先週のワインオークションにご参加頂いた皆様、誠にありがとうございました。
さあ、いよいよ秋まっただ中!ジュエリー、西洋美術に続き今回は陶芸で“芸術の秋”を感じて頂こうかと思います。
「鑑賞陶器」は読んで字のごとく、観て楽しむ陶器のことです。これはもちろん最初から決まっているというより、お持ちの方が決めるべきことですが、作家の多くは徳利、ぐい呑、お茶碗など機能性ある「日用陶器」を制作する一方、作家性・芸術性を全面に打ち出した「鑑賞陶器」を制作しています。
そこでご紹介したいのが、加守田章二(1933-1983)です。
加守田は大阪府岸和田生まれ。1952年に京都市立美術大学工芸科陶磁器専攻に入学し、富本憲吉(教授)、近藤悠三(助教授)らに学びました。卒業後日立製作所の日立大甕(おおみか)陶苑の技術員、益子の塚本製陶所の研修生を経て、1959年に益子で独立し作陶を始めます。当時オーソドックスな益子焼とは異なっていた意匠だった為、なかなか買い手が付きませんでした。そこへ偶然窯出しを見に来た浜田庄司に称賛され、地元の業者に注目されるようになります。
1960年、結婚をしたころから次々と出品した公募展に入選をし始め、頭角を現しました。そして1966年に「日本伝統工芸展」に出品した「灰釉鉢」が文化庁の買い上げとなり、(現在は東京国立博物館蔵)翌1967年にその「灰釉鉢」が第十回高村光太郎賞を受賞しました。
陶芸家として受賞したのは、加守田が初めての快挙でした。陶芸界のみならず、美術界全体からも支持をされていたことが伺えます。
1968年から岩手県遠野で試作品の制作を始め、翌1969年(44歳)には遠野で本格的に作陶を開始。私たちがよく目にしている「加守田章二」の作品は、ほとんどこれ以降のものです。遠野へ移ってからの作品は、加守田の思想、芸術性が一気に花開いたとも言えるでしょう。1983年に50歳で亡くなる前年まで作品を発表し続けました。81年には白血病と診断され、入退院を繰り返していた最中ですら作陶していたのです。また加守田は遠野へ移ってから毎年作風を変えていました。売れた後も惜しげもなく新たなものを作っていく。これが加守田が天才・鬼才とたびたび称される所以でしょう。
遠野初期の作品です。特にこの頃の作品は、世に出ることが少なく加守田の中でも評価の高い年代です。波状が器全体にまわっている炻器(せっき)から、彩陶(さいとう)という色彩豊かな作品群への転換は圧巻ですね。弊社でもほとんど取り扱ったことがないので、
ぜひ一度は間近で観てみたいものです。
そして1976年のこの年は、個展毎に作風を変えています。上記②と③は白黒のハート形で同じ作品群に入れてもいいかもしれませんが、大きく分けて4種類制作されています。初期に比べ、より簡略化されデザイン的になってきています。加守田のデザインは波状や、ドット形、鱗文といった比較的柔らかい柄を炻器という力強い陶磁器に描いているのも特徴的ですが、ハート形まであったとは!驚きです。
更に翌年からは有機的なデザインから、線文が現れ、さらに翌年は線で全体を覆う作品も登場しました。この青と白、黄色と灰色の縞がとても加守田らしいと感じます。
やはりこの薄青はなかなか他の作家の作品では観ることができません。寒色であるにも関わらず、質感や模様により冷たい印象が和らいでいます。
そして晩年です。線文も円を成し、82年でも使用されている緑釉が80年から使われ始めており、器全体に釉薬を掛けています。また新たな作風へ移り変わる様子だっただけに、早世してしまったのは非常に残念です。
加守田章二の作品が放つ存在感は独特なものがあります。「孤高」という言葉を使いたくなるほど力強く、他の作家とは一線を画しています。
