
 そんな彼らから私達も元気をもらっています!

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香港の街角2

 シンワでは3回目となる海外オークション。
 価格や点数は様々ですが、国内で20年の経験を重ねた上に海外進出を果たした分、オークション運営はよりスマートに、磨きをかけていっています。

           ***

 さて今回は、昨年亡くなった白髪一雄の名品が出品されています。
 去る9-10月にかけてシンワアートミュージアムで開催された「日本・韓国 戦後現代美術展」で、正面に掛けられた白髪のパワーに圧倒された方も多かったのではないでしょうか。

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Lot 31 白髪一雄 《錦秋》
Estimate: 1.300.000 – 2.000.000 HKD
170.000-260.000 USD
1983年、キャンバス、油彩、130.5×162.0cm

 本作品は紅葉する秋の美を表現した「錦秋」(きんしゅう)という言葉がタイトルに用いられています。赤や黄色に染まる木々を、華やかな織物に例えている言葉です。
 白髪は滑車につかまって画面の上を滑走しながら足で描くアクションペインターですが、そのアクションには、神による大地の創造や破壊を想起させる迫力があります。
 作家の宇宙的なスケールの大きさをも感じさせる作品です。


(井上素子)

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建築家・柳澤孝彦+水墨画家・王子江 二人展

今週は銀座のシンワアートミュージアムで、建築家・柳澤孝彦+水墨画家・王子江 二人展を開催しています。
                        
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柳澤先生のブース           

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王先生のブース


出品作家のお二人をご紹介します。

柳澤孝彦(やなぎさわたかひこ)先生

1935年 長野県松本市生まれ
1958年 東京藝術大学美術学部建築科卒業
1958年 株式会社竹中工務店設計部入社
1986年 「第二国立劇場(仮称)」国際設計競技で最優秀賞受賞を機に、株式会社
      TAK建築・都市計画研究所を設立し、代表取締役に就任。文化施設を主
      軸にした設計活動を展開。
1995年 「郡山市立美術館及び一連の美術館・記念館の建築設計」にて第51回
      日本芸術賞受賞
1996年 株式会社柳澤孝彦+TAK建築研究所代表取締役就任

代表作:新国立劇場、東京オペラシティ、東京都現代美術館、郡山市立美術館、
     真鶴町立中川一政美術館、有楽町マリオンなど

 建築がお好きな方の中にはファンの方も多いかもしれません。柳澤先生は上記の施設以外にもたくさんの美術館を手掛けていらっしゃいますので、このブログをご覧のみなさまなら、先生が設計された施設に一度は行かれたことがあると思いますよ。今回展示されているアートワークは、建築とは違った柳澤先生の別の一面が見られる作品です。

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2点とも《光陰・メタモルフォーゼ》というタイトルです。

 作品はデカルコマニーの技法で制作されています。デカルコマニーとは、紙に絵具を塗り、別の紙を重ねたり二つ折りにするなどして、不定形で偶然のイメージを得る技法。シュルレアリスムの作家たちが用いた手法としてよく知られています。この技法は偶然性や無意識の表象でもありますが、柳澤先生は作為と偶然性が50%ずつの割合で表出するように制作されています。
 今回のテーマは、《光陰・メタモルフォーゼ》というタイトルの通り「時間」。左の画像の作品は、まるで水が飛び散る瞬間を捉えたようにも見えます。そのほか、宇宙や細胞のようにマクロやミクロの世界を思わせる作品が展開されています。


王子江(おうすこう)先生

1958年 中国北京市の文人画家の家系に生まれる。国立北京芸術学校卒業。
1988年 来日
1996年 水墨障壁画《雄原大地》が茂原市立美術館に収蔵される
1999年 水墨障壁画《聖煌》が奈良・薬師寺に収蔵される
2004年 水墨障壁画《出雲勝境図》が島根県・出雲大社に収蔵される
2008年 国際オリンピック委員会中華人民共和国文化部の招待作品として、《農家
      喜慶話奥運》がオリンピック芸術センターに収蔵される。「王子江展」(東
      京・上野の森美術館)開催。
2009年 NHK「新漢詩紀行」主題画を制作


