高級家具師としてのガレ ―《マルケットリー蝶と花文キャビネット》

こんにちは。
27日の近代美術/近代美術PartⅡ/戦後美術&コンテンポラリーアートオークションにご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。
さて、今週の10日(土)は西洋美術オークションを開催いたします。
今回は、アール・ヌーヴォーを代表する装飾芸術家ガレの家具が出品されますのでご紹介いたします。
ガレはガラスだけでなく、家具や陶器の製作にも優れた才能を発揮したことで知られています。



107
 ガレ
《マルケットリー蝶と花文キャビネット》
H130.2×W73.7×D42.6cm
天板にマルケットリー銘
鍵なし
落札予想価格 
¥1,000,000~¥1,500,000



1885年、ガレは自身の設計による高級家具専用の工房を設立し、本格的に家具製作に取り組み始めました。
本作は、日本建築の設えの一つ、書院造りの違い棚に倣って制作されたキャビネットです。あたかも寺社の屋根のように両端を上方へ反らせた天板をはじめ、ガレが心酔した日本美術の影響が顕著に表われたデザインに特徴があります。 
さらに、自然の造形が随所に取り入れられ、可憐に咲く花々と儚く舞い散る花弁、その周囲に遊ぶ蝶が、天板と棚板、側板にマルケットリー(象嵌)によって表わされています。枝を象った透かし彫
                          り、幹を象った支柱や台にも花弁があし
                          らわれ、ガレの自然主義と洗練されたデ
                          ザイン力が見て取れます。


360度、どこから見てもガレの高級家具師(エベニスト)としての技が光る作品なので、ぜひ細部をご覧ください。


木片を素地にはめ込んで模様を表現するマルケットリ
ー技法を用いて、草花が繊細に表現されています。
マルケットリーは、ガラス工芸の分野でガレが1898年
に特許を取得した技法ですが、実は家具の寄木細工に
ヒントを得て創案されたと言われています。








 

扉部のガラスには、なんとも優美な花の図がエナメル彩で写実的に描かれています。
ジャポニスムや自然主義といったアール・ヌーヴォーの哲学を感じさせる作としてだけでなく、ガレの芸術のエッセンスであるガラスを組み合わせた家具という点でも大変魅力的で、希少な一点です。









このたびのオークションには、ほかにも同じくアール・ヌーヴォーの芸術家ルイ・マジョレルのソファーセットやベッド、アール・デコの彫刻家Demetre・Chiparusの女性像、ギリシャ・ペルシャ・ガンダーラなどの古代の土器や石仏が出品されます。さらに、フレンチの名店レストラン・クレッセントの特集コーナーには、三菱財閥の創業家である岩崎家注文のテーブルウェア、国立西洋美術館設立の契機となったことで知られる松方コレクションの絵画などの貴重な作品も含まれます。全450ロット、盛りだくさんの内容となりますので、ぜひ下見会でお気に入りの品を見つけてください。
オークション・下見会スケジュール、オンラインカタログはこちら

ご入札は、ご来場のほか、書面・電話・事前のオンライン入札・ライブビッドでも承っておりますので、ご都合に合わせてご活用ください。引き続き新型コロナウイルスの感染予防対策に取り組み、皆様のご参加をお待ちしております。

(佐藤)

夭折の天才・佐伯祐三の《下落合風景》

こんにちは。
東京はいよいよ桜が見頃となってまいりました。
緊急事態宣言が解除となりましたので、お花を眺めながら乾杯したいところですが、今年もお花見はできるだけお散歩で楽しみましょう。
なお、今週のオークションは通常通りご予約なしでご入場いただけます。

さて、今週27日(土)は、近代美術/近代美術PartⅡ/戦後美術&コンテンポラリーアートオークションを開催いたします。今回も出品作品の中からおすすめの一点をご紹介いたします。
パリの街頭の風景を狂おしいほどの情熱で描き、30歳という若さで夭折した画家、佐伯祐三(1898-1928)の作品です。


















302 佐伯祐三 《下落合風景》
45.4×53.1cm
板にキャンバス・油彩 額装
1926年頃作
裏に佐伯米子署名・印・年代・タイトル
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書付
『佐伯祐三全画集』(1968年/講談社)№206
『佐伯祐三全画集』(1979年/朝日新聞社)№381
『パリに燃えつきた天才画家の芸術 佐伯祐三 絵と生涯』(1991年/講談社)
落札予想価格 ¥12,000,000~¥22,000,000


1924年、25歳で念願のパリに渡った佐伯祐三は、フォーヴィスムの画家ヴラマンクとの出会いを機にその天賦の才を大きく開花させました。パリの裏街の風景、特に街の歴史と市井の人々の生活感を漂わせる壁をモティーフに自らの芸術を確立しましたが、1926年に一時帰国することを決意します。
一時帰国中は、留学仲間の里見勝蔵や前田寛治らとともに一九三〇年協会を結成し、同年の第13回二科展で二科賞を受賞。さらに個展も開催するなど、再びパリに旅立つまでのわずか1年4ヶ月ほどの間に洋画壇で華々しく活躍しました。また、「下落合風景」や「滞船」を主題とした連作の制作にも精力的に取り組みました。

