コンテンポラリーアートの新しい傾向「アニマミックス」に注目


上海当代芸術館(MOCA,The Museum of Contemporary Art Shanghai)では現在、「アニマミックス・ビエンナーレ(Animamix Biennial、動漫美学双年展)」が開催されています。

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上海当代芸術館は2005年にオープンしたコンテンポラリーアートを専門としたガラス張りの建築が美しい美術館です。上海の中心地にある人民公園内にありますが、幅広いジャンルのアートを取り扱う歴史的建造物、上海美術館が人民公園脇の大通りに面しているのに対し、当代芸術館は公園の入り口からさらに奥へ進んだ先にあり、公園の木々に囲まれてひっそりと佇んでいます。

「アニマミックス(Animamix、動漫美学)」とはアニメーションとコミックを合わせたもので、上海当代芸術館のクリエイティブディレクターであり、この展覧会のキュレーターであるビクトリア・ルー(Victoria Lu)による造語です。ビクトリア・ルーは、アジアのコンテンポラリーアートにおいてアニメや漫画の影響が見られる作品が増加しており、この新しい美術傾向を表現する言葉として2006年に「アニマミックス」を提起しています。

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今回のビエンナーレは2007年に次いで2回目にあたり、上海(上海当代芸術館)、北京(今日美術館)、台北(台北当代芸術館)、広州(広東美術館)で同時開催または巡回される大型展覧会で、キュレーターにより選出されたグローバルに活躍する世界20カ国100以上のアーティストが参加しています。その多くはアニメや漫画と共に育った1970年代~80年代生まれの若手アーティストであり、日本人アーティストの作品も多く展示されています。

ビクトリア・ルーは、アジアの新しい世代のアーティストは日本のアニメや漫画、ゲーム等の影響を受けてきていますが、1960年代、70年代のポップアートの世代が漫画やアニメから視覚的象徴を単に取り入れたのと異なり、アニマミックスのアーティストは、根本的にそれらのメディアが彼ら自身の美的感覚の中に深く浸透しているといいます。彼らの作品は高尚な芸術とサブカルチャーとの境目を曖昧にしており、また様々な創作領域、例えばブランドとのコラボレーションやオリジナルグッツの制作等のクリエイティブな活動にも従事し、度々それらの活動と自身の作品を融合しているアーティストもいます。

上海展においては、日本人アーティストでは金田勝一、北川宏人、松浦浩之、長沢郁美、渡辺おさむ、吉田朗、森本めぐみ等が参加。また昨年、アーティストインレジデンスのプログラムで上海にて制作活動をしていた龍門藍の作品も3作品展示されていました。
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自然光が差し込む、吹き抜けのある空間に展示された作品は、わかりやすくかつ親しみやすいものが多く、「アニマミックス」というコンセプトゆえ当然なのかもしれませんが、キャラクター的要素の強い作品が多いのが特徴的でした。日本人アーティストに関しては当社のオークションでも取り扱い歴のある馴染みのある作品もあったのですが、「アニマミックス」というコンセプトで作品を見直す良い機会となりました。

またこの展覧会の出展作品に限らず、このコンセプトに相応するアーティスト、作品が見受けられるのも事実であり、今後、「アニマミックス」という言葉がコンテンポラリーアートの傾向として一般的になるのか、注目していきたいものです。(執筆:M)


非/現実のメタファー アニマミックス・ビエンナーレ2009-2010
(Metaphors of Un/Real – Animamix Biennial 2009-2010、
寓意 非/現実―2009動漫美学双年展)
会場:上海当代芸術館
会期:2009年12月12日~2010年1月31日
http://www.mocashanghai.org/