加山又造展 


 本日は当社のオークションでもおなじみの日本画家・加山又造の展覧会をご紹介いたします。

 加山展といえば、2006、2007年とたて続けに開催されたのをご覧になった方も多いかもしれません。今回会場となっているのは、六本木の国立新美術館。東京では10年ぶりの大回顧展だそうです。ずらりと集結した代表作、約100点はまさに「豪華絢爛」という言葉がぴったりです。近年ご覧になった方も見逃してしまった方も、加山作品をお持ちの方もそうでない方も、ぜひご覧になってみてはいかがでしょうか。


図版1 《夜桜》 1982年 光記念館
(※図版は掲載許可の期間が終了したため削除させて頂きました。)


 まずは加山又造についてご紹介します。
加山は1927(昭和2)年、京都西陣の和装図案家の家に生まれました。幼い頃から絵の才能を発揮し、京都市立美術工芸学校絵画科に学んだ後、上京して東京美術学校日本画科に入学。卒業後は山本丘人に師事し、戦後間もなく創立された創造美術展(後の創画会展)に出品して入選を果たし、若くしてその才能を認められました。
 西洋絵画の影響が色濃く表れた初期の動物画から、琳派をはじめとする日本の古典に倣った華麗な屏風絵、浮世絵の線描表現の美しさに触発された裸婦像、北宋山水画に学んだ水墨画など、鋭敏な美的感覚で革新的な芸術世界を次々に展開しました。1966年に多摩美術大学日本画科教授、1988には年東京藝術大学美術学部教授に就任。2003年文化勲章を受章し、翌年76歳で逝去しました。

 展示は、第1章から第6章まで、動物画、屏風絵、裸婦、花鳥画、水墨画、絵画以外のアートワークと、多岐に渡ります。加山の画業は、一つの様式や題材を、生涯を通して発展させていったものではなく、「日本の美」を志向して様々な題材と画風に挑戦したものでした。そのため、この6章での構成は大変わかりやすく、その作風の変遷を辿ることができます。章から章への驚くべき変貌ぶり、どのテーマにおいても貫かれた加山の美意識と作品の完成度の高さに圧倒されます。

 展示室に入ると、まずお出迎えしてくれるのが、《雪》《月》《花》。これらを版画で再制作した作品は当社のオークションにも出品されたことがあります。そのせいか、もっと小さなサイズを想像していましたが…、なんと実際はそれぞれ350cm×450cmの大作です!リニューアル前の東京国立近代美術館のエントランスに展示されていたもので、加山が美術館に依頼され、8年間の歳月をかけて完成させた三部作だそうです。加山芸術を象徴するような3点に迎えられ、一気にその世界観に引き込まれるような気がしました。


図版2 《雪》《月》《花》 1978年 東京国立近代美術館
(※図版は掲載許可の期間が終了したため削除させて頂きました。)

 
 個人的には、「新しい日本画を描こう」という加山の強い意志と模索が熱く伝わってくる初期の動物画がおすすめなのですが、今回の展覧会で特にご注目いただきたいのは屏風絵と水墨画です。


図版3 《春秋波濤》 1966年 東京国立近代美術館
(※図版は掲載許可の期間が終了したため削除させて頂きました。)


 第2章屏風絵のコーナーに足を踏み入れた途端、《春秋波濤》、《千羽鶴》といった加山の装飾美の世界が絢爛豊麗に広がっています。役者が揃ったというのでしょうか、壮観とはこのことですね。日本美術が本来持っていた装飾性を、加山がいかに深く追求して取り入れ、現代的な表現へと解釈し直したかがよく感じられます。


図版4 《千羽鶴》 1970年 東京国立近代美術館
(※図版は掲載許可の期間が終了したため削除させて頂きました。)


 また、第5章水墨画のコーナーでは、それまでの華麗な色彩の作風から打って変って、モノクロームの世界が展開されます。ここでも加山は、雪舟や長谷川等伯などの古典に倣い、水墨によって日本的な情緒や装飾性を表現しました。加山は「墨に五彩あり」という言葉を好んだようですが、加山の水墨では、濃淡を駆使した色彩を感じさせる要素とともに、対象の動感と空気感が見事なまでに描出されています。岩に砕ける波や山岳を包み込むような霧、大きな体をくねらせる龍の姿が目の前にあるような錯覚すら覚えてしまいそうです。このコーナーにある《倣北宋水墨山水雪景》は近寄ってご覧になるだけでなく、離れたところからもご覧になってみてください。厳しく屹立する雪山がまるで3Dのようにこちらに迫ってくるように見えますよ。


図版5 《倣北宋水墨山水雪景》 1989年 多摩美術大学美術館
(※図版は掲載許可の期間が終了したため削除させて頂きました。)


 今回の展覧会の特色として、着物やジュエリー、陶器など、加山が手がけた絵画以外のアートワークが充実しています。それぞれに加山の洗練されたデザイン感覚が発揮され、絵画を描く片手間に取り組んだものでないことがはっきりとわかります。宗達や光琳など、江戸時代以前の美が日常に溶け込んだものであったように、加山も普段の生活の中にある美を目指してこうした制作に向かったのでしょうね。


図版6 《はぎ》アームレット 1985年 個人蔵
(※図版は掲載許可の期間が終了したため削除させて頂きました。)


 先日当ブログでご紹介した三瀬夏之介のように、コンテンポラリーアートの分野で最近活躍している作家の中にも、日本画を描く人たちがいます。彼らも日本の古典を取り入れながら、それぞれの個性を表現していますが、加山はその先駆的な存在と言えるかもしれません。多くの作家たちが西洋的なものを志向した近代の中で、加山は伝統的な日本美の可能性を信じて追求し、自身の研ぎ澄まされた感覚で表現しました。今回の展覧会はその画業の軌跡を通じて、加山が生涯を賭けて挑んだ「日本の美」の魅力を現代に生きる私たちに明確に見せてくれます。


【展覧会概要】
加山又造展
会期:2009年1月21日(水)~3月2日(月) ※会期中展示替えあり
会場:国立新美術館 企画展示室1E(東京都港区六本木7-22-2)
開館時間:午前10時~午後6時
       (金曜日は午後8時まで。入館は閉館の30分前まで。)
展覧会公式サイト  http://www.kayamaten.jp/
巡回先:高松市美術館  2009年4月17日-5月31日

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<応募期間終了>

                               (執筆:S)