カテゴリー別アーカイブ: 近代美術PartⅡ

PARTⅡオークションに出品される韓国人作家、全惠苑・方靖雅

先週、BAGS/JEWELLERY&WATCHESオークションにお越しいただいたお客様、誠にありがとうございました。
今週は、4週間連続オークションのラストを飾る近代美術PartⅡオークションが開催されます。6日(水)にスタートする銀座での下見会に、皆様のまたのお越しを心よりお待ちしております。

【下見会】
日程:7月6日(水)~7月8日(金) 10:00~18:00
    7月9日(土) 10:00~12:00
場所:シンワアートミュージアム

【オークション】
日程:7月9日(土) 14:00~
場所:シンワアートミュージアム

版画・日本画・洋画・外国絵画・工芸など、毎回多様な作品を楽しむことができるシンワの近代美術PartⅡオークション。今回もルノワール・モネ・ピカソなどの優れた版画作品や、梅原龍三郎・小磯良平・児島善三郎の絵画などがたくさん出品されます。

今日は、その中から外国絵画の作品2点をご紹介したいと思います。


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LOT 756
全 惠苑 (ジョン・ヘウォン)  B.1978
『ピンク色の顔』
53.0×45.5cm
キャンバス・油彩 側面にサイン・年代(2011)
エスティメイト:\50,000~\100,000

LOT 756 『ピンク色の顔』は、韓国人の若手作家・全惠苑(ジョン・ヘウォン)の作品です。海が綺麗な韓国の釜山(ブサン)で生まれた全は、釜山大学校美術学科・同大学院を修了し、現在韓国を中心に制作活動続けている作家です。作家自身を含む人間の内面に閉じ込められた「記憶」をモチーフとして描き続けてきた全は、きわめて個人的で抽象的である「記憶」の、現在と過去との間に生じる感覚的な「隙間」に焦点を合わせています。その「隙間」とは、ある事件が起きた時点から現在までの間に起こった感情の変化、またはその事実に対する受容態度の変更をいいますが、このような過去と現在の感覚の微妙な不一致を彼女は「曖昧な差」と呼びます。もう忘れてしまった過去の感情、あるいは当時は気付かなかった気持ちにまでを改めて向き合おうとする作家の姿勢は、単なるノスタルジアではないのでしょう。本作品の、画面の中からこちら側を見つめるピンク色の顔は、どんな時代のどんな物語を語りかけているのでしょうか。


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LOT 757
方 靖雅 (バン・ジョンア) B.1968
『Chicken house』
53.0×33.4cm
キャンバス・アクリル 左下にサイン・年代(2011)
エスティメイト:\50,000~\100,000

上は、もう一人の韓国人の作家、方靖雅(バン・ジョンア)の作品『Chicken house』です。韓国では最も有名な美大である弘益大学校美術学科を卒業し、東西(ドンソ)大学のDesign&IT専門大学院・映像デザイン科を修了した方(バン)は、2002年釜山青年作家賞、光州市立美術館・河正雄(ハ・ジョンウン)美術賞を受賞するなど、故郷である釜山を中心に情熱的な制作活動で注目を集めてきた若手の作家です。パブリック・コレクションとしては、国立現代美術館、釜山市立美術館などに作品が収蔵されています。方靖雅は、日常の風景の中、瞬間的に目に入ってきたある場面を独自の淡々とした感覚をもって描き出してきました。何気なく、あるいは無関心にも見える作家の視線は、「客観的な瞬間」から感じることができるユーモラスなイメージを観る者に与えます。
本作品は、最近「生」と「死」の対比に興味を持つようになったという方(バン)の最新作。画面には、キッチンでの料理には相応しくない服装の女性が鶏を手に握ったまま考え込んでいます。生命力溢れる豊かな肉体をもつ女性は、食材となった鶏が持つ「死」のイメージと強く対比されるようにも見えます。しかし、その対比とは「生」に対する「死」の排斥ではなく、むしろ生と死がわかちがたく存在するということに対する素直な受容を表すものではないでしょうか。

(執筆:W)

