PARTⅡオークションに出品される韓国人作家、全惠苑・方靖雅


先週、BAGS/JEWELLERY&WATCHESオークションにお越しいただいたお客様、誠にありがとうございました。
今週は、4週間連続オークションのラストを飾る近代美術PartⅡオークションが開催されます。6日(水)にスタートする銀座での下見会に、皆様のまたのお越しを心よりお待ちしております。

【下見会】
日程:7月6日(水)~7月8日(金) 10:00~18:00
    7月9日(土) 10:00~12:00
場所:シンワアートミュージアム

【オークション】
日程:7月9日(土) 14:00~
場所:シンワアートミュージアム

版画・日本画・洋画・外国絵画・工芸など、毎回多様な作品を楽しむことができるシンワの近代美術PartⅡオークション。今回もルノワール・モネ・ピカソなどの優れた版画作品や、梅原龍三郎・小磯良平・児島善三郎の絵画などがたくさん出品されます。

今日は、その中から外国絵画の作品2点をご紹介したいと思います。


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LOT 756
全 惠苑 (ジョン・ヘウォン)  B.1978
『ピンク色の顔』
53.0×45.5cm
キャンバス・油彩 側面にサイン・年代(2011)
エスティメイト:\50,000~\100,000

LOT 756 『ピンク色の顔』は、韓国人の若手作家・全惠苑(ジョン・ヘウォン)の作品です。海が綺麗な韓国の釜山(ブサン)で生まれた全は、釜山大学校美術学科・同大学院を修了し、現在韓国を中心に制作活動続けている作家です。作家自身を含む人間の内面に閉じ込められた「記憶」をモチーフとして描き続けてきた全は、きわめて個人的で抽象的である「記憶」の、現在と過去との間に生じる感覚的な「隙間」に焦点を合わせています。その「隙間」とは、ある事件が起きた時点から現在までの間に起こった感情の変化、またはその事実に対する受容態度の変更をいいますが、このような過去と現在の感覚の微妙な不一致を彼女は「曖昧な差」と呼びます。もう忘れてしまった過去の感情、あるいは当時は気付かなかった気持ちにまでを改めて向き合おうとする作家の姿勢は、単なるノスタルジアではないのでしょう。本作品の、画面の中からこちら側を見つめるピンク色の顔は、どんな時代のどんな物語を語りかけているのでしょうか。


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LOT 757
方 靖雅 (バン・ジョンア) B.1968
『Chicken house』
53.0×33.4cm
キャンバス・アクリル 左下にサイン・年代(2011)
エスティメイト:\50,000~\100,000

上は、もう一人の韓国人の作家、方靖雅(バン・ジョンア)の作品『Chicken house』です。韓国では最も有名な美大である弘益大学校美術学科を卒業し、東西(ドンソ)大学のDesign&IT専門大学院・映像デザイン科を修了した方(バン)は、2002年釜山青年作家賞、光州市立美術館・河正雄(ハ・ジョンウン)美術賞を受賞するなど、故郷である釜山を中心に情熱的な制作活動で注目を集めてきた若手の作家です。パブリック・コレクションとしては、国立現代美術館、釜山市立美術館などに作品が収蔵されています。方靖雅は、日常の風景の中、瞬間的に目に入ってきたある場面を独自の淡々とした感覚をもって描き出してきました。何気なく、あるいは無関心にも見える作家の視線は、「客観的な瞬間」から感じることができるユーモラスなイメージを観る者に与えます。
本作品は、最近「生」と「死」の対比に興味を持つようになったという方(バン)の最新作。画面には、キッチンでの料理には相応しくない服装の女性が鶏を手に握ったまま考え込んでいます。生命力溢れる豊かな肉体をもつ女性は、食材となった鶏が持つ「死」のイメージと強く対比されるようにも見えます。しかし、その対比とは「生」に対する「死」の排斥ではなく、むしろ生と死がわかちがたく存在するということに対する素直な受容を表すものではないでしょうか。

(執筆:W)