タグ別アーカイブ:

放浪の画家・山下清の貼り絵-《桜島》

こんにちは。
梅雨明け以来、毎日猛暑日が続きますね。
今週の暑さはやや控えめという予報ですが、日中外出される方はくれぐれも熱中症にご注意ください。

さて、そんな暑さの中、先週の近代美術PartⅡ下見会にお越しいただいた皆様、ありがとうございました。
今週の20日(土)は近代美術/近代美術PartⅡオークションを開催いたします。
今回も出品作品の中から一点ご紹介いたします。


【オークション終了につき、作品の画像は削除させていただきました】


Lot.80 山下 清 《桜島》
45.5×53.0cm
貼り絵 額装
左横にサイン
山下清鑑定会鑑定書付
「生誕80周年記念 山下清展」(2001年・大丸ミュージアム)出品
エスティメイト ¥4,000,000~7,000,000



「裸の大将」でおなじみの山下清の作品です。
ドラマは見たことあるけど…という方のために、プロフィールを簡単にご紹介します。

 山下清(1922-1971)は東京都浅草区(現在の台東区)生まれ。3歳のときに患った大病がもとで軽い言語障害と知的障害になりました。12歳で千葉県の養護施設・八幡学園に入園し、授業の一環として始めた貼り絵に才能を開花させていきます。1937年早稲田大学で開かれた学園の子供たちによる展覧会で注目を集め、1939年には個展を開催。これが大きな反響を呼び、多くの画家や文学者たちから賞賛を受けます。1940年に初めての放浪の旅へ出て、その後も繰り返し日本中を旅しました。1949年には点描風の油彩画の制作を開始。1961年初のヨーロッパ旅行へ出かけます。才能が認められるにしたがって注目を集め、生前に山下を主人公とした映画も制作されました。49歳で亡くなった後も、その作品と「裸の大将」と呼ばれる親しみやすいキャラクターは多くの人に愛されています。

 1951~54(昭和26~29)年にかけて、山下は放浪の旅の途中で鹿児島を訪れました。桜島を題材とした本作品は、その際のスケッチをもとに制作されたものでしょう。山下は記憶力が大変優れており、一度見たものをはっきりと覚えていることができたため、たとえ数年前に見た風景であっても今目の前にある風景のように鮮やかに表現することができたそうです。そのため、こうした貼り絵作品は、旅先ではなく放浪生活を終えて学園に戻った後に制作されました。

 本作品では、鹿児島の市街から錦江湾(鹿児島湾)を隔て、噴煙を上げる桜島を望む風景を描いています。ご注目いただきたいのは貼り絵の緻密さ、それに相反するようなスケール感です。まるで油彩画の点描技法のように小さな紙片を規則正しく並置し、この雄大な風景を表現した点は本当にお見事!としか言いようがありません。

よく見ると前景の家々が立体的に表わされており、これが画面にいっそう奥行きをもたらしていることがわかります。
【オークション終了につき、作品の画像は削除させていただきました】
(拡大図版。屋根瓦や窓の枠が立体的になっています。)
 よく晴れた日に眺めた桜島の美しさと満ち溢れるようなエネルギー、それらに抱いた感動を生き生きと表わす一方で、画面構成においては実はとてもクールに計算していたのかもしれません。山下の「貼り絵」の魅力が存分に発揮されたとても優れた作品です。

こちらの作品は本日からの下見会でご覧いただけます。
下見会・オークションスケジュールはこちら

皆様のお越しを心からお待ちしています。

(佐藤)

続きを読む