弊社の近代陶芸オークションでも、毎回必ず一点は出品されるような作家です。ぜひ一度ご鑑賞ください。また作品集も多く出ておりますので、作風の変遷を秋の夜長に眺めてみてはいかがでしょうか。
(執筆者:E)
続きを読む
カテゴリー別アーカイブ: 近代陶芸
近代陶芸まめ知識
日本全国、日々暑さが続いて夏真っ盛り!ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
さて、9月第一弾のオークションは、近代陶芸/古美術オークションを開催致します。陶芸作品をよく理解して頂くためにも、今回はカタログによく使われている陶器の名称や部位について解説してみようかと思います。
弊社のカタログはだいたい下記のような形式で掲載しています。

作品名は基本的に作品の入っている箱に書かれたタイトルをなるべく忠実に表記しています。この“作品の入っている箱“というのがかなり重要です。ほとんどの作品に「共箱(ともばこ)」と書かれていますが、これは作家本人が自分の名前や号を書き、タイトルを書いている箱のことを指しています。陶芸作品の場合、共箱があるとないとでは価格に大きな差が付いてしまうのです。共箱以外には、「○○箱」と人名や屋号の後に「箱」が付いている事があります。これは亡くなった作家の鑑定家が、作家本人の代わりに作家名と作品名を書いた箱のことです。さらに、共箱あるなしに関わらず、茶人や僧侶が作品の名前を書き、極(きわ)めている場合があります。これを”書付(かきつけ)“といい、特に茶道の世界では、作品の貴重性を高めています。
また部位の名称も、あまり他で目にすることはないかと思います。これは作家が入れている銘(サイン)の場所を分かりやすくするために掲載しています。
陶器は種類によって名称も変わることもありますが、基本的に同じ呼び名です。


作家は陶器の正面ではなく、裏面、そして下部や底部に銘を入れることがほとんどです。
作家によって決まった箇所に入れることが多く、入れてある場所の違いにより、作った時期の判断や、真贋を推し量ることもあります。多くの作品を見ていると、そのブレが許容範囲であるかどうかおおよそ分かってきます。
次に銘の種類ですが、陶器に関してはほぼ三種類の銘の入れ方で分けています。
一つ目は焼成前に生地を引っ掻いて銘を入れる「掻き銘(ひっかきめい)」。
二つ目は絵付けをする要領で筆で描く「描き銘(えがきめい)」。
そして三つ目は判子を押して入れる「印(いん)銘(めい)」です。
「掻き銘」と「描き銘」は、本来両方とも「かきめい」と読みますが、区別のため「ひっかきめい」と「えがきめい」と読まれています。つまり「高台脇に掻き銘」と表記している場合は、高台まわりに作家本人の名前や、マークが引掻いて入れられているのです。この銘というのも、作家によっては年代別で変えており、何年に制作されたかはっきり分かることもあります。最たるものは富本憲吉です。富本は、毎年銘を変え、その符号表も公表されています。ほかには、富本ほどでは無いにしろ、研究により加藤唐九郎、金重陶陽はある程度制作年代が分かります。たとえば陶陽ですと、「陶陽造」だと初期のころの作品ですし、「ト」だと昭和27(1952)年以降ということになります。(あとはトの長さで判断されたりもします。)
それぞれ作家にはこだわりが多いにある作家や、そうでない作家がいます。そこからは作家の人となりを伺うことができ、様々な角度から作品を見ることで、さらに興味や作品への理解が深まるような気がします。
9月近代陶芸のオークションカタログも現在制作中です。多くの作品と出会える機会ですので、楽しみにお待ちください!
