佐伯祐三の第1次パリ時代 その2―《街角》


こんにちは。
梅雨が明けないうちから毎日すごい暑さですね。
今年の夏は猛暑が予想されているようですので、熱中症にはくれぐれもお気をつけください。
また、先月から各地で豪雨が続いていますが、被災された方々には心よりお見舞いを申し上げます。

さて、今月の22日(土)は近代美術/近代美術PartⅡ/コンテンポラリーアートオークションを開催いたします。今回も出品作品の中からおすすめの1点をご紹介いたします。



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佐伯祐三《街角》
45.7×38.2cm(額装64.6×56.7cm)
キャンバス・油彩
1925(大正14)年作
右上にサイン・年代

・『佐伯祐三全画集』
(1979年/朝日新聞社)№85
・「佐伯祐三展」1973年
(梅田近代美術館/朝日新聞社)出品
・「佐伯祐三―ある画家の生涯と芸術展」1973年(兵庫県立美術館)出品
・「佐伯祐三展 芸術家への道」2005年
(練馬区立美術館・和歌山県立近代美術館)出品

                                                                                      落札予想価格 ¥12,000,000~¥18,000,000

佐伯祐三(1898-1928)は、自らの生命をキャンバスに刻み込むかのような情熱と疾走感溢れる筆致でパリの街の風景を描き、わずか30歳でこの世を去った夭折の画家です。
10年に満たないその短い画業のうち、初めてパリの石畳を踏んだ1924(大正13)年1月から一時帰国の途に就く1926(昭和元)年1月までのおよそ2年間は、第1次パリ時代などと呼ばれています。この時期、佐伯はフォーヴィスムの巨匠ヴラマンクに激しく叱責されたことにより天賦の才能を覚醒させ、パリの風景を描いたユトリロの作品に魅了されたことを機に自身もその街角に立ち、裏街の通りや建物を描くことに挑んでいきました。

本作はこの第1次パリ時代にあたる、1925(大正14)年に制作された作品です。パリの街に数多く見られる集合住宅らしき建物を題材とし、その古びて薄汚れた壁を、躍動的なタッチと触覚的なマチエールによって表情豊かに描き出しています。そして、佐伯のパリ風景の特徴の一つ、建物に正対しクローズアップして捉える構図により、建物が醸し出す独特の佇まいや味わいが際立たされ、その歴史やここで暮らした人々の物語を鑑賞者に想像させるようです。また、佐伯が興味を抱いたというパリの古い建物の煙突、壁に並列する窓が豊かなリズムを感じさせ、通りに立つ点景人物が街角の情景に抒情を添えています。 
さらに、本作では、画面右上に速筆で書かれたサインと年記が画面に緊張感をもたらしてもいます。その文字と建物に引かれた奔放な黒の輪郭線は、この時期より描かれ始め、第2次パリ時代の作品に本格的に表されて佐伯芸術の代名詞となった、建物の壁や広告に狂わしく乱舞する尖鋭的な線の登場を予感させるものと言えるでしょう。


「Uzo Saeki 1925 a Paris」
画面右上に記されたサインと制作年のアップで す。大きく荒々しいサインは、佐伯の文字や線に対する意識の強さをうかがわせます。


ぜひ下見会場で実際の作品をご覧ください。
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 なお、ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなどの方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。

(佐藤)