カテゴリー別アーカイブ: 西洋美術

今週の西洋美術オークション

こんにちは。
3月の近代美術、近代美術PartⅡオークションにご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

東京は先週から桜が見頃です。
入学式の時期に桜が咲いているというのはめずらしいですね。まだお花見に行かれていない方、都内は今週末が最後のチャンスのようですよ。

さて、今日は14日(土)に開催いたします、西洋美術オークションの出品作品をご紹介します。今回のオークションは、アール・ヌーボーの彫刻や家具、オルゴール、絨毯が充実しています。

まずは絨毯から。
今回は新品同様の絨毯がたくさん出品されます。

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lot.116 ペルシャ絨毯
「クム産 ホセイニ工房」
195.2×130.6cm
シルク
銘有


 こちらはその1点、現在イランで最も注目を集める新進気鋭の若手作家・ホセイニ氏の工房で制作された作品です。全体に配された花々に、50種類を超える色数を用いたという色づかいが見どころです。




アール・ヌーボーからはこちら。
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lot.236 Francois-Raoul Larche
ブロンズ彫刻「嵐」
H57.5×33.3cm
下部に銘・鋳造所銘「SIOT」
エスティメイト \1,000,000~1,500,000


 フランソワ=ラウル・ラルシュ(1860-1912)は、グラン・パレをはじめ、フランスの公的建造物の正面を飾る作品を数多く手掛けた、アール・ヌーボーを代表する彫刻家。シオ=デコヴィル社が生産したブロンズ製品で人気を博す一方、日常の生活用品の装飾化に関心を寄せ、照明器具や飾り鉢など生活を美しく彩る作品を数多く制作しました。特に、アメリカ人の踊り子ロイ・フラーの曲線美を表現したランプはアール・ヌーボーの粋として高く評価されています。

 本作品は、嵐と渾然一体となる5人の裸婦を巧みなバランスで表現した一点です。上流階級の邸宅の客間に飾られたサロンサイズの彫刻としては大型の部類に入ります。ここでは、アール・ヌーボーの女性像に多く見られる曲線的な造形や甘美な雰囲気ではなく、裸婦を飲み込むように激しく渦巻く嵐の猛威、それに抗うような肉体の力強さと躍動感が強調されています。裸婦の勇壮な姿は人間が生きることに立ち向かう様を象徴するようで、ラウル・ラルシュの彫刻家としての信念と技術力が結集された名作と言えるでしょう。

オルゴールはシリンダー式、ディスク式、オートマーターなど各種出品されます。
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lot.348 シンフォニオン社
ディスク式オルゴール「シンフォニオン エロイカ」
H283.0×W68.0×D43.5cm
ディスク:D34.7cm 39枚付
鍵1本
エスティメイト ★\2,000,000~3,000,000








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内部:3枚のディスクが同時に回って合奏します。

 シンフォニオン社(1886-1914)は、パウル・ロッホマンがドイツのライプチッヒに設立したディスク・オルゴールメーカーです。世界で初めてその製品化に成功して発展し、三大ディスク・オルゴールメーカーの一つとなっりました。複数のディスクを同時に使用して演奏するマルチプル・ディスクのオルゴールなど、音の表現の可能性やケースの装飾性を追求したユニークな製品を製作したことで知られています。

 「英雄」を意味する「エロイカ」は、マルチプル・ディスクのオルゴールの中でも最も多く作られた傑作です。メイン、サブ、アクセントの三枚のディスクを同時に使用することで、音の強弱や連続など豊かな音楽表現を可能にしました。
 本作品は時計が付いたホールクロック型の一点です。ケースにドーム型の屋根と天使をモチーフとした美しい彫刻が施されており、その音色だけでなくエレガントな調度品としても楽しめる点が大きな魅力です。

下見会・オークションスケジュールはこちら

みなさまのお越しを心よりお待ちしております。

(佐藤)

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「光の芸術」―ステンドグラス《最後の晩餐》

こんにちは。
先週のBAGS/JEWELLERY&WATCHESオークションにご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
さて、来週15日(土)は、銀座のシンワアートミュージアムにて西洋美術オークションを開催いたします。今回はステンドグラスがたくさん出品されますのでご紹介させていただきます。