1926年頃に制作された本作は、東京の下落合(現・新宿区中落合)にある自身のアトリエ周辺に取材した「下落合風景」の連作の一つです。近所の空き地あるいは畑から、木造家屋が立ち並ぶ集落の風景を描いています。生い茂る緑の部分に見られる、疾走するような激しい筆致やペインティングナイフの引っ掻き痕、空に表わされた深みと透明感を湛えた青は、パリ時代の作品に共通する佐伯芸術の魅力を感じさせます。
また、ここではこの連作の重要なモティーフである電柱が3本、集落の中に細くバランスよく配され、画面に垂直のリズムをもたらしています。画面右下にも白い柵が力強く描かれ、佐伯が帰国直前に関心を抱いた線の表現を引き続き試みる様子が見て取れます。こうした線の表現が、再びのパリにて街のポスターをはじめとする様々なモティーフに狂気を孕んで乱舞する線へと昇華しました。さらに、本作では、家屋の簡潔なフォルムを黒の輪郭線で強調しており、それらもまた第2次パリ時代に描かれるモラン風景の連作を予感させます。

なお、「下落合風景」の連作については、佐伯自筆の制作メモが残されています。
この制作メモを分析し、古地図や様々な資料をもとに佐伯作品の描画ポイントを推測されているブロガーさんがいらっしゃいます。その方のブログによると、この作品に描かれた左側の赤い壁の家は、なんと里見勝蔵宅である可能性が高いそうです。
とても興味深い内容ですので、こちらもぜひご覧ください。

ChinchikoPapa様ブログ「落合学(落合道人 Ochiai-Dojin)」より
「『森田さんのトナリ』に住んでいたのは?[気になる落合学]」


佐伯祐三は現在でもファンの多い作家ですが、その作品がオークションに出品されるのはとても希少です。ぜひ下見会場で実際の作品をご覧ください。

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ご入札はご来場のほか書面や電話、オンラインでも承っておりますので、ご都合に合わせてご活用ください。引き続き新型コロナウイルスの感染予防対策に取り組み、皆様のご参加をお待ちしております。

(佐藤)

近代柿右衛門を代表する花瓶/魯山人の哲学を表した染付皿

こんにちは。

春めく陽気となったかと思えば、また冬の天気に逆戻り。今年はこの三寒四温の温度差が激しいために、体調を崩される方も多いと聞きます。感染症や花粉症と相まって何かと気持ちも落ち込みがちですが、心の滋養にどうぞオークション作品をお楽しみください。

 

さて、現在東京都は緊急事態宣言の期間中につき、オークション当日はご予約制とし、会場にお入りいただける人数に定員を設け、感染予防対策に取り組みながら開催させていただきます。
ご来場以外に書面、電話、オンライン、ライブビッディングなどでもご入札いただけますので、そちらもぜひご活用ください。

 

今週末に開催されます「近代陶芸/近代陶芸PartⅡオークション」からこちらの作品をご紹介します。

★LOT.196
十三代 酒井田 柿右衛門 『染錦東海道五拾参次画花瓶』
H41.0×D32.3cm
共箱
高台内に描き銘「柿右衛門作」
台座付
落札予想価格:80万円~160万円

酒井田柿右衛門(1906-1982)は、江戸時代初期に輸出用の色絵磁器として繁栄した有田焼の「柿右衛門様式」を継ぐ十三代目にあたります。父・十二代柿右衛門と共に、『濁手(にごしで)』技法を現代に蘇らせ、スケッチを元にした型にとらわれない模様を生み出し、“近代柿右衛門”を確立しました。作品のみならず、日本伝統工芸展を始めとする多くの展覧会にもすすんで出品し、佐賀県の陶磁協会の会長を務めるなど多くの人々と交流を図るなかで、現代作家としての確固たる地位を得ました。

本作は、十三代の初期の頃の作品と言われています。「東海道五十三次画」をモチーフにした作品は、江戸期の伊万里作品でも人気があり、十二代の時代にも大型作品の代表として挙げられています。十四代も制作したということで、この「染錦東海道五拾参次画花瓶」は、近代の柿右衛門にとっては、技量を示す重要な作品と言えるようです。

また、今回は柿右衛門の置物も多く出品されます。十二代から続く型物なかでもLOT.99 十三代柿右衛門窯の「飛龍置物」は、ロボットアニメを彷彿とさせる形で作られており、新たな試みが伺い知れる一品です。

★LOT.99 十三代 柿右衛門窯                
 「飛龍置物」                         
H31.8×W29.8㎝                        
底部に描き銘「柿右衛門作」                   
共箱                              
落札予想価格:20万円~30万円

