春のコンテンポラリーアート市場レビュー


~SUMMER+AUCTION 出品作品~

002
松浦浩之「Pancake」
35.0×35.0cm / キャンバス・アクリル
落札予想価格:50万円~80万円
→松浦浩之はクリスティーズ香港のセールでも人気を集めました。
ご存知の通り、春は世界中のオークションハウスが大きなセールを開催する季節です。
そこで今回は、SUMMER+AUCTIONと関連深いアジアのコンテンポラリーアートを中心に、春のオークション月間を振り返ってみたいと思います。

まず1つ目にご紹介するのは、フィリップスが4月3日にLondonで開催した“Kyobai”です。
このオークションは、その名が示す通り、様々な分野の日本人アーティストの作品を集めたものです。
村上隆や奈良美智に始まり、若手アーティスト、陶芸作品そしてデザイン家具やフィギュアまで、幅広い作品が出品され、日本文化を俯瞰できる意欲的なセールとなりました。
フィリップスは、今年秋にも同様のセールを開催するとのこと。

そして2つ目は、アジアの若手アーティストの登竜門的存在でもある、クリスティーズ香港の”アジアン・コンテンポラリーアート”のセール。 参加者の中で大きなパートを占める、中国四川省で発生した大地震や、サブプライムローンの影響が心配されるなかでの開催となりましたが、結果的には活気あるオークションとなりました。
中国人コレクターの買い意欲は依然高く、ジャン・シャオ・ガンを初めとする中国人アーティストの作品が相変わらずの人気を集めたほか、インドネシア人アーティスト REDY RAHADIANや、インド人アーティスト SUBODH GUPTAの作品が高額で落札されたことなどは、新しい動きだったのではないでしょうか。
そして、注目の我らが日本人アーティストの活躍はといえば、これが総じて中々の高評価。
1000万円を超える落札価額の作品があったアーティストが7、8名。500万円以上の落札価額だったアーティストが4、5人と、日本人アーティストが世界でプレゼンスを確立しつつあることを確信させる結果となりました。特にデイセールは、全体で400ロットほどの作品数の内、4分の1近い作品が日本人アーティストのものであり、その層の厚さも感じさせる内容となったのでした。

しかし何といっても、今春一番の驚きの結果はN.Yサザビーズのセールで村上隆のフィギュア作品「マイ・ロンサム・カウボーイ」がエスティメイトを大きく上回る、1516万ドル(約15億9500万円)で落札されたことではないでしょうか。4月のはじめに同じフィギュア作品「パンダ」が、過去最高の272万ドル(約2億6000万億円)で落札されたばかりでしたが、そのレコードをあっさりと塗り替えたことになります。
またこれは、3月に約14億円で落札された運慶の仏像をも上回る結果です。

このように、2008年春のオークションシーズンは大方の懸念を余所に、まずまずの盛り上がりを見せて幕を閉じたのでした。



~語句解説~
1.世界のオークションハウス
<サザビーズ>
1744年に書籍のオークションを開催したことに始まる、世界最古のオークションハウス。
世界最高額の落札記録(ピカソ「パイプを持つ少年」2004年 1億4000万ドル)を持つ。

<クリスティーズ>
1766年にイギリスの美術商のジェームズ・クリスティーにより、イギリスの首都ロンドンに設立されたオークションハウス。
ダイアナ妃やマリリン・モンローなど著名人の財産のオークションを度々手がけている。

<フィリップス>
1796年に創業した、クリスティーズ、サザビーズに次ぐ世界第3位のオークションハウス。

クリスティーズとサザビーズは、2社合せて1兆円を超える売り上げを誇る。