江戸の華―北斎、歌麿、写楽の浮世絵


こんにちは。
今週の近代美術PartⅡ下見会にご来場くださいました皆様、ありがとうございました。

さて、来週の18日(土)は近代美術/近代美術PartⅡ/戦後美術&コンテンポラリーアートオークションを開催いたします。近代美術では、加山又造や平山郁夫、ピサロなど、戦後美術&コンテンポラリーアートでは、草間彌生の《INFINITY-NETS[QPRS]》など、それぞれお勧めはありますが、今回は近代美術PartⅡに浮世絵の名品がたくさん出品されますので、その中から3人の絵師の作品をご紹介いたします。

葛飾北斎(1760-1849)といえば、代表作《富嶽三十六景》です。
この作品がゴッホやドビュッシーに影響を与えたことはあまりにも有名ですが、現在も国際的に評価が高く、四十六図のうちの一つ《神奈川沖浪裏》は今年4月にニューヨークで行われたオークションで、943,500ドル(約1億370万円)という高額で落札されています。
このたび出品される2点も人気の高い図柄です。



763  葛飾 北斎

《富嶽三十六景 甲州石班沢》
25.3×36.6cm
落札予想価格 
¥6,000,000~¥9,000,000

画題は、「こうしゅうかじかざわ」と読みます。現在の山梨県富士川町の風景だそうです。
《富嶽三十六景》は、北斎の天才的な構図のセンスが光るシリーズでもありますが、この作品は最もそれが端的に表われたものの一つ。漁師を頂点として網と岩がつくる三角形が富士山と相似形をなすという、緊張感溢れる画面構成が見事です。



764 葛飾 北斎
《富嶽三十六景 山下白雨》
25.1×36.6cm

落札予想価格 
¥6,000,000~¥9,000,000

《神奈川沖浪裏》、《凱風快晴》とともにシリーズ中最も有名な作品の一つです。
「白雨」は夕立を指し、画面右下には稲妻が光っています。まるで上空から富士を眺めているような構図は、飛行機のない江戸時代、とても斬新なものだったに違いありません。


続いては、喜多川歌麿(1753?-1806)です。
歌麿といえば美人絵、しかも女性のバストアップを描く「大首絵」ですね。


769 喜多川 歌麿
《六玉川 野路の玉川》
37.8×25.1cm
落札予想価格 ¥2,500,000~¥4,000,000


《六玉川》(むたまがわ)は、古歌に詠まれた6つの玉川になぞらえて、当時吉原で最も人気の高かった6人の花魁を描いたシリーズです。
このシリーズは、花魁の顔の輪郭線が肌色で描かれているのが特徴で、そのためか、流行の「立兵庫」を結った本作の花魁は、やわらかでしっとりとした雰囲気を感じさせます。
なお、左上の短冊には、「たま川のたきとハ見せぬ八文字希に紫の花のよし原」という野辺亭広屋の狂歌が書かれています。



最後にご紹介するのは、東洲斎写楽(生没年不詳)です。
写楽は、およそ10ヶ月の間に役者絵と相撲絵150点あまりを版元・蔦谷重三郎から刊行し、姿を消したとされる伝説の浮世絵師。今回のオークションでも、役者絵2点が出品されます。


 766 東洲斎 写楽
《二世嵐竜蔵の金貸石部金吉》
36.4×22.8cm
落札予想価格  ¥6,000,000~¥8,000,000

「花菖蒲文禄曽我」という狂言に取材した作品です。二世嵐竜蔵という役者が演じる、金貸しの石部金吉という役が描かれています。石部金吉は、敵討ちをする主人公を助ける田辺文蔵から借金の取立てをする役どころ。口を真一文字に結び、腕まくりをして文蔵にすごむ場面をアップで捉え、デフォルメして表現しています。
背景の豪華な雲母摺り(きらずり=雲母の粉を摺り付ける技法)も見どころです。







778 東洲斎 写楽
《四代目岩井半四郎の乳人重の井》
  37.5×24.2cm
  大田蜀山人蔵印あり
  
落札予想価格  ¥7,000,000~¥12,000,000


歌舞伎「恋女房染分手綱義経千本桜」に取材した作品です。女形の名手として知られた四代目岩井半四郎が演じる、重の井という乳母の役が描かれています。上品でふっくらとした姿が印象的ですが、こちらでも雲母摺りの大首絵という写楽の本領が発揮されています。
また、本作は、江戸中後期に文人、戯作者、狂歌師としてマルチに活躍した大田南畝(蜀山人)の旧蔵印が捺されています。



上記を含む、全16点の名所絵、美人絵、役者絵が出品されます。

オークションスケジュールはこちら

皆様のご来場を心よりお待ちしています。

(佐藤)