古代ローマ時代のモザイク画


こんにちは。
新型コロナウイルス感染予防のため、3月下旬からオークションの開催を延期しておりましたが、緊急事態宣言が解除となりましたので、今月より予防対策をとって再開しております。
ブログも久しぶりの更新となりますが、今回は27日(土)に開催いたします、西洋美術オークション(4/11より延期分)の出品作品の中からおすすめの作品をご紹介いたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


114  《古代ローマ期神話画大理石モザイク》

H305.0×W296.0cm

落札予想価格 ¥6,000,000~¥9,000,000

モザイクとは、石、貝殻、ガラスなどの小片を寄せ合わせ、図や模様を表わす装飾方法です。約50×42cmほどの石板42枚からなる本作は、現在のイタリア南部で出土したというモザイク画で、古代ローマ期※に制作されたものと伝えられています。古代ローマではこうしたモザイクが、権力者や富豪の邸宅、公共施設の床を美しく飾るものとして盛んに制作されました。特に、本作のように1~2cm程度に切り揃えた大理石の小片(テッセラ)を使用する技法を「オプス・テッセラトゥム」と言い、この技法によって幾何学模様や動植物、神話や戦闘の場面など様々なモティーフが描かれました。

本作の主題となっているのは、ギリシャ神話の物語「ヒュラスとニンフ」でしょうか。古代ローマ人にとって洗練された文化の象徴であったギリシャの神話画は、所有者の教養の高さを誇示するものとして好まれ、フレスコ画やモザイク画において多くの作例が確認されています。ヒュラスは英雄ヘラクレスに愛された美少年で、物語はヒュラスがヘラクレスとともに参加したアルゴナウスの遠征の途中、ある島に立ち寄り、泉の水を汲もうとすると、その美しさに魅了された泉に住む水のニンフたちに水中に引き込まれてしまうというもの。最もよく知られているのは、ラファエル前派の画家ウォーターハウスの作品でしょう。


 

 

 





参考)ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス《ヒュラスとニンフ》(マンチェスター市立美術館蔵)

本作においても、木々の生い茂る泉のほとりの場面が表わされており、槍と剣を携えてマントを羽織り、水を汲むための甕を持った中央の人物がヒュラスと思われます。その周囲には3人のニンフが描かれ、左のニンフはヒュラスの腕と甕を取って引き寄せ、画面下のニンフは、水中から足を掴もうとしているように見えます。白と黒の大理石を細やかに組み合わせ、人物の表情や姿態、衣の物質感などを繊細に表現しており、古代ローマの成熟した文化と高度な装飾技術をうかがわせる、きわめて貴重な美の遺産と言えます。

※一般的には、紀元前753年にイタリア半島の小さな都市国家として建国されたローマが、地中海世界の全域を支配する強大な帝国へと成長し、その後の東西分裂を経て、西ローマ帝国が滅亡する476年までを指します。

42枚のモザイクが床に広がる様子は、人々が行き交う古代ローマの街を想像させます。
ぜひ下見会場で古の時代に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
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また、今回のカタログでは、「音楽―ベル・エポックのオペラ」の特集を組んでおりますが、ここでご紹介しておりますLot.82《オペラ楽譜「PAGLIACCI」他12冊》、Lot.83《オペラ楽譜「Cendrillon」他16冊》は、ベル・エポック期に出版されたオペラやオペラ・コミックの楽譜のセットです。中には扉が美しくデザインされたものやカラー印刷の挿絵が入ったものがあり、視覚的にも楽しむことのできる作品となっています。

 

 

 

 

 

 



Lot.83 
《オペラ楽譜「Cendrillon」他16冊》
30.0×21.0cm他
Massenet6冊、Messager2冊、Offenbach1冊、Masse1冊、Lalo1冊、Mermet1冊、Meyerbeer1冊、Gounod1冊、Saint-saens1冊、Debussy1冊、Chausson1冊
落札予想価格 ★¥50,000~¥100,000

 

 

 

 

 

 

 

Lot.83より 美しくデザインされた表紙やプログラム


ご入札につきましては、「書面入札」、「オンライン入札」、「電話入札」など、ご来場以外の方法もご利用いただけます。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。

(佐藤)