虹のアーティスト・靉嘔の初期作品《Move by rainbow an animale! #6》


こんにちは。
先週の西洋美術オークションにご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
今週4日(土)は5月30日から延期となりました、近代美術/戦後美術&コンテンポラリーアート/近代美術PartⅡ/MANGAオークションを開催いたします。
今回も出品作品の中からおすすめの1点をご紹介いたします。

【 オークション終了につき、画像は削除させていただきました 】

616 靉嘔
《Move by rainbow an animale! #6》
30.0×30.0cm
キャンバス・油彩、スポンジ 額装
1964年作
裏に署名・年代
久保貞次郎旧蔵
「真岡現代絵画鑑賞頒布会」第12回頒布作品№2(1965年)
落札予想価格 ¥400,000~¥600,000


「虹のアーティスト」として国際的に活躍する靉嘔(あいおう:1931- )は、東京教育大学(現・筑波大学)在学中に前衛芸術運動に目覚め、瑛九が主宰するデモクラート美術協会に参加。1958年にニューヨークに渡り、「エンヴァイラメント」と呼ばれる、周囲の環境を取り込んだ体験型のインスタレーションを制作し、先駆的な表現として注目を集めました。1960年代前半には「フルクサス」の活動に参加し、ナム・ジュン・パイクやオノ・ヨーコらと交流。1966年、美術評論家・久保貞次郎がコミッショナーを務める第33回ヴェネチア・ビエンナーレにて虹のエンヴァイラメントを発表し、その後も絵画、版画、立体、パフォーマンスなどの様々な形式で、モティーフを虹のスペクトル(分光分布)で覆う作品を発表しています。


1964年作の本作は、裏面に貼付された「真岡現代絵画鑑賞頒布会」シールより、作家支援と現代美術の振興のために久保貞次郎が購入し、自身の主催する頒布会に出品した作品の一つと考えられます。ヴェネチア・ビエンナーレの後、靉嘔はアクリル絵具を主として    使用するようになりますが、                裏面の「真岡現代絵画鑑賞頒布会」シール
本作ではまだ油絵具で虹が描かれており、
色相は現在の作品に見られる6色(靉嘔の虹は7色ではありません)ではなく赤から緑までにとどめられています。色帯の幅やマチエールの厚みも均一ではありませんが、その分物質感に富み、有機的です。

また、さらに生動感を感じさせるのが、画面に縫い付けられたスポンジ(フォームラバー)の塊でしょう。1962年の虹の登場と同時期に使用されたこの素材は、同年の初個展を訪れた来客から大量にプレゼントされたというもの。ふわふわと柔らかく温かな手触りと「なんともいえぬエロティックな独特なフォルム」※が特徴的で、皮膚感覚を強く意識させるような触覚性を作品にもたらしています。
靉嘔の虹の希少な初期作品の一つであり、鑑賞者の身体感覚を刺激するというその芸術の魅力を味わうことができる作品です。


※靉嘔「虹のかなたに」『虹のかなたに 靉嘔AY-O回顧 1950-2006』福井県立美術館、宮崎県立美術館 2006年

下見会場でぜひ実物をご覧ください。
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皆様のご参加を心よりお待ちしております。

(佐藤)