★LOT.102 十三代 柿右衛門窯
「色絵立像御薬湯観音置物」
H40.9×W12.6cm
高台内に描き銘「柿右衛門作」
共箱 ナオシ有
落札予想価格:10万円~15万円

そして、今回北大路魯山人(1882-1959)の作品で特に注目していただきたいのが、こちらの額装された染付皿です。

 

★LOT.229
北大路 魯山人『染付 福雅美生活 皿額』
各D21.7cm
額装(29.6×133.6cm)
「北大路魯山人展」出品 日本橋髙島屋他/1997~1998(平成9~平成10)年
『雅美生活 第一巻 第三號』表紙掲載(内四点)(雅美生活発行所)
落札予想価格:150万円~250万円

「福」の字はやはり根強い人気がありますが、「雅」「美」「生」「活」は、魯山人が星岡茶寮を追われて心機一転出版した雑誌『雅美生活』の表紙の為だけに制作したと思われます。「雅美(がび)」であることは、魯山人に取って藝術上、さらに言えば生きていく上で何よりも重要でした。それは、自身が興した「大雅堂古美術店」や「魯山人雅陶藝術研究所」に”雅(みやび)“が使用されていたことからも想像が付きます。

「雅美に親しめる風雅人は人一倍幸福だといふことである。」

『雅美生活』の創刊号に寄せた魯山人の言葉です。魯山人の哲学が生んだとも言える作品をぜひご覧ください。

 

下見会はご予約なしでご入場いただけますが、マスクの着用、検温・手指の消毒にご協力をお願いいたします。
皆様のご参加を心からお待ちしています。

 

オークション・下見会のスケジュールはこちら

 

 

                                  執筆者:E

坂本繁二郎の馬 ― ヴェネチア・ビエンナーレ出品作がやってきました!

こんにちは。
1/30(土)は2021年最初のオークションとなります、近代美術/近代美術PartⅡ/戦後美術&コンテンポラリーアートオークションを開催いたします。
新年のご挨拶が遅くなりましたが、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

現在、東京都は緊急事態宣言の期間中につき、当日はご予約制とし、会場にお入りいただける人数に定員を設け、感染予防対策に取り組みながら開催させていただきます。
ご来場以外に書面、電話、オンラインなどでもご入札いただけますので、そちらもぜひご活用ください。
新型コロナウイルス感染予防対策・オークション来場予約について

では、今回も出品作品の中からおすすめの作品をご紹介いたします。
坂本繁二郎(1882-1969)の馬を題材とした油彩画2点です。
坂本は、馬や能面、月を題材とし、パステル調の繊細な色彩で存在の神秘を描き出した画家です。
本ブログでは坂本の作品を何度もご紹介しておりますが、それでもご紹介せずにはいられない名作がこのたび出品されることになりました。









347
《厩の母仔馬》
38.1×45.4cm
キャンバス・油彩 額装
昭和14(1939)年作
右下にサイン
落札予想価格
¥15,000,000~¥25,000,000

掲載文献
・『坂本繁二郎画集』(1962年/求龍堂)
・『世界名画全集 続巻7 安井曽太郎 坂本繁二郎』(1962年/平凡社)No.20
・『〈愛蔵普及版〉現代日本美術全集11 坂本繁二郎』(1973年/集英社)参考図版No.20
・『日本の名画11 坂本繁二郎』(1976年/中央公論社)No.26
・『増補 坂本繁二郎作品全集』(1981年/朝日新聞社)No.48
・『坂本繁二郎[油彩]全作品集』(2009年/さかもと)No.197
出品歴
・「坂本繁二郎展」1962年(日本橋白木屋/読売新聞社)出品

仔馬とその小さな体を優しく包み込むような母馬の仲睦まじい姿を表わした作品です。馬は誕生から離乳までの期間、母子が一緒に行動する動物ですが、幼くして父を失い、母に育てられた坂本は母子の情愛に脆く、寄り添う2頭の姿に自身と母との思い出や母に対する思慕を投影したのでしょう。ここでも坂本らしいエメラルド・グリーンを基調とした微妙な色彩を用いて、厩に差し込む光と影を馬の姿態に表わし、直線的な筆致の構成によって背景を省略し、2頭から醸し出される生命感とあたたかな情感を際立たせています。









348 《林間馬》
46.0×53.1cm
キャンバス・油彩 額装
昭和22(1947)年作
右下にサイン・年代
落札予想価格
¥25,000,000~¥35,000,000

掲載文献
・『坂本繁二郎画集』(1962年/求龍堂)
・『世界名画全集 続巻7 安井曽太郎 坂本繁二郎』(1962年/平凡社)No.26
・『〈愛蔵普及版〉現代日本美術全集11 坂本繁二郎』(1973年/集英社)No.39
・『日本の名画11 坂本繁二郎』(1976年/中央公論社)No.30
・『増補 坂本繁二郎作品全集』(1981年/朝日新聞社)No.327
・『坂本繁二郎[油彩]全作品集』(2009年/さかもと)No.258        ほか多数
出品歴
・「第27回ヴェネチア・ビエンナーレ」1954年 出品
・「石橋美術館開館50周年記念 坂本繁二郎展」2006年(石橋美術館)出品
・「没後50年 坂本繁二郎展」2019年(久留米市美術館/毎日新聞社)出品   ほか多数

