「シンオクジン・コレクション 日本の近・現代美術」展


韓国で一番大きくて奇麗な港町と言われる、釜山(ブサン)市にある「釜山市立美術館」では去る2月23日から4月18日にかけて「シンオクジン・コレクション 日本の近・現代美術」展というちょっと珍しい展覧会が開かれていました。

表題の展示は、シン・オクジンさんという韓国人のコレクターが集めてきた日本の近・現代美術の作品を紹介する展覧会で、シンさんは、本来画商として韓国の美術界でよく知られている方です。今回の展覧会では、そのシンさんが10年かけて集め、釜山市立美術館に寄贈してきた日本人作家の作品、およそ50点が公開されました。

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〈展示風景1〉

梅原龍三郎をはじめとする近代作家や、草間彌生・奈良美智などのコンテンポラリーアーティストにわたる作品のラインナップは、日本の近・現代美術の流れを一度に観ることができます。中でもシンワの近代美術オークションに出品されたことがあるいくつかの作品との再会は、とても懐かしく嬉しいものでした。

今回の展覧会は、個人コレクターの寄贈による初めての日本美術の紹介ということや、韓国内での寄贈文化の定着の良い例として話題になり、メディアからの取材も多かったようです。

展示は、時代の流れによって五つのスペースに分けられ、各展示会場では油絵・水彩・版画・彫刻・立体など、各作家の個性がよく伝わるようにコレクションをうまく見せていました。
中でも、梅原龍三郎、レオナールフジタ、岸田劉生など、日本を代表する巨匠たちの作品は、「日本における近代美術はこちらです。」と言うように堂々と展示され、韓国人の来客を迎えていました。

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〈展示風景2〉

画商として40年近く多様な作品を取り扱ってきたシンさんが、なぜ日本の美術をコレクションし始めたのか、それは両国の間にできた歴史を遡ってみることでわかるようになります。

シンさんの話によると、現在、韓国で高く評価されている近代美術の作家を調べるたびに、必ず日本の近代美術につながり、両国間の特別な美術史が見えてきたそうです。
それは、韓国の油彩画家の第一世代のほとんどが日本への留学の経験を持ち、その頃、西洋美術を直接学ぶことができなかった韓国の画家たちは、日本の留学生によって入ってきた西洋画、つまり「日本の洋画」をそのまま「西洋画」として吸収したということです。そのような美術史的な痕跡から、自国の近代美術を知るためにはまず日本の近代美術を知るべきだと考え始めたのが、シンさんのコレクションの始まりでした。

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〈展覧会カタログ〉

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〈韓国・空間画廊代表、シン・オクジンさん〉

韓国語・日本語・英語の3ヶ国語に訳された作品解説付きのカタログからみても、今回の展覧会のため、今までどんなに努力を注いだのかよく伝わってきます。
現在も進行中であるシンさんのコレクション、そして釜山市立美術館の展示企画は、これからもまた新たな展開を見せてくれることでしょう。

桜が満開に咲いた頃、展示会場のあちこちをゆっくり歩きながら、両国における本当の意味の美術史が始まった瞬間にふっと気付いた自分でした。

今週末からいよいよゴールデンウィーク。皆様、お好きなアートと共に素敵な連休をお過ごしください!


〈執筆:W〉