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1月PartⅡ下見会@銀座

 皆様、お元気に新年をお迎えでいらっしゃいますか。
シンワアートオークションとシンワブログを本年もよろしくお願い申し上げます。

本日より、シンワアートミュージアムでは近代美術PartⅡオークションの下見会を開催しております。1月29日にオークションを迎える東京では新年初めての下見会となります。
版画・日本画・洋画・外国絵画・工芸に至るシンワの近代美術PartⅡオークション、今年もより豊かな出品コレクションに力を注ぎます。
今日は、その下見会の風景を一部ご紹介いたします。


1階は日本画を展示しております。堂本印象の彩色画、片岡球子の版画など、人気作家の作品が出品されます。

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左下の画像は、棟方志功の彩色画と板画の作品3点揃いです。棟方志功鑑定委員会鑑定登録証が付いた全ての作品が、魅力的なエスティメイトで皆様をお待ちしております。


地下は日本洋画・西洋絵画・工芸です。
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こちらは、山口薫やオノサト・トシノブの作品などが展示された日本洋画コーナーです。


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また、その向こう側には、ロバート・ロンゴやシャガールの優れた版画作品を見ることができる版画・工芸セクションが用意されております。中でも、村上隆の2010年新作コレクションは、今だからこそお得なお値段で手に入れる良いチャンスに違いありませんね。


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最後にミレーのエッチング3点組やレルミットの素描もお見逃しなく。

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Lot 427
Léon – Augustin L’hermitte
Les Dégustateurs d’eau-de-vie de Marc ou L’almbic
31.2×46.7cm(58.5×73.5cm) 額装
紙・木炭
M.Le Pelley Fonteny, Léon Augustin Lhermitte, catalogue raisonné, Paris, 1991, No.659 P.439
第三回松方氏蒐集繪書展覧會 東京府美術館(昭和五年) No.40
エスティメイト:\1,000,000~\1,500,000

レオン・オーギュスタン・レルミット(1844-1925)は、クールベ風のリアリズムにセンチメンタルな風味を加えた農民画や宗教画で良く知られるフランスの画家です。バルビゾン派の第2世代にあたります。ルコック・ド・ボワボードラン(Horace Lecoq de Boisbaudran)に師事し、1864年初めてサロンに出品した後、1872年にロイヤル・アカデミーに出品しました。その後、第2のミレーと呼ばれて人気を集めながら1900年にはパリ万国博覧会に出品し、注目を浴びます。
木炭やパステルのような柔らかなメディアと優れた素描力による作品を得意とする、センチメンタルな感覚が溢れるレルミットの絵画世界。ゴッホは、彼のデッサン作品を見て「理想的」という言葉を使って称賛したそうです。デッサンがお好きな方はぜひご覧ください。

また、この作品は「第三回松方氏蒐集繪書展覧會」に出品されており、かつては「松方コレクション」の一点でした。
額の裏にそれを証明するシールが貼付されています。
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「松方コレクション」は、総理大臣を務めた松方正義の三男で実業家の松方幸次郎氏が、大正から昭和の初めにかけて蒐集した、近代を代表する美術品の大コレクションです。
国立西洋美術館が建設されるきっかけとなったことでもよく知られています。
膨大なコレクションの多くは松方氏の生前から売却されていましたので、この作品はそのうちの一点と思われます。また、現在コレクションの一部は、西洋絵画や彫刻が国立西洋美術館とブリヂストン美術館に、浮世絵が東京国立博物館に収蔵されています。
デッサンとして秀逸なだけでなく、大コレクターを魅了した一点としても美術史的に貴重な作品と言えるでしょう。

銀座の下見会と丸ビルのオークションで、みなさまのお越しを心よりお待ちしております。


【下見会】
2011年1月19日(水)~21日(金) 10:00~18:00
2011年1月22日(土) 10:00~17:00
会場:シンワアートミュージアム
【オークション】
2011年1月29日(土) 15:00~
会場:丸ビルホール

オークションスケジュールはこちら

〈執筆:W〉

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9月PartⅡ下見会@銀座

こんにちは。
今週は銀座で近代美術PartⅡ下見会を開催しておりますので、少しだけ会場をご案内します。

今回のオークションは江戸時代の作品が多く出品されます。
エントランスを入ると、まずこちらの屏風がお迎えします。

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Lot.626 《東海道図屏風》
各107.3×263.6cm
紙本・彩色
エスティメイト ★\1,000,000~2,000,000


