アーティストLee・ Kang Wook


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梅雨入りの季節、ワールドカップの熱気で世界中が盛り上がっているようですね。皆様もわくわくと楽しんでいらっしゃいますでしょうか?
今日は、韓国内や海外での個展を中心にその活躍の場を着々と広げつつある韓国の若手作家の一人をご紹介させていただきます。

イ・ガンウク(Lee・Kang Wook)の作品を始めて目にしたのは海外のオークションハウスの下見会。近年、圧倒的に具象画が多い韓国の現代アート界では、抽象画とはちょっと珍しいと思いました。
34才という若い作家が作り出した抽象の世界は、淡く薄く色付けた平面のキャンバスの上に、宇宙の一部なのかある生き物の細胞なのか、まるで生きているような様々な線や点たちが生み出す妙な空間。

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キャンバスにグワッシュで描いたドローイングの上に、ジェル・メディウム(Gel Medium)とバインダー(絵具の固着材)を何度も塗り重ねることで立体的な「透明感」を作り出すイ・ガンウクの作業は、まるで、暖かくて柔らかい無定形の対象を剝製にするように、作家の内面からのイメージをキャンバスの上に固着させます。作家はこのような瞬間的な固着の過程を通して、観る人に動と静、生と死の意味を考えさせると同時に、その固着された対象の永続を望むようにも見えます。

彼の作品には、奥から染み出す鮮やかな色彩をより生々しく感じさせる「透明感」のほか、優れた「繊細さ」を感じることができます。洗練されたタッチとビーズやプラスチックとのストイックな組み合わせは、まるで細胞たちが生きているかのようにうねり、限定されたキャンバスの画面を超えて宇宙の何処までも広がっていくように見えます。それは温和で繊細な作家の性格からくるものでしょう。

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「全体は自分であり、部分は自分を構成する最も微細な自分を示す。見る主体(観客)と描かれる客体(作品あるいは作家自身)との間を縮めることとは、結局、自分が自分自身にどのくらい近づけるかの問題であろう。」と作家は言います。それはまるで、人類の、性の、個人の区別は、顕微鏡で見てみればただの「細胞」に過ぎないと、人と人との間に生じる「差異」の儚さを教えてくれるようですね。

日本でも3回の個展経歴を持つイ・ガンウクに実際お会いしたところ、自己愛に溢れる愉快な方で、「自分を愛することって、他人を愛する一番いい方法です」というやさしい真理を教えてくれました。
アジアだけではなくアメリカやヨーロッパの有名なギャラリーでの個展や企画展を通してその評価を高めてきたイ・ガンウクは、現在イギリスのロンドンで制作活動を進めています。

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<作業中のイ・ガンウクさん>

■プロフィール: Lee, KangWook (B.1976)
2001 (韓国)Hong-Ik大学校 美術大学 絵画科 卒業
2003 (韓国)Hong-Ik大学校 美術大学大学院 絵画科 卒業
2004 レジデンス:第3期ChangDongスタジオ(2004~2005(韓国)国立現代美術館)

【個展】
2007 Gallery Rho, ソウル
Hino Gallery, 東京
2006 Spring Gallery, 上海
2005 Galerie de Temps, 東京
Cheltenham Art Center, フィラデルフィア
Gallery Will, ソウル
2004 Gallery Rho, ソウル
Gallery Ju-ichi gatsu, 東京
2002 Total Art Museum, Jangheung(韓国)
Hanjeon Plaza Gallery, ソウル

【主な企画展】
2008 KAM’s Choice: The Soul of Korean Contemporary Art (Insa Art Center, ソウル)
Emergentism (Edge Gallery, 香港)
2007 Imaginary Moments (Im Art Gallery, ソウル)
月刊朝鮮〈2007評論家選定現代作家50人展〉
2006 現代日・韓展(ONO Gallery, 東京)
We Meet Prague-Korea Contemporary Art 16 Artists Joint Exhibition(Galerie Passage, プラハ)
2005 ソウル青年美術際-ポートフォリオ2005(ソウル市立美術館, ソウル)
韓・米現代美術の理解と交感展(Cheltenham Art Center, フィラデルフィア)

作家Homepage: http://www.leekangwook.com


〈執筆:W〉