岡鹿之助が描いた三色菫


こんにちは。
海の日も過ぎ、梅雨明けの待ち遠しい季節となってまいりました。

さて、今週20日(土)は、近代美術/近代美術PartⅡオークションを開催いたします。
今回も出品作品の中からおすすめの作品をご紹介いたします。


【オークション終了につき、画像は削除させていただきました】

52 岡鹿之助

《三色スミレ》
33.5×24.4cm
キャンバス・油彩 額装
昭和47年(1972)作
右下にサイン
裏に署名・年代 共箱
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書付
『岡鹿之助画集』(1978年/美術出版社)№304

落札予想価格 ¥8,000,000~¥12,000,000



岡鹿之助(1898-1978)は、独特の点描技法により、ヨーロッパの古城や群落、発電所、
三色菫パンジーなどのモティーフを詩情豊かに描き上げた画家です。
岡は、劇作家や小説家として知られる岡鬼太郎の長男として東京に生まれました。1919年東京美術学校(現在の東京藝術大学)西洋画科に入学し、岡田三郎助教室に学びます。卒業後はフランスに渡り、レオナール・フジタの指導を受けながら、サロン・ドートンヌなどの公募展に精力的に出品。第二次世界大戦が勃発した1939年に帰国を余儀なくされるまで、油彩技法の研究に励みました。帰国後は春陽会を舞台に活躍する一方、度々パリを訪れ、堅牢なマチエールと静謐な佇まいの作品を描きました。1972年にはその功績が高く評価され、文化勲章を受章します。

本作はこの1972年に制作された《三色スミレ》です。「ルノワールは薔薇に、ルドンはアネモネに自分を託したように、絵描きは自分を託して表現するのにもっとも具合のいいものをつかまえることに努力します。私の場合、三色すみれなどもそれに似ているのですよ。」(『美術手帖』142号 美術出版社 1958年)と語っているように、岡にとってこの花は自身の代名詞となる重要なモティーフでした。
また、岡の作品において、三色菫は皆正面を向いて描かれますが、そこには小さな子どもたちがこちらを向いている姿や、まるで笑ったり怒ったりしているかのような豊かな表情がイメージとして重ねられています。本作でも、花たちが顔を寄せ合い、こちらに向かって微笑んでいるかのようであり、その曲線的で緊密な構成と緻密な筆致が調和し、可憐さや素朴なあたたかさを感じさせます。

近代美術PartⅡには、三色菫をモティーフとしたインク作品も出品されます。
表情の豊かさという点では、こちらの方が率直に表現されているかもしれません。
まるで花たちが、ニコニコ笑いながらおしゃべりしてるようにも見えませんか?


【オークション終了につき、画像は削除させていただきました】

643  岡鹿之助
《Pensees variees》
18.4×13.0cm 
紙・インク 額装
左上にタイトル、右下にサイン

落札予想価格 ¥100,000~¥200,000  

今回の下見会も近代美術/近代美術PartⅡ同時開催となりますので、ぜひ可愛らしい花たちを会場でご覧ください。

下見会・オークションスケジュールはこちら

皆様のお越しを心よりお待ちしています。

(佐藤)