モーリス・ユトリロの「白の時代」―《モンマルトルへの道》


こんにちは。
お祝いムードのGWが終わり、ようやく日常が戻ってまいりました。
10連休だった方も、そうでない方も、体調を崩しやすい時期ですのでお気をつけください。

さて、今週18日(土)は、令和元年1回目のオークションを開催いたします。
下見会、オークションともに、近代美術/近代美術PartⅡ/MANGA 同時開催となります。
お間違えのないようよろしくお願いいたします。

では、今回も近代美術の出品作品の中から、おすすめの1点をご紹介したいと思います。
レオナール・フジタやモディリアーニ、キスリングらと同様、狂乱の時代のパリで「エコール・ド・パリ」として人気を博した風景画家の作品です。







 

 

 


100   モーリス・ユトリロ(1883-1955)
《モンマルトルへの道》
65.0×91.0cm
キャンバス・油彩 額装
1910年頃作
右下にサイン
Jean Fabris/Cedric Pallier 鑑定証書付
P.Petrides, L’oeuvre Complet de Maurice Utrillo, tomeⅠ, Paris, 1959, no.154
落札予想価格 ★¥8,000,000~¥15,000,000

モーリス・ユトリロは、モデルで画家のシュザンヌ・ヴァラドンの息子として、パリに生まれました。実父を知らず、母の愛情を得られない寂しさから、少年時代にアルコール中毒に陥り、治療の一環として絵を描き始めます。
その才能はすぐに開花し、20歳代は、職業を転々としながら街の風景をメランコリックに描き、やがて建物の漆喰の壁の質感に自身の感情を投影させた、静謐で哀愁漂う作風を確立しました。
30歳を過ぎた頃から、鮮やかな色彩と一点透視図法を多用した絵画へと作風を一変させ、1920年代にはエコール・ド・パリの寵児として注目を集めます。孤独とアルコールに苛まれながら、生涯を通して詩情豊かなパリの風景を描いた画家です。

1910年(当時27歳)頃作の本作は、ユトリロが暮らしたパリ、モンマルトル付近の通りを描いたものです。画面の奥に向かって、点景人物が歩いていく様子がうかがえますが、通りの先は行き止まりのように見えます。人物の前には背の高い塀が立ちはだかり、通りの両側にも建物が並んでいます。
塀と建物の壁に用いられたのは、ユトリロ独特の白の絵具。「白の時代」と呼ばれるこの時期、ユトリロは、ときに油絵具に石灰や砂、卵の殻などを混ぜ、年代を経た漆喰の質感を表現しました。また、それと同時に、自らの心に渦巻く苦悩や葛藤、孤独をそこに塗り込めていきました。
本作でも、白の絵具と感情的な筆致、そして行き場を失った点景人物の姿に、ユトリロが感じていたであろう不自由さや空虚さが滲むようです。

冒頭にも書きましたが、今回は、下見会も近代美術/近代美術PartⅡ/MANGA 同時開催となります。
下見会では、ユトリロのほか、ジョルジュ・ルオー、荻須高徳、小出楢重、杉山寧、横山操など、
また、近代美術PartⅡのレンブラントやミレーの版画、歌川広重の「名所江戸百景」など、
MANGAの手塚治虫「魔神ガロン」や「火の鳥」原稿、藤子不二雄、赤塚不二夫、鳥山明などの色紙といった、バラエティに富んだラインナップが一度にご覧いただけます。
お好きな作品をきっと一つは見つけていただけると思いますので、ぜひ会場で実物をご覧ください。

下見会・オークションスケジュールはこちら

皆様のお越しを心よりお待ちしています。

(佐藤)