爽やかな初夏の季節となりました。梅雨がやってくる前に、もうしばらくこの季節を楽しみたいものですね。
さて今週末に行われます近代陶芸/古美術/近代陶芸PartⅡオークションからこちらの作品をご紹介致します。
能道のゆたかな色彩
藤本能道(よしみち)【1919-1992】は富本憲吉、加藤土師萌に続き、東京美術学校(現東京藝術大学)を卒業し「色絵磁器」で重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された陶芸家です。色絵磁器は普通、輪郭線を描いて絵付けする箇所を小分けにし、色が混ざらないように塗っていきますが、能道は没骨描法で描き、焼成して最終的に色が美しく溶けて混ざるところを予想し絵付けを行いました。また、釉薬も青み掛かった「草白釉」、雪のような白さの「雪白釉」、赤み掛かった「梅白釉」など独自の釉薬を生み出しました。
今回は草白釉と雪白釉の筥と陶板がそれぞれ出品されます。釉薬の色味の違いや、美しく溶け合う絵付けの様子をぜひご覧ください。
樂随一の陶工・ノンコウ
樂家初代長次郎の茶碗に千利休が影響を与えたように、三代道入(どうにゅう)【慶長四年‐明暦二年(1599‐1656)】も千宗旦から指導を受けたと言われ、別名の「ノンコウ」は、宗旦が道入に贈った竹花生の銘によるとも伝えられています。長次郎以来の伝統を踏まえながら、それまでには見られなかった装飾的で個性豊かな作行きを確立しました。
本作では、道入の赤茶碗の特徴の一つである砂釉が施されており、釉表の光沢を抑えるためにざらめきのある砂釉を用いることで、素地土のような荒い趣が表現されています。
なお、本作は、表千家六代覚々斎により「福の神」の銘が付けられ、裏千家十一代玄々斎、表千家十三代即中斎の書付が添えられています。
「樂の妙手」と本阿弥光悦が讃えたように、樂家歴代随一の陶工とされている道入の赤茶碗をぜひ手に取りご堪能ください。
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執筆者:E