上の出品歴にありますように、坂本が岡本太郎とともに日本の代表作家に選出された、1954年の「第27回ヴェネチア・ビエンナーレ」の出品作の一つです。静寂に満ちた夜の林間にて、木立の隙間から覗く明るく澄んだ月が3頭の馬の姿を浮かび上がらせています。いっそう繊細で複雑になった筆致と濃やかな色彩により、月光に照らされる樹木と馬の姿態が神秘的かつ幻想的に捉えられています。それらは「能面がはなやぎ、馬がはなやぎ、月までがはなやいでいる」と讃えられた晩年の画境を、また、描かれた月はやがて展開される月の連作を予感させるようです。

作家の有名・無名にかかわらず、数ある出品作の中から自分の好きな作品を見つけることはオークションの楽しみの一つですが、思いがけず作家の代表作の一つと言われる名作に出会えることもまた、その醍醐味ではないでしょうか。
坂本繁二郎の馬の名作2点をぜひ下見会でご覧ください。
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下見会はご予約なしでご入場いただけますが、マスクの着用、検温・手指の消毒にご協力をお願いいたします。
皆様のご参加を心からお待ちしています。

(佐藤)

国焼に新風を巻き起こした名工登場 ~乾山・長次郎~

こんにちは。

 

先週から一段と寒くなりましたね。あっという間に師走。今週の土曜日に今年最後のオークション「近代陶芸/古美術/近代陶芸PartⅡオークション」が開催されます。今年は何もかもが今まで通りにはいかなくなってしまいましたが、来年は社会全体がより良い一年であってほしいものです。

さて、今回の古美術オークションの中からいくつか作品をご紹介いたします。

 LOT.161 乾山「色絵薊図角皿」
 H4.6×D31.8×W26.3cm
 底部に描き銘「乾山」
 「日本の美「琳派」展 一九九六」出品 大丸福岡天神店他/平成8(1996)年
 「知られざる御用絵師の世界展」出品 銀座松屋他/平成10(1998)年
 『尾形乾山 全作品とその系譜 第一巻 図録編』掲載 P.38 No.48(雄山閣出版)
 『尾形乾山 全作品とその系譜 第二巻 資料編』掲載 P.69(雄山閣出版)
 『乾山焼入門』掲載 P.73(雄山閣出版)
   落札予想価格:500万円~1,000万円

乾山(けんざん)【寛文三-寛保三(1663-1743)】は、本阿弥光悦の流れを組む京都の豪商・尾形宗謙の三男として生まれました。次兄は琳派の大成者・尾形光琳。芸術と富の恩恵を最も受ける環境に育ち、兄ともども時代の寵児になったことで知られています。早くから光悦の孫・光甫、樂家四代一入から作陶の手ほどきを受け、元禄期に入ると仁清から本格的に陶法を学びました。洗練された美意識による華麗な意匠と飄逸洒脱(ひょういつしゃだつ)な作風で京焼に新たな展開をもたらした名工です。

 本作は、鳴滝泉谷(なるたきいずみたに)町に窯を開き、製陶で生計を立てることにした鳴滝時代【元禄十二-正徳元(1699-1711)】から、鳴滝の窯を閉じ市中の窯を借りて製陶を行っていた二条丁子屋(ちょうじや)町時代【正徳二-亨保十五(1712-1730)】の初期までの作とされています。本作は透明釉薬の下に、顔料で絵付けをする釉下彩(ゆうかさい)の技法で草花が鮮やかに描かれており、側面は型紙で模様を付ける型摺(かたず)りではなく、流水文を手描きしている点も特徴のひとつです。

また、型物成形の角皿は図柄、サイズ共に様々なものが作られているものの、本作のような大型の角皿は現存しているものが余りありません。更に箱の形状から元々二枚入りだったことが推察出来ますが、現在一枚となってしまっており、その貴重さが伺い知れます。

また、今回は千家十職の茶碗師・樂家初代長次郎の黒茶碗も出品されます。

 LOT.162 長次郎「黒茶碗 一来」
 H8.0×D11.6cm
 如心斎・啐啄斎・碌々斎書付
 『尾州川島三輪両氏所蔵品入札目録』掲載 二五九
 大阪美術倶楽部/大正5(1916)年【目録付】
 『枇杷島川島家所蔵品売立目録』掲載
 名古屋美術倶楽部/大正7(1918)年【目録付】
  落札予想価格:800万円~1,200万円

