近代美術PartⅡ 下見会始まりました


 一昨日大寒を過ぎ、毎日天気も悪いのでますます寒く感じますね。でも天気予報によると、今年は最低気温が高いので例年の平均気温に比べるとそんなに寒い年ではないそうですよ。
先日のブログで「風邪などひいていらっしゃいませんか?」と書いたのに、私は早速風邪をひいてしまいました。みなさまはお気をつけくださいね。
 
 さて、ホームページのトップでもお知らせしておりますが、東京での近代美術PartⅡ下見会を、予定より早くオープンいたしました!いつものように下見会の模様をご案内いたします。

20090201a
↑ 1Fは日本画と版画を展示しています。
  今回は宝石・時計の下見会が別の日程になったので、いつもよりスペースがゆ
  ったりです。お目当ての作品も探しやすいかもしれませんよ。


20090201b
↑ B1Fは洋画、外国絵画、工芸のフロアです。
  以前こちらのブログで長谷川利行の作品をご紹介しましたが、今回は山口長男
  の水彩もたくさん出品されます。お好きな方は、近代美術に出品されるLot.22
  《組形》(油彩)と合わせてチェックしてみてください!


今日も近代美術PartⅡの出品作品から1点ご紹介します。

GALLE

Lot.721 ガレ《蘭文彫花器》
H30.4×W14.6cm
胴部に陰刻銘
エスティメイト \2,000,000.~3,000,000


 
エミール・ガレ(1846-1904)と彼が築き上げた工房がつくり出した逸品です。

 エミール・ガレはフランス東部、ナンシー生まれ。父親もガラス器の製造・卸売業を営んでいました。若い頃から、文学、哲学、植物学などを学び、1866年、マイゼンタールのブルグン・シュヴェーラー商会の工場でガラス技術を研修。(1885-1896年の間、この工場はガレのガラス器の大部分を製造することになりました。)
 1877年、父の会社の経営を引き継ぎ、ガラス器、陶器、家具の製造販売を手掛けます。1889年のパリ万国博覧会で、ガラス部門グランプリ、陶器部門金賞、家具部門銀賞を受賞し、世界中の注目と名声を博しました。1894年には、ナンシーに本格的なガラス窯を設置して「芸術と産業の融合」を理想に掲げ、自社内での一貫生産を始めます。当時流行したジャポニスムの影響が色濃く表現された作風で知られ、アール・ヌーヴォー、ナンシー派の指導者としても活躍しました。1904年に没した後も、会社は彼の精神とともに引き継がれ、1931年までガレブランドを冠した優美なガラス器を生産しました。

 植物に造詣が深かったガレは、たびたび草花をモティーフとしましたが、今回出品される《蘭文彫花器》は、大振りの蘭の花をまるでガラスに閉じ込めたかのような、見事な総手彫りの作品です。ガレの鋭い観察力と巧みなグラヴュールにより、蘭を立体的に描出し、折り重なる花びらや葉の陰影、遠近などを繊細に表現しています。それゆえに、蘭がそこに咲いているかのような存在感や凛とした気品がもたらされているのでしょう。また、全体に、青、緑、茶のサリシュールを大胆に施した緑の透明地にべっ甲色のガラスを被せることにより、微妙に変化する色彩の美を楽しむことができる作品です。


※ 用語解説
グラヴュール… 西洋式の彫刻技法。モティーフをレリーフ上に彫り出すこと。
サリシュール… ガラス素地に、緑青色に発色する酸化銅のような金属酸化物の
          粉末をまぶしつけ、部分的に斑紋を生じさせる技法。
    
                                   (執筆:S)