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ガレ《湖水風景文花器》

 土曜日のオークションにお越しいただいたお客様、ありがとうございました。
 シンワは早速、次のオークションに向かって始動しています。今週は陶芸、四月には西洋美術のオークションが控えています。

 今日は、西洋美術に出品される作品をご紹介しましょう。


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《湖水風景文花器》
・H35.9×D10.8cm
・2,000,000~3,000,000円


 本作品は、アール・ヌーヴォーを代表するガラス工芸、エミール・ガレの花器です。
アール・ヌーヴォー(Art Nouveau, 「新しい芸術」の意)とは、工芸・建築・絵画・ファッションなどの分野に波及した豊かな装飾を特徴とする様式です。
 ガレの芸術性に対する評価と共に、特に20世紀末の機能主義的で禁欲的なデザインに息苦しさが感じられるようになった頃、改めて注目が集まるようになりました。日本での人気が高まったのは戦後のことです。


 ガレは、植物の細密な観察に基づく写実性の強い造形を得意としていました。古典美の特徴である均衡、安定、普遍性に反発して、非対称、揺らめくような不安定な形、一瞬の美に注目する視点など、反古典主義と呼ばれる特徴が、「新しい芸術」を牽引したのです。


 本作品は、透明ガラスの層の間に色ガラスで作った文様を挟み込み、表層に彫刻を施して文様が重なり合って見えるようにする“アンテルカレール”という技法が用いられています。
 これにより風景には重層的な奥行きと深みがもたらされ、湖のほとりで繰り広げられる木々と水、光、風のドラマを再現することに成功しています。

 風景を主題とする花器はガレの晩年に多く見られ、自然の摂理を造形に取り入れた有機的なデザインは、ガレの没後もアール・ヌーヴォーを象徴するものとして知られるようになっていきました。


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(執筆者:I)

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