三瀬夏之介展~冬の夏~


今日は、1月15日より佐藤美術館で開催されている、三瀬夏之介展をご紹介いたします。

1999年に京都市芸術大学大学院美術研究科絵画専攻を修了した三瀬は、2002年「第2回トリエンナーレ豊橋 星野眞吾賞展」で星野眞吾賞受賞、本年は上野の森美術館が主催するVOCA展(「VOCA展 新しい平面の作家たち」)においてVOCA賞も受賞し、今後の活躍が期待される現代作家として注目を集めています。2007年から2008年にかけて、五島記念文化財団の研修員としてフィレンツェに滞在しました。また、弊社のオークションにも2007年より何点か出品され人気を博しています。

日本画の伝統的な技法に則りながら、現代に生きる新しい感性で描く画家として、町田久美、中村ケンゴ、山本太郎、松井冬子などがいますが、三瀬夏之介もその一人です。
三瀬の作品には、伝統的な日本画の価値観にとらわれない斬新さが見られます。たとえば、素材も岩絵の具だけではなく、様々な素材を塗り重ねた立体感のあるマチエールで表されていて、フィレンツェ滞在中の2007年に制作された「日本画滅亡論」では、チーズの包み紙と思われる素材をはじめ金箔や印刷物がコラージュされています。

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        《ぼくの神さま 2008》


佐藤美術館での展示は、3階と4階の2フロアを使って行われています。
まず順路の通り3階から入ると、三十四曲一隻の大作「奇景」が目を引きます。
2003年から2008年までの歳月をかけて紙片に描きためられたモチーフをつなげ、増殖させながら制作された絵巻物のような作品の中には、大魔神、西洋の塔、電車、飛行機といったモチーフが、延々と増殖するかのごとく描かれています。

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3階 《奇景》


4階では、三瀬のアトリエを再現した空間が設けられ、ラジカセからパイプオルガンの荘厳な音楽が流れる中、光、舟、はしご、剥製、流木、木といった素材を用いたインスタレーションが広がり、三瀬の世界観を垣間見ることができます。
個人的には、三瀬夏之介というと「日本的な風景」のイメージを持っていましたが、今回、インスタレーションを含めた幅広い作品群を見て、フィレンツェで三瀬が受けた影響を色濃く感じました。また、廃墟、飛行機、墓、山、森といったモチーフが広がるすべての絵画作品を貫く要素として、きらきら輝く「光」を強く感じました。

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4階 展示室

もう一つの見どころは、「日本画滅亡論」と同年に描かれた「日本画復活論」が同時に展示されていることです。同時期に描かれながらも相反するタイトルを掲げる2点の作品は、「ひとつのものごとを思考するときに、まったく逆のベクトルの可能性も考えてみる」のが癖だという三瀬の思想の両極を見ることができます。

画面を継ぎ足しながら時間をかけて描かれた絵巻物のような作品は、生きもののような増殖性を持ちます。日本の古都である奈良で生まれ育った三瀬が、イタリアの古都であるフィレンツェで過ごし、自身の原点に迫る中で編み出された、東洋と西洋の枠を超えた壮大な風景を、ぜひ堪能しに行ってみてください!

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「冬の夏」 三瀬夏之介展
2009年1月15日(木)~2月22日(日)
佐藤美術館 http://homepage3.nifty.com/sato-museum/
入場料:一般500円、学生300円
開館時間:午前10時~午後5時(金曜日は午後7時まで)
休館日:月曜日
*入場は閉館の15分前まで

                                  (執筆:K)