樂茶碗は、華やかな桃山時代の茶陶のなかで、現在の茶の湯を形作った侘茶の大成者・千利休【大永二-天正十九(1522-1591)】が創意し、その意図を汲んだ長次郎【生年不詳-天正十七(?-1589)】が、装飾を極限にまで抑え生み出した茶陶です。手捏(てづく)ねで成形し、小さな内窯で一碗ずつ焼成するという、明らかに他の国焼茶碗とは一線を画した技法が特徴的と言えます。

無作為であるが故に、存在感を感じさせる作品で、見込みにはうっすらと茶溜まりが見られ、全体のどっしりとした印象に反して手に取ると軽やかです。手のひらにぴたりと吸い付く手捏ねの茶碗は、土の柔らかさを充分に伝え、点(た)てられた茶の温度を逃がさず保ち、茶の湯を楽しむことを存分に味合わせてくれます。

銘の「一来」とは仏教において一度天界に生まれ再び人間界に戻って悟りに入る者のこと。表千家七代・如心斎(じょしんさい)の内箱、八代・啐啄斎(そったくさい)の中箱、十一代・碌々斎(ろくろくさい)の外箱が添います。また碌々斎は、冬が終わり春が来る、悪いことの後に良いことがやって来るという「一陽来復」の意味も銘に付け加えました。

樂茶碗の創始者で究極とされる長次郎の黒樂茶碗。ぜひ間近にご覧ください。

 

その他にも、河井寛次郎の作品が55点出品されます。このように多くの作品が一堂に会することも滅多にありませんので、ぜひこちらもお楽しみに!

 

また会場にお越しになられなくても書面、電話、オンラインでも入札を承ります。カタログをお持ちでないお客様は、オンラインカタログでも作品の画像をご覧いただけますので、まずはそちらからお気軽に覗いてみてくださいね。

スケジュールはこちら。

執筆者:E

 

 

 

 

 

 

 

 

高橋留美子の「うる星やつら」直筆ネーム

こんにちは。
いつのまにか11月も半ばを過ぎ、朝晩の空気はかなり冷たく、乾燥してまいりました。今年の冬は各種ウイルスの予防のため、手洗いうがいを徹底しましょう。

さて、今週の21日(土)は、近代美術/戦後美術&コンテンポラリーアート/近代美術PartⅡ/MANGAオークションを開催いたします。
今回はMANGAの出品作品の中からおすすめの一点をご紹介いたします。

78 高橋留美子
「うる星やつら」直筆ネーム
26.0×36.8cm
紙・鉛筆
掲載紙「少年サンデーコミックス:
うる星やつら⑦/PART-5テンちゃんがきた」昭和56(1981)年(小学館)付

落札予想価格  
¥1,000,000~¥2,000,000

【オークション終了につき、作品の画像は削除させていただきました】


ご存じの通り、高橋留美子(1957- )は少年漫画の分野で活躍する女性漫画家の先駆者的な存在です。大学在学中に「勝手なやつら」で第2回新人コミック大賞に入賞し、漫画家デビュー。「うる星やつら」のほか「めぞん一刻」、「らんま1/2」、「犬夜叉」などの人気作を次々に発表しました。先日発表された秋の褒章では紫綬褒章を受章。現在は、『週刊少年サンデー』にて「MAO」を連載中です。

この作品は、『週刊少年サンデー』(昭和56年1月11・15日号)に掲載された「うる星やつら」の直筆ネームです。
ネームとは、漫画全体のあらすじを決めた後、漫画家自らが最初から最後までを簡単な絵で描いたもので、セリフやキャラクターの配置、画面構成、コマ割りなどが表わされます。(アニメでは絵コンテと呼ばれます。)ネームは基本的に公開されませんので、こうして目にすることができるのは本当に貴重ですね。

本作では、ラムのいとこ・テンが初めて登場する場面が描かれていますが、掲載紙を確認すると、セリフも画面構成もネームからほとんど変更されていないようです。漫画家によってはかなりラフなタッチでネームを作るそうですが、本作はとても細やかで、画力の高さも見て取れます。また、高橋留美子がこの段階で絵もストーリーも下絵に近い状態まで仕上げるタイプであることがわかります。

さらに、ご注目いただきたいポイントがもう一つ。ネーム用紙の右下に「小池一夫劇画村塾」と印刷されています。「小池一夫劇画村塾」は、漫画原作者の小池一夫が立ち上げた漫画家や漫画原作者などの養成塾で、多くの優れたクリエイターを輩出しました。高橋留美子はその一期生として1977年に入塾し、すぐに才能を認められ、翌年にデビューとなりました。このネーム用紙は、この初期にしか使用されていない非常に希少なものです。
また、本作のようなネームや原画など、高橋留美子の直筆作品が市場で取引されるのは珍しく、先月古書と漫画専門のオークションに出品されたインクによる作品は、なんと1600万円で落札されました。

今パソコンやスマホで画像をご覧いただいている皆様、下見会では実物を間近でご覧いただけます。ファンの方にはきっと貴重な機会となりますので、ぜひ会場までお越しください。

