月別アーカイブ: 2008年6月

金魚と向き合う作家、深堀隆介


全国的に雨の日が続いているようですが、本日、ここ銀座は雲一つない快晴に恵まれました。
最近雨が続いていただけに、なんだか太陽が眩しく感じられました。
もうすぐ夏ですね。夏が待ち遠しい!そんな方も多いのではないでしょうか。
今日は、これからの季節にぴったり。清涼感溢れる深堀隆介の作品をご紹介します。

深堀隆介(B.1973-)
深堀隆介

lot238《相》 29.8×20.8cm/絹、アクリル/落札予想価格:\50,000.~\100,000.


金魚が見せる一瞬の美。それを卓越した描写力で捉え、作品へと昇華していく―
深堀隆介は、スランプの時に7年間飼っていた金魚に魅了されたのを機に、
金魚をテーマにした作品に取り組み始めたといいます。
2002年頃からは、器の中に樹脂を流し込み、その上に直接金魚を描くという独自のスタイルを確立。
個展やグループ展の他、ライブペインティングやワークショップなど、精力的な活動を展開しています。


深堀隆介

lot241《香具夜 命名 小梅檀》
39.5×4.0cm他/竹、樹脂に着色/落札予想価格:\100,000.~\200,000.


樹脂に描かれた金魚は、まるで本物と見まがうほど。
命を吹き込まれたかのごとく躍動感に溢れています。
艶やかに悠々と泳ぐ様を見ていると、
幼い頃、夏祭りの夜店で夢中になって金魚すくいをしたことを思い出します・・・

飾った場所に清々しい空気を運んでくれる、そんな作品といえるのではないでしょうか?!


lot242《金魚酒》

lot242《金魚酒》h5.8×w7.8×d7.8cm/木曾檜枡、樹脂に着彩
落札予想価格:\100,000.~\200,000.

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横尾忠則の大作!!

SUMMER+AUCTIONのカタログでは、注目作品や若手作家などのページに解説を掲載していますが、ブログではさらに、カタログに掲載しなかった逸話や紹介できなかった作家や作品の情報をお伝えしていきます!

本日は・・・

世田谷美術館で「冒険王・横尾忠則 初公開!60年代未公開作品から最新絵画まで」(~6月15日まで)が開催されていることもあり、最近ますます注目を集めている作家、横尾忠則の作品をご紹介します。今回のオークションでは、なんと、縦2メートル、横4メートルを超える大作が出品されます!!

横尾忠則


lot76 横尾忠則 《その後の天の岩戸》
227.3×405.0cm/キャンバスに油彩/1987年作 
落札予想価格:400万円~600万円


1987年に制作された本作品は、スーツに身を包んだスキンヘッドの男たちが悟りを開く姿を描いた「涅槃」(ねはん)シリーズの一点です。世田谷美術館での展覧会に出品されている代表作、《天の岩戸》(1985年作・広島市現代美術館蔵)と同様、日本の神話を題材にしています。

神話では天照大神が岩戸から姿を現しますが、本作品では、女優のアニタ・エクバーグが溢れ出る水とともに登場します。
画家は、フェデリコ・フェリーニ監督の映画、『甘い生活』でアニタ・エクバーグが登場した際、「映画の中の空気の流れを一瞬変質させてしまうほど」の衝撃を受けたといいます。ここで「啓示的霊感」を得た画家は、以来、アニタ・エクバーグをモティーフとした作品を制作するようになります。
その他、兎や鰐など多様なイメージが織り込まれた本作品は、複雑怪奇でありながら、ロマンティシズムに溢れる、神秘的な世界が広がっています。

1980年前半に「画家宣言」をしたこの時期、1985年にはパリ・ビエンナーレとサンパウロ・ビエンナーレに出品し、1987年には西武美術館で個展を開催するなど、画家としてより活発な活動を展開しています。
パネル3枚に及ぶ大画面には、画家が絵画への欲求を噴出させたことを窺わせる、圧倒的なエネルギーに満ち溢れています。

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オークションができるまで(2)~カタログ制作~

オークションにかかせないもの。その一つにカタログがあります。
カタログの完成まで10日をきり、画像や文字の校正に余念がない日々です。
今日は、前回の写真撮影に引き続き、カタログ制作の現場をレポートします。

オークションに出品する作品を預かる際、まずはそのコンディションを確認するとともに、サイズ、制作年、画集等の掲載や展覧会への出品歴があるか、等をチェックします。
これらが、カタログに掲載する作品の文字情報となります。

ロット決定1       ロット決定2
こちらは、オークションの出品作品に付けられた通し番号、“ロット”を決めているところ。オークションはこのロット番号順に進んでいきます。
出品作品の画像を並べ、作品のジャンル、オークションの進行状況などを考慮しながら決めていきます。

 

さらに、カタログには作品や作家の解説等の文章も日本語と英語で掲載しています。
SUMMER+AUCTIONに出品される作品には若手の作家も多く、カタログに記載する情報が、作家、作品の理解の手助けとなるだけでなく、今後の参考資料となるよう制作しています。

 

また、本オークションでは、新たな試みである「デザイン」やこれまで以上に充実をみせる「写真」などの扉に特別ページを設けていますが・・・

さて、どのようなカタログになるのでしょうか?!
完成をお楽しみに!!