(執筆者:E)
続きを読む
今週の近代陶芸/古美術オークション
こんにちは。まだまだ寒暖の差はありますが、ひと雨降る毎に春が近づいて来る気がします。
さて、今週は通常の近代陶芸と共に、「古美術」として厳選された18作品を加え、
近代陶芸/古美術/近代美術PARTⅡ(陶芸)オークションを開催致します。
今回「古美術」に出品されている作品から何点かご紹介したいと思います。
まず古伊万里、古九谷など江戸時代中期から末期にかけて制作された色絵磁器の作品です。特に注目して頂きたいのはこちらの作品。
LOT.133「古九谷松鶴文輪花中皿」
D20.5㎝
高台内に描き銘「福(角福)」
『色絵の煌古九谷』掲載 №65(大阪美術倶楽部)
エスティメイト¥8,000,000~¥12,000,000
正保から寛文年間(1644-1661)頃に制作されたと伝えられる古九谷は、大胆な意匠と華麗な色彩感で今なお世界中のコレクターより高く評価されています。この作品は、緑・黄・青・紫・赤の五色を絵付けに用いた五彩手の作品です。吉祥を表わす松と鶴を描き、外側面には宝尽しの文様、高台内には角福が配してあります。
また古九谷様式で評価されているポイントとしては、皿を斜めにすると虹のような虹彩が見えるかどうかという点があるそうです。この作品は、まさにその虹彩をはっきり見ることができます。これは、釉薬に含まれている銅と炭素が焼成時に結び付き、金属銅に還元し起こるそうです。
古九谷様式が栄えた後の1690年代末から1700年代初頭に掛けて、古伊万里様式が全盛期を迎えます。金襴手はまさにその頃生まれました。
LOT.128「古伊万里金襴手獅子大根文兜鉢」
H9.4×D22.3㎝
高台内に「大明萬暦年製」記
エスティメイト¥1,000,000~¥1,500,000
金襴手は色絵に金彩を施した絢爛豪華な磁器を指し、江戸時代元禄期の繁栄と富の象徴として当時の大名や豪商たちを魅了する存在でした。
この作品は鉢の見込みに獅子と牡丹文様、内側には赤の窓絵に大根と人参を描いています。その周囲を埋め尽くす緑地と点描が装飾的であり、金襴手の優れた作例の一つと言えます。
そして、その頃に即位していたのが、東山天皇です。
LOT.138 東山天皇「震翰御懐紙」
紙本、軸装
旧重要美術品認定
伊達家伝来
エスティメイト¥3,500,000~¥5,000,000
東山天皇【延宝3年~宝永6年(1675-1709)】は、霊元天皇の第4皇子で貞亨4年(1687)に即位しました。東山天皇在位期間(23年)は元禄時代に相当し、犬公方と呼ばれた第5代将軍徳川綱吉の在職期間と重なっています。綱吉は皇室を敬ったため、朝廷と幕府との関係は良好で、東山天皇は御料(皇室領)を1万石から3万石に増やし、長く廃絶していた大嘗祭の儀式も復活させました。また、和歌や書をよくし、特に書は元禄という江戸時代の最も華やかな時代を反映した豊かで華麗な作風で知られています。
この懐紙は宝永3年(1706)、東山天皇31歳の時の作で、戦前まで伊達家に伝えられたものです。その後、昭和11年(1936)に伯爵伊達興宗の申請により国の重要美術品に指定されました。300年以上前に書かれたものとしては保存状態も良く、由緒正しき逸品と言えるのではないでしょうか。
また、近代陶芸オークションの見所は、加藤唐九郎、岡部嶺男、加藤重高親子の茶碗がそれぞれ出品される事が挙げられます。
LOT.87加藤唐九郎「志野茶碗」 LOT.88加藤唐九郎「紅志野茶碗」
H7.8×D13.3㎝ H7.7×D13.2㎝/共箱
高台脇に掻き銘「TK」/共箱 高台内、脇に掻き銘「一ム才」 エスティメイト エスティメイト
★¥1,200,000~¥1,800,000 ★¥2,000,000~¥3,000,000
LOT.86 岡部嶺男 LOT.189加藤重高
「瀬戸黒茶碗」 「志野茶碗 銘 春野」
H8.0×D11.6cm H7.2×D12.4㎝
高台脇に掻き銘/共箱 高台脇に掻き銘/共箱
エスティメイト エスティメイト
★¥800,000~¥1,200,000 ★¥50,000~¥100,000
是非、下見会場へ足をお運びください。
近代陶芸/古美術/近代美術PARTⅡ(陶芸)オークション
3/10(土) 16:00~(15:30開場)
下見会日程
3/8(木) 10:00~18:00
3/9(金) 10:00~18:00