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ご入札はご来場のほか書面や電話、オンラインでも承っておりますので、ご都合に合わせてご活用ください。新型コロナウイルスの感染予防対策にしっかりと取り組み、皆様のご参加をお待ちしております。

(佐藤)

マイセンのフィギュリン

こんにちは。
先日のワインオークションにご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。台風が接近する中、たくさんの方々がご来場くださいました。

さて、今週の24日(土)は西洋美術オークションを開催いたします。
ご入札はご来場のほか書面や電話、オンラインでも承っておりますので、ご都合に合わせてご活用ください。
今回はマイセン特集の中からおすすめの作品をご紹介いたします。

マイセンは、ヨーロッパで最初の白地の硬質磁器を生み出したドイツの名窯です。16世紀から17世紀、東洋からもたらされた薄くて硬い純白の磁器は「白い金」と称讃され、富と権力の象徴としてヨーロッパの王侯貴族たちに蒐集されました。各国の君主が自国での製造を目指す中、ザクセン公国(現在のドイツ北部)の選帝侯アウグスト1世(1670-1733)に製法の解明を命じられた錬金術師ベッドガーが1709年にその製造に成功。翌年、マイセンに王立磁器製作所が設立されると、シノワズリーやロココなど、時代の流行を反映した多彩な装飾様式が次々に展開していきました。


マイセンといえば、エレガントな食器や壷も魅力的ですが、その代名詞として世界中で親しまれているのは、「マイセン人形」(フィギュリン)と呼ばれる小型彫刻でしょう。
この彫像は、中世より宮廷の祝賀正餐会にて主催者の富を象徴する装飾品とされてきた砂糖菓子に代わる豪華なテーブル装飾として、また、室内の棚やコンソールに飾る観賞用の美術品として、1736年に造形家ケンドラー(1706-1775)によって創造され、以後様々な人物像や動物像などが作られてきました。そして、今回のマイセン特集の見どころはこのかわいらしいキューピッドたちです。







Lot.44《ハートを閉じ込めるキューピッド》
H.11.5cm
底部に窯印
落札予想価格 ¥100,000~¥200,000

新古典主義の造形家アシエ(1736-1799)が原型を制作したという16点からなるキューピッド像のシリーズの一つ。本作の台座には「あなたは捕らわれの身です」と書かれており、キューピッドは籠の中にハートを閉じ込めようとしています。このシリーズでは、このように各々の台座にフランス語で愛に関する格言が記され、キューピッドはその内容を示す動作や姿で表わされています。


また、小型彫刻では神話や寓意も欠かすことのできない重要なテーマです。

 

 

 

 

 

 

 

Lot.77《馬車に乗るフローラとゼファー》
H23.4cm                                                                        底部に窯印                                                Lot.78《芸術》                                    落札予想価格 ¥400,000~¥600,000          H46.8cm                                      
                                                                                                  底部に窯印  
                                                                                                  落札予想価格 
                            ¥800,000~¥1,200,000

Lot.77《馬車に乗るフローラとゼファー》は、ギリシャ神話の西風の神ゼファー(ゼフュロス)とその妻で春と花の女神フローラが表わされており、寄り添う二人は男女の愛を示唆するモティーフでもあるでしょう。そして、Lot.78《芸術》はタイトル通り芸術の寓意として表わされた神秘的な女性像ですが、女性が携えたペンと巻物は「詩」を、パレットと絵筆は「絵画」を、リラは「音楽」を象徴する持物と考えられます。

マイセンは全部で40点、そのうちキューピッドは20点ほど出品されますので、お好きな作品を見つけていただけましたら幸いです。また、本オークションにはペルシャ絨毯やステンドグラス、ガレ、ドームなども出品されます。
ぜひ下見会で実物をお楽しみください。
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(佐藤)

9/19-9/20開催オークションより          おすすめ作品のご紹介(2)

こんにちは。

いよいよ今週の土曜日に「近代陶芸/近代陶芸PartⅡ/近代美術/戦後美術&コンテンポラリーアートオークション」が、日曜日には「BAGS/JEWELLERY&WATCHES/近代美術PartⅡオークション」が開催されます。2日間に分けて行いますので、開催スケジュールにご留意いただきぜひご参加ください。また会場にお越しになられなくても書面、電話、オンラインでも入札を承ります。カタログをお持ちでないお客様は、オンラインカタログでも作品の画像をご覧いただけますので、まずはそちらからお気軽に覗いてみてくださいね。

さて、今週は近代陶芸オークションから作品をご紹介いたします。

 

 

鍋島藩窯の御用赤絵師であった有田の今右衛門窯は、「色鍋島」の技術を継承する窯元です。その代表者である今泉今右衛門は、現在十四代目が当代を務められています。先代の十三代今泉今右衛門(1926-2001)が窯の代表となった1976(昭和51)年に、「色鍋島今右衛門技術保存会」を新たに組織し、国の重要無形文化財【色鍋島】の総合指定を受けました。