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江戸と京都を結ぶ東海道の情景を描いた屏風です。
右の「を多はら」という金色の短冊のあたりは小田原の城下町です。往来する町人や旅人の姿、箱根の険しい山々と相模湾に囲まれた町の情景が細かく描き込まれています。このほかにも、東海道五十三次の宿場町や五十三次ではない町も描かれていますので、会場にお越しの際はぜひ江戸から京都まで、順番に辿ってみてください。


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伊藤若冲の《鶏図》です。               
若冲は極彩色の作品もすばらしいですが、水墨もたくさん描いています。左幅の鶏は足元にいるネズミも気にせずどっしりと構え、右幅の鶏は縁台の上に高くジャンプしたように羽を広げ、尾を翻しています。鶏を題材に、静と動を大胆でユーモラスに表現した作品です。


Lot.627 伊藤若冲
《鶏図》
各紙本・水墨 
印あり
エスティメイト ★\600,000~1,000,000



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 悪夢のような奇想の絵から細密描写による歴史画、軽妙洒脱な山水画までを自在に描いた「無頼の絵師」曽我蕭白、呉春という雅号でも知られ、俳人としても活動した松村月渓などの掛け軸も出品されます。




近代の日本画では、美人画が充実しています。

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 こちらは、鏑木清方、伊東深水、伊藤小坡の美人画コーナーです。
3人が得意とした風俗美人画です。いろいろな季節のものがありますので、お探しの季節の軸にぴったりの作品があるかもしれません。このほかに、深水に師事した横尾芳月の屏風《手古舞「三社祭」》も出品されます。
                     

B1Fには日本洋画、外国絵画を展示しています。
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下見会はいよいよ明日までとなりました。
オークションスケジュールはこちら

みなさまのお越しを心よりお待ちしています。

(執筆:S)

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PartⅡ下見会@銀座

こんにちは。
シンワの7月のオークションは、「JEWELLERY&WATCHES・近代美術PartⅡ」(17日・土)と、「近代美術」(24日・土)に分けて開催いたします。

「JEWELLERY&WATCHES・近代美術PartⅡ」の下見会を、銀座・シンワアートミュージアムにて現在、開催中です。
JEWELLERY&WATCHESが167点、近代美術PartⅡが383点という多数の作品が出品される今回のオークション。本日は、その中からいくつかの作品をご紹介したいと思います。

まず、日本の戦後美術を代表する前衛芸術家、斉藤義重(1904-2001)の作品です。
ご覧下さい。
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Lot 754 斉藤義重
《ドリル(青)》
17.1×13.3cm(40.3×36.7cm)
合板(ドリルを使用)・油彩 裏に署名
★¥250,000~¥500,000

斉藤義重(1904-2001)は、日本のコンテンポラリーアートのパイオニア的な作家です。早くから抽象表現に取り組み、1960年第30回ヴェネチア・ビエンナーレに出品、グッゲンハイム国際美術賞展で優秀賞を受賞するなど、国際的にも高く評価されています。
《ドリル(青)》は、斉藤の代表的なシリーズのひとつ、電動ドリルを使用した作品です。ドリルで板に点や線を刻み、青の絵具を塗って仕上げることで、作品は絵画と彫刻、平面と立体という境界を越えています。また、制作の際、斉藤はドリルで板を刻むという行為を大切にし、その過程も作品の一部と考えました。こうした前衛的でユニークな作風は、制作からおよそ50年がたった今も新鮮で刺激的な感覚を与えてくれます。

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Lot 838 清水多嘉示 「裸婦」
H50.0×W15.6cm / 下部に銘 共箱
★¥100,000~¥200,000

1923年絵画を学ぶためパリに渡った清水多嘉示(1897-1981)は、「サロン・デ・テュイルリー」でオーギュスト・ロダンの高弟、アントワーヌ・ブールデルの作品と出合い、強い感銘を受けました。その影響で彫刻家に転向した清水多嘉示は、レオナール・フジタ、イサム・ノグチ、小山敬三らとの交遊を持ちながら、エコール・ド・パリの日本人作家、第1世代として堅実な制作活動を続けます。
余談ですが、1949年、当時武蔵野美術大学で教鞭を執っていた清水多嘉示は、韓国からの留学生、權鎭圭(コン・ジンギュ、1922-1973)と出合い、今度は師匠の立場でコンに強い影響を与えるようになります。コンは、韓国では天才彫刻家と称された作家で、昨年には、日本の東京国立近代美術館・武蔵野美術大学、そして韓国のソウル市立美術館での回顧展が大々的に開催されました。日本の彫刻家の第1世代である清水多嘉示、そして、韓国の彫刻家の第1世代となるコン・ジンギュ。ブールデルからコンまでのこのような縁の繋がりは、まさに「美術史」そのものと言えるでしょう。
作品《裸婦》は、力を抜いた自然なポーズ、胴体から漂う生命感、そして夢見るようにどこかを見つめる女性の視線までを、よく捉えた肉感溢れる作品です。

