華麗な金襴手作品―釉裏金彩・琳派


 いよいよ12月1日よりシンワアートオークション株式会社は、Shinwa wise Holdings株式会社へ変わります。これに伴い、Shinwa Auction 株式会社がオークション事業を承継いたします。より良い作品をご紹介できるよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

 

さて、今週末に開催されます「近代陶芸/古美術/近代陶芸PartⅡオークション」からこちらの作品をご紹介いたします。

LOT.156 加藤土師萌「色絵釉裏金彩水指 春夏秋冬」
     H13.4×D21.4cm
     高台内に描き銘「土師萌造」、蓋裏に「日吉篁居」記
     共箱/1963年作
     『原色現代日本の美術15陶芸(1)』掲載 P.65(小学館)【図録付】
     落札予想価格:¥2,500,000~¥3,500,000

 1900年、陶磁器の名産地として名高い愛知県瀬戸市で加藤土師萌(はじめ)(本名・一)は生まれました。小学校を卒業してすぐに製陶業者で画工見習いとして働き出した土師萌は、26歳の時に岐阜県陶磁器試験場の技手として勤務することになり多治見市へ移り住みます。

当時の多治見市には荒川豊蔵、加藤唐九郎ら才気溢れる若手の陶芸家達が集まり、切磋琢磨し合って共に新たな陶芸界の構築を目指している時期でもありました。多くの仲間と古陶磁器を研究する中で、土師萌は特に中国・明の嘉(か)靖(せい)年間の技法に傾倒し研究を進め、後の制作の礎を築きました。1940年独立の際には、地場の瀬戸や多治見ではなく、横浜・日吉へ移り住み「日吉窯」を築窯しました。

今回使用された「釉裏金彩」とは、“白磁の素地の上に緑釉などの釉をムラのないように掛けて窯で焼き、その上に金箔を貼って百度前後の温度で焼き付け、さらにその上から低火度釉を全面に掛けて焼成する方法”註)のことです。金箔が釉薬に挟まれる形になり、落ち着いた色見の金に透けて見える緑釉が美しい作品です。蓋と身にわたり描かれている草花文が、釉裏金彩を用いていない赤の色絵で縁取られ、全体を引き締めています。

地位や名声を手に入れてもなお飽くことなく研究を進めた、実に脂の乗った時期の名品といえるでしょう。釉薬の美しさをぜひ間近でご覧下さい。

LOT.115 鈴木其一「秋草図屏風」
   140.3×340.3cm
   六曲一隻(155.0×365.2cm)
   『時代屏風聚花』掲載 53番しこうしゃ/平成二年(1990)【図録付】
   落札予想価格:¥5,000,000~¥10,000,000

 鈴木其一(きいつ)【寛政八年‐安政五年(1796‐1858)】は、「江戸琳派の旗手」と称される絵師。江戸初期の京都にて、本阿弥光悦や俵屋宗達が創始した琳派は、江戸後期の江戸の地で酒井抱一によって再興されました。その新様式を江戸琳派と呼びます。

十八歳の時に抱一に入門し、その高弟となった其一は、琳派の伝統を継承しながら、鮮やかな色彩と斬新な構図によって新しい絵画表現を追求していきました。近年には各地で大回顧展が開催されるなど、その個性的な作風でますます注目を集めています。

 本作は、琳派の伝統的な画題の一つ、秋の草花を描いた屏風。白菊と芒を主な題材として金地に配した典雅な作品であり、其一の号「祝琳斎」の朱文円印が左下に捺されています。特筆すべきは、草花を三つのブロックに分けて三角形に配した特徴的な画面構成でしょう。それぞれのブロックには、桔梗、羊歯(しだ)、山帰来などの秋草も添えられています。

 また、左上から右下へ斜めに淡墨を刷く雨の表現は、古くは鎌倉時代から使用され、室町時代には雪村も試みたものです。それに合わせて、左から右方向へなびく芒は、強い風雨を表わすとともに画面に動きをもたらしています。其一はこうした表現を時折使用しましたが、琳派の作品の中では稀有と言えるでしょう。四季や気象の変化の中で、自然が見せる表情をいかに的確に捉えて描くかを、其一が独自に追求していたことをうかがわせる作品です。

今回の古美術では加賀前田家が旧蔵していた「島物花瓶口茶入」、初代大西浄林の「石州好 俵形釜」、そして重要美術品の後西天皇「宸翰御消息」など、近代陶芸では、北大路魯山人、十三代・十四代酒井田柿右衛門、河井寛次郎といったおなじみの作家群のほかに、宮之原謙も多数出品されます。皆様のご来場を心よりお待ち申し上げております。

                              執筆者:E

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