3/10(土) 10:00~12:00
ご来場、心よりお待ちしております。
(執筆者:E)
続きを読む
器の歪み ─ 歪みの美学(志野焼)
一月も半ばに入り、寒さがますます厳しくなってきました。
遅ればせながら、本年も弊社をよろしくお願いいたします。また箸休め的にこちらのブログもチェックしてみてくださいね。
さて、今年は陶芸の産地毎のそれぞれの見どころをご紹介できればと思います。では焼き物生産量トップである美濃焼(みのやき)の「志野」から。
「志野」というのは、岐阜県多治見市、土岐市、瑞浪市など作られている美濃焼の種類のひとつです。他にも「織部」「黄瀬戸」「瀬戸黒」、「天目釉」など種類が多岐に渡ります。ただこれは基本の種類であって、ここから「鼡志野」、「織部黒」、「鳴海織部」など派生し約15種類にも及ぶそうです。下記の画像でも分かるように艶やかな色が特徴といえるでしょう。
荒川豊蔵、加藤唐九郎、加藤卓男、鈴木蔵氏などが代表的な作家として挙げられます。
2010年には加藤孝造氏が人間国宝(重要無形文化財保持者:瀬戸黒)に認定されました。
さて、器の楽しさ、美しさとはどこにあるのか。日々素晴らしい器に触れさせていただく中で、それは器特有の「歪み」にあるのではないかとふと思うことがあります。歪みといっても、単にひしゃげていたり、乱雑に手が加えられたということではなく、たとえば手びねりによる歪み、形態が持つ独特の歪みは否定的な意味を超え、接する者にとって愛着のある美となりえます。
個人的に志野焼は、この歪みが合うように思います。志野の長石釉の美しさは、たとえば有田焼のような凛とした白磁の器の美しさとは全く異なるものです。手に取れば温かみを感じるような土くささが魅力なのではないでしょうか。
器の醍醐味は、視覚だけでなく、直接作品に触れるという+アルファの鑑賞ができることです。つまり、愛着を持つことにあると思います。
こちらの鈴木蔵氏の《志野白梅皿》の魅力は、雪のような志野の釉薬、ほっこりするような緋色の暖かさといった視覚から感じられるものはもちろん、作家が愛でながら成型したであろう心地よいでこぼこ ─ 「歪み」にあると思います。白梅のモチーフや志野特有の柔らかい釉薬の質感に手で触れることによって、一層温かみが感じられるのです。
オークションの下見会は、見て、愛でる機会でございます。
本年もぜひ、絵画・立体に関わらず、弊社オークションにお足運びいただけましたら幸いです。
(執筆者:E)
続きを読む
紅葉と雪原の陶芸
「毘沙門堂」―真っ赤な紅葉と共にテレビCMでご覧になった方も多いのではないでしょうか?毎年この季節に流れるCMを観ては、京都に行かれる方も多いのではないかと思います。
京都山科区にある天台宗寺院の毘沙門堂門跡は、春には枝垂れ桜の、秋には紅葉の絶景を観ることができます。その地に赤茶碗を献上した人物が今から400年ほど前にいました。
書道、漆芸、陶芸と多彩な才能を持った芸術家、本阿弥光悦(1558-1637)です。光悦は刀剣の鑑定家の家に生まれ、俵屋宗達らとともに、「琳派」という日本文化の大きな流れを生み出しました。その光悦が晩年、樂家二代常慶や三代道入(のんこう)から土や釉薬を分けてもらい取り組んだのが茶碗製作でした。中でも光悦の名作を「光悦七種」(不二山・障子・雪片・七里・雪峰・鉄壁・毘沙門堂)、「光悦十種」(黒光悦・加賀光悦・喰違・鉄壁・有明・障子・雪片・不二山・ヘゲメ・毘沙門堂)と呼び、近年の作家達もその写しを製作しています。
中でも代表格なのが、九代大樋長左衛門です。伝えられている「光悦七種」の種類とは異なりますが、「光悦うつし」として茶碗を発表しています。
黒茶碗:鉄壁・時雨
赤茶碗:毘沙門堂・加賀光悦・雪片(筒)
飴茶碗:紙屋
掛分け茶碗:不二山
これらは別々で発表されることも多いですが、今週末のオークションでは「光悦うつし七種茶碗」として出品されます。何度か出品されてきた七種茶碗ですが、今回の作品はとりわけ美しく、どの茶碗からも多様な景色がうかがえます。
「毘沙門堂」の本家は、淡い赤に青白い鼡釉が掛かっていますが、九代大樋が作った「毘沙門堂」は正に寺院の後ろに見える真っ赤な紅葉と、たなびく白い雲を表しているかのようで、そのコントラストが茶碗によく映えています。
大樋の光悦うつしは、どれも力強い出来栄えです。寒空を感じさせる「時雨」や、雪がちらつき舞っている「雪片」、富士山が雪に覆われ裾野まで続く荒々しい地肌の様子を表現した「不二山」。茶の見立てを存分に味わいながら、お手に取りご鑑賞ください。