そして最後に、草間彌生の版画コレクションをご紹介いたします。

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Lot 536 草間彌生
《ハンドバッグ》
シート53.3×61.1cm
下余白にサイン・Ed.90/100
草間彌生全版画集No.80(阿部出版株式会社)
★¥50,000~¥100,000

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Lot 525 草間彌生
《富士》
シート55.2×68.7cm
下余白にサイン・Ed.23/75
草間彌生全版画集No.24(阿部出版株式会社)
★¥50,000~¥100,000

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Lot 531 草間彌生
《金魚》
シート53.4×60.9cm
下余白にサイン・Ed.19/100
草間彌生全版画集No.80(阿部出版株式会社)
★¥50,000~¥100,000

今回の「JEWELLERY&WATCHES・近代美術PartⅡ」では草間彌生の42点の見事な版画群が皆様をお待ちしています。色鮮やかなこの作品たちは、彼女のモチーフとしてよく知られる南瓜・帽子・ネットから、富士・貝・金魚など、ちょっと珍しいモチーフまで、草間のファンである方々にはとても楽しむことができる内容です。それにエスティメイト¥50,000~¥100,000、¥80,000~¥150,000という魅力的なお値段は、今度こそ草間を手に入れることができる絶好の機会になるかもしれません。

皆様のお越しを心よりお待ちしております。


<執筆:W>

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PartⅡ下見会@銀座

 今週は銀座で近代美術PartⅡ、明日からは大阪でも近代美術とジュエリー&ウォッチの下見会を開催いたします。
今回は銀座会場の様子を少しご紹介いたします。

 1Fの日本画のコーナーには、目黒雅叙園コレクションの作品が展示されています。なかでも、今回ご注目いただきたいのは「歴史画」です。

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目黒雅叙園コレクション


 歴史画とは、その名の通り、歴史上の人物や出来事を描いた作品を指します。
こうした題材は、古くから伝統的に絵巻などに描かれてきましたが、明治に入り、政府の芸術政策を一手に担った岡倉天心の指導によって、近代国家の発展のための重要な絵画という新たな意義がもたらされ、確立したジャンルです。天心は、歴史上の著名な人物や出来事を重んじることが、新しい日本のために必要だと考えたのですね。歴史画はそのプロパガンダとしての役割を担い、日本画だけでなく、洋画でも描かれていきました。
 このジャンルで特に有名なのは、小堀鞆音(こぼり ともと)や松岡映丘ら官展系の作家や、安田靭彦、前田青邨、小林古径といった院展系の作家たちです。

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圧巻の歴史画です。


 歴史画はなんといっても、描かれた時代に連れて行ってくれるような、ロマン溢れる世界観が魅力です。今回出品されるLot.740林雲鳳《安宅》Lot.741森戸果香《斉藤別当》では、武将が身に付けた武具や装束、傍らにある道具などが、細やかに表現され、その場面の緊張感や人物たちの息遣いが伝わるようです。
また、Lot.743小山栄達《阿修羅》では、合戦の場面が幻想的に表現されています。どの作品も歴史画らしい品格と画家の技量の高さを感じさせますね。


B1Fでは、洋画や外国絵画、絨毯などを展示しています。
今回の洋画は、織田広喜の作品が充実しています。

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織田広喜コーナーです


 織田広喜(1914- )は福岡県生まれ。少年時代、村の寺で墨絵を習い、のちに仏画家・犬丸琴堂に油絵の手ほどきを受けます。1939年日本美術学校西洋画科卒業。1940年二科展に初入選。1948年洋画家・岡田謙三の家に住みこみ、制作に励みました。1950年二科会員となって以降、同会展に出品を続けます。1960年初の渡仏、以降取材のため、たびたびフランスを訪れます。1968年二科展にて内閣総理大臣賞受賞。1993年勲四等瑞宝章受章。1994年日本芸術院賞を受賞し、翌年、日本芸術院会員となりました。2006年二科会理事長に就任。哀愁漂う都会の情景と物憂げな雰囲気の女たちを描く、洋画界の重鎮です。