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オークションができるまで(1)~撮影風景~

約1ヶ月後に迫ったSUMMER+AUCTIONは、現在カタログ製作が進行中です。
今日はその製作現場を少し、ご紹介したいと思います。


こちらは、カタログに欠かせない出品作品の画像撮影風景です。
この時撮影していたのは、サーフボード。

SUMMER+AUCTIONには、こういった"ライフスタイル&カルチャー”を感じさせる作品も出品されます。
撮影風景2         撮影風景1

 →ワンカットごとに画像を見直し、最適な画を探ります。

出品作品1点1点、丁寧に撮影が行われます。この日の撮影は、午後11:00まで続きました。

この後も、ひとつのオークション、一冊のカタログが出来上がるまでには多くの過程があります。
ご紹介したサーフボードとモデルの写真の仕上がりは、6月19日に完成する予定のカタログで是非お確かめください。


~オークションカタログのご案内~
オークション開催の約3週間前(SUMMER+AUCTIONでは6月19日を予定)に、全作品をカラー写真と詳細なデータを掲載したオークションカタログをご用意します。
現在の美術マーケットを知るためにも最高のガイドブックとしてお勧めです。

■SUMMER+AUCTIONカタログ
1冊:3000円
年間購読(Contemporary Art / 年間3回開催予定):5000円

・送料は、もちろん無料です。完成次第、お手元にお届けします。
・1回のみお申し込みの方にはヤマト運輸の「コレクトサービス(代引き)」にてお送りします。お届けの際にお支払い下さい。
・年間購読をご希望の方のお支払いは到着後にお願いいたします。郵便振替用紙を同封してお送りいたします。


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春のコンテンポラリーアート市場レビュー

~SUMMER+AUCTION 出品作品~

002
松浦浩之「Pancake」
35.0×35.0cm / キャンバス・アクリル
落札予想価格:50万円~80万円
→松浦浩之はクリスティーズ香港のセールでも人気を集めました。
ご存知の通り、春は世界中のオークションハウスが大きなセールを開催する季節です。
そこで今回は、SUMMER+AUCTIONと関連深いアジアのコンテンポラリーアートを中心に、春のオークション月間を振り返ってみたいと思います。

まず1つ目にご紹介するのは、フィリップスが4月3日にLondonで開催した“Kyobai”です。
このオークションは、その名が示す通り、様々な分野の日本人アーティストの作品を集めたものです。
村上隆や奈良美智に始まり、若手アーティスト、陶芸作品そしてデザイン家具やフィギュアまで、幅広い作品が出品され、日本文化を俯瞰できる意欲的なセールとなりました。
フィリップスは、今年秋にも同様のセールを開催するとのこと。

そして2つ目は、アジアの若手アーティストの登竜門的存在でもある、クリスティーズ香港の”アジアン・コンテンポラリーアート”のセール。 参加者の中で大きなパートを占める、中国四川省で発生した大地震や、サブプライムローンの影響が心配されるなかでの開催となりましたが、結果的には活気あるオークションとなりました。
中国人コレクターの買い意欲は依然高く、ジャン・シャオ・ガンを初めとする中国人アーティストの作品が相変わらずの人気を集めたほか、インドネシア人アーティスト REDY RAHADIANや、インド人アーティスト SUBODH GUPTAの作品が高額で落札されたことなどは、新しい動きだったのではないでしょうか。
そして、注目の我らが日本人アーティストの活躍はといえば、これが総じて中々の高評価。
1000万円を超える落札価額の作品があったアーティストが7、8名。500万円以上の落札価額だったアーティストが4、5人と、日本人アーティストが世界でプレゼンスを確立しつつあることを確信させる結果となりました。特にデイセールは、全体で400ロットほどの作品数の内、4分の1近い作品が日本人アーティストのものであり、その層の厚さも感じさせる内容となったのでした。

しかし何といっても、今春一番の驚きの結果はN.Yサザビーズのセールで村上隆のフィギュア作品「マイ・ロンサム・カウボーイ」がエスティメイトを大きく上回る、1516万ドル(約15億9500万円)で落札されたことではないでしょうか。4月のはじめに同じフィギュア作品「パンダ」が、過去最高の272万ドル(約2億6000万億円)で落札されたばかりでしたが、そのレコードをあっさりと塗り替えたことになります。
またこれは、3月に約14億円で落札された運慶の仏像をも上回る結果です。

このように、2008年春のオークションシーズンは大方の懸念を余所に、まずまずの盛り上がりを見せて幕を閉じたのでした。



~語句解説~
1.世界のオークションハウス
<サザビーズ>
1744年に書籍のオークションを開催したことに始まる、世界最古のオークションハウス。
世界最高額の落札記録(ピカソ「パイプを持つ少年」2004年 1億4000万ドル)を持つ。

<クリスティーズ>
1766年にイギリスの美術商のジェームズ・クリスティーにより、イギリスの首都ロンドンに設立されたオークションハウス。
ダイアナ妃やマリリン・モンローなど著名人の財産のオークションを度々手がけている。

<フィリップス>
1796年に創業した、クリスティーズ、サザビーズに次ぐ世界第3位のオークションハウス。

クリスティーズとサザビーズは、2社合せて1兆円を超える売り上げを誇る。

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