【秋の紅葉を表現したかのような毘沙門堂の紅】

本阿弥光悦 九代大樋長左衛門
「毘沙門堂」 「毘沙門堂」
LOT.94 九代大樋長左衛門
「光悦うつし七種茶碗」
落札予想価格:160万~230万
また今回は楠部彌弌の彩埏の花瓶が出品されています。「埏(えん)」とはよく練った土。「彩埏(さいえん)」とはつまり、彩られた土のこと。「いろづちの美」とも後に称されたこの様式は楠部彌弌が独特に編み出した手法です。素地自体に色を付け、何回か塗り重ねて立体的にし、釉薬の色見だけでは表現しきれない奥行きの深さを追及しました。
楠部彌弌は明治30(1897)年京都に生まれました。大正9(1920)年に同志らと共に「赤土社」を立ち上げ、そこから陶芸家としての道が始まります。彌弌は中国陶器や仁清、韓国陶器等の古典研究を行い、自己の基盤となる技術(青磁、均窯、染付など)を身に付けました。そうした中で「彩埏」という技法を見出し作陶を続けますが、「彩埏」が確固たるものになるのは70歳を過ぎてからと言えます。淡い色彩と、キレのある立体感。楠部芸術の結晶と呼ばれるまでになりました。昭和52(1977)年に80歳を迎え、パリ装飾美術館で展覧会を開催、好評を博し翌年文化勲章を受章。昭和59(1984)年に87歳で亡くなりました。
今回出品されます「彩埏飛翔花瓶」は、円熟期を迎える70歳を過ぎてからの作品です。
鶴が二羽、まっすぐに前を向き飛んでいる図柄です。とてもシンプルですが、そこには鶴の形を最小限にデザイン化した美しさがあります。二羽の鶴を交互に見れば、優雅に飛んでいく様子をコマ送りにしているかのように見えてきます。周りにあしらわれている金彩によって空気の流れが感じられ、きらめく雪原の上を飛んでいるかのようです。
静の焼き物の中に表現されている動の世界。楠部芸術・彩埏の技をぜひご覧ください。

【雪原を優雅に飛んでいるかのような二羽の鶴】
LOT.81.楠部彌弌「彩埏飛翔花瓶」
落札予想価格:140万円~180万円
【執筆:E】
続きを読む
Kyohei Fujita ― ヴェニス、そして琳派 「イタリア・日本の美」
本年秋は、「日本におけるイタリア2011・秋」として展覧会やイベントなど、様々な催し物が開催されています。イタリア統一150周年を迎え、日伊の文化・芸術交流が益々盛んになってきています。
先週の近代美術、近代美術PartⅡオークションに引き続き、今週9月24日(土曜日)には近代陶芸オークションが開催されます。その中からヴェネツィアン・グラスに日本の伝統美を吹き込んだガラス工芸作家・藤田喬平の作品2点を紹介します。
一点目は、「手吹ヴェニス花瓶」です。タイトルだけ聞くと、弊社のオークションでもたびたび出品されているタイプの作品のように思われるかもしれませんが、ご覧の通り、ラッパのような広がった口とアルファベットの「J」のようなユニークながらも美しい姿形をしています。この作品を生み出している技法は、吹き竿を使って息を吹き込み形を広げ、型を使わずに金(かね)箸(ばし)《金(かね)鋏(ばさみ)》などで成形する「手吹(てふき)《宙(ちゅう)吹(ふ)きとも呼ばれる》」という技法です。藤田はこの「手吹」の技法を用い、ヴェニスで多くの作品を生み出しました。初期の代表的シリーズである水や炎の動きを連想させる流動ガラスと共に、ヴェネツィアン・グラスのオブジェの影響を多大に受けている作品と言えます。
LOT.86 藤田 喬平
「手吹ヴェニス花瓶」
H36.6×W29.2cm
底部に掻き銘「Kyohei Fujita」
共箱
エスティメイト
¥800,000~¥1,200,000
もう一点は、「手吹飾筥(てふきかざりばこ) 琳派」です。
飾筥シリーズは1973年に発表され、1975年頃より海外での招待出品が増えていき、「フジタガラス」「ドリームボックス」として世界的にも有名になりました。
海外のメディアから「筥に何を入れるのか」と聞かれた藤田は、「あなたの夢を入れてください」と答えたそうです。この夢の筥は、技術に裏付けされた日本的装飾美の結晶と言えます。
藤田は、尾形光琳の螺鈿(らでん)硯箱(すずりばこ)のような琳派の装飾美をガラスで表現することを目指し、金銀箔をかすれさせることで、日本人の心に響くわび・さびをも感じさせたと支持されました.
