モザイク画 ~「フローレンスモザイク」と「ミクロモザイク」~


 4月9日のBAGS/JEWELLERY&WATCHES、浮世絵/近代美術PartⅡオークションにご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。下見会の日程やオークション開催日の変更にもご理解いただき、心より感謝申し上げます。

 さて、今日は4月23日に開催いたします西洋美術オークションの出品作品をご紹介いたします。
今回の西洋美術では、モザイク画がたくさん出品されますが、まずはこちらのフローレンスモザイクから。

 フローレンスモザイクは、16世紀後半ルネサンス時代のイタリア・フィレンツェで生まれた、大理石の小片を象嵌して花や人物などを表わす装飾技法です。「フローレンス」はフィレンツェの英語名です。当時、隆盛を誇ったメディチ家の庇護の下で発展し、巨匠ミケランジェロはその美しさを「永遠の絵画」と絶賛したそうです。
 特筆すべきはその制作方法の緻密さと難しさ。図柄の部分は、例えばバラならば花弁の赤や白、葉の緑といった様々な色彩の石を重ね、弓に張った鋼入りの鉄線に砥石の粉を溶いた水を垂らし、少しずつ摺り切っていくという極めて緻密な手作業によって象り、下地の大理石に象嵌します。ほかの刃物や電動の機械などでは代用が効かず、この方法でのみモチーフの細部や柔らかな曲線を表現することができるそうです。美しく磨き上げられた作品からは、制作の困難さを想像させないエレガントな雰囲気が漂います。

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Lot.317 フローレンスモザイク
「バラ」
78.0×130.5cm
エスティメイト ★¥250,000~350,000


バラを中心に蝶や鳥をあしらった作品。
お部屋が華やかで洗練された空間になりそうです。


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Lot.319 フローレンスモザイク
「老貴族」
画面:73.5×45.8cm
(99.5×71.5cm)
エスティメイト ★¥250,000~400,000


知的で貫録のある老紳士を描いた作品。今回のフローレンスモザイクの中でも、色彩の美しさと細かさが特に秀逸です。



 また、今回はとてもめずらしいミクロモザイクが出品されます。
ミクロモザイクは、1~2㎜角のガラスの小片を寄せあわせて埋め込み、滑らかに磨き上げて絵や文様を表す技法です。フローレンスモザイクの制作も大変細やかなものですが、「ミクロ」という名の通り、様々なモザイクの技法の中でも、とりわけ膨大な時間と繊細な手作業を要するものとして知られています。カタログをお持ちの方はよくご覧いただくとおわかりになるかもしれませんが、ガラスの小片が整然と密集する画面は圧巻です。下見会場では、その驚くべき緻密さをぜひお近くでご覧ください。

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Lot.320 ミクロモザイク
「花」
画面:74.2×58.2cm
(98.4×82.0cm)
エスティメイト ★¥500,000~800,000
 

大輪の花をモチーフとした本作品では、極彩色のガラスを用いて花や壷の質感とそれらに降り注ぐ光を見事に表現しています。花と背景との明暗のコントラストが画面を引き締め、花の華やかさやみずみずしさがいっそう際立つようです。


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Lot.321 ミクロモザイク
「フォロ・ロマーノ」
61.8×80.5cm
右下にサイン「G.RINALDIF」
エスティメイト ★¥800,000~1,500,000


 Lot.320同様、ガラスを素材に用いて制作されたミクロモザイク画です。題材の「フォロ・ロマーノ」は、古代ローマ時代の政治・経済の中心地であり、現在は多くの観光客が訪れるローマの遺跡。ここでは遠近法に基づき、長い歴史の風格を漂わせる遺跡や広がりと奥行きを感じさせる青空を、絵具による風景画と見紛うばかりに写実的かつ精緻に表現しています。こうした大作をこれほど細やかに美しく仕上げるためには、十年を超える長い年月と高い技術力を必要とするでしょう。ミクロモザイク画の中でも極めて完成度の高い希少な作品です。

 これらの作品は、現在下見会の準備の真っ最中です。
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みなさまのご来場を心よりお待ちしております。

(執筆:S)