 NHKの「新漢詩紀行」でおなじみの王先生です。王先生といえば100メートルの水墨画ですが、今回は展示会場に入りませんので、お得意のモティーフ、水のある風景を題材とした額装作品がたくさん出品されています。
 
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《人生楽事》             
 王先生のライフワーク、100メートルの水墨画を思わせる群像です。 

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《蘇州水郷人家》
 中国の水墨画に様々なジャンルの絵画の要素を取り入れた作品です。王先生は油彩画や日本画を学ばれたご経験があり、筆のタッチは油彩画を、墨の濃淡のぼかしは日本画を意識されているそうです。伝統的なモティーフを抒情豊かに表現した作品です。


両先生とも会場にいらっしゃることが多いので、もしお会いできたら直接お話をうかがえるかもしれませんよ!
みなさまのご来場を心よりお待ちしています。


会期:開催中~11月29日(日)
    10:00~18:00(最終日は17:00まで)
会場:シンワアートミュージアム 1F
    東京都中央区銀座7-4-12 ぎょうせいビル1F
    TEL 03-3569-0030


(執筆:S)

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地下鉄アート探訪

 今日は、アートへの視点をちょっと変えて、買うことは出来ないけれど無料で見られるアート、「パブリックアート」をご紹介します。


<副都心線のアート>

 シンワアートオークションで取り扱っている作家の作品が、地下鉄の構内で壁面を飾っているのをご存知ですか?
 東京メトロ副都心線の駅では、渋谷から池袋までの8駅のあいだに、14のパブリックアートがあるのです。

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中山ダイスケ《新宿躑躅(つつじ)》
@東新宿駅 B4F改札


 各作品の脇には、テーマや、作品が設置された駅に対する作家の思いが綴られた言葉がキャプションパネルとして貼られています。
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 副都心線の駅は近未来的な雰囲気が漂い、美術品の鑑賞にはピッタリの空間が広がっています。


<駅員さんご自慢のアート!>

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絹谷幸二《きらきら渋谷》
@渋谷駅 B3F 13番出口付近


 この作品は、アクリル無しでむき出しの凹凸が壁面を飾っています。
 絹谷作品にしばしば登場する音楽モティーフや文字を書き込む手法も見られます。

 JR渋谷駅の周辺は、若者文化の中心地というイメージがありますが、絹谷の描き出す渋谷は現代版「春の小川」なのだそうです。
 作品からは春を謳歌するエナジーがほとばしっています。


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千住博《ウォーターフォール》
@新宿三丁目駅 B2F 高島屋方面改札前


 どの作品も非常に分かりやすい場所にありますが、私が一か所見つけられずに駅員さんにお尋ねすると、とっても嬉しそうに
「○○さんの作品ですね!!それならここを出て・・・あ、でもこっちからの角度も良いですよ!」
と誇らしげにご説明下さいました。

 まるで、ご自身の家の自慢の絵について尋ねられた、美術所蔵家の方のようでした。


 副都心線では上記のほか、宮田亮平、木村光佑、山口晃、天津恵、山本容子、吉武研司、武田双雲、野見山暁治、大津英敏の作品を見ることができます。



<パブリックアートの歴史>

 以上見てきたように、公共空間に展示される作品はどれも大作です。

 こうした大型の絵画作品、過去には1930年代のニューディール政策下でパブリックアートが多く発注され、その影響でポロックやデ・クーニングら約40万点の作品が生まれたという歴史があります。

 これは市民の生活に美術を身近にする効果や、作品の大型化という流れを導きました。


 公共空間に設置される作品、という点ではミケランジェロの彫刻も、皇居外苑の《楠公像》も、同一のカテゴリーに入ります。

 しかし、それらが権力者の富や力を誇示したり権威を象徴したりするものであったのに対して、ポロックや絹谷幸二の作品は、市民に同時代の美術を浸透させる目的を持っているのです。

 今度、駅や公園でパブリックアートに出会ったとき、こういった視点でご覧になってみて下さい。身近にある作品がどちらの分類に入るか、面白いかもしれませんよ。

(井上素子)

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11/21東京&11/30香港 下見会@銀座

 今週は、銀座にて21日の近代美術オークション(東京・丸ビル)と、30日のCouncil&SHINWA Alliance Auction(香港)の下見会を開催しています。

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エントランスを入ると宝石&時計ブースです。
人気のVan Cleef & Arpelsは今、六本木の森アーツセンターギャラリーで展覧会が行われています。
今回はたくさん出品されますので、ぜひお手にとってお試しください。


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B1Fの洋画コーナーには、梅原龍三郎の作品がずらり25点。
あの有名な名作も出品されますので必見です!