身と蓋をぴたりと合わせ、ガラスでは不可能と言われていた印籠(いんろう)蓋(ぶた)で仕上げています。
LOT.87 藤田 喬平
「手吹飾筥 琳派」
H22.4×W24.2cm
底部に「Kyohei Fujita」
共箱
エスティメイト
¥1,000,000~¥1,500,000
今回出品されます飾筥には、まさに藤田が目指した「琳派」という銘が付けられています。
ガラスの国ヴェネツィアの美と、祖国日本の美。藤田の魅力が存分に感じられる作品をぜひご覧下さい。
また今回はその他に富本憲吉の「白磁壷」や、十五代樂吉左衛門の「赤茶碗」、そして濱田庄司ら民芸運動を行った作家の作品が数多く出品されます。どうぞこの機会にお気に入りの作品を見つけに下見会へ足をお運びください。
★LOT.89富本憲吉「白磁壷」 ★LOT.47 浜田庄司「柿釉赤絵方壷」
H16.8×D25.1cm H23.1×W16.7cm
共箱 1931(昭和6)年作 共箱
¥1,500,000~¥2,500,000. ¥300,000~¥400,000.
(執筆者:E)
続きを読む
「いいね」から始める陶芸コトハジメ
「いいね」―インターネット上で近頃見かけるこの言葉、 これはソーシャル・ネットワーキング・サービスのFacebookにおいて、まさに「いいね!」と思ったらクリックするというものです。英語圏では「Like」と表記しているそうですが、それに比べると日本語はやはりやんわりした表現に感じますよね。ですが、日本でも400年も前から、はっきり堂々と「これは“好き”なものだ!」と公言して憚(はばか)らない世界があるのです。
それは、お茶道具の世界です。
お茶道具は千家の宗匠(当主、家元のことです)が書付(かきつけ)(鑑定書の一種)をしていると道具自体の権威が上がり、それがさらに“好み物(このみもの)”だとまた一段と位が上がります。
「好み物」。
そうです。これは茶人が「このデザインは好きだな」と表記したもののことで、書付に
「好」と書かれているのです。
好み物は千利休より以前の茶人・村田珠光が和物の道具を茶席で使うために、自分好みの道具を作らせた室町時代の中期頃より始まりました。茶銘や和菓子などあらゆるものを好みにしており、それは利休へと受け継がれていきました。利休は茶道を系統立て、わび・さびの茶道具の基本を作ったと言っても過言ではありません。
また珠光の好み物は「昔形(むかしがた)」、利休の好み物は「利休形」とも呼ばれます。
裏千家九世不見斎(1746-1801)が「蛤香合利休好」と書付(鑑定の一種)をしています。
このように「好」と大々的に書かれているのです。作品は右下画像です。
三代中村 宗哲作 「蛤香合」
大振な本物の蛤が使用されています。
『裏千家歴代好み物』(1991年/茶道資料館)参照
戦後、表千家の宗匠・即中斎が多く好み物を残したのは、どのような道具が茶席に適しているかを人々に広め、そのような道具が多く製作され使われる事によって、茶道をより広く普及させていこうという狙いがあったと言われています。
普段遠いと感じる茶の湯の世界ですが、実は今の文化とも通じているところがあるのです。
そして、それはとても情のある社会であるということも感じます。
まずは皆様も弊社の陶芸オークション下見会に一度足を運ばれてみてはいかがでしょうか?