まずはステンドグラスとその歴史について少々。
私たちの生活に身近なステンドグラスですが、その歴史は古く、現在確認されている最古のステンドグラスは9~10世紀にドイツで作られたものだそうです。建物の窓にガラスを入れるという習慣は古代ローマ時代からあったようですので、そのガラスが装飾化されたものがステンドグラスなのでしょう。

制作方法は大きく分けて二通りあり、A.透明ガラスにエナメルやガラス製の顔料で絵や模様を描いて焼き上げるタイプ、B.色ガラスを組み合わせて図柄を表わすタイプがあります。A,Bどちらかの方法でパーツを作り、それを鉛の枠でつなぎあわせることで1枚のステンドグラスが完成します。Aの方法がステンドグラスでは主流で、今回の出品作品もAによって作られています。

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モザイク画 ~「フローレンスモザイク」と「ミクロモザイク」~

 4月9日のBAGS/JEWELLERY&WATCHES、浮世絵/近代美術PartⅡオークションにご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。下見会の日程やオークション開催日の変更にもご理解いただき、心より感謝申し上げます。

 さて、今日は4月23日に開催いたします西洋美術オークションの出品作品をご紹介いたします。
今回の西洋美術では、モザイク画がたくさん出品されますが、まずはこちらのフローレンスモザイクから。

 フローレンスモザイクは、16世紀後半ルネサンス時代のイタリア・フィレンツェで生まれた、大理石の小片を象嵌して花や人物などを表わす装飾技法です。「フローレンス」はフィレンツェの英語名です。当時、隆盛を誇ったメディチ家の庇護の下で発展し、巨匠ミケランジェロはその美しさを「永遠の絵画」と絶賛したそうです。
 特筆すべきはその制作方法の緻密さと難しさ。図柄の部分は、例えばバラならば花弁の赤や白、葉の緑といった様々な色彩の石を重ね、弓に張った鋼入りの鉄線に砥石の粉を溶いた水を垂らし、少しずつ摺り切っていくという極めて緻密な手作業によって象り、下地の大理石に象嵌します。ほかの刃物や電動の機械などでは代用が効かず、この方法でのみモチーフの細部や柔らかな曲線を表現することができるそうです。美しく磨き上げられた作品からは、制作の困難さを想像させないエレガントな雰囲気が漂います。

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Lot.317 フローレンスモザイク
「バラ」
78.0×130.5cm
エスティメイト ★¥250,000~350,000


バラを中心に蝶や鳥をあしらった作品。
お部屋が華やかで洗練された空間になりそうです。


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Lot.319 フローレンスモザイク
「老貴族」
画面:73.5×45.8cm
(99.5×71.5cm)
エスティメイト ★¥250,000~400,000


知的で貫録のある老紳士を描いた作品。今回のフローレンスモザイクの中でも、色彩の美しさと細かさが特に秀逸です。



 また、今回はとてもめずらしいミクロモザイクが出品されます。
ミクロモザイクは、1~2㎜角のガラスの小片を寄せあわせて埋め込み、滑らかに磨き上げて絵や文様を表す技法です。フローレンスモザイクの制作も大変細やかなものですが、「ミクロ」という名の通り、様々なモザイクの技法の中でも、とりわけ膨大な時間と繊細な手作業を要するものとして知られています。カタログをお持ちの方はよくご覧いただくとおわかりになるかもしれませんが、ガラスの小片が整然と密集する画面は圧巻です。下見会場では、その驚くべき緻密さをぜひお近くでご覧ください。

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Lot.320 ミクロモザイク
「花」
画面:74.2×58.2cm
(98.4×82.0cm)
エスティメイト ★¥500,000~800,000
 

大輪の花をモチーフとした本作品では、極彩色のガラスを用いて花や壷の質感とそれらに降り注ぐ光を見事に表現しています。花と背景との明暗のコントラストが画面を引き締め、花の華やかさやみずみずしさがいっそう際立つようです。