 では、本日も近代美術オークションの出品作品の中から菱田春草の作品をご紹介します。
現在、東京の明治神宮では「特別展 菱田春草」が開催されていますが、ご覧になりましたか?今回出品される春草は、展覧会で名品をご覧になった方にもおすすめの1点です。


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Lot.42 菱田春草 《蓬莱山》
26.3×19.2cm
絹本・彩色  軸装
左下に落款・印
横山大観箱
菱田春夫識
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書つき
エスティメイト ¥4,000,000.~6,000,000.



 まずは春草について。

 菱田春草は1874(明治7)年、長野県生まれ。1890年東京美術学校に入学し、橋本雅邦に狩野派の絵画を、川端玉章に円山派の絵画を学びました。卒業後は美術学校の教員となりましたが、岡倉天心の校長辞職とともに母校を去ります。同年、新しい日本画の創造を目指し、天心によって設立された日本美術院に参加。盟友・横山大観とともに革新的な日本画を模索していく中で、朦朧体という没骨彩色の表現法を生み出しました。
 1906年、日本美術院が東京から茨城県の五浦に移転すると、大観や下村観山らと互いに影響を与えあいながら制作に励んでいきます。五浦では朦朧体の研究を推し進め、色線と点描を駆使した表現へと発展させ、画業は充実期へと向かいました。1908年視力に異常をきたした春草は、療養のため東京代々木に転居。以後、1911年に36歳という若さで亡くなるまでの短い期間に、重要文化財に指定された《落葉》や《黒き猫》などの名作を次々に生み出しました。写実を重視し、モチーフの存在感を捉えながら琳派などの伝統絵画の装飾性を取り入れるという晩年の制作は、近代日本画の基礎を確立したと言えるでしょう。

 本作品は落款より1900~02(明治33~35)年頃の作でしょうか。春草が本格的に朦朧体に取り組んだ時期に当たります。題材となった蓬莱山(ほうらいさん)とは古代中国において、仙人が住むといわれた東の海上にある山で、不老長寿の妙薬があると考えられていました。日本では竹取物語で姫が皇子に出す難題の一つとしても登場し、画題としては新春や慶事の席に相応しいものとして、古来より好んで描かれました。
 本作品では前景につがいの鶴が止まり、人跡未踏の境地を想像させます。霧の立ち込めて茫漠とした山峡は、中景に余白を取り、そこに深い空間の奥行きを思わせます。深山の湿潤な空気を感じさせるようなこの表現は、朦朧体の研究の成果を生かしたものです。春草の自然描写はつねに色彩感を溢れさせており、その中に統一された情趣が漂っています。

みなさまのお越しを心よりお待ちしています。

(執筆:S)

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長船元重の太刀

今週は銀座でパートⅡの下見会を開催しています。

今回は目黒雅叙園さんの日本画コレクションが出品されます。すべて100号を超える大作ですので、見ごたえがありますよ。

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1Fに展示されています。

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龍村や一竹の帯もたくさん出品されます。きれいな色のものばかりですよ。
輪島塗の屠蘇器や蒔絵の重箱などもすてきです。新年の準備にいかがでしょうか。


今回のパートⅡオークションの目玉はなんといってもこちら。

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刀です!!

Lot.670 長船元重
《太刀/衛府太刀拵》
刀身:71.2cm
反り:2.2cm
茎表に銘「備州長船住元重」
財団法人日本美術刀剣保存協会重要刀剣指定(第五十四回)
鉄砲刀剣類登録証付(東京都第20229号)
『刀剣美術』(財団法人日本美術刀剣保存協会)第六二三号掲載
エスティメイト ★¥3,200,000.~5,000,000.


