いのる、ねむる、みつめている―智内兄助の世界


こんにちは。
先日の近代陶芸/近代陶芸PartⅡオークションにご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。
今年は飛び石連休になってしまいましたが、今日から秋のシルバーウィークですね。
お出かけされる方も多いかと思いますが、各地であまりお天気がよくないのが残念です。
台風も来ているそうですので、旅行先のお天気にはお気をつけくださいね。

さて、来週は近代美術/近代美術PartⅡオークションを開催いたします。
今回は智内兄助の作品がたくさん出品されることになり、カタログでは特集ページを組みました。
回顧展に出品されるような名作が揃っていますので、一部をブログでもご紹介いたします。

智内兄助(ちない きょうすけ)とは…
1948年、愛媛県生まれ。1967年東京藝術大学油画科入学、1974年同大学院修了。
在学中、日本画の画材や技法に魅了される一方で、当時流行していたアクリル絵具にも関心を抱き、和紙にアクリル絵具で描くという、古今東西の技法を組み合わせた現在のスタイルを確立しました。1971年には「シェル美術賞展」にて佳作賞を受賞し、画壇にデビュー。
1980年代に入ると、智内芸術を代表するテーマ、着物姿の童女のシリーズを展開し、1984年第27回安井賞展に初入選。1992年、毎日新聞に連載された宮尾登美子の小説『藏』の挿絵を担当し、大きな話題となりました。近年は、瀬戸内の風物や花を題材とした作品を手掛け、フランスでも定期的に個展を開催しています。

まずはこちら。
第33回安井賞展にて佳作賞を受賞した作品です。


【オークション終了につき、画像は削除させていただきました】

Lot.115 《桜狩遊楽図Ⅰ》
228.7×228.9cm(1辺162.0cm)
板にキャンバス・ミクストメディア 額装
1989年作
『智内兄助画集』(1989年/展開堂)№2
第33回安井賞展 1990年 (セゾン美術館/安井曾太郎記念会)出品
智内兄助展 1995年(小田急美術館/毎日新聞社)出品
落札予想価格 ¥1,000,000~2,000,000

近世の桜狩の風景に、少女が迷い込んだような幻想的な雰囲気が漂っています。
現世と彼岸のはざまに存在するような土俗的で絢爛豪華な画世界の中で、こちらをじっと見つめている、あるいは静かに眼を閉じる童女や少女―それは、智内兄助の代名詞であり、画家にとって運命的とも言えるテーマです。
本作は大画面にキャンバスや箔などを貼付し、アクリル絵具で描いた作品ですが、ご注目いただきたいのは信じられないような細密描写です。智内が蒔絵用の細筆を用いた緻密なハッチング(細かい平行線を引き重ね、質感や陰影を表現する技法)によって、少女の滑らかな肌を表わすことはよく知られていますが、大作をこのような密度で描き込む集中力は、驚異的としか言いようがありません。


【オークション終了につき、画像は削除させていただきました】

右:Lot.112 《雛連れⅠ》                        左:Lot.111 《雛連れⅡ》
      162.0×60.2cm                                                  162.0×60.4cm
        紙・ミクストメディア 額装                                      紙・ミクストメディア 額装
  1989年作                                                               1989年作
  左下に印・年代                                                       右下に印・年代
   『智内兄助画集』                                                       『智内兄助画集』
       (1989年/展開堂)№6                                               (1989年/展開堂)№5
      智内兄助展 1995年                                                智内兄助展 1995年
    (小田急美術館/毎日新聞社)出品                             (小田急美術館/毎日新聞社)出品
  落札予想価格                                                          落札予想価格
        ¥500,000~1,000,000                                                ¥500,000~1,000,000

 
 
《雛連れ》というタイトルの通り、左の少女はお雛様を、右の少女はお内裏様を背負っています。
雛人形というモティーフ、明治や大正の頃のようなクラシカルな着物と、下地に使用された揉み紙や古紙が土俗的でミステリアスな雰囲気を醸し出しています。
今回は一点ずつの出品となりますが、ぜひ一対でご所蔵いただきたい作品です。


そして、こちらは智内兄助の代表作と言ってもよいでしょう。

【オークション終了につき、画像は削除させていただきました】

Lot.113 《藏・冬麗か》

116.7×91.0cm
板・ミクストメディア 額装
1994年作
左下に印
裏に署名・タイトル・年代
智内兄助展 1995年(小田急美術館/毎日新聞社)出品
智内兄助展「藏」 1997年(蕨市立歴史民俗資料館)出品

智内兄助展 1997年(喜多方市美術館)出品
落札予想価格 ¥1,000,000~2,000,000

小説『藏』の映画化の際に制作されたポスターの原画です。

描かれているのは、主人公の盲目の美少女・烈でしょうか。物語の舞台は酒蔵なので、烈の頭上には杉玉も表わされています。清らかでありながら、溢れるような情念を感じさせる作風が、小説の世界観とぴったり合致しています。


【オークション終了につき、画像は削除させていただきました】

Lot.116 《ばこ(TASHIGOMANG of BHUTAN)》
142.2×174.8×20.2cm
ミスクトメディア

1987年作
左下に印・年代
『智内兄助画集』(1987年/求龍堂)№81
『1987 智内兄助』(1987年/青年社)№3

『智内兄助画集』 (1989年/展開堂)№66
落札予想価格 ¥1,000,000~2,000,000

これは、智内がブータンを旅した際に目にした、チベット仏教のタシ・ゴマン(立体の曼荼羅)からインスピレーションを受けて制作された立体作品です。二次元的、三次元的な表現の融合によって作品の物語性が高められ、祭壇画のような神秘性も感じさせます。
少女は皆こちらをじっと見つめていますが、まるで作品を鑑賞する私たちを彼女たちのいる世界へと誘っているようです。

21日(水)からの下見会では、ここでご紹介しきれなかった作品もあわせて、全8点展示いたします。
大画面に繰り広げられた智内の耽美的な世界観をぜひ会場でご堪能ください。
下見会・オークションスケジュールはこちら

皆様のお越しを心よりお待ちしております。

(佐藤)