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Lot.321 ミクロモザイク
「フォロ・ロマーノ」
61.8×80.5cm
右下にサイン「G.RINALDIF」
エスティメイト ★¥800,000~1,500,000


 Lot.320同様、ガラスを素材に用いて制作されたミクロモザイク画です。題材の「フォロ・ロマーノ」は、古代ローマ時代の政治・経済の中心地であり、現在は多くの観光客が訪れるローマの遺跡。ここでは遠近法に基づき、長い歴史の風格を漂わせる遺跡や広がりと奥行きを感じさせる青空を、絵具による風景画と見紛うばかりに写実的かつ精緻に表現しています。こうした大作をこれほど細やかに美しく仕上げるためには、十年を超える長い年月と高い技術力を必要とするでしょう。ミクロモザイク画の中でも極めて完成度の高い希少な作品です。

 これらの作品は、現在下見会の準備の真っ最中です。
下見会・オークションスケジュールはこちら
みなさまのご来場を心よりお待ちしております。

(執筆:S)

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西洋美術下見会スタート

 本日より西洋美術下見会が銀座シンワアートミュージアムでスタートしています。
(オークション4月17日(土)15:00~。詳細はこちら

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地下の様子



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1階の様子

 西洋美術オークションはほぼ一年に二回の頻度で開催されており、高い落札率を出しています。
 今回は、いつも熱い人気を集めるアンティーク・ドールや、絨毯を含む総数338点が出品され、華麗なデコラティブ・アートの数々が会場を彩ります。 

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 LOT94 《マイセン「華麗なオーケストラ16体組(ガラスケース付き)」》(Est.\700,000~¥1,000,000)は、ぜひお近くでその精巧な作りをご覧いただきたい作品です。貴族が日々の暮らしの中に芸術を取り入れ、愛でていたことを伺わせるもので、豊かな動きと一体一体に異なる表情が飽きさせない作品です。《猿のオーケストラ》はマイセンを代表する21体(+譜面台)ですが、今回の出品作品もそれに類するマイセンの魅力溢れる一揃いです。

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指揮者の燕尾服の下に隠れた筋肉の動きやバイオリンの弦まで表現されています。


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 女性のお客様のご来場も多い西洋美術。ロイヤルコペンハーゲンのお皿やカップ&ソーサー(写真左の棚上段)、ロブジュのパフューム・ランプ(写真右Lot230 Est. ★¥50,000~¥100,000)など、ご自身の鑑賞用のほか、贈り物にも素敵なお品が並びます。
 オークションは初めてという方もぜひこの機会にお立ち寄りください。

(井上素子)

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鍍金ブロンズマントルクロックセット

こんにちは。
みなさんお花見は行かれましたか?
桜はもちろんですが、最近は新入社員や新入生らしき人たちを見かけると春だなあと思ってしまいます。

さて、シンワの4月といえば、西洋美術オークションです。
今日は出品作品の中から1点ご紹介いたします。

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lot.128 鍍金ブロンズマントルクロックセット
時計:H86.0×W45.0cm
キャンドルスタンド:各H96.3×W40.0cm
鍵、振り子付き
★\1,200,000~1,800,000



 マントルクロックは、マントルピース(暖炉の飾り棚)を美しく飾るために作られた時計です。
 暖炉が現在のスタイルになったのは中世の北ヨーロッパ。煙突によって排煙する方式が発明され、部屋の好きな場所に暖炉を配置できるようになりました。すると、部屋の中で最も居心地の良い場所である暖炉の前が、その部屋の上座とされるようになっていきます。それとともに、暖炉は、暖をとり、肉を焼くための道具という本来の性質に加え、その家のステイタスシンボルとしての意味合いを帯び、王侯貴族たちの間で流行していきました。
 
 マントルピースも、ゴシック、ルネサンス、ロココ様式など、時代と文化の変遷に合わせて装飾的で芸術性の高いものが作られるようになります。そこには、家の最も格式の高い場所に相応しい美術品が飾られました。マントルピースを美しく、誇り高く彩るために生まれたマントルクロックは、家の富と名誉の象徴と言えるでしょう。
 