 Lot.627《セーヌ河畔》Lot.630《白鳥と少女たち》など、100cmを超える大作では、織田作品の幻想的な世界に入り込んだかのような独特な雰囲気に包まれます。また、Lot.619《若き日のリラ》は、画家の愛妻を描いた作品です。ほかにも女性像がたくさん出品されますが、どの女性もアンニュイな雰囲気が魅力的です。合計18点出品されますので、織田広喜ファンの方はぜひご覧ください!

みなさまのお越しを心よりお待ちしています。

下見会スケジュールはこちら

(執筆:S)

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PartⅡ、中川一政コレクション、浮世絵下見会@銀座

今週は銀座で、近代美術PartⅡ、中川一政コレクション、浮世絵の下見会を開催しています。

エントランスを入っていただくと、
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全体像                   お顔は怒りを顕わにした「阿形」です


中川一政コレクションの《木彫 仏像》がお出迎えいたします。
平安後期の作と思われる本作品は、四天王のひとりですが、
左手に持っていたであろう持物が失われているため、
尊名は特定できません。
お顔の表情から、増長天もしくは持国天の可能性が高いです。


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こちらも一政コレクション。
今回の出品作品は書が中心となっています。
一政らしい味のある文字が壁中を踊っています。

そのほかにも、1Fには目黒雅叙園コレクション、肉筆浮世絵など、
日本画の名品がたくさん展示されています。

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こちらは目黒雅叙園コレクション。
目黒雅叙園さん旧蔵の日本画が14点出品されます。
目黒雅叙園さんでは、昭和3年の創業から戦時中まで、
活躍中の日本画家を大勢招き、建物内の壁や天井を彩る作品の制作を依頼したそうです。
作品を日展や院展に出品してから雅叙園さんに納めた画家も多く、
今回の作品に日展・院展の出品作が多いのはそのためです。


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lot.624 今尾景年《松菊白鵬図》、lot.625 野口小蘋《花鳥之図(松竹梅鴛鴦白鶴之図)》は、かつて明治天皇の御物となり、その後竹田宮恒徳王のご所蔵となった由緒正しき作品です。
天皇や皇族の方々が愛された、精緻な筆致と鮮やかな色彩をぜひ会場でご覧下さい。


下見会スケジュールはこちら


みなさまのご来場を心よりお待ちしています。

(執筆:S)

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新春 下見会スタートです


 あけましておめでとうございます!
寒い寒いお正月でしたが、皆様はお元気に新年をお迎えでいらっしゃいますか。


昨日より、シンワアートミュージアムでは近代美術パート2オークションの下見会を開催しております。
東京ではこれが新春初めの下見会となります。

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会場風景
正面に児玉三鈴の金屏風が立ち、いかにも新春らしい会場の雰囲気です。

LOT571 児玉 三鈴《松の図屏風》
左隻175.6×181.0cm(180.2×186.0cm) 
右隻175.8×181.0cm(180.2×186.0cm)
各紙本・彩色
左隻:左下に落款・印
児玉陶欧シール
Est. ¥150,000.~¥300,000.

 児玉三鈴(こだま・さんれい/1915-2002)とは、川端龍子に師事した日本画家です。
青龍会で活躍した後に日本画府という画壇を創立し、理事長まで務めた人物です。
 本作品は龍子を彷彿とさせる堂々とした作風が魅力的です。


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LOT661 モーゼル《飾り壷》
H63.7×D18.4cm
下部に陰刻銘
Est. ¥200,000.~¥400,000.