茶人が「いいね」とした道具に気軽に触れていただく事で、茶の湯の世界の美しさを垣間見る事ができるのではないかと思います。
(執筆:E)
続きを読む
名古屋下見会開催中です
こんにちは。
昼間はまだ暑い日が続きますが、朝晩は涼しくなってきましたね。
過ごしやすくなるのは助かりますが、夏が終わってしまうのは少し寂しい気がします。
さて、9月のオークションにむけて本日からいよいよ下見会が始まりました。
最初の下見会は名古屋です!
名古屋の会場では、近代美術とJEWELLERY & WATCHES、近代陶芸の一部を展示しています。
お近くにお住まいのみなさまはぜひお越しくださいね!
会場はこんな様子です。DAITEC SAKAE 6Fのクリエイトホールで明日まで開催しています!
本日も9月のオークションの出品作品から、
秋らしい日本画を1点ご紹介します。
近代美術オークション Lot.61
小川芋銭 《山田乃曾冨騰》
径58.7cm
紙本・彩色 軸装
右下に落款・印
小杉放庵箱
『河童百図』掲載 第16図(綜合美術社)
『芋銭子名作集』掲載 P.129(精華房)
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書つき
エスティメイト ★ \500,000 ~ 800,000
画題は「やまだのそほど」と読みます。
「そほど」は、古事記に登場する案山子(かかし)です。
古事記では、案山子は歩くことができませんが、天下のことを皆知っている神であった、とされています。
この作品では、案山子に向かって「私は昔、そほどという名の神様だった」と河童が語っています。
さらに河童は、「人間の世界に降りてきて河童にばけた」と続けます。
河童も案山子も本を正せば同じということになりますが、
河童が自身の由緒正しき出自を案山子に一生懸命話している様子と、
それに耳を傾ける、へのへのもへじの案山子の姿がなんとも言えずユーモラスですね。
本作品を描いた小川芋銭は、茨城県牛久の出身です。
牛久沼といえば河童伝説で有名ですよね。
幼い頃から沼に慣れ親しんでいた芋銭にとって、この地に語り継がれてきた河童は自然と絵の中に取り込まれていったのでしょう。芋銭が生涯で最も多く描いた作品は河童図でした。
そして最晩年、描き続けた河童図を『河童百図』にまとめました。
やわらかな墨の線が味わい深い本作品は、その1点です。
自然の飄々とした夢幻感を河童という伝説の動物で表現した、新しい文人画と言えるでしょう。
芋銭は河童図以外にも、のどかな農村の生活や理想郷のような自然を描きました。
彼の独特の自然観と軽妙な筆致を、横山大観や川端龍子も称賛し、酒井三良は生涯憧れ続けたと言います。
酒井三良や池田遙邨のような詩情豊かな日本画、富岡鉄斎や富田渓仙のような文人画をお好みの方にぜひお勧めしたい作品です。
来週は東京で近代美術PartⅡ、大阪で近代美術の下見会を開催いたします!
みなさまのご来場、心よりお待ちしています。
オークションスケジュールの詳細はこちら
(執筆:S)
続きを読む
近代美術・ジュエリー&ウォッチ・近代陶芸の下見会がスタート!
暑い日が続きますね。
銀座の中央通りでは、ランチタイムにご婦人方が差す日傘が、まぶしく夏の日差しを照り返しています。
大通りが交差する碁盤の目のようになった銀座。ひさしがあるお店はごくわずかですよね。ご来場の際には、クロークに預けられた日傘をお持ち忘れなく!