 本作品は、アンピール様式の装飾美が随所に見て取れるマントルクロックセット。アンピール様式とは、1804年ナポレオン1世が帝政を確立してから19世紀中期頃まで、フランスの建築、家具、装飾美術などに流行したデザインを指します。大きな特徴は、当時の優れた鍍金技術を駆使した壮麗で重厚な作風と、シンメトリックなデザイン。ナポレオンが憧れた古代ギリシア・ローマ、エジプト美術の要素を取り入れ、スフィンクス、勝利の女神、月桂樹など、その文化を代表するモチーフが用いられました。
 
 本作品においても、中央の置き時計の最上部に、ローマ神話における愛の神・キューピッドを表す矢立てと松明、ギリシア・ローマ時代から霊木として崇められた月桂樹を編んだ冠を組み合わせ、愛と栄光を象徴しています。置き時計と2点のキャンドルスタンドのそれぞれにシンメトリーに配されたスフィンクスは、エジプトやギリシアの神話に登場する、鷲の翼と女性の上半身を持った神聖な生物です。こうした均整の取れた優美な装飾と、セット全体が醸し出す重厚感の見事な調和は、アンピール様式の粋と言えるでしょう。英雄の時代の装飾美と、本作品ほどの大きなマントルクロックが設えられた名家の風格を現在に伝える逸品です。

オークション・下見会スケジュールはこちら

みなさまのご来場を心よりお待ちしております。

(執筆:S)

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Europian Decorative Artの魅力

 シンワアートミュージアムでは、ここ数年、10月の恒例となって参りました、西洋美術オークションの下見会が開催されています。

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 西洋骨董のオークションの醍醐味は、何といっても手にとって実際に使う場面を想像したり、その作品がこれまでたどってきた運命に思いを馳せたりすることにあるのではないでしょうか。
 僭越ながら、このオークションにお見えになるお客様にはどことなくそんなロマンティストの雰囲気が漂っておいでのように感じます。


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Lot507 ガレ
《ふくろう文陶製置物》

H33.3×W18.4cm
底部に銘
\600,000. ~800,000.
 例えばこの作品。フクロウの置物を観察してみましょう。
 フクロウは日本では「不+苦労」という言葉と掛けて縁起をかつぐモティーフとして喜ばれました。
 古代ギリシアではその大きな眼が魔除けとして考えられていたといいます。
 知の女神アテネの従者として登場し、今のギリシア版1ユーロ硬貨の面面にもフクロウの絵柄が鋳造されています。
 また、肉食で、害鳥などを捕食するフクロウは農業の神として信仰する地域も多く、農家でも喜ばれたと言います。

これまでどんな困難からこのフクロウが持ち主を護ってくれたのでしょうか。
 お家を守るモティーフとして、私もフクロウの置物をお友達の新築祝いに贈ったことがありました。


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 こちらは若い方にお好きな方の多いカントリー家具。
 パイン材でぬくもりある質感が特徴です。
 お求めやすい価格からスタートしますので、また違ったオークションの醍醐味を味わっていただける商品です。


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 セーブル磁器も豊富に出品されます。
 金彩が醸し出す豪奢な雰囲気が、日本には無い豊かなヨーロッパのデザイン性を感じさせます。


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 こんな可愛らしいマイセンのお人形もたくさんお求め頂けます。
(写真の作品はそれぞれ、落札予想価格18万円~25万円です)

 先日、ディズニーの古典アニメ、シンデレラを見ていたら、王宮で王様のデスクの上にマイセンと思しき人形が一対置かれているのを発見しました。

 そこでは、王子様の花嫁を見つけなければ、と王様が語る話題の際に効果的に使われていました。
 マイセン磁器の人形が、王侯貴族の娯楽であったことが欧米社会に浸透している、好例ですね。
 このシンデレラのキャラクターデザインは、先日まで東京都現代美術館で個展が開催されていたメアリー・カサットです。
 ハッとするような印象的な画面構成が多く登場します。


西洋美術オークションの詳細はこちら

(井上素子)