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 刃長が2~3尺(約60~90cm)の日本刀を太刀といいます。太刀は、おもに平安時代頃から南北朝時代まで使用され、馬上での戦いを想定して製作されたため、長く反りが強いのが特徴です。

 作者の長船元重(おさふねもとしげ)は、南北朝時代頃に活躍した備前(現在の岡山県東南部)の刀匠です。備前は、刀作りのための良質な原料や燃料に恵まれたこと、吉井川や瀬戸内海、山陽道を有する交通の要所であったため、材料の確保や流通が容易であったことから、鎌倉時代から日本刀の一大産地として栄えました。その中でも長船派は主流であり、鎌倉から室町時代まで隆盛を誇ったといいます。

 50年もの作刀期間があったと伝えられる元重は、江戸時代に出版された『懐宝剣尺』や『古今鍛冶備考』では、最も優れた刀工であることを示す「最上大業物(さいじょうおおわざもの)13工」の一人に選ばれ、その作品も日本刀の最上級品「最上大業物」にランクされています。現在、残された名品のうち重要文化財に指定されているものが7点あり、博物館に収蔵されているものもあります。

 衛府太刀拵(えふだちこしらえ)は、もともとは平安時代に宮中の護衛に当たった役人(=衛府)が持つための太刀の鞘や柄、鍔などの装備を指します。衛府は朝廷に仕える武官ですので、デザインは装飾的で優美ですが、実用性も重視され重厚なつくりになっています。

パートⅡオークションは11/21(土)ですが、来週は展示しておりませんのでご注意ください。
みなさまのご来場を心よりお待ちしています。

(執筆:S)

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アーティスト・イン・レジデンス、上海

「アーティスト・イン・レジデンス」。アーティストが一定期間、ある土地に滞在しながら作品を制作するプログラムとして、日本ではすでに、海外のアーティストの受け入れ、あるいは日本人アーティストの派遣等が度々行われています。上海においても、日本人が運営するアートマネジメントオフィス「Office339」がレジデンスプログラムを打ち出し、日本から若手アーティスト、龍門藍を迎えるというので、制作活動から個展開催までを取材しました。

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滞在期間は7月末から9月末の約2ヶ月。上海でアートイベントが目白押しだった9月上旬には制作場所を一般に公開し、その集大成として、自身にとって海外初の個展「Girl by Girl」を開催。その個展も先月、好評を博する中幕を閉じました。

龍門藍は1984年岡山県生まれ。今春、京都市立芸術大学大学院を修了したばかりでありながら、在学中から精力的に活動し、国内外から注目を集めているアーティストの一人です。今回上海に滞在するにあたって、日本から持参したという一部の道具以外、キャンバスや絵の具等はほとんど現地で調達し、まったくこれまでの日常とは異なる空間に身を置いて制作を開始したといいます。女の子や人形、花などをモティーフに、鮮やかな色彩、大胆な構図により描かれた作品は、瑞々しく、ガーリーポップな雰囲気が溢れていますが、龍門藍自身も、作品の雰囲気を裏切らない可愛らしいアーティストで、上海での制作活動や住民との交流、また上海生活そのものを心から楽しんでいるようでした。
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右は上海に来てから雨が続いてどこにも出かけられず、そのときの気持ちを反映しているという作品。

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「一度日本の外に出て制作をしてみたいと思っていたし、上海で制作に集中できることがとてもうれしい。心境の変化も大きい。」と生き生きと制作に励む。


可愛らしい女の子、あるいはその人形をモティーフとしながらも、顔が網で覆われていたり、籠や格子の中に閉じ込められていたり、自由な動きが制限された姿は、一見、何かから束縛されて身動きがとれないようであり、女の子の抑圧された感情を表現しているかのように受け取れます。またそれをチープな人形でポップに表すことにより、重くなりがちなテーマを、軽やかで親しみやすいものへと置き換えているかのようにも感じます。
しかし本人は「観る方が自由に受け取っていただければ」といい、むしろ網や格子に興味があるようで、「格子があることで、格子と格子の間に主体が描かれて、主体と格子の前後関係が入れ替わるように見えることが面白い」といいます。
また、縦横3メートルの巨大なキャンバスを前に、「上海でしかできない、大きな作品を作ってみたくて」と目を輝かせ、脚立を何度も往復しながら筆を運んでいる様子が印象的でした。
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制作場所は、かつてイギリス租界であった古い工場跡地の一角で、アートマネジメントオフィス「Office339」をはじめ、ギャラリーやアーティストのアトリエ、デザイン会社等が入居しています。制作中にアーティストがふらりと入ってきて、「ここはこうした方がいい」といったアドバイスしてくることもあり、とても新鮮であったといいます。こうした現地のアーティストたちとの交流も大いに刺激になったようです。