さて昨日より、近代美術、ジュエリー&ウォッチ、近代陶芸の下見会がスタート致します。(詳細はこちら)
欧米では長いバカンスに突入する7月は、昔からオークションの開催数や美術界の話題が減る傾向にありますが、国内のオークションでも、例年、この月は出品数が限られるようです。
7月のオークションは、小規模ながら3種類のオークションの作品が一つのカタログ、一つの下見会でご覧いただける、遠方のお客様にとっては便利なメリットもある開催形式になっています。(※近代美術パートⅡの作品はお申し付け頂ければご覧頂けます。)
今年に入ってから、弊社では近代美術と近代美術パートⅡ、ジュエリー&ウォッチのオークションを同時開催してきました。
これに対するお客様方からのご反応はというと、好意的にお考えいただける方が多くいらっしゃいましたようで、オークション会場には大勢の方が足を運んで下さり、熱気溢れる競りとなりました。
これまでは近代美術に出品される絵画作品に関心をお持ちの方が下見会場でジュエリーや時計をご覧になりたい場合、スタッフにお声掛けいただき、どちらかをオフィスからお持ちしてご覧いただくしかありませんでした。
それが同日開催の場合は、お待たせすることなくご覧いただける準備を整えてありますので、ご自由にご関心をお持ちのアイテムを探して頂くことができるのです。
これまで一つのオークションのみにご参加いただいていたお客様も、この機会にぜひ、他のジャンルのオークションへもお目を向けていただければ幸いです。
(執筆者:井上素子)
続きを読む
高麗青磁の再現
くもりと晴れの繰り返しで湿気が多い日が続きますね。
天気予報で「これから本格的に暑くなります」と、まるで自分の責任のように申し訳なさそうに話す気象予報士さんを見て、ふっと笑いながらも「本当にもっと暑くなったらどうしよう」と心配になってきました。
皆様はいかがお過ごしでしょうか?
シンワは来週のオークションに向けて、いよいよ明日から大阪下見会を開催します。
ジュエリー&ウォッチ・近代美術・近代陶芸オークションに出品される作品(近代陶芸のみ一部)をご覧いただけますので、お近くにお住いの方は是非お越しくださいませ。
今回の近代陶芸オークションには、板谷波山の「青磁捻耳香爐」を始め、青磁作品が多数出品されますが、本日は、近代美術PartⅡオークション(陶芸)に出品される柳海剛の作品をご紹介したいと思います。
皆様もご存知のように、青磁といえば韓国の高麗時代(10世紀~14世紀末)に作られた〈高麗青磁〉がその代表としてよく知られています。
Lot.207 柳海剛 《青磁水注 二・急須》
H25.4×W17.3cm, H33.8×W21.5cm, H11.9×W17.6cm
各高台内に描き銘 各共箱
急須ナオシ有
★¥50,000~¥100,000
柳海剛(1894年~1993年)は、高麗青磁の製造技術を当時のままに復活させた作家として有名ですね。韓国を始め、日本やアメリカなどで個展を開き、様々な陶磁器展覧会や博覧会で受賞するなど、精力的な制作活動を展開しました。他界する5年前に韓国の政府から人間国宝(韓国での正式名:無形文化財)に指定されたことで、高麗青磁の再現に一生、力を尽くした彼の功績がようやく知れ渡るようになりました。
今回の近代陶芸オークションには、水注・花入・壺・香炉・香合など、様々な種類の柳海剛の作品が、7ロットに分けて出品されます。
その中で、Lot.207の水注と急須は、高麗時代の< 象嵌技法>がそのまま使われ、高麗青磁の美しさを最もうまく再現させた作品の一つです。水注の表面に繊細に刻まれた綺麗な模様は、磁器自体が醸し出す華麗さと調和し、その魅力をもっと高めてくれますね。
Lot.209 柳海剛 《青磁壺》
H46.6×D25.9cm
高台内に描き銘 共箱
★¥50,000~¥100,000
また、Lot.209の《青磁壺》は、高麗青磁の最も典型的なものとしてよく見られる形をしています。口のところは丸く膨らみ、下に向かってどんどん細くなりながらも、不思議な安定感を持つその形を見ていると、高麗人の技術だけではなくその魂の復活にまで全力を尽くした、柳海剛の精神が伝わってくるようです。
極めて薄く仕上げられた胴部の内面から漂うような青い色、その不思議な美しさを、皆様、是非見逃がさないでください!
【大阪下見会スケジュール】
7月10日(金)・11日(土)
10:00~17:00 御堂会館 南館 B1Fホール
< 展示内容>
ジュエリー&ウォッチ / 近代美術 / 近代陶芸(一部)
(執筆:W)
続きを読む




