Kyohei Fujita ― ヴェニス、そして琳派 「イタリア・日本の美」


本年秋は、「日本におけるイタリア2011・秋」として展覧会やイベントなど、様々な催し物が開催されています。イタリア統一150周年を迎え、日伊の文化・芸術交流が益々盛んになってきています。   
先週の近代美術、近代美術PartⅡオークションに引き続き、今週9月24日(土曜日)には近代陶芸オークションが開催されます。その中からヴェネツィアン・グラスに日本の伝統美を吹き込んだガラス工芸作家・藤田喬平の作品2点を紹介します。

 一点目は、「手吹ヴェニス花瓶」です。タイトルだけ聞くと、弊社のオークションでもたびたび出品されているタイプの作品のように思われるかもしれませんが、ご覧の通り、ラッパのような広がった口とアルファベットの「J」のようなユニークながらも美しい姿形をしています。この作品を生み出している技法は、吹き竿を使って息を吹き込み形を広げ、型を使わずに金(かね)箸(ばし)《金(かね)鋏(ばさみ)》などで成形する「手吹(てふき)《宙(ちゅう)吹(ふ)きとも呼ばれる》」という技法です。藤田はこの「手吹」の技法を用い、ヴェニスで多くの作品を生み出しました。初期の代表的シリーズである水や炎の動きを連想させる流動ガラスと共に、ヴェネツィアン・グラスのオブジェの影響を多大に受けている作品と言えます。

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                               LOT.86 藤田 喬平
「手吹ヴェニス花瓶」
H36.6×W29.2cm 
底部に掻き銘「Kyohei Fujita」 
共箱 
エスティメイト
¥800,000~¥1,200,000

 


もう一点は、「手吹飾筥(てふきかざりばこ) 琳派」です。
飾筥シリーズは1973年に発表され、1975年頃より海外での招待出品が増えていき、「フジタガラス」「ドリームボックス」として世界的にも有名になりました。
海外のメディアから「筥に何を入れるのか」と聞かれた藤田は、「あなたの夢を入れてください」と答えたそうです。この夢の筥は、技術に裏付けされた日本的装飾美の結晶と言えます。
藤田は、尾形光琳の螺鈿(らでん)硯箱(すずりばこ)のような琳派の装飾美をガラスで表現することを目指し、金銀箔をかすれさせることで、日本人の心に響くわび・さびをも感じさせたと支持されました.
身と蓋をぴたりと合わせ、ガラスでは不可能と言われていた印籠(いんろう)蓋(ぶた)で仕上げています。

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LOT.87 藤田 喬平
「手吹飾筥 琳派」
H22.4×W24.2cm
底部に「Kyohei Fujita」
共箱
エスティメイト
¥1,000,000~¥1,500,000


今回出品されます飾筥には、まさに藤田が目指した「琳派」という銘が付けられています。
ガラスの国ヴェネツィアの美と、祖国日本の美。藤田の魅力が存分に感じられる作品をぜひご覧下さい。

また今回はその他に富本憲吉の「白磁壷」や、十五代樂吉左衛門の「赤茶碗」、そして濱田庄司ら民芸運動を行った作家の作品が数多く出品されます。どうぞこの機会にお気に入りの作品を見つけに下見会へ足をお運びください。

とみはま中
★LOT.89富本憲吉「白磁壷」    ★LOT.47 浜田庄司「柿釉赤絵方壷」
H16.8×D25.1cm              H23.1×W16.7cm
共箱  1931(昭和6)年作         共箱
 ¥1,500,000~¥2,500,000.       ¥300,000~¥400,000.


(執筆者:E)