 珍しいモーゼルの壷も出品されています。
 モーゼル(Moser)は、ルドヴィック・モーゼルによって1857年に設立されたブランドで、最高級のボヘミアングラスと言われます。
 職人気質で造形された芸術性の高い工芸品は贈答品としても人気があります。


 今回のオークションで注目を集めているのが、織田広喜の作品群。

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 壁一角が織田の作品で埋まり、展覧会を見ているような気にすらなります。
 茶系や灰褐色を主調にした作品の数々を眺めていると、このような色彩の混ざり合いの中から、これ程の心地よい世界を描くことができた画家の才能に改めて驚きます。
 

 近代美術・ジュエリー&ウォッチに関しては、既に今週月曜と火曜に大阪下見会を終え、金曜と土曜には名古屋で下見会を開催しております。
 東京でご覧いただけるのは1月20日(水)~23日(土)となります。

詳しい時間等はこちら


 皆様のご来場をお待ち申し上げます。

(井上素子)
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長船元重の太刀

今週は銀座でパートⅡの下見会を開催しています。

今回は目黒雅叙園さんの日本画コレクションが出品されます。すべて100号を超える大作ですので、見ごたえがありますよ。

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1Fに展示されています。

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龍村や一竹の帯もたくさん出品されます。きれいな色のものばかりですよ。
輪島塗の屠蘇器や蒔絵の重箱などもすてきです。新年の準備にいかがでしょうか。


今回のパートⅡオークションの目玉はなんといってもこちら。

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刀です!!

Lot.670 長船元重
《太刀/衛府太刀拵》
刀身:71.2cm
反り:2.2cm
茎表に銘「備州長船住元重」
財団法人日本美術刀剣保存協会重要刀剣指定(第五十四回)
鉄砲刀剣類登録証付(東京都第20229号)
『刀剣美術』(財団法人日本美術刀剣保存協会)第六二三号掲載
エスティメイト ★¥3,200,000.~5,000,000.


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 刃長が2~3尺(約60~90cm)の日本刀を太刀といいます。太刀は、おもに平安時代頃から南北朝時代まで使用され、馬上での戦いを想定して製作されたため、長く反りが強いのが特徴です。

 作者の長船元重(おさふねもとしげ)は、南北朝時代頃に活躍した備前(現在の岡山県東南部)の刀匠です。備前は、刀作りのための良質な原料や燃料に恵まれたこと、吉井川や瀬戸内海、山陽道を有する交通の要所であったため、材料の確保や流通が容易であったことから、鎌倉時代から日本刀の一大産地として栄えました。その中でも長船派は主流であり、鎌倉から室町時代まで隆盛を誇ったといいます。

 50年もの作刀期間があったと伝えられる元重は、江戸時代に出版された『懐宝剣尺』や『古今鍛冶備考』では、最も優れた刀工であることを示す「最上大業物(さいじょうおおわざもの)13工」の一人に選ばれ、その作品も日本刀の最上級品「最上大業物」にランクされています。現在、残された名品のうち重要文化財に指定されているものが7点あり、博物館に収蔵されているものもあります。

 衛府太刀拵(えふだちこしらえ)は、もともとは平安時代に宮中の護衛に当たった役人(=衛府)が持つための太刀の鞘や柄、鍔などの装備を指します。衛府は朝廷に仕える武官ですので、デザインは装飾的で優美ですが、実用性も重視され重厚なつくりになっています。

パートⅡオークションは11/21(土)ですが、来週は展示しておりませんのでご注意ください。
みなさまのご来場を心よりお待ちしています。

(執筆:S)

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近代美術PARTⅡ下見会 銀座でスタート!

 9月に入り、秋のオークション・シーズンが幕開けとなりました。

 今日からシンワアートミュージアムでは、9月19日開催の近代美術PARTⅡオークション下見会を開催しています。
※今回の近代美術PARTⅡオークションに出品される作品は、本日9月2日(水)~5日(土)の期間中のみご覧いただけます。その他の会期中は、ご覧頂くことができませんので、あらかじめご了承お願い申し上げます。

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ミュージアム1F

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ミュージアムB1階

 手前のテーブル左寄りに見えているのは、LOT692 マスタッシュ・カップ&ソーサーです。
(エスティメイト¥50,000.~¥100,000.★/15客セット)

 マスタッシュ(moustache)とは、英語で「口髭」のこと。
紳士がお茶を飲むとき、口髭が邪魔にならないように“髭よけ”が付いています。
 優雅に装飾されたデザインは、まさにコレクターズ・アイテムですね。


1階のエントランス左側には、浮世絵が展示されています。

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LOT526 葛飾北斎《富嶽三十六景 武陽 佃嶌》
(エスティメイト ¥700,000.~¥1,000,000.)

