加藤泉の「人のかたち」2


こんにちは。
今月は4週連続オークションを開催しております。
先週までの西洋美術、BAGS/JEWELLERY&WATCHES、ワインオークションにご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。

さて、今週29日(土)は、戦後美術&コンテンポラリーアートオークションを開催いたします。
通常のオークションに加え、横尾忠則×smartアートカー《CAR-leidoscope》のチャリティーオークションも開催いたしますので、ふるってご参加ください。

今回も出品作品の中から、おすすめの作品をご紹介いたします。


【オークション終了につき、画像は削除させていただきました】
105  加藤 泉(B.1969)

《無題》
h.142.8×w.41.0×d.60.0cm
h.112.5×w.28.7×d.40.5cm
h.135.3×w.31.0×d.49.0cm
木・油彩・アクリル・石・椅子
2008
「加藤泉 日々に問う」2010年(彫刻の森美術館)出品
『加藤泉作品集 絵と彫刻』(2011年/青幻舎)P.47-49掲載

落札予想価格 ¥8,000,000.-¥12,000,000.


4月の戦後美術&コンテンポラリーアートオークションに絵画の大作が出品され、当ブログでもご紹介しました。
2016年4月12日のブログ
その折、「木彫が好きなのですが…」と言っていたら、本当にやって来てくれました。
待望の大きな木彫作品です!

加藤泉は、胎児のような、宇宙人のような、あるいは精霊のような、「人のかたち」をモティーフとした絵画と彫刻を一貫して作り続けている作家です。
2003年頃から手掛け始めた木彫は、加藤にとって絵画に新たな示唆をもたらす存在であり、現在まで絵画と木彫、相互に影響を与え合いながら制作されてきました。粗く削った木材を油絵具やアクリル絵具で彩色して作り上げられる、その「人のかたち」は、絵画のように正面性が強調されていること、彫刻家であれば必須と考えるだろう「自立すること」を重視しない不安定な造形に特徴があり、加藤の画家としての視点が生かされています。

2008年作の本作は、4月のオークションに出品された絵画同様、父、母、子という家族をイメージさせる三人像。加藤の木彫の中でも、代表作の一つとしてよく知られた作品です。
鑿で大胆に削られた跡がはっきりと残る彼らの肌には、少数民族のボディペイントのような鮮やかな色彩と模様が施され、隆起した目には色とりどりの石が埋め込まれています。まるでトーテムポールやアフリカの仮面のような、プリミティブで呪術的な雰囲気と存在感を漂わせる一方で、その身体はどこか頼りなく、空虚さをも感じさせます。


【オークション終了につき、画像は削除させていただきました】
小さな男の子を挟んで両側に
お父さんとお母さん。
近づいて見ると、目に埋め込まれた石がキラキラしてきれいですが、不気味でもあります。


さらに、「人のかたち」と植物が融合した本作では、三人の口に植物が芽吹き、つぼみを膨らませ、花を咲かせています。身体の一部が植物と化してもなお、きちんと椅子に腰掛ける無表情で無防備な彼らは、原初の生命というよりはむしろ、感情を押し殺して社会生活を営む現代人のようです。このように自然と一体となった人の姿を表現することを通して、加藤は生命の営みを見つめ、人間の存在の意味を問いかけているのでしょうか。

現在、加藤泉は富山県の入善町下山芸術の森 発電所美術館にて「この世界に生きている 加藤泉×陳飛」という二人展を開催中です。
そちらには高さ360cmを超える木彫作品が出品されているようですが、本作のような迫力とユーモアのある作品がまた当社にも来てくれるといいなと思います。

下見会・オークションスケジュールはこちら
下見会場では、三人が椅子に腰掛けて皆様のご来場をお待ちしております。
ぜひ彼らに会いにいらっしゃってください。

(佐藤)