今回ご紹介する作品は、どれも十三代の作品です。十三代は、【色絵磁器】で1989(平成元)年に重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されています。伝統的な技法に加え、「緑地(りょくち)」「吹墨(ふきずみ)」「薄墨(うすずみ)」「吹重(ふきがさ)ね」を用いて新たな色鍋島を発表し続けました。

元々色鍋島にはなかった、伊万里で染付をする際に使用されていた青色を色調とした釉薬を霧状に吹き付ける「吹墨」という技法で作品を創り出し、更に黒の色調をした「薄墨」に展開させました。そしてその二つを重ね合わせた「吹重ね」により、藍と墨色の諧調を美しく見せることに成功しました。また、意匠も「更紗文」「有職文(ゆうそくもん)」「唐花文」といった伝統的な文様を現代的にアレンジして描き、高い評価を得ました。LOT.109とLOT.110には薄墨を背景に赤の線描きで蛸唐草模様のような細やかな文様が入れられ、ダイナミックな中央の唐草文、露草文を引き立たせています。そしてなかでも代表的な文様として知られているのは、LOT.112で描かれている「珠樹文(しゅじゅもん)」というインド更紗から着想を得て創作した赤い実を付ける空想上の樹の文様です。こちらの作品の大きさが通常の1.5倍ほどあり、鶴首の美しい形を損なうことなく成形・焼成されています。いずれも隙のない今右衛門の技術やセンスが窺える大作と言えるでしょう。

伝統的な色絵磁器に新風を吹き込んだ、十三代今泉今右衛門の作品をご覧になりにぜひご来場ください。

 

9/16(水)~9/18(金)の下見会では、5ジャンルすべての出品作品をご覧いただけます。
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執筆者:E

9/19-20開催オークションより おすすめ作品のご紹介

こんにちは。
朝晩の暑さが和らぎ、少しずつ秋めいてまいりました。
今月は9/19(土)、9/20(日)の2日間にわたり、5ジャンルのオークションを一挙に開催いたします。
カタログ購読をお申込みの方は、そろそろお手元に分厚いカタログが届いている頃かと思います。
ぜひ隅々までご覧いただき、お気に召す作品を見つけていただけましたら幸いです。作品の画像は、オンラインカタログからもご覧いただけます。
また、ご入札は、ご来場のほか書面や電話、オンラインでも承っております。

では、9/19(土)開催の近代美術オークションの出品作品の中からおすすめの作品をご紹介いたします。

【オークション終了につき、作品画像は削除いたしました】

250  熊谷 守一(1880-1977)

《肥後椿》
22.5×15.7cm
板・油彩 額装
右横にサイン
裏に署名・タイトル

共箱
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書付
落札予想価格 ¥15,000,000~¥25,000,000


熊谷守一は、97歳で天寿をまっとうするまで、自身の身近にあるものをいとおしむように描き続けました。特に、自宅の庭に茂る草花やそこにいる虫、猫や鳥などの小さな動物たちを、「モリカズ様式」と呼ばれる平明なかたちとモダンな色彩で描いた作品で広く親しまれています。

本作では、実寸を超えるほどにクローズアップされた肥後椿が描かれています。一昨年に上映された映画「モリのいる場所」でも、山崎努さん演じる熊谷守一が蟻や雑草に顔を近づけてじっと観察するシーンがありましたが、本作の花の大きさからも、間近で対象を凝視する守一の姿が想像できます。
また、余分なものが潔く削ぎ落され、丸や三角、四角にまで純化されたかたち、そして塗り残された赤い輪郭線は「モリカズ様式」の重要な要素であり、椿の花が醸し出す華やぎやみずみずしさ、いのちの輝きを鮮やかに際立たせています。


今回は9/20(日)開催の近代美術PartⅡオークションからもう1点、美術館でもなかなかお目にかかることができない、とても希少な浮世絵作品をご紹介いたします。


506 歌川 国政(1773-1810)
《五世松本幸四郎の団三郎》
   37.5×25.4cm
   落札予想価格 ¥1,000,000~¥2,000,000


東洲斎写楽としばしば比較され、若くして師の初代歌川豊国をも凌ぐ実力派と評された初代・歌川国政。芝居好きが高じて浮世絵師になったという人物で、作画期間は10年足らずと短く、作品数も多くありませんが、大首の役者絵に傑出した作品を残しました。

本作は、享和3(1803)年の正月、江戸の中村座で上演された「松春寿曾我(ふたばのはることぶきそが)」にて、五世松本幸四郎が演じた団三郎(どうざぶろう)を題材とした大首絵です。