個展開催時には3メートルの大作はまだ絵の具が乾ききっていなかったということもあり、一度フレームから外し、作品を広げたまま、夜中の上海を練り歩いて運んだといいます。「大変でしたよ」と言いながらもその過程を笑顔で語る姿に、今後もその活動に注目していきたいと思わずにはいられませんでした。

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個展のオープニングでは地元のアート関係者やアートファンで賑わう。

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「Layer Tights」シリーズ。

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個展のオープニングパーティーでは、美術を専攻する中国の学生とともにパフォーマンスを披露。

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個展のオープニングを無事終え、「また上海に来たいです」と笑顔を見せた。

龍門藍の個展の詳細はこちら

(執筆:M)

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11月オークションの下見会スタートしました

 今月は近代美術、近代美術Part2、Asian Auction Week in Hongkong(コンテンポラリー)、Council&SHINWA Alliance Auction(ジュエリー&ウォッチ)と、オークションが盛り沢山です。今週から各種オークションの下見会がはじまりました。
 先日大阪での下見会が終わり、本日と明日は名古屋で近代美術とジュエリー&ウォッチの下見会を開催しています。また、8、9日はSelected Viewingということで、11月の各オークションから選りすぐりの作品を集め、台湾でも下見会を開催いたします。お近くにお立ち寄りの際は、ぜひお越しください。

下見会スケジュールはこちら

 さて、本日は、11月の近代美術オークションの出品作品から、川合玉堂の作品をご紹介いたします。こちらも現在名古屋の下見会で展示中です。玉堂は愛知県生まれですので、今回の下見会は里帰りということになりますね。

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Lot.40 川合玉堂(1873-1957)
《飛瀑霜葉》
138.7×50.9cm
絹本・彩色 額装
昭和15年作
左横に落款・印・年代
玉堂美術館登録あり
『歴史を築いた日本の巨匠Ⅱ 川合玉堂(下巻)』掲載 P.120 №3(美術年鑑社)
エスティメイト 
★¥2,000,000.~3,000,000.



 まずは川合玉堂について、簡単にご紹介します。
 玉堂は1873年愛知県生まれ。1887年京都の望月玉泉門下に入門。1890年幸野楳嶺の画塾に入門し、菊池芳文、竹内栖鳳らとともに学びました。1895年幸野楳嶺の逝去にともなって、翌年から橋本雅邦に師事。1898年雅邦らに従い日本美術院の設立に参加。1907年第1回文展に出品。以降文展・帝展を中心に活躍します。1917年帝室技芸員、1919年帝国芸術院会員となり、1940年文化勲章を受章。1951年には文化功労者となりました。日本の伝統的な狩野派・四条派の技を極め、四季折々の日本の自然を描きつづけた日本画家です。自然とともに生きる人々の暮らしへの共感を素直に表現した詩情豊かな作風は、現在も高い人気を誇ります。

 本作品は、文化勲章を受章した1940(昭和15)年、67歳の時に制作された作品。玉堂が、まだ終の棲家となった奥多摩に移住する前、東京・新宿区に居を構えていた時代の作です。この時期、制作は成熟期を迎え、色彩と墨とが見事に調和した傑作が次々に生み出されていきました。
 題材となった山渓と瀑布は、玉堂が得意としたモチーフ。卓抜した技術で表現された風景は、写実に基づいたものでありながら「日本の美しい自然」として理想化された風景です。勢いよく流れ落ちる滝と、険しい岩壁を彩る鮮やかな紅葉には、厳しくも美しい自然の姿が生き生きと表されています。雄大な自然美とともに、大きな荷物を背負い橋を渡る点景人物を描き込むところがいかにも玉堂らしく、心を和ませます。詩情豊かな秋の情景としてまとめ上げた佳作と言えるでしょう。

(執筆:S)

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