中国コンテンポラリーアート、30年の歴程


 5月1日、ついに上海万博が開幕しました。早速会場に足を運んできましたが、スケールの大きさ、奇抜なデザインのパビリオンの数々に驚かされました。昼間はもちろん、夜はライトや映像を駆使した演出が美しく、違った風景を楽しむことができます。また彫刻プロジェクトとして園内に36体の彫刻作品が設置されているなど、アート関連イベントも行われています。これに関しては後日お伝えいたしますのでお楽しみに。

民生現代美術館 
 美術館の外観

民生現代美術館入口
 さて、以前ご紹介した上海のアートスポット、紅坊国際文化芸術社区(レッドタウン)内に位置する民生現代美術館では現在、「中国当代芸術30年歴程 絵画篇1979-2009」が開催されています。民生現代美術館は昨年夏にオープンしたものの、不定期でしか展覧会が行われていなかったのですが、今回の展覧会は美術館の正式な開館展として開催されています。その記念すべき展覧会に相応しく、中国コンテンポラリーアート30年の歴史を客観的かつ公正に示すだけでなく、今後の中国コンテンポラリーアートを新たに構築する重要な起点とすることが本展の大きな狙いのようです。

会場入口ポスター
 会場入り口にずらりと並んだポスター

 本展覧会では、文化大革命が終結し、改革開放以降に活躍しはじめた中国を代表する80名のアーティスト、約100の絵画作品が展示されています。
 80年代初期に農村の人々の姿をありのままに描く表現でセンセーションを巻き起こした陳青丹(チェン・チンタン)や羅中立(ルオ・ジョンリー)の「郷土絵画」と呼ばれる写実主義からはじまり、90年代以降の王広義(ワン・グワンイー)、方力釣(ファン・リジュン)、岳敏君(ユエ・ミンジュン)等の「ポリティカル・ポップ(政治波普)」、「シニカル・リアリズム(玩世現実主義)」の代表作、劉小東(リュウ・シャオドン)の三峡ダムで働く労働者を描いた大作、また曾梵志(ズン・ファンジー)等海外のオークションでも人気が高いアーティストや、ここ数年活躍が著しい若手アーティストの作品もずらりと並び、見応えのある展覧会となっています。
 特に、家族の肖像を描いた血縁シリーズで世界的に知られる張暁剛(ジャオ・シャオガン)に関しては、全く作風が異なる80年代の作品と、血縁シリーズの作品、両方を比較することができ、大変興味深かったです。

本
展覧会カタログとは別に制作された本。充実した内容に展覧会への熱意を感じる。

王広義ポスター
レッドタウンの至る所にポスターが。写真は王広義の作品のポスター。 

 この展覧会は映像、インスタレーション、彫刻等シリーズ化されており、2012年までの3年に渡って開催されていくようです。中国のコンテンポラリーアートの歴史を俯瞰できる貴重な体験になるのではと期待に胸が膨らみます。

(執筆:M)


「中国当代芸術三十年歴程 絵画篇1979-2009」
会期:2010年4月18日~7月18日
会場:民生現代美術館