 浮世絵師の中でも最も代表的な作家の一人、葛飾北斎が1833年から1844年にかけて刊行した《富嶽三十六景》は、北斎の代表作にして、浮世絵風景画の代表作です。

 《富嶽三十六景》は、初めは題名の通り36図が制作されましたが、非常に好評であったため、後から10図が追加され、最終的に46図のシリーズになりました。
 当初の36図を「表富士」(おもてふじ)、追加の10図を「裏富士」(うらふじ)と呼び、今回、シンワアートオークションに出品される三点《武陽 佃嶌》(ぶよう・つくだじま)、《相州 江ノ島》(そうしゅう・えのしま)、《信州 諏訪湖》(しんしゅう・すわこ)は全て「表富士」として制作されたものです。

 特に、《武陽 佃嶌》、《相州 江ノ島》は、「藍摺絵」(あいずりえ)と呼ばれる青を基調としたモノトーンの作品で、北斎のシャープな線が美しいシリーズです。
 中央区にお店を構えていらっしゃる方やお住まいの方にもお勧めの一点です。


 《富嶽三十六景》の大ヒットで、北斎は一躍売れっ子の作家となりました。
背景には、江戸時代の日本で一般市民の間にあった、富士山に対する深い信仰があると言われています。
 戦争の無い平和な時代、ツアーを組んで富士山に参拝する「富士講」(ふじこう)が盛んに行われ、富士山が描かれている土産物は人気を集めたのです。



 また、今週末には大阪でも下見会が開催されます。
 ジュエリー&ウォッチ(全商品)、近代美術(全作品)、さらに近代陶芸の一部作品もご覧頂くことができます。
詳細スケジュールはこちら


 9月は今日からPARTⅡ下見会が始まるのを皮切りに、次々と下見会がスタートいたします。
また10月17日には西洋美術・ワインのオークションも開催されます。

 皆様のお運びをお待ちいたしております。

(井上素子)

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PartⅡ下見会始まります

 名古屋下見会にご来場いただいた皆様、どうもありがとうございました。
一週はさんで今週は、東京でPartⅡ、大阪で近代美術、ジュエリー&ウォッチ、近代陶芸、近代陶芸PartⅡの下見会がスタートします。
少々スケジュールが複雑になりますが、お目当ての作品をお見逃しないようにご越しくださいね。

 さて、本日はPartⅡの出品作品から1点ご紹介いたします。

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lot.741 K.P.M 《色絵「婦人像」陶板》
42.5×34.2cm(66.9×58.3cm)
裏に窯印


 西洋美術がお好きな方にとってはおなじみのK.P.Mですが、
「ずっと気になっていたけれど何の略称?」という方もいらっしゃるはず。
そんな方のために、本日は簡単にご説明いたします。

 K.P.Mは、1751年ドイツ、プロイセンの首都ベルリンに民間窯として開窯しました。ベルリン窯と呼ばれるのもこのためです。
 1763年プロイセン王フリードリヒ2世の所有となり、ベルリンK.P.M(Konigliche Porzellan Manufactur)窯、すなわち王家の青紋章をシンボルにした王立の磁器製陶所となりました。フリードリヒ2世が莫大な費用を窯の改良進歩のために支出すると、当時ヨーロッパ随一と呼ばれたマイセン窯を凌ぐ勢いで製陶技術が充実していきました。以後、歴代の王の庇護のもとに製作が続けられ、第1次世界大戦後は、国立磁器製陶所となりました。
 主な作品には、バロックやロココスタイルの高級食器や装飾品、17~18世紀の古典名画を模写した陶板画があります。

 今回出品される作品も、バロック美術を思わせる陶板です。
当時は宗教や神話が美術作品の主なテーマとされましたが、
ここでも描かれた婦人のポーズや漂う清らかさ、彼女を取り囲む天使たちが、
キリスト教の主題「無原罪のお宿り」を想像させます。

 「無原罪のお宿り」とは、聖母マリアが一切の原罪にそまることなく、その母アンナの胎内に宿ったとする教えで、神の意志による受胎を表したものです。描かれているのがアンナではなく、これから生まれてくるマリアであるということが、この主題の不思議なところですね。

光と影を効果的に使ったドラマティックな表現と柔らかな描写は、優秀な画家を多く抱えたK.P.M窯だから表すことができたものと言えるでしょう。

 今週、この作品は東京でご覧いただけます。
皆様のお越しを心よりお待ちしています。

オークションスケジュールの詳細はこちら

(執筆:S)

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