夏を誘う琉球からの陶器と青手古九谷


こんにちは。

先週末の「近代美術/戦後美術&コンテンポラリーアート/近代美術PartⅡ/MANGA」オークションにご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

皆様徐々に新しい生活様式に移行されていることとは思いますが、まだまだ都内への外出が不安という方もいらっしゃると思います。ですが、ご来場いただかなくとも「書面入札」「オンライン入札」「電話ビッド」等、オークションへのご参加方法は様々ありますので、この機会にぜひご利用下さい。

 

さて、今週末は「近代陶芸/古美術/近代陶芸PartⅡ」オークションが開催されます。

まずはこちらの作品のご紹介です。

 

 

 

 

 

LOT.168    
金城 次郎「線彫魚紋大壷」     
H39.9×D21.6㎝            
高台内に掻き銘「次」      
共箱
落札予想価格:10万円~15万円
LOT.167  
金城次郎「線彫魚海老紋嘉瓶」
H40.0×D21.6㎝
高台内に掻き銘「次」
共箱
落札予想価格:10万円~15万円
LOT.169
金城次郎「線彫人物紋壷」
高台内に掻き銘「次」
共箱
落札予想価格:10万円~15万円
★3点とも成り行き

 

 沖縄県与儀に生まれた金城次郎(1912-2004)は、実家の道を一本隔てたところにあった壺屋で、家計を支えるために12歳の頃から陶器見習工として働き始めました。当時、すでにロンドンで展覧会を成功させていた濱田庄司(1894-1978)が、沖縄の壺屋を幾度となく訪ねて制作しており、その熱心な濱田の姿を見て、次郎は自身も陶芸の世界に身を捧げることを決意し、濱田を生涯の師として仰ぎました。

 終戦後、沖縄で不足していた食器類を焼くために一早く壺屋が開放され、次郎も独立し、碗(マカイ)、抱瓶(だちびん)、花瓶、大皿、急須、嘉瓶(ゆしびん)(祝事のある家に祝儀用に泡盛をつめて贈る瓶)等、意欲的に作陶しました。その後、日本復帰前後から壺屋地区の開発に伴い登り窯が使用できなくなったために、読谷村座喜味に移転し、登り窯を築窯しました。次郎は「沖縄の土を使い、地元の材料・釉薬を生かし、登り窯で作品を作る」という強い信念のもと、沖縄独自の陶器を目指し、次郎の代名詞とも言える「魚紋」「海老紋」といった図柄を生み出しました。その伸びやかで素朴な世界観は、多くの人々を魅了し、濱田庄司も手離しで誉めたと言われています。

そして1985年、73歳の時に琉球陶器にて重要無形文化財保持者の認定を受けました。

今回は、金城次郎の力強い線彫の魚海老紋や祝祭の宴を行っているような人物紋の作品など、14ロット(計22点)が、出品されます。また、濱田庄司が沖縄で作陶した茶碗も3点出品されます。

夏を前に琉球の風土を感じる器をぜひご覧ください。

続いて古美術のご紹介です。

 

古九谷は、わが国最初の磁器と言われており、柿右衛門、仁清と共に彩画陶磁器の三源流のひとつに数えられています。産地に関しては、加賀(現石川県)説、肥前(現佐賀県)説がありますが断定はされていません。

「青手(あおで)」とは、緑を目立たせるように緑・黄・紫の三色、または緑・黄の二色を配色し、隙間なく彩色されている様式のことです。桃山時代に誕生した織部焼から続く伝統的な意匠が取り入れられ、特に大皿は絢爛華麗なものが多く、晴れの舞台に飾られたと推察されます。

本作は小花地紋、太湖石(たいこせき)、牡丹花文が黒で大胆に描かれており、裏側面は緑釉のなかに黒線で馬の目文(渦巻き模様)を描き巡らせ、対照的に高台内は白地で、吉祥を意味する銘款の一つである二重角中に「福」の字が中央部に記されています。ニウやナオシがあるものの、色鮮やかで力強い本作は、一見の価値があると言えます。

 

感染予防にも取り組みながら下見会・オークションを開催致しますので、お客様にはご不便、ご面倒をお掛け致しますが、お楽しみいただければ幸いです。

                                                                         執筆者:E

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