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西洋美術、暮らしを彩るアンティークス

 今週は西洋美術オークションの下見会を開催中です。
 今日は会場の様子をご紹介します。
 
 下見会場の入り口には、昔のジノリ、ドッチァ窯で作られた大壷が堂々とした風格で皆様をお出迎え。
無題3
Lot73 《ジノリ・ドッチア / 金彩色絵「古代ローマ庭園の図」飾壷》
¥3,000,000 – 5,000,000


 ドッチァ窯は、1735年、イタリアのフィレンツェから数キロ離れたドッチァ地域で誕生した窯です。同地に別荘を所有し、メディチ家と共にフィレンツェを治めていた名門貴族のカルロ・ジノリ侯爵が、マジョリカ陶器全盛のイタリアに、ドイツのマイセンやウィーン窯に対抗できる陶磁器の焼成のために作らせたもの。
その後150年以上、五代に渡りジノリ家が所有していましたが、1896年にミラノのリチャード陶磁器会社と合併し、リチャード・ジノリ陶磁器会社になって今に至ります。
 本作品に見られる古代ローマ庭園の遠近感が強調された図柄は、ルネサンス絵画や古代装飾の再興への志向が窺われ、高さ100cmを超える大きさにはジノリ窯が自国で確立した陶磁器製品の権威と誇りが感じられます。


 年に二回の西洋美術オークションには、日常を美しく彩る数々の品が出品されています。
 たとえばこんな照明が、廊下の突き当たりにあったら素敵ですね。
無題1
LOT253
《ガレ / 花文彫ブラケット》
¥550,000 – 800,000



 読書好きの方には、こんなテーブルランプはいかがでしょうか。
 照明の雰囲気の良さでは、ヨーロッパはさすがに先進国ですね。日本製には無い魅力があります。
無題2

LOT171 ★
《シュナイダー / 色硝子テーブルランプ》
¥50,000 – 100,000



 食器では、マイセンのコーヒーセットが可愛らしいです。
 全体に丸みを帯びたデザインが、貴族の女性好みのセットですね。
釉薬のツヤが、照明をきらきらと反射して、食卓に置いた時いっそうの華やかさを演出します。
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LOT112
《マイセン / 金彩色絵花文コーヒーセット》
¥180,000 – 300,000



 西洋美術オークションは今週末、土曜日の15時からです。(詳しい日程はこちら
 ご来場をお待ち申し上げております。

(執筆者:I)

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ガレ《湖水風景文花器》

 土曜日のオークションにお越しいただいたお客様、ありがとうございました。
 シンワは早速、次のオークションに向かって始動しています。今週は陶芸、四月には西洋美術のオークションが控えています。

 今日は、西洋美術に出品される作品をご紹介しましょう。


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《湖水風景文花器》
・H35.9×D10.8cm
・2,000,000~3,000,000円


 本作品は、アール・ヌーヴォーを代表するガラス工芸、エミール・ガレの花器です。
アール・ヌーヴォー(Art Nouveau, 「新しい芸術」の意)とは、工芸・建築・絵画・ファッションなどの分野に波及した豊かな装飾を特徴とする様式です。
 ガレの芸術性に対する評価と共に、特に20世紀末の機能主義的で禁欲的なデザインに息苦しさが感じられるようになった頃、改めて注目が集まるようになりました。日本での人気が高まったのは戦後のことです。


 ガレは、植物の細密な観察に基づく写実性の強い造形を得意としていました。古典美の特徴である均衡、安定、普遍性に反発して、非対称、揺らめくような不安定な形、一瞬の美に注目する視点など、反古典主義と呼ばれる特徴が、「新しい芸術」を牽引したのです。


 本作品は、透明ガラスの層の間に色ガラスで作った文様を挟み込み、表層に彫刻を施して文様が重なり合って見えるようにする“アンテルカレール”という技法が用いられています。
 これにより風景には重層的な奥行きと深みがもたらされ、湖のほとりで繰り広げられる木々と水、光、風のドラマを再現することに成功しています。

 風景を主題とする花器はガレの晩年に多く見られ、自然の摂理を造形に取り入れた有機的なデザインは、ガレの没後もアール・ヌーヴォーを象徴するものとして知られるようになっていきました。


西洋美術オークションの日程はこちら

(執筆者:I)

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