団三郎は、主役の曾我兄弟に仕える忠実な従者で、主の悲願だった仇討ちに同行するも、彼らの形見を母に届ける役割を命じられ、泣く泣く里に引き返すという役どころ。本作に表わされたのは、「仇討ちにお供できないのなら今すぐ腹を切りましょう」と団三郎が強く抵抗する、曾我兄弟との別れの場面でしょうか。「鼻高幸四郎」と呼ばれた名優・五世幸四郎が、口をへの字に結び、涙を堪えるように上方を睨む様子をクローズアップして捉えています。この五世幸四郎(三世市川高麗蔵)は、写楽をはじめ同時期の浮世絵師がこぞって描いた人気役者ですが、国政は鋭い線と骨太な線を使い分け、顔の特徴だけでなくその凄みや迫力までをも見事に表現しています。


9/16(水)~9/18(金)の下見会では、5ジャンルすべての出品作品をご覧いただけます。
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(佐藤)

夏を誘う琉球からの陶器と青手古九谷

こんにちは。

先週末の「近代美術/戦後美術&コンテンポラリーアート/近代美術PartⅡ/MANGA」オークションにご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

皆様徐々に新しい生活様式に移行されていることとは思いますが、まだまだ都内への外出が不安という方もいらっしゃると思います。ですが、ご来場いただかなくとも「書面入札」「オンライン入札」「電話ビッド」等、オークションへのご参加方法は様々ありますので、この機会にぜひご利用下さい。

 

さて、今週末は「近代陶芸/古美術/近代陶芸PartⅡ」オークションが開催されます。

まずはこちらの作品のご紹介です。

 

 

 

 

 

LOT.168    
金城 次郎「線彫魚紋大壷」     
H39.9×D21.6㎝            
高台内に掻き銘「次」      
共箱
落札予想価格:10万円~15万円
LOT.167  
金城次郎「線彫魚海老紋嘉瓶」
H40.0×D21.6㎝
高台内に掻き銘「次」
共箱
落札予想価格:10万円~15万円
LOT.169
金城次郎「線彫人物紋壷」
高台内に掻き銘「次」
共箱
落札予想価格:10万円~15万円
★3点とも成り行き

 

 沖縄県与儀に生まれた金城次郎(1912-2004)は、実家の道を一本隔てたところにあった壺屋で、家計を支えるために12歳の頃から陶器見習工として働き始めました。当時、すでにロンドンで展覧会を成功させていた濱田庄司(1894-1978)が、沖縄の壺屋を幾度となく訪ねて制作しており、その熱心な濱田の姿を見て、次郎は自身も陶芸の世界に身を捧げることを決意し、濱田を生涯の師として仰ぎました。

 終戦後、沖縄で不足していた食器類を焼くために一早く壺屋が開放され、次郎も独立し、碗(マカイ)、抱瓶(だちびん)、花瓶、大皿、急須、嘉瓶(ゆしびん)(祝事のある家に祝儀用に泡盛をつめて贈る瓶)等、意欲的に作陶しました。その後、日本復帰前後から壺屋地区の開発に伴い登り窯が使用できなくなったために、読谷村座喜味に移転し、登り窯を築窯しました。次郎は「沖縄の土を使い、地元の材料・釉薬を生かし、登り窯で作品を作る」という強い信念のもと、沖縄独自の陶器を目指し、次郎の代名詞とも言える「魚紋」「海老紋」といった図柄を生み出しました。その伸びやかで素朴な世界観は、多くの人々を魅了し、濱田庄司も手離しで誉めたと言われています。

そして1985年、73歳の時に琉球陶器にて重要無形文化財保持者の認定を受けました。

今回は、金城次郎の力強い線彫の魚海老紋や祝祭の宴を行っているような人物紋の作品など、14ロット(計22点)が、出品されます。また、濱田庄司が沖縄で作陶した茶碗も3点出品されます。

夏を前に琉球の風土を感じる器をぜひご覧ください。

続いて古美術のご紹介です。

 

古九谷は、わが国最初の磁器と言われており、柿右衛門、仁清と共に彩画陶磁器の三源流のひとつに数えられています。産地に関しては、加賀(現石川県)説、肥前(現佐賀県)説がありますが断定はされていません。

「青手(あおで)」とは、緑を目立たせるように緑・黄・紫の三色、または緑・黄の二色を配色し、隙間なく彩色されている様式のことです。桃山時代に誕生した織部焼から続く伝統的な意匠が取り入れられ、特に大皿は絢爛華麗なものが多く、晴れの舞台に飾られたと推察されます。

本作は小花地紋、太湖石(たいこせき)、牡丹花文が黒で大胆に描かれており、裏側面は緑釉のなかに黒線で馬の目文(渦巻き模様)を描き巡らせ、対照的に高台内は白地で、吉祥を意味する銘款の一つである二重角中に「福」の字が中央部に記されています。ニウやナオシがあるものの、色鮮やかで力強い本作は、一見の価値があると言えます。

 

感染予防にも取り組みながら下見会・オークションを開催致しますので、お客様にはご不便、ご面倒をお掛け致しますが、お楽しみいただければ幸いです。

                                                                         執筆者:E

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