坂本繁二郎の馬 ― ヴェネチア・ビエンナーレ出品作がやってきました!


こんにちは。
1/30(土)は2021年最初のオークションとなります、近代美術/近代美術PartⅡ/戦後美術&コンテンポラリーアートオークションを開催いたします。
新年のご挨拶が遅くなりましたが、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

現在、東京都は緊急事態宣言の期間中につき、当日はご予約制とし、会場にお入りいただける人数に定員を設け、感染予防対策に取り組みながら開催させていただきます。
ご来場以外に書面、電話、オンラインなどでもご入札いただけますので、そちらもぜひご活用ください。
新型コロナウイルス感染予防対策・オークション来場予約について

では、今回も出品作品の中からおすすめの作品をご紹介いたします。
坂本繁二郎(1882-1969)の馬を題材とした油彩画2点です。
坂本は、馬や能面、月を題材とし、パステル調の繊細な色彩で存在の神秘を描き出した画家です。
本ブログでは坂本の作品を何度もご紹介しておりますが、それでもご紹介せずにはいられない名作がこのたび出品されることになりました。









347
《厩の母仔馬》
38.1×45.4cm
キャンバス・油彩 額装
昭和14(1939)年作
右下にサイン
落札予想価格
¥15,000,000~¥25,000,000

掲載文献
・『坂本繁二郎画集』(1962年/求龍堂)
・『世界名画全集 続巻7 安井曽太郎 坂本繁二郎』(1962年/平凡社)No.20
・『〈愛蔵普及版〉現代日本美術全集11 坂本繁二郎』(1973年/集英社)参考図版No.20
・『日本の名画11 坂本繁二郎』(1976年/中央公論社)No.26
・『増補 坂本繁二郎作品全集』(1981年/朝日新聞社)No.48
・『坂本繁二郎[油彩]全作品集』(2009年/さかもと)No.197
出品歴
・「坂本繁二郎展」1962年(日本橋白木屋/読売新聞社)出品

仔馬とその小さな体を優しく包み込むような母馬の仲睦まじい姿を表わした作品です。馬は誕生から離乳までの期間、母子が一緒に行動する動物ですが、幼くして父を失い、母に育てられた坂本は母子の情愛に脆く、寄り添う2頭の姿に自身と母との思い出や母に対する思慕を投影したのでしょう。ここでも坂本らしいエメラルド・グリーンを基調とした微妙な色彩を用いて、厩に差し込む光と影を馬の姿態に表わし、直線的な筆致の構成によって背景を省略し、2頭から醸し出される生命感とあたたかな情感を際立たせています。









348 《林間馬》
46.0×53.1cm
キャンバス・油彩 額装
昭和22(1947)年作
右下にサイン・年代
落札予想価格
¥25,000,000~¥35,000,000

掲載文献
・『坂本繁二郎画集』(1962年/求龍堂)
・『世界名画全集 続巻7 安井曽太郎 坂本繁二郎』(1962年/平凡社)No.26
・『〈愛蔵普及版〉現代日本美術全集11 坂本繁二郎』(1973年/集英社)No.39
・『日本の名画11 坂本繁二郎』(1976年/中央公論社)No.30
・『増補 坂本繁二郎作品全集』(1981年/朝日新聞社)No.327
・『坂本繁二郎[油彩]全作品集』(2009年/さかもと)No.258        ほか多数
出品歴
・「第27回ヴェネチア・ビエンナーレ」1954年 出品
・「石橋美術館開館50周年記念 坂本繁二郎展」2006年(石橋美術館)出品
・「没後50年 坂本繁二郎展」2019年(久留米市美術館/毎日新聞社)出品   ほか多数

上の出品歴にありますように、坂本が岡本太郎とともに日本の代表作家に選出された、1954年の「第27回ヴェネチア・ビエンナーレ」の出品作の一つです。静寂に満ちた夜の林間にて、木立の隙間から覗く明るく澄んだ月が3頭の馬の姿を浮かび上がらせています。いっそう繊細で複雑になった筆致と濃やかな色彩により、月光に照らされる樹木と馬の姿態が神秘的かつ幻想的に捉えられています。それらは「能面がはなやぎ、馬がはなやぎ、月までがはなやいでいる」と讃えられた晩年の画境を、また、描かれた月はやがて展開される月の連作を予感させるようです。

作家の有名・無名にかかわらず、数ある出品作の中から自分の好きな作品を見つけることはオークションの楽しみの一つですが、思いがけず作家の代表作の一つと言われる名作に出会えることもまた、その醍醐味ではないでしょうか。
坂本繁二郎の馬の名作2点をぜひ下見会でご覧ください。
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下見会はご予約なしでご入場いただけますが、マスクの着用、検温・手指の消毒にご協力をお願いいたします。
皆様のご参加を心からお待ちしています。

(佐藤)